ポケの細道   作:柴猫侍

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第八十話 覗きを確認する為の覗きというジレンマ

「うふふ……!」

 

 嬉しそうにグレイシアを抱きかかえるジーナ。薄い水色の体毛は雪のようにふんわりと風に靡いており、触ってしまえば溶けてしまうでのはないかというほど柔らかい。

 耳は細長い菱形であり、額には水色の出っ張りが氷の王冠のように存在する。

 ネクタイ型の薄い物体はおさげのように垂れており、それも体毛よろしく吹き荒ぶ風に靡いていた。

 

『グレイシア。しんせつポケモン。体温をコントロールすることで、周囲の空気を凍らせてダイヤモンドダストを降らせる』

「お勤め御苦労さまです、ロトム」

「ケテッ♪」

 

 勝手に図鑑を起動し、グレイシアの情報を読み上げるロトム。

 慣れたものだとライトは、軽く礼を言って流す。

 

 そんなライトの横では、ルンルン気分のジーナがグレイシアに頬をスリスリと擦っているのが目に見えた。

 ユキノオーとのバトルの後、フロストケイブ内部に流れる川を渡った対岸先の奥の空間に、イーブイの進化の影響を与える氷の岩を発見し、順当にイーブイをグレイシアへと進化させたジーナ。

 パートナーが進化して嬉しいのは分かるが、この寒い中で【こおり】タイプのグレイシアを抱きしめるとは、ジーナも中々のチャレンジャーだとライトは苦笑を浮かべる。

 

 ライトはメガストーンを見つけ、ジーナもイーブイを進化させる目的を果たし、既にフロストケイブに残る理由は残っていない。

 そそくさと足早に洞窟を抜けようとする二人。

 外から差し込む日光が反射して、やや明るい洞窟を出口に向かって進んでいけば、角を曲がったところでパァっと視界が明るくなった。

 

「おっ、出口」

「ふう……これで寒い場所におさらばですわ! 外に出て、紅茶でも―――」

 

 ツルッ。

 

 ドテッ。

 

 ゴンッ。

 

(うわ、痛そう……)

「だ、大丈夫?」

 

 外に出るまであと一歩というところで足を滑らせ、後ろのめりに転び後頭部を打ったジーナを見て、ライトの表情は苦々しいものになる。

 グレイシアを抱きかかえたまま後頭部を打ったジーナは、暫く動かないものの、心配してグレイシアが頬をぺろぺろと舐めてきた辺りで目尻を緩ませ、

 

「踏んだり蹴ったりですわ、もうっ!!」

 

 荒げた声がフロストケイブ内に響き渡った。

 

 

 

 ***

 

 

 

「あ、お帰りライト……とジーナちゃん! 久し振り……って、なんか元気が無さそうだけど大丈夫?」

「ご機嫌麗しゅう、コルニさん。あたくし、ちょっと頭痛が痛くて」

「頭痛が痛い? え?」

 

 重言を口にしながら頭を抱えるジーナに、コルニは心配そうに駆け寄る。とりあえず頭が痛いということは伝わるが、それが外的なものなのか内的なものなのかは分からない。

 だが、本人が『とりあえず大丈夫ですわ』と口にすることから、必要以上に心配を掛けるのも迷惑だろうと考えたコルニは、それ以上質問することはなかった。

 

 そこへ『それより』とにこやかに笑うライトが一歩前に出る。

 

「ビオラさんは? もう撮影に行った感じ?」

「うん! そろそろ始まるみたいだし……ジーナちゃんも見てく?」

「ええ、と言いたいところですけれど……ちょっと温かい飲み物を買いに行きたいですわ」

「飲み物? オッケー!」

 

 先に飲み物を買いに行きたいと言うジーナに対し、コルニは親指を立てながらライトの方に目を遣る。

 キョトンとした顔を浮かべるライトだが、そんな彼の肩をコルニはガッと掴み、

 

「ライト、頑張れ!」

「なんでその流れで僕なの!?」

「アタシ、待ってる間凄い寒くて今は一歩も動けそうにないの」

「……【かくとう】は【こおり】に強いのに?」

「【こおり】の技は【かくとう】に等倍だもん」

「……何を買ってくればいいの?」

 

 折れるライト。

 ジーナの方を一瞥すれば、『温かい紅茶で』と即答が返ってきた。そのまま向かおうと振り向けば、再び肩を掴んできたコルニが『アタシ、ミックスオレ』という言葉を投げかけられる。

 長い旅で距離感が縮まるというのも、如何なものかと覚える瞬間であった。

 パシリにさせられたライトは、深い溜め息を吐きながら自販機まで小走りで駆けて行く。

 

(最近、コルニの僕に対しての扱いがぞんざいな気がするんだけど……)

 

 軽やかな足取りで、会場のどこかに設置されているであろう自販機に向かうライトだが、中々見つかる気配はない。

 そもそも、スカイリレーの会場となる場所は雪の降り積もる林道だ。テントの下で販売はしていれど、自販機がある可能性は極めて低い。

 

(う~ん、販売所販売所っと……ん?)

 

 テントの下に販売所があると踏んだライトは、キョロキョロと人通りの激しい道を見渡す。

 するとライトは、雪が降り積もる林の奥に居る一人の男に目が付いた。

 この寒い天候に明らかに似合わなそうな黒尽くめの男が、横にモルフォンを連れてコソコソと奥の方へと消えていく。

 

―――なんだ、あの『怪しい』を絵に描いたような男の人は。

 

 心の中で囁くようなツッコみを入れたライトは、思わず歩みを止めて林の奥へ消えていく男をジッと見つめる。

 怪し過ぎて、先程言われた紅茶とミックスオレのことなどどこかへ飛んでしまうかのような衝撃を受けたライト。

 凍ったように暫し硬直するライトであったが、腹を括ったような瞳を浮かべると、一つのボールに手を掛ける。

 

「ジュカイン」

 

 白い雪の中ではやや目立ってしまう緑色の体色。だが、密林の中では無類の強さを誇るというジュカインを繰り出し、男の消えていった林の奥へと歩んでいくライト。

 ジュカインはそれを追うように、軽い身のこなしで木々を飛び移っていく。

 

 綿毛のような雪を踏めば、下に隠れている落ち葉をも踏む感覚を覚える林の中を進むライトとジュカイン。

 できるだけ音を立てないように男を追い掛けていき、薄暗い道なき道を進んでいくと―――。

 

(ん? テント……戻ってきたのかな?)

 

 ふと左を見遣れば、遠方の方にテントが見えた。そこで再びジュースの事を思いだすライトであったが、まずはあの男の動向を知りたい。

 好奇心、というよりは不審な人物が何かをしでかさないかと言う正義感の下で動くライト。

 

(ッ、止まった……)

 

 突然止まる男の歩み。同時にライトとジュカインの動きも止まり、男が何を見ているのかをジッと観察する。

 常人であれば見る事が難しそうな距離であったが、ライトは男が顔を向けている方向に何が在るのかを目に捉えた。

 

 切り株に座り、モゾモゾという動きをしている女性。遠方から見ても分かる程の胸の大きさを有す女性が、何やら空色のスーツのようなものを着こもうとしているのだ。

 よほど着辛いのか、服を着る事に集中していて、少し離れた場所で息を殺している男に気付く様子はない。

 

(え? 覗き?)

 

 このシチュエーション。完全に覗きだ。

 女性の着替えを見つめているなど、完全に覗きできしかない。そしてライトは、覗きをしている男に対して覗きを敢行している為、立場上覗きの覗きという訳のわからない状況に陥っている。

 

(わ、どうしよう……これって『覗きだ―――ッ!』って言えばいいのかな?)

 

 そう言えば、自分も覗きの犯人にされてしまうのではないかという一抹の不安を覚え、こっそりと男を観察し続ける。

 その気になれば、後で『貴方、覗いてましたよね?』と声を掛ければいい。バックにリザードンやハッサムなどの威圧感たっぷりのポケモン達を連れつつ。

 その時、男が動いた。何やらポケットから黒い箱のようなモノを取り出し、それを握りながらモルフォンに動くよう手で指示を出した。

 

 不審な動き。

 乗じて、ライトもジュカインに先行するよう手で指示を出す。もしもの時に備えて指示を出されたジュカインは、最小限の音しか立てず辺りに生える針葉樹林を駆けのぼり、ジッと男たちを見下ろした。

 モルフォンも音を立てず、着替えに没頭している女性の背後に近寄り、その羽にたっぷりと付着している鱗粉を―――。

 

 ザッ。

 

 ジュカインが動く。

 樹の幹を蹴り、凄まじい跳躍力で滑空するように地面に向かって行き、女性とモルフォンの間に入り込むよう着地する。

 着地の大きな衝撃で雪と落ち葉が舞い上がり、同時に流石に女性も自分の周囲で起きている異変に気がつき、何事かと後ろに振り返った。

 

「え!? え!? な、何です!?」

「ジュカイン、“めざめるパワー”!!」

 

 女性もモルフォンも驚く間もなくジュカインは、女性に“ねむりごな”を振りかけようとしたモルフォンに“めざめるパワー”を解き放つ。

 タイプは【ほのお】。【むし】を有すモルフォンには効果が抜群。

 ほぼ零距離で叩きこまれた“めざめるパワー”に、モルフォンはそのまま後方へと吹き飛び、背後にあった樹の幹に激突する。

 すると、樹に降り積もっていた雪が衝撃によって落下し、目をグルグルと回して戦闘不能になったモルフォンに降りかかった。

 

「だ、誰だ貴様!? ちっ、こうなったら作戦変更だ! カエンジシ、そいつに“やきつくす”だ!!」

「“りゅうのいぶき”!!」

 

 慌てふためく男は、少し遠回りをして女性の前に立ちはだかったライトを目の当たりにし、舌打ちをしながらモルフォンに代わる別のポケモンを繰り出す。

 立派な紅い鬣を靡かせるポケモン―――カエンジシは、ジュカイン目がけて唸りを上げる炎を吐き出した。

 対するジュカインもまた、青紫色の炎を吐き出してカエンジシの“やきつくす”を相殺する。

 その間ライトは、襲われそうになった女性の顔を見てハッとした。

 

「ガーベラさん、でしたよね……?」

「はい、そうです! えっと、これはどういう状況なのですか?」

「短く言えば、ガーベラさんの着替えをあの人が覗いてました!」

「え~~~!? の、覗きです―――ッ!! きゃ~~~!!」

 

 女性らしい甲高い声を上げるガーベラに、テントの方からは『なんだなんだ!?』と大会のスタッフたちのどよめきが聞こえてくる。

 その声に黒尽くめの男は、苦々しい顔を浮かべてライトとガーベラを見遣った。

 

「くっ……さっさと片付けて、お前のメガストーンとキーストーンを奪ってやる!! カエンジシ、“とっしん”だ!!」

「ジュカイン!?」

 

 カエンジシが雄叫びを上げながらジュカインの胴に“とっしん”を喰らわせた。余りの威力に吹き飛ぶジュカインであったが、上手く体勢を整えて木の幹に足を着ける。

 樹を上る為のトゲが生えている故にできる芸当。それを目の当たりにしたガーベラや黒尽くめの男は驚くように目を見開くが、男は早くこの邪魔者を片付けたいという意思から、声を荒げて指示を出す。

 

「“かえんほうしゃ”でぶったおせ!!」

 

 紅蓮の炎が、樹の幹に佇むジュカイン目がけて爬行する。

 だが、

 

「躱せ!!」

 

 樹の幹がめり込むほどの脚力で地面に飛んだジュカインに“かえんほうしゃ”は当たることなく、ただ湿った樹を少しばかり焦がすだけに終わった。

 対して再び地面に足を着けたジュカインは、“でんこうせっか”でカエンジシに肉迫する。

 先程のモルフォン同様、ほぼ零距離での対面。

 ヒットアンドアウェイを得意とするジュカインにとって、まさに攻勢に転じた際の光景に、ライトは目を見開いた。

 

(あの技はまだ未完成だけど……この距離なら―――!!)

 

 

 

「―――“きあいだま”ぁああ!!!」

 

 

 

 コルニのルカリオの“はどうだん”よろしく、腰の脇で腕を構えるジュカインの掌の間に、眩い光が瞬き始める。

 山吹色の煌めく光弾はどんどん膨れ上がっていき、直径一メートルほどに膨れ上がった瞬間、『バチッ』とエネルギーが漏れ出す音が周囲に奔った。

 

 刹那、ジュカインは歯を食い縛りながら腕を前へ突き出し、“きあいだま”をカエンジシに解き放つ。

 ほぼ零距離で放たれた一撃に躱す余裕もなかったカエンジシは、真正面から“きあいだま”を喰らう。

 

「ゴ、アアアアアアアッ!!!?」

 

 咆哮。

 カエンジシを呑み込む光弾は、その大きな体を呑み込んだまま後方に凄まじい速度で走っていく。

 “きあいだま”が通った軌道では、樹の幹も抉れ、地面に降り積もっていた雪も融けており、元々雪の下にあった地面を覗くことすら可能となった。

 それほどのパワーを持つ光弾を受けたカエンジシは、背後にあった樹の幹にぶつかると同時に爆ぜたエネルギーと共に、地面に崩れ落ちる。

 

「フシュ――――ッ!!!」

 

 相手を一撃で伸すほどの威力を有す技を放ったジュカインは、全身に込めていた筋肉を弛緩させるため、一度大きく息を吐いた。

 かなり堪えているのか、一発放っただけであるにも拘わらず息を切らしているという状況だ。

 アッシュのルカリオの“きあいだま”をラーニングという形で習得しようとしているジュカインだが、まだまだ未完成といったところである。

 だが、威力は充分そうだ。

 

「は……はぁ!?」

 

 カエンジシを倒されてしまった男は、唖然とした表情を浮かべていたが、ライト達の背後からぞろぞろとやって来たスタッフや野次馬を目の当たりにし、『ヤバい』と呟き逃げようとする。

 そんなところへやって来たのは、

 

「ライト君! これは……どういう状況?」

 

 スタッフと共にやって来たビオラが、何故か選手と共に居るライトに気付いて声を上げる。

 ジムリーダーが来れば、後の結末は決まったようなもの。

 ライトは、逃げていく男を指差してこう言い放った。

 

「覗きです」

「覗き!? 成程、女性の敵だわ! アギルダー、“みずしゅりけん”よ!!」

 

 ネットボールと呼ばれる網目のついたボールを投げ飛ばすビオラ。中からはマフラーを靡かせて、尚且つヘルメットを被るような―――所謂ライダーのような姿のポケモンが飛び出し、凄まじい速さで林の中を駆け抜けていき男の前に降り立った。

 ジュカインを上回るスピードで回り込んだアギルダーは、そのちょこんとした手に粘性の水で固めた手裏剣を携え、男に投げ飛ばす。

 

 凄まじい速度で投げ飛ばされた手裏剣は、男の体ではなく、着ている服に次々と刺さっていく。

 その速度によって思わず倒れ込んだ男を地面に縫い付けるような手裏剣。

 寸分の狂いも無く、男には傷を付けずして服だけを縫い付ける技は、流石はジムリーダーの手持ちといったところだろうか。

 動けなくなった男の下へは、大会のスタッフと思しき者達が走っていき、男の腕を抱える様にして拘束し、どこかへ連れて行った。

 

 一件落着、と思いきや―――。

 

「あぁ~~!?」

 

 大声を上げるガーベラに、ホッと一息吐いていたライトとビオラが何事かと目を見開く。

 ガーベラの方に目を遣れば、未だ着終えていない飛行服の上半身部分を持ちながら、若干涙目になっているガーベラの姿が見える。

 

「驚いた所為で、飛行服に空気が入っちゃったです~~~! 上半身だけでも二十分は掛かるのにぃ~~~!」

「あっちゃ~……」

 

 ライトが意味が分からないという顔を浮かべている一方で、ビオラは納得したようにウンウンと頷いている。

 その間にも、飛行服に空気が入ったと嘆くガーベラは地団太を踏んでいるが、その度にポヨンポヨンと胸が揺れていた。

 健全な男子には厳しい光景だ。

 なんとか見まいとするライトは、とりあえずビオラに声を掛けてみる。

 

「えっと……なんで飛行服に空気が入ると駄目なんですか?」

「空気抵抗の問題ね。少しでも空気が入ると、上手く飛べないらしいの。素人目には解らないけど、やっぱり彼女もプロってことね」

「はぁ……」

「うわぁ~ん! 着直しですぅ~~!」

 

 引き攣った顔を浮かべるライトの横では、未だに嘆き喚くガーベラが居るが、

 

「……やむなしです」

「ここで脱がないで下さい!!」

 

 一から飛行服を着直そうと下半身部分を脱ごうとする。その際、チラリと見えてしまった下着に赤面したライトは、大声を上げながら止めようとするのであった。

 

 因みに柄は、チルット柄だった。

 

 

 

 ***

 

 

 

『今回のポケモンスカイリレー・フウジョ大会を制したのは、カロスが誇るトップオブスカイトレーナー、ガーベラだぁ―――ッ!!! やはり彼女は強かったぁ!!』

 

 実況の声がスピーカーを通して響き渡れば、観客が上げる歓声が巻き起こった。

 スタート地点兼ゴール地点である場所には巨大なモニターが設置されており、そこには満面の笑みで手を振るガーベラの姿が映っている。

 試合直前のアクシデントがあれど、試合に関しては他を寄せ付けない【ひこう】ポケモンへの的確な指示で、後半は独走状態であった。

 

 『ありがとうございますです!』と、応援してくれた者達への感謝の言葉を述べるガーベラの言葉に耳を傾けながら、観戦していたライト達はパチパチと惜しみない拍手を送る。

 

「レース、凄かったね!」

「ええ、思わずポッポ肌が立ってしまいましたもの!」

 

 キャピキャピとレースの感想を言い合う女子二人を横目に、顎に手を当てて思案を巡らせているような様子を見せる。

 

(レースのピジョットの動き……疾風(はや)かったなぁ)

 

 完全に思案中となるライトには、周りの光景が目に映らない。

 代わりに、脳内にガーベラのピジョットの動きがリフレインされ、その度こう思った。

 

 リザードンをどう戦わせてあげるべきか、と。

 

 そのままの姿であれば【ほのお】・【ひこう】であるリザードンであるが、メガシンカすれば【ひこう】が【ドラゴン】へと変わる。

 飛べることには変わらないが、相手からの攻撃に対する耐性が変わることから、ライトにとっては大きな問題へと発展していた。

 

 メガシンカを前提とし、あくまで【ほのお】・【ドラゴン】タイプとしての戦い方をさせてあげるべきか。

 それとも、メガシンカする前と後では違った戦い方をさせて変化をつけるべきか。

 

 メガシンカによるタイプの変化についての悩み。

 

 相手によってはメガシンカをしない時の方が良い場合もあるだろう。だが、メガシンカ前と後で戦い方を変えるのであれば、それなりの特訓の時間を有す筈。

 あと一か月ほどの旅の期間に、果たしてそれだけの業が自分にできるだろうか。

 

 それがライトの今の悩みとなっていた。

 

(はぁ……どうしよっかな……)

 

 ガシガシと頭を掻くライト。

 この時、ライトは気付いていなかった。自分に停滞期というものが近付いているということに。

 


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