ポケの細道   作:柴猫侍

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第八十一話 電話の時は相手を確認しよう

 プルルルル。

 

「はい、もしもし?」

『ライト? 私。元気?』

「カノン? うん、元気だけど……どうしたの?」

 

 スカイリレーの大会を観戦した後、ポケモンセンターに戻ったライト。これから夕食で、そろそろヒンバスの為のポロックを作ろうという最中に掛かってきた電話は、幼馴染からであった。

 

『いや、なんか最近電話してくれないなぁ~って……』

「あぁ、うん……なんかゴメン」

『ううん! そんな気にしなくてもいいから!』

 

 少し口籠るライト。その理由が、一瞬レッドの声で『電話にでんわ』という駄洒落が脳内で再生されたからだということは、黙っておくことにした。

 言われてみれば、最近電話をすることは少なくなっていたと、ライトは考える。

 大きくなったポケモン達に対してのケアや、ナナミへ送るレポート作成。更に、知識を付ける為にコルニから貸してもらった本を読み、最近ではヒンバスの為のポロック作りというのも、一日の過程の中に入っていた為、必須ではなかった電話のことなどすっかり忘れていたことは、否定できるものではなかった。

 

 とりあえず何を話してみようかと思案を巡らせる。

 一先ずは、

 

「そう言えば、皆進化して大きくなったよ。ストライクはハッサムになったし、ヒトカゲはもうリザードンだし、他の手持ちも……」

『へえ~! 今度見せてね! ライトの手持ちの子達!』

「もちろん! あっ、アルトマーレの皆はどんな感じ? ギャラドスとか、ハクリューとか……あとはラティオスとラティアスとか」

『ギャラドスはいつも通りよ。ハクリューもすっかり元気になったし……う~ん……あっ、そうだ! 前からラティアスは私に変身してたけど、最近はラティオスがライトに変身して町に出かけるようになった!』

「え、ホント?」

 

 新事実発覚に、ライトは驚愕の色を顔に浮かべた。

 顔は見えずとも、声色からライトが驚いたことを察したカノンは、クスクスと笑いながら話を続ける。

 

『大丈夫。ラティアスが心配で、少し離れた場所で眺めるみたいに付いていってるだけだから。ラティオスはそんな悪戯なんかしないって』

「いや……それって遠目から見る構図が完全に僕がカノンをストーカーしてるみたいじゃん……」

『あっ』

 

 言われてみればと声を上げるカノン。

 数時間前に起こった事がアレな為、覗きやストーカーについては少々過敏になっているライトは、妹を心配する兄の構図が、カノンを自分がストーカーしている光景にしか想像することができなかったのだ。

 だからといって兄妹仲良く歩かせても、傍から見れば『あの二人くっ付いたんだ』と思われて後々ややこしい事態になる。

 そう。これは由々しき事態なのだ。

 

「……ちょっとラティオスを説得して」

『う、うん。その……私も困るしね』

 

 本当は別に勘違いされてもさほど困らないとは言えない。

 波風立てないような返答をして、通話している二人は乾いた笑いを浮かべる。引っ越したばかりの頃は、共にお風呂に入る程度には仲が良かった二人だが、羞恥心やら思春期やらで、面と向かって話すとなると恥ずかしくて言葉に詰まってしまう。

 暫しの沈黙。

 

「えっと……また明日でいい? 今は、手持ちの皆のご飯の準備とかがあるから」

『え、あ、うん! そう言えば時差があったのよね、ゴメン!』

「ううん。なんか久し振りに声聞けてホッとした。ありがと、カノン」

『あ……うん。ふふっ、じゃあまた明日』

「うん。じゃあね」

 

 最後は穏やかな空気のまま通話を終了させる二人。幼馴染との久し振りの会話を果たしたライトは、得も言えない緊張感を深呼吸で和らげ、今まさに作ろうとしていたポロック作りを再開しようとする。

 青色の木の実を袋から取り出そうとするライト。

 その瞬間、

 

「ケテッ!」

「え? あっ、ロトム! ちょっと!?」

 

 突然図鑑から飛び出したロトムが、木の実袋の中から適当な色の木の実を四つ取り出したかと思いきや、そのままポロックキットのミキサーの中へ放り投げる。

 それだけであれば、まだ取り返しはつく。

 だが、続けざまにロトムはポロックキットの中に入り込み、ライトが木の実を取りだす間もなく、ミキサーの歯の部分を回転させ始めた。

 

「ああああっ! 変な味になるから! ストップ! ロトム、めッ!」

 

 ライトの努力は虚しく、ポロックが出来上がる三分間ずっとロトムを止めようとしても、ミキサーが止まることはなかった。

 きっちり三分経てば『チーン』と音がなり、下の取り出し口から見慣れないポロックが四つ程出て来る。

 どんな味ができたのかと不安な顔を見せるライトと、その凄惨な現場を真後ろで眺めていた実際に食べる当人(ヒンバス)

 

「……なんか、カラフルなラムネみたいなのができたよぉ」

 

 出てきたのは、白い四角形の中に赤や青、黄など木の実の皮や身などがカラフルに入り混じったようなポロックだ。

 一瞬、ラムネにも見えなくは無かったが、問題なのは味である。

 

「でも、香りはいいし……あむ」

 

 ポケモンに食べさせる前に、一先ずトレーナーである自分が食べてみよう。

 そう考えたライトは、出てきたカラフルな色合いのポロックを口の中に放り投げ、咀嚼音を立てながらポロックを実食する。

 本来はポケモンの菓子ではあるが、素材は木の実のみ。人間が食べてもさほど問題はない筈。

 そう自分に言い聞かせながら、最初は苦々しい顔でポロックを食べていたライト。しかし、次第に頬は緩んでいく。

 

「ん! なんか、高級なフルーツを食べてるみたい……」

「ケテケテッ!」

「美味しいし、今日はこれでいいっか。はい、ヒンバス!」

「ミ……」

「……どうしたの?」

 

 偶然完成したポロックに、意気揚々といった感じでヒンバスにポロックを差し出したライトであったが、どこか浮かない顔を浮かべているヒンバスに、何か気に喰わないことでもあったのかと勘繰るライト。

 

「このポロックが美味しくなさそう? 大丈夫だよ。美味しくなかったら、『ぺっ』ってしてもいいよ?」

「……ミ」

 

 不承不承といった様子で、差し出されたポロックを食べるヒンバス。

 最初こそ浮かない様子であったヒンバスも、ポロックを食べた後は顔を綻ばせて笑みを浮かべてみせる。

 だが、その笑みもどこかぎこちない。

 

(やっぱりいつものが良かったのかな?)

 

 やはり人間とポケモンの味覚は少し違うのか。

 人が食べても美味しいと感じたポロックも、ヒンバスにとっては最近食べ始めた青色のポロックの方が舌に合っていたのだと考えたライトは、次の食事は再び青色のポロックを食べさせてあげようと決意する。

 

 だが、この時ヒンバスの表情が浮かないものであった理由が、“焦り”であるということをライトはまだ知らなかった。

 

 

 

 ***

 

 

 

 17番道路―――通称『マンムーロード』。何故そう呼ばれているのかというのは、現在ライト達の目の前に佇んでいる巨体が全てを説明していた。

 

「わぁ~……」

『マンムー。2ほんキバポケモン。一万年前から氷の下から発見されたこともあるほど、大昔からいたポケモン』

「ムゥ~~!!」

 

 ロトムによるマンムーの説明が終わったところで、ライトの前に居るマンムーが咆哮を上げた。

 ふさふさの体毛を吹雪に靡かせながら二本牙を振り上げる姿は、雄々しく立派なものである。

 

「この17番道路は積雪と吹雪がひどいから、マンムーさんに乗らないと進めないんだ。君達はサイホーンに乗ったことは?」

 

 そう問いかけてくるのは、この17番道路を管理しているポケモンレンジャーだ。彼が言った通り、17番道路は積雪と吹雪がひどい為、マンムーに乗らなければ進むことができない。

 以前、輝きの洞窟に向かう際に乗ったサイホーンと似たような理由だが、こちらは足場に加えて吹雪と来ている。

 【ひこう】タイプのポケモンであっても、空を飛んで移動するのは至難の業だ。

 その為、必然的に陸路を通ることとなり、適役であるマンムーが駆り出されている。

 

「あります!」

「じゃあ、大丈夫だね。要領はサイホーンと同じだよ。道はマンムーさんが覚えてくれているから、基本的に何もしなくてもヒャッコクシティまで向かってくれるさ。着いた後は、向こう側に居るポケモンレンジャーに預けてね」

「はい! よろしくね、マンムーさん!」

「ムゥ~!」

 

 マンムーの頬辺りを優しく撫でるライト。それに対しマンムーは、『了解した』と言わんばかりの力強い瞳を浮かべながら頷いてみせる。

 一通りの説明を終えた後、軽い身のこなしでマンムーの背中まで移動するライトは、一旦背中をポンポンと叩いた。

 以前サイホーンに乗った際に、局部に大ダメージを負うという事態に見舞われたからだ。

 特に危ないものがないことを確認したライトは、時同じくマンムーの背中に乗ったコルニに合図を出して、白い雪が荒ぶる豪雪地帯を突き進もうとする。

 

 流石に今迄の恰好では寒すぎると判断したため、二人はコートを纏っているなど、防寒対策はばっちりだ。

 因みに、昨日行動を少し共にしたジーナは、『もう少しフウジョタウンでやりたいことがあるので残りますわ』という事で、今は別々である。

 ノシノシと進んでいくマンムー。

 ゆっくりと進む巨体には、時間が経つごとに白い雪が降り積もり、茶色い毛並が隠れてしまっていく。

 

 払った方がいいのかな?

 

 そのようなことを考えて、ふと並走するコルニの方に目を向けると、

 

「危なっ!?」

「あっ、避けられた!」

「なんでいきなり雪玉投げつけてくるの!?」

 

 手袋を嵌めた手でしっかりと握り固めた雪玉を投げつけてくるコルニ。間一髪のところで頭を傾けて、飛んで来る雪玉を回避したライトは、冷や汗を垂らしながらコルニに抗議する。

 するとコルニは、『てへへ』と頭を掻きながらこう言い放った。

 

「だって……雪降ってるとテンションあがらない?」

「それと雪玉を投げつけてくるのに関連性はあるの?」

「雪と言ったら雪合戦でしょ!」

「そう言いながら雪を固めないで!!」

 

 おにぎりを握るかの如く、マンムーの背中に降り積もった雪を固めるコルニに『ああ、もう!』と声を上げるライトは、自分もとばかりに雪をかき集めて固め始める。

 完全に臨戦態勢に入った二人。

 だが、マンムー達は気にも留めずにノシノシと歩みを進める。

 

「ていッ!」

「ふっ!」

「避けられた!?」

「お返し!」

「ぶわぁ!?」

 

 再び投げつけられる雪玉を回避したライトは、持ち前の肩の力で雪玉を投げつける。ビュッと風を切る音を奏でながら宙を奔る雪玉は、コルニの顔面に直撃した。

 適度に固めたものである為、それほど痛くはない筈。だが、投げた人物がマサラ出身であれば話は別だ。

 イシツブテ合戦で鍛えた肩、侮る事なかれ。

 

 思わぬ剛速球を受けたコルニは、暫し雪まみれの顔でプルプルと震えていたものの、カッと目を見開いて拳を掲げる。

 

「ふ、ふふ……そっちがその気なら」

「いや、始めたのはコルニだから」

「アタシも全力でやらせてもらうよ!」

「いや、あの……だから始めたのはそっちだって。コルニさん?」

「命! 爆発っ!」

「コルニさん? お話聞いて。コルニさん?」

 

 完全にやる気になったコルニは、目を煌々と輝かせながら俊敏な動きで雪をかき集める。

 それに対し、深い溜め息を吐くライトは、マンムーに一言『ちょっとゴメンね』と開けてから雪をかき集め、

 

「……やるなら、全力でやろう。童心にかえって!」

「うりゃああ!!」

 

 この後、めちゃくちゃ雪合戦をしたのだった。

 

 

 

 ***

 

 

 

「ヘブシッ! ……ありがとう、マンムーさん」

「ムゥ~」

 

 くしゃみをしながらマンムーたちに礼を言うライト。マンムーに乗って17番道路を踏破したライト達は、顔や胸辺りが雪まみれで寒いのやら、雪合戦で動いて熱いのやらで何が何だか分からない状態となっていた。

 世話になったマンムーを、ゲート付近で待機していたポケモンレンジャーに返した後は、有名な日時計があるというヒャッコクシティまでもう少しだ。

 

「年甲斐も無くはしゃいだ結果がこれ……寒い」

「うう……ワカシャモ、出てきて」

 

 雪合戦を仕掛けたコルニはブルブルと震えながらワカシャモを繰り出し、何時ぞやと同じようにワカシャモを湯たんぽ代わりに抱きしめた。

 コルニにとっては、ポカポカふさふさと気持ちいい抱き枕だ。

 しかし、ワカシャモにとっては不愉快極まりない状況。コルニの顔に付いている雪が溶ければ、水滴となって自分に滴り落ちてくる。

 それが我慢ならないのか、ワカシャモもブルブルと震え―――。

 

「シャ……シャモォオオオ!!」

「「えっ」」

「バッシャアアアアア!!!」

 

 突如、メキメキと音を立てて肥大化していくワカシャモの体。どんどん大きくなっていく体はやがてコルニよりも大きくなり、とても抱きかかえられる大きさではなくなった。

 神々しい光を纏って大きくなったワカシャモ。最後に光が爆ぜれば、紅蓮の羽毛を靡かせる鳥人が、逆にコルニをお姫様だっこのように抱きかかえる。

 

「……進化した」

『バシャーモ。もうかポケモン。30階建てのビルをジャンプで飛び越す跳躍力。炎のパンチが相手を焼き尽くす』

「なんでこのタイミング?」

 

 ライトが茫然と立ち尽くしている間、ロトムによって説明されるバシャーモの生態。

 別にポケモンバトルをしている訳でも、特訓している訳でもない状況で進化を果たしたバシャーモ。

 苦笑を浮かべるライトに対しコルニは、『あったか~い』とバシャーモに身を寄せながらこう言い放つ。

 

「……アタシが寒がってたからじゃない?」

「だとしたら理由がしょうもないと思うけど」

「気にしない気にしない。一休み一休み」

 

 如何せん、進化の理由がしょうもない気もするが、主人の為に進化したと言い換えれば多少マシな進化の理由となるだろう。

 そんなことを思っていたライトは、ブルッと身を震わせながらゲートを進んでいく。

 先程から、背後から吹いてくる冷たい風に、そろそろ手足の先が限界を迎えそうになっている。

 早めにポケモンセンターかどこかへ暖かい場所に入って、雪まみれになった服をどうにかしたい。

 切実にそう望んでいるライトの歩幅はどんどん広くなっていく。

 

「とりあえず、ポケモンセンターかどこかに行こう……凍えそうだよ……」

「ライトもリザードン出して抱き着けばいいのに」

「バシャーモみたいに毛がふさふさじゃないから。どっちかって言ったらスベスベだから」

 

 羽毛が生えているバシャーモと違い、リザードンに毛はほとんど生えていない。

 しかし、その気になれば温まることはできる。尻尾の炎をたき火のように扱い、真正面から発せられる熱をその身に浴びせながら、という感じで。

 となると、バシャーモは電気毛布か―――などという考えは捨ておいて、足早にヒャッコクシティに入ろうとゲートを潜ったのだった。

 

 

 

 ***

 

 

 

「そこの貴方。ポケモンの思い出を聞いてみたりはしませんか?」

「へぇ?」

 

 間の抜けた声。

 ポケモンセンターにやって来て、いざ入ろうとしたその瞬間に話しかけられたライトは、首を傾げる。

 話しかけてきたのは振り袖を着た女性。にこやかに笑う女性であるが、余りに突拍子の無い質問に、ライトは引きつった表情を浮かべることしかできない。

 

「あの……思い出を聞いてみるって、具体的にどういうことで?」

「あたくし、ポケモンの思い出を読み取れる、その名も思い出娘」

「はぁ」

「言い換えればエスパー的な感じなんだけれどね」

(自分で言うものなんだ……)

 

 自分を自分でエスパーと呼ぶなど、相当の実力がなければ言わないだろう。カントーで言えば、ヤマブキジムのジムリーダーであるナツメがエスパー少女(昔)言われていたが。それと同じ類なのだろう。

 思わぬ提案に『う~ん』と呻くライトだが、バシャーモの横に立っているコルニがあっけらかんとした顔でこう呟く。

 

「折角だし、やってみれば?」

「他人事だよね。まあ、いいですけど……」

「そうですか! じゃあ、早速……」

 

 ジッとライトのボールを見つめる思い出娘。わざわざボールから出すよう言わない事から、ボールの中に入ったままでも思い出を読み取ることができるのだろう。

 気分としては、マジックショーーを見物していたら、突然誘われて参加させられたような気分のライト。

 暫し、沈黙が辺りを支配するが―――。

 

「君のハッサム……君と出会って少しした後で参加したバトルの大会の優勝賞品だったお菓子が、とても美味しくていい思い出になっているらしいわ」

 

 思い出娘の言葉にハッとした顔を浮かべ、『どうなの?』と尋ねてくるコルニに無言で頷いてみせるライト。

 確かに、ハッサムがまだストライクだった頃に、ヨシノシティで行われたジュニアバトル大会に参加して優勝し、商品のお菓子を分け合って食べたことがある。

 すると、続けざまに思い出娘は語る。

 

「君のリザードンは、海が綺麗な所の桟橋で飲んだソーダが、印象に残ってるらしいわ」

(あ……あの時の)

「ヒンバスは……初めてのジム戦で勝てたこと。これに尽きてるわね」

(うんうん。あれかぁ)

「ブラッキーは、生まれて初めて見たあなたの顔が印象に残ってるわね」

(あぁ~……)

 

 次々と思い出娘の口から語られる、自分とポケモン達の思い出に、どこか感慨深い物を感じながら頷くライト。

 

「ジュカインは……うん……そうねぇ。最近挑戦したジムで勝って、その後進化したのが思い出」

(マーシュさんとのバトルかぁ)

「最後にロトムは、初めて出会った時の君の顔がとっても面白かったらしいわ、うふふっ!」

(心当たりがバリバリある)

 

 気絶するほど驚いたのだ。それはもう滑稽な程の驚いた顔を浮かべたことだろう。

 だが、こうして改めて思い出を振り返ってみると、楽しい思い出が多くある。

 特にジムへの挑戦などは、全員で一つの壁を越えたという事をジムバッジを以て証明されているのだ。

 言うなれば、ジム突破は旅の節目。

 

 それも残り二つと来たところだ。

 

 長かったような、短かったような。だが、これでもまだまだ夢の途中。気合いを入れていかなければいけないのは、寧ろこれからであるのだ。

 

「……よし! ありがとうございました!」

「いえいえ。趣味でやっているだけですので」

 

 思い出娘に礼を言うライト。

 だが、突然バッグの中から『プルルル』と着信音が鳴り響く。ポケギアに誰かが電話を掛けているのだろうと思ったライトは、画面に映し出されている名前も確認せずに通話ボタンを押す。

 

 

 

 

 

「もしもし?」

『おっっっねえちゃんよォ―――――ッ!!!!』

「耳がぁ―――ッ!!!?」

 

 

 

▼ブルーの ハイパーボイス!

 

 

 

▼こうかは ばつぐんだ!

 

 

 

 姉の大声で鼓膜をやられた少年の悲痛な叫び声は、ヒャッコクシティに響き渡るのであった。

 


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