オラが適当に書いた短編集だぎゃ   作:ダス・ライヒ

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復讐異世界旅行記の書き直し前の第一話です。

ちょっと気に入らないですが、初めて書いたので、ここに残しておきます


復讐異世界旅行記 旧第一話

 とある異世界の海面の上空にて、大型の軍用機のコクピット内にて、背丈が190cm程ある大男が、シートの上で寝ていた。

 コクピットのキャノピーからは、大型軍用機と同型が多数飛んでいるのが見え、戦闘爆撃機や護衛の戦闘機も含め、まるで空を埋め尽くすように飛んでいる鳥の群れのようだ。

 男が寝ているシートの後方の貨物室には、降下用の戦闘服とパラシュート、銃身が短いカービン銃を持った多数の兵士達が左右にある席に腰を下ろし、降下地点の到着を待っている。

 この輸送機は、C-5と呼ばれるかなりの重量を持つ戦車二両を搭載できるアメリカの大型軍用機であり、六〇〇名以上の兵員を輸送可能な軍用機だ。

 その巨大な輸送機に随伴する戦闘爆撃機は、国連軍の複数の用途で運用が可能な軍用ジェット航空機であるトーネードIDSで、護衛の戦闘機は、アメリカ空軍の主力戦闘機であるF-16戦闘機だ。

 どちらも採用から二十年ほどであるが、性能は高く、長らく主力として運用されている。

 

 そして、この攻撃部隊の所属は、ワルキューレと呼ばれる国家ではない巨大な軍事結社である。ワルキューレに差し向けられた大軍勢が向かうのは、敵軍の手中にある大陸だ。

 そんな高性能機に護衛されながら、男が寝ているC-5のコクピット内にて、パイロット帽を被った男の上官が操縦士から離れ、男の肩を揺すって起こした。

 

「おい、起きろ! 同じ人種を殺すのが嫌で、ストライキか? 俺は同じ人種を何百人も殺してるんだ! 起きろシュン!!」

 

 身体を強く揺すられて目を覚ましたシュンと呼ばれる男は、頭をかきながら目を覚ました。

 

「あっ、どうもっす」

 

「どうもじゃない、瀬戸(せと)大尉! 俺達はこれから戦争に行くんだ! 寝るのは戦闘が終わってからにしろ!!」

 

「あぁ…すみません、中佐殿」

 

 シートから立ち上がって上官に謝罪した後、シュンは直立不動状態を取り、敬礼した。

 この瀬戸シュンと言う名で、黄色人種で黒髪黒目の男こそが、数年後に異世界を渡るとは、本人と上官であるファーシス中佐を含め、誰もが思わないことだろう。

 シュンの肩を数回たたいたファーシスは、近くの壁に掛けられた受話器を手に取り、各中隊に集まるよう告げる。

 

「各中隊長、至急コクピット前に集合! 早く集まらんと、戦場についちまうぞ! 急げ!!」

 

 徴集の言葉を終えれば、受話器を壁に戻し、コクピット前の近くにある椅子に腰掛けた。

 二分もしないうちに、ファーシス中佐の指揮下の中隊長達が集合し、彼の前に集まった。

 部下達を集めた理由とは、敵が何であり、作戦目標の確認のためである。

 

「よし、最終確認だ。俺達ワルキューレの敵は、日ノ本の帝国と言う大日本帝国って言う国が、トンデモ技術を持たせたような帝国だ。奴等は海軍と宇宙軍が強いが、陸軍と空軍は凡庸だ。俺達が向かう場所には、敵の海軍も宇宙軍も居ない。安心しろ。だが、油断するな。敵は死に物狂いで来るぞ。気をつけろ」

 

 シュンたちがこれから戦う敵「日ノ本の帝国」について簡単に説明した後、懐から地図を取り出し、それを壁に貼り付けるようシュンに無言で命じて、彼がそれを実行すれば、作戦目標に移る。

 

「次は作戦目標だ。俺達の任務は、先に降下した連中の救援だ。降下した後、先見者達と共に"日本帝国"の基地を荒らし回り、そこで上陸部隊と合流する。対空砲や地対空ミサイル(SMA)に、戦術機とか言う紛らわしい名前のロボットは、先に降下した連中と、海軍の更地になるほどの艦砲射撃でスクラップになってるはずだ。油断すんな、銃剣突撃や特攻やら玉砕を仕掛けてくるかもしれんぞ。これも気をつけろ」

 

 作戦目標の確認を終えれば、シュンの肩をたたき、「もう良い」と目で伝える。

 

「よし、脳味噌に叩き込んだな? 各自、降下地点到着までコーヒーを飲むなり、小便と装備確認を済ませておけ。解散!」

 

 最終確認を終えて、ファーシスが解散命令を出せば、部下達がそれに従って貨物室へと戻った。

 

「シュン、装備の確認をしておけ。到着が近いぞ」

 

「了解ですよ、中佐殿」

 

 視線を向けたファーシスに答えてから、シュンは腰に差してある日本刀を手に取り、鞘から少しばかり刀身を出し、刃こぼれが無いか確認した。

 それから装備の確認を終えれば、寝ていたシートに立て掛けてあるFN SCAR-L大口径突撃銃を手に取り、異常が無いかどうかの確認を行った。

 何も異常が無いと分かれば、自スリリングと呼ばれる銃をつるす紐を肩にかけ、左脇のホルスターに収まっているHK MK23ソーコムピストル自動拳銃を取り出し、異常が無いかどうか確認する。

 武器と装備の確認を終えれば、パラシュートが詰まったバックパックを背負いに言った直後、機内が大きく揺れた。

 

「敵機だ! 敵戦闘機部隊の強襲だ!!」

 

「なんだ、みんな潰したんじゃなかったのか!?」

 

 操縦士からの報告に、シュンはキャノピーの外を覗いた。

 外の光景は、日ノ本の帝国の戦闘機が味方の護衛戦闘機と交戦していた。

 敵の戦闘機は、ワルキューレが所持している実在する戦闘機ではなく、架空の戦闘機だ。それも前進翼型だ。

 

「おい、対空砲は何やってんだ!? 撃ち落せ!!」

 

「この機体に対空砲なんて詰まれてませんよ!」

 

 外から見える空戦に対し、シュンは対空砲で迎撃するよう指示したが、操縦士は尤もな答えを返す。

 C-5は大型機であるが、対空砲や機銃など一切搭載しておらず、護衛機も無しの機体は、敵機に取っては格好の獲物なのだ。

 護衛戦闘機が必死で追い払おうとしているが、主翼に日の丸を付けた敵機の性能が高いのか、何機かハエの様に落ちていく。

 更に複数の敵機が護衛機の防御戦を抜け、密集形態をとる輸送機に向けてその牙を突きたてた。

 

『メーデー! メーデー!! こちらファング8! 一番エンジンに火が! それにミサイルを一発食らった! もう持たない! ファングリーダー、至急編隊から離脱したい! たの…』

 

「こっちに来るんじゃねぇか?」

 

「それだと俺達死んじまうよ!」

 

 近くの友軍機が、通信を終えないうちに撃墜され、墜落していく様子を見て、シュンが言えば、副操縦士はそれに答える形で声を掛ける。

 無線機から悲痛な叫びが聞こえる中、こちらにも矛先が向けられた。

 

「9時方向より敵機襲来!! ミサイルにロックオンされた模様!!」

 

「9時方向!? 側面じゃないか! フレア! フレア!!」

 

 レーダー手からの知らせに、操縦士は副操縦士にフレアを撒くように告げた。

 ミサイルにロックオンされたことを告げる警報が機内に鳴り響き、振動が伝わってくる。

 やや不安になってきたシュンは、操縦士に無事に着けるかどうか問い詰める。

 

「無事に到着できんのか!?」

 

「SAMに当たらなければね! それより席に座ってシートベルト着けてください!!」

 

「お、おう…!」

 

 問い掛けたシュンに対し、操縦士は彼に席に着くように怒鳴りつけた。

 勢いに押されたシュンは、言うとおりにして、近くの空いている席に座り、シートベルトを着ける。

 これから何が起こるのかは、彼にも想像はできている。強い振動だ。頭を打って死なぬように、シュンは近くに掛けてあるヘルメットを被り、しっかりを顎紐を付けて身構える。

 数秒後、シュンたちが乗る輸送機が被弾し、機内に強い振動が流れた。

 

「うわぁ! 被弾した!!」

 

「何処だ!? 何処やられたんだ!?」

 

「左翼だ! 左翼を機関砲かなんかで撃たれた! 三番エンジンから火が出てる!!」

 

 シュンが被弾箇所を副操縦士に問えば、副操縦士はそれに答える。

 

「おい! そんなことよりも三番エンジンを切れ! 爆発するかもしれないぞ!!」

 

了解(イエッサー)!」

 

 操縦士に言われたとおり、副操縦士は三番エンジンを切って、被害を最小限にとどめようとする。だが、幾ら被害を抑えようとも、敵機は空かさず攻撃を浴びせ、撃墜しようとしてくる。やがてはシュンらが乗る輸送機のコクピットへ向け、敵機が航空機関砲を浴びせた。

 

「うわぁ!」

 

「がぁ!!」

 

「おわぁ! 風貌が!?」

 

 風防に大きな穴が複数空き、操縦士や副操縦士の命を奪った。戦闘機の航空機関砲を受けて、酷く損壊しないだけマシだが、機体を動かす者が居なくなってしまった。風防が無くなって強い風が機内に入り込んでくる中、レーダー手が待機している先任操縦士を呼ぼうと風の音に負けないくらいの声量で叫ぶ。

 

「先任操縦士!!」

 

 呼び出しはした物の、機体は大きく揺れており、来るまでには時間は掛かるだろう。レーダー手は近くに座っているシュンに視線を向け、彼に操縦桿を握るよう告げる。

 

「大尉、操縦桿を握ってください!」

 

「あっ? 俺、航空機の免許なんて持ってねぇぞ!」

 

「簡単です! 操縦桿を下に強く引っ張るだけ! それまでに先任操縦士が来ます!!」

 

「クソ、どうなっても知らねぇぞ!!」

 

 強く勧められたシュンは、操縦士の死体を退けてから操縦桿を握り、先任操縦桿が来るまでの時間稼ぎを行った。

 

「上がれぇぇぇ!!」

 

 気合いを込め、操縦桿を強く下に引っ張るシュンだが、機体は言うことを聞かず、ただ海面へと向けて落ちていく。

 そんな時に彼の上官であるファーシス中佐が、先任操縦者よりも先にコクピットへと駆け付けた。

 

「おい、なに素人のお前が操縦桿を握ってんだ!?」

 

「そこのハゲのレーダー手に頼まれて!」

 

「素人が操縦桿を握るな! 代われ!!」

 

 上官の問い掛けに対して、率直で答えたシュンだが、パイロットライセンスを持つファーシスは彼から操縦桿を奪い、手荒に扱わず、機体を上昇させて見せた。

 

「凄い! 俺よりも先に!」

 

「舐めるなよ! これよりデカイのを操縦した経験がある!! それと操縦桿は女のように扱え!」

 

 水平飛行に戻したことで、後から駆け付けた先任操縦者は、ファーシスの操縦技術に舌を巻いた。

 彼がシュンに向けて操縦桿を手荒に扱わぬよう注意した後、後どれだけ飛べるかを操縦者に大声で問う。

 

「でっ! 風貌無しでどれくらい飛べる!?」

 

「もう駄目だ! 弾を食らい過ぎた! このデカ物が飛んでいられるのが奇跡なくらいだ!! 海に不時着させる! 何かに掴まれ!!」

 

 先任操縦者が、自機が持たないと言って海に不時着させると答えれば、ファーシスは怒鳴り付ける。

 

「なにぃ! 不時着だと!? 着陸地点まで持たないのか!?」

 

「エンジンが持たねぇよ! それより口を閉じろ! 舌噛むぞ!!」

 

 着陸地点までは持たないと告げれば、先任操縦者はファーシスを無理矢理近くの席へ突き飛ばし、不時着体勢を取る。

 これにはシュンも、慌てて席へ戻り、シートベルトをしっかりと着けた。

 

「クソッ、海じゃなくて浜辺だ! 死なないように祈れ!!」

 

「何!? 冗談じゃねぇぞこらぁ!!」

 

 しかし、大分大陸へと近付いていたので、海面に着水出来ず、砂浜への不時着となった。

 それを知らされたシュンは、海面とは尋常にならない被害になると予想し、悲痛な叫びを上げた。

 物の数秒で機体は大きな音を立てながら浅い海面に着水して、一回バウンドしてからその衝撃で上陸戦の真っ直中の砂浜に着き、対戦車妨害物のチェコのハリネズミを弾き飛ばし、数十メートルほど砂を撒き散らした後、上陸戦のど真ん中で止まった。

 

「おい、みんな生きて…!」

 

 不時着が成功したので、先任操縦者は二人の方へ視線を向けて無事を確認しようとした途端、流れ弾を頭に受け、呆気なく即死した。

 

「戦場のど真ん中に降りちまったようだ!」

 

 シュンとファーシスは、急いでシートベルトを外し、武器を取ってコクピットから出る。

 レーダー手も、直ぐにコクピットから離れようとしたが、間に合わず、機銃の餌食となる。

 貨物室へと辿り着いた二人は、直ぐにその場で動ける兵員を集め、外に出ようとする。

 

「動ける奴は俺達について来い! 衛生兵は何人か残って負傷した者達の治療だ!! さぁ、戦場へ行くぞ!!」

 

『フーアー・サー!』

 

 ファーシスの掛け声で、負傷した者以外の兵員は、彼と共に激戦区な外へ出た。

 シュンも共に激戦区に飛び出し、周囲の状況を見定める。

 

「ひでぇ状況だ…」

 

 彼が絶句したとおり、上陸部隊は酷い状況であった。あちらこちらで戦車が敵の対戦車攻撃に晒されて炎上し、歩兵は雨のような機銃による弾幕でバタバタと薙ぎ倒されている。浜辺や海は血で真赤に染まり、死で溢れかえっていた。

 更に酷いことに、士官や下士官がやられたのか、残った兵達は右往左往状態で混乱しており、海上にいる艦隊は誤射が恐くて艦砲射撃を出来ないで居る。

 この状況を見れば一目瞭然だが、自分等は着陸地点から大分離れた場所へ"降下"してしまったので、シュンは部下達を残し、チェコのハリネズミで震えている若い女性兵士の元へ機銃を避けながら駆け付け、彼女に問い掛ける。

 

「おい! どうなってる!? お前の上官は何処だ!?」

 

「ひっ、ヒィィ…ママ…」

 

 問い掛けるが、怯えきってこちらの問いが聞こえないようだ。

 そんな恐慌状態の兵士に対しての有効方法は、頬を引っぱたいて正気に戻すことだ。

 それを知っているシュンは、早速実行し、数回ほど頬を叩いて彼女を何とか正気に戻した。

 

「あ、あぁ…済みません」

 

「状況はどうなってる!? お前の上官は何やってる!?」

 

 銃声や爆音に遮られないよう、強く耳元で叫べば、彼女は大声で答えた。

 

「分隊長も小隊長も中隊長も死にました!! 師団長は生きてる見たいですけど、自分では何がどうなってるか分かりません!!」

 

「そうか。こんな所にいたら、いずれか死ぬぞ!! クレーターとかに向かえ!!」

 

 答えを聞いたシュンは、彼女にクレーターへ向かうように告げれば、墜落した巨人機に隠れているファーシスの元へ戻った。

 

「で、どうなってる!?」

 

「みんな混乱してます! 士官と下士官がやられまくって大混乱だ!!」

 

「クソッ、酷い状況だな。戦術機を吹っ飛ばしたくらいじゃ、作戦は成功しないぞ。仕方がねぇ、シュン、援護してやるから機銃を潰してこい!」

 

「はぁ!? マジっすか!?」

 

 事の状況を説明すれば、ファーシスはシュンに無茶な命令を出した。

 

「マジだ、お前以上に適任者が居ない。安心しろ、部下は突っ込ませない。お前だけが突っ込んで、あそこの機関銃トーチカを制圧しろ。そしたら俺達が、救援に向かう」

 

「保証は?」

 

「第三世代戦車を一人で潰したお前なら出来る。さぁ、つべこべ言わずにあそこの塹壕まで行け!! 援護射撃の準備だ!」

 

 勝手に手順を話した後、拒否権も無しにファーシスは、援護射撃をするよう部下達に告げた。

 シュンは嫌々と自分の銃であるSCAR(スカー)の安全装置を外した後、援護射撃が始まるのを待った。

 

「援護射撃開始!!」

 

 ファーシスのその掛け声と共に、分隊支援火器ミニミ軽機関銃のモデルの一つであるM249パラトレーパーと、M21狙撃銃、ブルパップ式突撃銃のタボールTAR-21による援護射撃が始まる。

 これに一瞬、機銃の掃射が止んだが、直ぐに代わりの機銃手が現れ、再び掃射を始める。何名かの上陸部隊の兵士が取り憑こうとしていたが、再び掃射を受け、物言わぬ死体へと変わる。シュンは全力疾走で塹壕まで走り、近くで迫撃砲弾が着弾しようが、銃弾が掠めようが構わず走り、数秒ほどで塹壕に到達する。

 

「敵だ!!」

 

「いきなりかよ!!」

 

 到着はした物の、運悪くそこに敵兵がおり、直ぐに89式小銃に似た自動小銃でシュンを撃ち殺そうとする。

 だが、シュンは人より数倍ほど運動神経が優れており、反射神経も度重なる戦闘で研ぎ澄まされ、反応は敵兵よりも早かった。

 7.62㎜×51㎜NATO弾を二発ほど胴体に撃ち込まれ、敵兵は鮮血を吹き出しながら死ぬ。

 

「はぁ…シャアッ!」

 

 少し息を整えた後、掛け声を上げ、既甘受トーチカの元へ向かった。

 見張りを撃ち殺して出入り口に張り付けば、ドアを数回ほどノックする。

 

『誰だ?』

 

 中にいる兵士の一人が反応し、ドアを開けた。

 開けた瞬間、敵に反撃させまいと、ドアノブを握って、利き手に拳銃を手にしている敵兵士を好かさず撃ち殺す。

 

「いつの間に!?」

 

「殺せ…」

 

 流石に気付かれてしまい、銃座に付いていた敵兵二名が反撃しようとするが、シュンに二人揃ってあの世へ送られる。

 一つめの機関銃トーチカを制圧した後、ファーシス達が残骸から出て来るのが見えた。

 

「うっし! 次行くか!」

 

 上陸部隊の内陸部へ進出させるため、シュンは次なる機関銃トーチカの制圧に向かう。

 狭い塹壕を進む中、機関銃陣地に辿り着いた。無論、そこには一個分隊ほどの敵兵等が張り付いており、上陸部隊へ向けて機関銃や重機関銃の弾を浴びせている。上陸をスムーズに進ませるなら、制圧しなければならない。

 直ぐにシュンは取り掛かり、ポーチから破片手榴弾を一つ取り出し、それを陣地に向けて投げ込んだ。

 

「手榴弾だ!!」

 

 そのまま爆発するかと思ったが、投げ込んだ手榴弾は何処かに捨てられ、無意味となった。

 

「投げ返すか普通!!」

 

 そう敵兵等に突っ込みつつ、シュンは単独で機銃陣地に突撃した。

 

「敵兵が居るぞ!!」

 

「撃ち殺せ!!」

 

 一人を撃ち殺せば、直ぐに他の敵兵達が反撃に出ようと、ライフルや短機関銃を撃ってくる。

 シュンは直ぐに遮蔽物へ身を隠し、片手でライフルを連射して牽制を仕掛ける。

 コンクリートに弾が命中しなくなったのを確認すれば、ライフルを吊して腰の刀を抜き、一気に機銃陣地へ乗り込む。

 

「オラァ!」

 

 一人を斬り殺した後、もう一人の頭を飛ばし、敵に反撃の隙を与えまいと次々と斬り捨てていく。

 陣地内を敵兵等の鮮血で汚していく中、敵の一人の将校が軍刀を抜き、シュンに斬り掛かってきた。

 

「この野郎!」

 

「うぉ!?」

 

 直ぐに刃で受け止めるシュン。将校は黄色人種にしては確かに大柄であるが、シュンの方がずっと体格が大きく、力も強い。右足を敵将校の腹へ打ち込み、怯んだところを両断した。

 胴体が斜めに切れ、血飛沫を上げながら倒れる。

 同時にシュンは返り血を浴びたが、これで戦闘が終わったわけではないので、次なる目標へと向かう。

 次の目標へ到着すれば、直ぐに出入り口に向けて手榴弾を投げ込み、爆発したところで突入し、生き残っている敵兵等を皆殺しにする。

 制圧し終えれば、直ぐにでも次の目標へ向かったが、敵の増援に阻まれた。

 

「居たぞ! 撃ち殺せ!!」

 

 敵の隊長からの指示で、敵兵等が一斉にシュンへ向けて銃弾を撃ち込んでくる。

 シュンは即刻反撃するが、弾倉の中身の弾丸が尽きてしまう。

 

「あっ、誰かカバーしてくれねぇのか!」

 

 そう文句を垂れつつ、手慣れた手付きで再装填を終えた後、近付いてくる敵歩兵部隊に対しての反撃を行った。

 数名ほど撃ち殺したところで、機関銃トーリカの弾幕が止んで前進してきた上陸部隊の兵士等が到着し、増援の敵歩兵部隊へ向けて攻撃する。

 シュンが加勢すれば、敵歩兵は退却を始めた。

 

「ありがとな!」

 

「ど、どうもです…!」

 

 味方の女性兵士等に礼を言った後、シュンは次なる目標に向け、塹壕内を走った。

 そのまま走っていれば、抵抗拠点の出入り口に辿り着く。

 

「俺一人だけか?」

 

 周囲を見渡し、ファーシスも部下達も居ない事が分かれば、最後のトーチカ機関銃の元へ向かおうとした。

 だが、最後は上陸部隊の誰かが潰してくれたようで、チェコのハリネズミや、戦車の残骸、砲撃で出来たクレーターに隠れていた上陸部隊の将兵等が一斉に押し寄せてくる。

 地雷原などがあるようだが、生き残っている工兵がC4爆弾を投げ込んで爆破処分して、強行突破している。

 更には第二波か第三波か知らないが、大量の上陸用舟艇が浜辺に辿り着き、タラップが降りて多数の将兵が上陸する。

 

「味方は多そうだ」

 

 そう傾れ込んでくる上陸部隊の将兵等を見て、抵抗拠点へ入ろうとした。

 

「退いて!」

 

 だが、入る前に上陸してきた兵士等がシュンを押し退けて、抵抗拠点へ乗り込む。

 後へ続いて入ろうとしたが、凄まじい銃声が鳴り響き、即座に遮蔽物へ身を隠し、髭剃り用の鏡で様子を確かめる。

 

「侵入防止用か…余計なもん取り付けやがって」

 

 壁の銃眼に設置された機関銃を見て、悪態をつきつつ、死んでいる味方の兵士から煙幕手榴弾を拝借した後、安全装置を外し、銃眼へ向けて投げ込んだ。

 

「煙幕か!?」

 

 敵の機関銃手は混乱して、機銃を乱射し始めた。見当違いなところを撃っているので、床を這いずりながら、銃眼へと接近する。這いずる音は銃声で掻き消されているので、相手に気付かれずに銃眼の側まで接近できた。

 敵はシュンが直ぐ側まで近付いたことに気付かず、彼が手にしたナイフを喉に突き刺され、自分の血で溺れながらあの世へと旅だった。死体からナイフを抜いた後、一気に外まで出ようと内陸部へ上がる。

 内部へと入っていくが、機関銃トーチカがやられた時点で陥落したも同然なのか、持ちきれない装備は破壊して退却した後だった。

 すんなりと内陸部へ続くドアに辿り着き、そのドアのドアノブを片手で握り、利き手に銃を持ちつつ開けた。

 

「敵は退却か…」

 

 トラックやトレーラーに乗って逃げていく日ノ本の帝国軍を見て、シュンはそこに腰を下ろし、水筒を取り出して水を飲んだ。

 

「おい、シュン! お前の方が早いな!」

 

「中佐、一体何処で道草食ってたんで?」

 

 遅れてやって来たファーシス達に、シュンは嫌な表情を浮かべながら問い掛ける。そんな部下に嫌がられているファーシスも、からかうような感じで答える。

 

「あぁ、ちょっとばかし大砲を片付けるのに時間が掛かっただけだ。それと、パワードスーツを一台スクラップにした。どうだ、凄いだろ?」

 

「パワードスーツね。なんか楽な感じがしたのはそれですかい?」

 

「まぁ、多分…そうだ…」

 

 自分に無理な命令を敷いた上官に対し、報いを受けたと思って微笑んだ後、近くの壁にもたれ掛かり、仮眠を取ろうとする。

 

「済みません中佐殿、十分くらい寝るので、後で起こしてくれませんか?」

 

「あぁ、好きにしろ!」

 

 上官に起こすように頼んだ後、シュンは自分だけ眠りの世界へと向かった。

 

 

 

「ん? 夢か…」

 

 一連の出来事は、どうやらシュンの懐かしい夢であった。

 自室のベッドの上で目覚めた彼は、頭を掻きつつ、床に両脚を着け、太い両膝に似合う太い両腕を置いた。

 

「懐かしい夢だな…」

 

 どうやら過去の出来事らしく、今のシュンはワルキューレを除隊しており、現在はその退職金で小さな孤児院を営んでいる。

 彼がワルキューレを除隊した原因は、シュンか元同僚以外しか知り得ないことである。

 

「シュン兄ちゃん、起きてる?」

 

「おぅ、どうした? お前等」

 

 ドアを開けて、入ってきた幼い少年と少女に対し、シュンは優しく答える。

 シュンの風貌は、幼い子供達からすれば怖がられる物だが、慣れているようで、親のように接している。

 二人は不安な表情を浮かべながら、シュンに要望を告げた。

 

「眠れないの、お絵本読んで」

 

「あぁ、仕方ねぇな…兄ちゃんが読んでやるよ」

 

 要望を聞いたシュンは、棚に置いてある時計を見た後、「仕方がない」と思って幼い二人の要望に応え、自室を後にした。

 シュンはずっと孤児院の子供達と共に、平凡ないつもの日常を送れると信じていた。

 死が身近にあった戦場とは違い、ここは銃声も鳴らず、犯罪も起きない程の平和その物で静かな辺境の村。

 孤児院の子供達は親が死ぬか、捨てられて心が病んでいたが、シュンの必死な努力で、太陽よりも輝かしい笑顔を見せ、彼を父親と認識している。

 何不自由ない暮らし。

 金が足りなくなれば、除隊時に貰った"得物"を持ち、近くの街でいつも開催している裏闘技場に出れば良い。

 生命の危機に晒されるが、孤児院の子供らのことを考えれば、決して負けることはない。

 もちろん子供らには内緒だ、用事だと言って誤魔化している。

 これで平穏な日常は保てる。シュンはそう信じていたが、その願いは不運にも打ち砕かれることとなる。そんな事を知らず、いつもの日常を過ごした。


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