オラが適当に書いた短編集だぎゃ   作:ダス・ライヒ
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取り敢えず、書いてみた。

リリなのの時空管理局に、質量兵器を専門に扱う軍と呼ばれる部隊を設定しました。
数あるリリなの二次SSでも、軍と呼ばれる質量兵器を扱うオレ設定の組織は余り見掛けぬ存在…
弱冠パクリな気がしてまして、色々と設定とか考えてますが…


 時空管理局が禁止する質量兵器を主力とした防衛組織。陸海空宇宙の戦力を合わせ八十万人。主にリンカーンコアを持たない非魔導士によって構成されている。正式な名称は無く、下級は管理局と同じ自衛隊式。
 自分等の知らない世界より侵攻して来る侵略軍に対抗すると言う名目で時空管理局創立三十年目に組織された。
 当初は十万余りの人員で、管理局創設前の装備を使っていたが、老朽化により装備を最新式の物へ更新し、創設二十周年で現在の八十万まで増大した。
 だが、当初の対抗勢力である外部の侵略軍が一向に現れず、予算の無駄遣いと揶揄され、管理局上層部から縮小案が出されるほどであったが、惑星同盟軍と言う強大な侵略軍が管理局が管理する数十もの世界に同時侵攻を仕掛けた為、初の実戦を経験する。
 辛くも敵軍のずさんな戦法と練度の低さのおかげで撃退に成功し、最小の損害で済んだが、備蓄してあった弾薬を全て使い切ってしまう。

被ってたらすいません…


無駄に人を殺す戦争物

 地球統合連邦軍と名乗る異世界より侵攻してきた巨大な連合軍により、科学と魔法、騎士、略奪者(ヴァイキング)達の軍事同盟であるワルキューレは数個以上もの植民地世界を失った。

 天と地の差もある物量を誇る連邦軍をワルキューレはなんとか侵攻を停止させたが、騎士や魔術師、ヴァイキングたちの領土は侵攻の矢面に立たされていたため、連邦軍の支配下に置かれる。

 幾度か奪還のために反撃を行うが、膠着状態となるだけで何の進展も無かった。そればかりか、連邦軍の再侵攻を食い止めるだけで手一杯だ。

 新たな領土を獲得し、大規模な反攻作戦を行うべく、アガサ騎士団やメイソン騎士団を初めとした騎士と魔術師、ヴァイキング、下級兵士たちは、時空管理局と呼ばれるワルキューレよりも二十分の一は劣る勢力の世界へと無断で侵攻した。

 

 その時空管理局も、連邦軍の敵方である反連邦惑星同盟軍による侵攻を受け、全力を持って退散させて疲弊しており、領土拡大を図る略奪者達の侵略を前に成す術が無かった。

 

 

 

 時空管理局、第186管理外世界。

 最初にワルキューレの騎士や魔術師、ヴァイキングを初めとした略奪者たちの侵攻を受けたのは、管理外の世界であった。

 その世界は管理局の統治も受けず、平和に暮らしていたが、略奪者達により、破壊された。

 

「い、一体なんだこれは…!?」

 

 平和に暮らしていた木こりの男は、自分の村が侵略軍の騎士たち焼かれているのを見て驚愕する。

 田畑は踏み荒らされ、家々は燃やされ、逆らった村人たちの屍があちらこちらに散らばっている。

 これほど破壊したにも関わらず、対岸の方から無数の騎兵や歩兵が大挙して押し寄せて来る。この村を占領しているのは、先遣隊であろう。

 

「戦争とは、無縁と思っていたのに…」

 

 戦争は別世界の事だと思って、自分等には関係ないと思っていたが、現実には自分の村が焼かれ、多数の侵略軍が押し寄せてきている。

 目の前の現実に絶望した男は、ただ両膝を地面につけ、打ちひしがれるしか無かった。

 その村はまだマシな方である。

 ヴァイキングたちの侵略を受けた村は、蛮行に晒されていた。

 強姦、略奪、虐殺など、沿岸の村々や都市に船で上陸したヴァイキングの大男たちは、鬼畜の所業を日常のように繰り返した。

 

「久しぶりの侵略と略奪だっ! 野郎共! 景気よくやれぃ!!」

 

『おぉーっ!!』

 

 久方ぶりの侵略と略奪に、ヴァイキングの男達は狂気乱舞し、蛮行を楽しんだ。

 下級兵士たちもヴァイキングと同様に蛮行を行った。普段は捨て駒や弾除けとして消耗される哀れな兵士たちだ。

 それが、占領した敵地なら何をしても良いと言われれば、どうなるか?

 答えは簡単だ。全くお目に掛かれない女や子供たちを犯し、金品財宝、食料を奪い、男達を殺す。

 僅かながらの自由を得た下級兵士たちは、ワルキューレの支配下では出来なかったことを心置きなく行った。

 

 無論、この同盟軍と同じく異世界よりやって来たワルキューレの侵略者たちに対し、時空管理局は直ぐに対抗した。

 だが、知りえない技術を持つ世界より攻めて来る敵に対する要である「軍」は、同盟軍との侵攻を退けた代償として、壊滅状態に近い損害を受けており、出動すらままならない状況であった。

 侵攻を少しでも止めようと、時空管理局は苦し紛れに戦争には不向きな武装魔導士と次元航行部隊を送り込んだ。

 そんな戦争には向かない治安維持部隊が、圧倒的な物量で迫る侵略軍を止めることは出来ず、女や子供は犯され、男達は皆殺しにされるか、捕虜として労働させられた。

 ちなみに、その「軍」と言う防衛組織は、特別に時空管理局が禁止する火薬を使う兵器、いわゆる質量兵器の使用が認められている。

 それほどに時空管理局、自分等が知りえない技術や科学力、魔術で迫る敵が怖かったのだ。

 

 

 

 第88管理世界。

 ワルキューレの侵略軍は八個の管理世界、十個の管理外世界の占領に成功したが、快進撃はこの第88管理世界の侵攻で潰えた。

 治安維持部隊と言えど、エリートは幾人か居る。優秀な戦略化による機動防御や必死の抵抗によって軍の再編は完了し、反撃の準備は整った。

 元々、陸海空軍に宇宙軍から占領の為の予備戦力を貰えなかった騎士・魔術師・ヴァイキングと、随伴する下級兵士の連合軍は、一度の攻撃に失敗して反撃を受ければ、総崩れのように管理局の勢力内にある世界から撤退を始めた。

 管理外世界でも負け始めた。管理外と言っても、地球と言う管理外世界のように軍隊を持って居る世界もある。文明が遅れていると油断しきってそこに攻め込んだ部隊は、手痛い仕打ちを受けて退却した。

 もちろん、反撃を試みた。だが、一度崩れ去った士気は元に戻すのは至難の業だ。特にワルキューレに忠誠心も無い下級兵士たちは、我先へと逃げ出すか、降伏し始める。騎士と魔術師たちは面目を保つための暫しの戦闘を行った後に投降し始め、ヴァイキングは蛮勇に等しく戦い続けて死んだ。

 軍の最新式の武器と高度な魔術による迎撃で総崩れとなり、真面に戦闘が行えない状況となる。

 ある世界での戦場では、もはや虐殺としか言えない状況となっていた。

 

「下級兵士部隊が虐殺されております!」

 

「なに? 何たるざまだ! 直ぐに前進せよ! 奴らごと踏み潰しても構わん!」

 

 無策に弾除けとして突っ込ませた下級兵士たちが、時空管理局の軍の反撃で虐殺されていた。

 それを後方から見ていた騎士たちは、情けないと言って味方ごと踏み潰す勢いで騎兵突撃を掛ける。

 だが、敵は槍や弓を持った農兵では無い。現代的な訓練を受けた兵士たちだ。ライフルを持ち、遮蔽物に持を隠して数の多さに任せて突っ込んで来た下級兵士たちを一方的に撃ち殺している。しかも強力なのをだ。

 その虐殺される兵士たちの中に、ただ騎士が混ざっただけだ。一瞬にして、そこは死体置き場に早変わりになり、地面が真っ赤に染まり上がった。

 騎士たちが身に付けている甲冑は、大口径のライフル弾まで防ぐ宇宙戦艦に使われる特殊な合金でできた物だが、管理局の軍の兵士たちが使うライフルの弾丸は防げなかった様子だ。

 

「退け! 退けぇ!!」

 

 味方の下級兵士たちを踏み殺してでも突破しようとした騎兵隊であったが、単に殺されるばかりで無駄な損害を増やすだけだ。

 退却しようとしたが、軍の兵士たちは容赦なく銃弾を撃ち込み、さらに死体の数を増やす。

 

「撃ち方止め! 撃ち方止め!!」

 

 指揮官が動いている敵兵が一人も居ないことを確認すれば、配下の兵士達に射撃中止命令を出し、生存者の探索を始めた。

 

 

 

「この一戦、我らに勝機あり! 美しき戦乙女たちよ、我に続け!!」

 

 一方、別の管理外世界での戦場では、増援としてやって来た女騎士団と砲兵連隊しか重装備の持たない歩兵師団の女兵士たちが、砲撃や空爆が終わった後、騎士団長である豪勢な甲冑を身に纏った女騎士の突撃命令を受け、狙撃兵や機関銃、禿げ気泡のの援護を受けつつ、先陣を切って敵陣に突っ込んだ。

 

「突撃! 突撃! 損害に構わず前進!!」

 

 同時に将校の笛が鳴り、続々と塹壕から飛び出して徒歩で敵陣を目指す。女騎士の指揮下に置かれた租の歩兵師団は、装甲車や軽装甲の戦闘車両すら持っていないのだ。

 敵陣までの道筋は、無数の下級兵士や騎士、魔術師、ヴァイキングの死体で溢れており、地が真っ赤に染まる程であった。間にある小川も真っ赤に染まっていて、飲み水として使えない。

 

「斥候が射程距離に入ったぞ! ありったけ撃て!」

 

 そんな侵略軍の兵士達で死屍累々の平地を作り上げた管理外世界の軍隊は、攻め側に十字砲火が出来るように機関銃陣地を配置しており、大挙して押し寄せて来る敵歩兵部隊に向けて機関銃で放つ。

 その機関銃は水冷式の物があれば、空冷式、人体を引く裂くほどの火力がある重機関銃、恐ろしい事に機関砲もある。しかも巧みに隠しており、前を走っていた歩兵は周囲に転がる死体と同じように倒れるか、ズタズタに引き裂かれる。

 彼女らを守る遮蔽物は、砲撃の影響でできたクレーターか周囲に転がっている死体ぐらいであり、そこに辿り着くまでに夥しい数の歩兵が死んでいく。

 クレーターに辿り着いても、飛んでくる銃弾に振るえるだけだ。死体で作り上げた遮蔽物も、重機関銃や敵の迫撃砲による砲撃で吹き飛ばされる。

 

「ひっ…!?」

 

「止まるな! 前進しろ!!」

 

 クレーター内で振るえる一人の歩兵を斬り殺した女騎士団長は、直ぐに前進を再開するように脅し、自らも十字砲火の中を進んだ。

 ヴィッカース重機関銃を持った機関銃中隊が、積み上げた死体で作った即席の機関銃陣地を築くも、強力な重機関銃か機関砲、迫撃砲、榴弾砲による砲撃で吹き飛ばされる。

 それでも損害に構わず前進を続けた女騎士団と歩兵師団であったが、最後の死体が倒れている場所から先を越えることなく、先に突撃して全滅した騎兵やヴァイキング、下級兵士らと同じく全滅する。

 

「止まる…」

 

「これ以上の前身は不可能だ! 後退せよ! 後退!!」

 

 突撃を先導していた騎士団長が、狙撃で首を撃たれて即死すれば、残った者達は撤退を始めた。

 そんな逃げる女兵士たちの背中を、機関銃陣地は容赦なく機銃掃射を浴びせ、女騎士団や歩兵師団に更なる出血を与える。

 負傷した味方の兵士を抱き抱え、共に逃げようとする女兵士でさえ、容赦なく銃弾を浴びせる。地を這って味方の陣地まで逃げようとする物でさえ、機関銃陣地に居る兵士たちは容赦なく撃ち殺した。

 

「撃ち方止め! 撃ち方止め!!」

 

 敵の指揮官が射撃中止命令を出すころには、動いているのはほんの僅かであった。

 

「なぁ、まだ生きてる奴は居るかな? みんな女だぜ、数日前に皆殺しにしたクソ共とは違う」

 

「馬鹿、塹壕から出るなって言われてるだろ? 出られるのは工兵だけだが、奴らも監視されている。女の回収は不可能だ。もうじき、敵の砲撃か空爆が始まる」

 

 塹壕内に居る兵士たちは、ここから出てまだ息のある女性兵士らを犯そうと考えたが、下士官に止められ、塹壕内に戻る。

 数秒後、ワルキューレ空軍の爆撃機大隊による空爆が行われた。

 

 

 

 それから数週間後、ワルキューレの侵略軍は度重なる敗退と損害により、管理局の領内へと撤退を余儀なくされた。

 これでワルキューレと管理局の戦争は終わるだろうと思っていたが、時空管理局とその管理外世界の上層部は報復を望んでおり、戦力が整い次第、直ぐにワルキューレの領内に報復のための侵攻を開始した。実際は、報復の名を借りた侵略戦争であるが。

 初めは四世界を手中に収め、そこでワルキューレと停戦協定を結ぶ予定であったが、管理外世界の軍事同盟は欲が眩み、更なる侵攻を行った。

 時空管理局はその軍事同盟の暴走は止められず、ただ指をくわえて自分等が占領した四つの世界を守るだけだ。

 そして軍事同盟は、二級戦部隊しか居ない二つの世界を占領下に収め、先に侵攻したワルキューレの侵略軍と同じく略奪と蛮行を行い、更に勢力を伸ばそうと、三つ目の世界の支配に乗り出した。

 暴走する軍事同盟の侵略軍に対し、ワルキューレは浄土作戦を遂行し、敵の補給路に大打撃を与えた。

 

 数日後、調子に乗り過ぎて奥まで引き込まれた軍事同盟は、先のワルキューレの侵略軍と同じように瓦解した。

 浄土作戦を行ったワルキューレは、寝床や食料も、人すら残さなかった。更には敵の補給部隊を奇襲し、弾薬と物資不足で疲弊させて戦意を奪う。

 連邦に向けていた機動兵器を保有する部隊を除くある程度の戦力を振り向けた反攻作戦も行われ、一瞬にして軍事同盟の侵略軍は壊滅するか、軍団ごとに投降する。

 この瓦解で、占領した世界を奪い返され、更に戦力は再生不可能な程の損害を受け、軍事同盟は壊滅した。

 軍事同盟が壊滅したことで、管理局の戦意も下がり、早々に二つの世界の防衛を放棄して撤退する。

 元々、管理局の傘下の軍は侵略に乗る気では無かった。二つの世界さえ停戦協定までに占領していれば良かったので、早々に防衛態勢に入った。

 して、何としても停戦協定までに占領された二つの世界を取り返したいワルキューレは、敗残兵で構成された部隊と、大量の捕虜の連邦兵までを増員して奪還を行おうとした。

 

 

 

「降りろ! 侵略者共!!」

 

 前線近くの駅では、列車の貨車より大勢の連邦兵の捕虜を降ろしていた。

 彼らの手には銃は無く、周囲には監視のための短機関銃を持った兵士らが前線へ向かうように誘導する。

 すぐ横では、重傷な負傷兵を詰め込むため、医療班が待機している。

 列車から強制的に降ろされた連邦兵の捕虜達は何も分からず、続々と前線へと向かっていく。

 

「止まれ! 今より貴様らに武器を支給する! 直ちに受領し、命令あるまで待機せよ!」

 

 先頭の集団が辿り着けば、武器を受け取るように告げられた。

 その武器とは、一般的なライフルでは無く、なんと簡素な槍であった。渡された槍を見た連邦兵の捕虜は、なぜライフルではないかと問い質す。

 

「おい、なんで槍なんだ!? 俺は少尉だぞ! ライフルは何所だ!?」

 

「黙れ能無し! 早く配置に着け!」

 

 問い質した兵士は少尉であったらしいが、投降した連邦軍兵士は、兵も下士官、士官を含めて膨大であったために、優秀な者や連邦軍に反抗的な者だけを建設部隊や炭鉱夫、工場勤務、もしくは再教育して下級兵士らの指揮官や、鹵獲した装備なので編成した反連邦十字軍の一員にした。

 しかし、志願者や優秀な人材が少な過ぎ、残った大勢を食わせて行くのが面倒なので、余分な人材を下級兵士に強制的に入れるか、今のように無駄に殺すために碌な武器も持たせずに前線へ送っている。

 碌な武器も持たされない彼らは、命令があるまで銃を持った兵士たちに監視されながら待った。

 

「この中で、一番強い者は居るか!?」

 

 同じく弾除けの為に連邦兵の捕虜達と共に突撃させられる下級兵士たちの元に、銃を持った数名の兵士と将校がやって来た。

 彼らは下級兵士たちの中で、最も強い者を捕虜突撃部隊の指揮官にしようと言うのだ。

 薄汚い男が、直ぐに大剣を磨いているアジア系の大男に指差す。

 

「あ、あいつだ! 俺たちの隊の中で一番あの大剣をぶん回す男が強い! 管理局の魔導士を十人も殺してる! この前の反撃じゃ、連中の兵隊を何十人も斬り殺した!!」

 

 指差した方向に居る大剣を磨いている大男の元へ、将校は近付いて顔を見た。

 

「ほぅ、こいつは面白い。元特殊部隊の瀬戸シュン曹長では無いか。いや、今はへまをやらかして上等兵まで降格したか」

 

 知り合いであったらしく、この下級兵士に降格された経緯を笑いながら語る。

 それから自分の部下たちに、瀬戸シュンのようにミスをしないように告げる。

 

「貴様たち、良く見ておけ! この男は特殊作戦中に、勝手な判断をして重要な特殊作戦を失敗に追い込んだ! お前たちも特殊部隊に入れば、交戦規定をきちんと守れ! 良いな?」

 

『了解であります!』

 

「わざわざそんなことを言いに来たのか」

 

「ふん、何とでも言え。それよりもお前に昇格祝いがある、喜べ、千人編成の大隊長だ! とっ、言っても大隊本部も無い侵略者の捕虜千人だがな」

 

 部下たちの返答を見た後、シュンは自分を咎めるためにわざわざ来たのかと毒づく。

 それから指揮官は、シュンに捕虜千人の隊長になったと知らせれば、他の大隊長を決めるために回った。

 大隊長、約三百五十か六百人人以上の兵員を持つクラスだ。主に四個中隊で編成され、指揮系統も複雑化するので、それらを管理し、指令を円滑にするための通信手段として大隊本部を構える。

 だが、シュンが率いる捕虜大隊にはそれらの指揮系統を束ねる通信設備が整った大隊本部は無く、ただ敵に弾薬を消耗させるための捨て駒だ。

 不本意で大隊長を命ぜられたシュンは、逆らっても意味が無いので、命令に従って大隊長をすることに決めた。

 数時間後、捕虜全員に槍が行き渡り、彼らの長である形だけの大隊長と連隊長が決まった所で、強固な防衛網を敷いた管理局の軍が占領した要塞への攻撃を開始した。

 

「総員突撃用意! これより、管理局の防衛戦を突破する! 各部隊、援護砲撃ならび空爆の終了後、損害に構わず前進せよ!」

 

「ふ、ふざけるな! こっちはライフルが殆ど無いんだぞ! こんなふざけた作戦に付き合ってられるか!!」

 

 一人が逃げ出したが、彼らの後から突撃するWWⅡレベルのイギリス機甲部隊で編成された機甲師団に属する狙撃兵に頭を撃ち抜かれた。

 

『捕虜諸君、貴様たちに逃げ場など無い。貴様たちは上層部から見捨てられているのだ。彼らは捕虜交換交渉に応じなかった。つまり捨て駒なのだ。自由が欲しくば、我がワルキューレの市民権を得るために、敵陣へ突撃し、第821機甲師団と939機甲師団の露払いをするのだ。無事に敵陣を突破し、露払いをした者には褒美として市民権を与えよう』

 

 続けて逃げ出した三名を撃ち殺しつつ、指揮官は勝利の暁には市民権を保証すると演説した。

 だが、誰も聞く耳は持っていない。シュンは動揺しきってパニックになる連邦の捕虜達を眺め、他の下級兵士等と共に突撃命令を待った。

 砲撃と空爆が終われば、一斉に突撃ラッパや笛が鳴らされ、下級兵士たちは戸惑う連邦の捕虜達を押しながら突撃を開始する。

 

「突撃しろ! 突撃せぬ場合は射殺する! 行け!!」

 

 笛やラッパが鳴っても前進しない連邦の捕虜達に、指揮官は一人を拳銃で撃ち殺し、無理やり前進させる。

 下級兵士らもまた一人を銃剣で突き刺して殺し、突撃を促す。これに逃げれば死ぬと分かったのか、捕虜達は槍を持って敵要塞に突撃した。

 攻撃目標の要塞は元々ワルキューレの物で、長年、戦争が起きていないために放棄されていたが、管理局の侵攻を受けて占領された際、要塞として機能を再開し、作ったワルキューレ相手に猛威を振るっている。

 要塞には多数の榴弾砲と機関銃、対空砲が備えられており、古い榴弾砲や高射砲を撤去してロケット弾や対空ミサイルが代わりに搭載されている。要塞は陸にあり、更に防衛に適した場所に建てられているので、攻め落とすのは容易では無い。

 榴弾でも空爆でも崩すことが出来ないその鉄壁の要塞を、二百万の捕虜と下級兵士三個師団、機甲二個師団、銃砲兵三個連隊で攻め落とせと言うのだ。無茶にも程がある。

 

「くそっ、どうにでもなれぇ!!」

 

「あそこに行けば、自由になれるんだ! 行って自由を取り戻してやる!!」

 

 自暴自棄となった者や行けば自由になれると信じた捕虜の連邦兵たちは、群衆となって要塞へと突撃した。

 地雷原は砲撃と空爆である程度は片付けたが、まだいくつか残っており、先に突っ込んだ集団は地雷を踏んで吹き飛ぶ。吹き飛んで行く友軍の兵士を見た一人が逃げ出そうとしたが、続々と後ろから押し寄せて来る人並みに踏み潰されてしまう。

 数百名近くが地雷原で死亡するか、手足を失って負傷したが、誰も解放せず、ただ自由への道である要塞へと突撃するばかりだ。

 対戦車地雷は人の重さでは爆発しなかったが、余りにも大勢の人間が通る所為で一つが戦車が通ったと勘違いして爆発する。

 

「助けて…助け…」

 

 助けを求める者が居たが、敵から鹵獲した装備や死んだ騎士より剥ぎ取った甲冑などを身に纏った重武装な下級兵士たちに踏み潰される。

 僅かながらの犠牲で地雷原を突破した要塞突撃混成部隊であったが、次は機銃掃射と防衛砲撃であった。

 管理局の軍は、現代の軍隊のように贅沢な装備を持っており、機銃掃射は無数の弾を発射するチェーンガン、あるいはミニガンを使っている。機関銃も大口径レベルだ。

 そんな重装備の要塞に戦闘車両の支援も無しに生身で突っ込むので、射程距離に入った瞬間に何百人もの人間が数秒足らずで死んだ。まるで虐殺だ。

 ある者は身体を裂かれ、ある者は痛みを感じることなく死ぬ。数秒で地獄絵図が描かれた。

 

「こんな作戦をおったてた奴の気が知れないぜ!」

 

 遮蔽物に隠れたシュンは、恐ろしい数の人間が死んでいく様を見て、このずさんな作戦を強行した陸軍上層部に腹を立てる。

 事実、前に出るべき機甲戦力は対戦車ミサイルや地雷に恐怖を覚えたのか、捕虜軍集団の後ろからついて来ている。これでは突撃させた捕虜が無駄死にである。無駄に多い捕虜を敵に殺させて楽をしようとするワルキューレの狙いだが。

 数分足らずで夥しい数の捕虜が死んでいく中、シュンは血で赤く染まり上がった大地を這いずりながら敵陣へと進んだ。

 その間にも将校や下士官も含む捕虜の連邦兵達は無茶な突撃を行い、死んでいく。中には精神崩壊を起こして幼児退行したり、恐怖の余り絶叫し続ける者もいた。

 敵軍の将兵らは何人たりとも絶対に通すなと命令されているのか、機関銃やミニガンの引き金を止めることなく引き続け、照準器に映る敵兵に銃弾を浴びせる。手を挙げていようと絶望の余り立ち尽くして居ようと関係なしだ。

 突撃した大勢の捕虜達が次々と死んでいく間、シュンは要塞付近まで辿り着いた。

 

「大丈夫だ、訓練を思い出せ」

 

 頭上では絶え間なく銃弾が飛んでくるので、少しでも頭を上げれば粉微塵に吹き飛ぶことだろう。

 要塞を死んだ将校より頂いた双眼鏡で見れば、ミサイルの照準の為のレーザーか、無線機で砲撃要請をしたくなったが、シュンの持ち物にはその類はあらず、生憎と精密攻撃が出来る兵器は全て対連邦戦線に持っていかれたのか、この戦線には無かった。あるとすれば、旧式の榴弾砲と重砲だけだ。しかし、砲撃を要請する無線機も持っていない。

 

「気付くなよ…」

 

 それらの持ち物が支給されなかったことに腹を立てつつ、敵が正面に集中している間に、シュンは地面を這いずりながら要塞へと向かった。

 

「? 弾詰まりか銃身が過熱したか。だが、予備は用意しているな」

 

 地面を這いずっている最中、機銃掃射が止んだが、要塞司令官は防衛戦が得意なようだ。代わりの防衛射撃として、突撃銃や分隊支援火器による掃射が再開される。あの重機関銃やミニガンによる掃射よりは弱いが、それでも敵を寄せ付けないような弾幕だ。弾幕の中には、魔弾のような物も見える。どうやら局員も動員しているらしい。

 こちら側の前進は続けられているようだが、以前に捕虜と下級兵士たちは死に続けている。

 手榴弾が届く距離まであと数mと言う所で、運良くここまで来れた数名の捕虜と下級兵士たちがシュンの元へやって来た。

 

「こいつは虐殺だ! 投降しようぜ!」

 

「なんだ、怖気づいたか? 奴らは捕虜を殺すぞ。俺たちに食わす飯は無いと言ってな」

 

「あぁ、止めておこう。連邦の奴らも、捕虜を殺すって言うしな。あいつ等は捕虜の扱いすら知らないらしい」

 

 やってくるなり一人の下級兵士は管理局に投降しようと言って来る。

 そんな兵士に対し、シュンは管理局は捕虜を丁重に扱わないと言えば、髭を生やした丸刈りの男も捕虜の連邦兵を見ながら連邦軍も捕虜を取らないことを告げる。

 これに反論しているつもりなのか、反連邦十字軍や労働者、下級兵士行きから外された連邦軍の将校が口を開く。

 

「ふん、貴様ら蛮族は我が統合連邦には不必要な物だ。我が連邦軍の捕虜をこのような作戦に投入させる事態が実に蛮族だ。このワイルドキャットめ」

 

「でっ、なんでその連邦ってのは捕虜交換の交渉をしないんだ? お前らが大切なら、交渉でもやって助けようとするはずだが」

 

「そ、それは…」

 

「まっ、槍だけ持たされて突撃させられている連中と同じく消耗品さ。消耗品同士、仲良くやろうや」

 

「お、俺は…消耗品なんかじゃ…」

 

 自分等を蛮族と蔑む連邦軍の将校に対し、シュンがなんで捕虜交換の交渉に来ないんだと問えば、捕虜である将校は何も言い返せなかった。

 彼の階級は大佐であるが、親の七光りで出世したようで、軍事的才能が無いらしく、それに脱走の計画も練られないなのか、兵や下士官、他の無能な将校と主に収容所に入れられたようだ。ちなみに、無能であれば将官階級も同じ扱いであり、将軍となる者でさえも槍を持たされて突撃させられている。

 そんな哀れな大佐に、シュンは肩を叩いて敵が再装填を終える前に、仲間たちと共に手榴弾が届く距離まで向かった。

 

「ついてくるのは良いが見付かるなよ。もう再装填を終えて大虐殺を再開したところだ」

 

 地面を這いながら要塞へと向かう中、重機関銃や機関砲、ミニガンの再装填を終えたのか、再び切り裂くような銃声が鳴り響き、無茶な突撃を行う捕虜の連邦兵達の虐殺を再開した。

 大勢の味方が殺され続けているが、先ほどと同じか、上空を飛んでいる敵のガンシップも突撃して来る集団に集中しており、地面を這いずっているシュン達を見向きもしない。

 その隙にシュン達は要塞に接近することに成功し、手榴弾の安全ピンを引き抜いてミニガンを掃射している銃眼へと投げ込んだ。

 

『グレネード!!』

 

 叫び声が上がった後、投げ込んだ場所から粉塵が見えた。

 機銃手は殺せなかったようだが、それでもミニガンの無力化に成功した。

 

「よし、一つ潰した! 残りも潰して前進を再開させるぞ!」

 

「応っ!」

 

 一つを潰した所で、そこの銃眼に乗り込み、残りの機銃の排除を行おうとした。

 シュンが合図を出せば、奇跡的に十字砲火を突破した少数の下級兵士と捕虜達は銃眼へと雪崩れ込む。

 流石にそこから敵兵が雪崩れ込むことを予期していたのか、管理局の軍の兵士らは、手にしている最新式のバトルライフルやブルパップライフルを撃ち込んで数名を撃ち殺す。

 

「野郎!」

 

 六名ほどが殺された所で、シュンは中国製のAKである56式自動歩槍を片手で撃ち込んだ。

 管理局の軍の将兵はライフル弾を防ぐ特殊な繊維でできている防弾チョッキを着ているため、殆どが外れたが、完全防備とはいかないのか、一人が隙間に弾丸を受けて倒れる。

 

「衛生兵!」

 

 一人が倒れれば、敵兵等は戦友を抱えて遮蔽物まで退く。

 この隙を逃さず、シュンは突撃銃を撃ちながらもっと入ってくるように叫んだ。

 

「入って来い! 一気に乗り込むぞ!!」

 

 それに合わせ、続々とシュンが入った場所から下級兵士と捕虜が要塞内へと侵入していく。

 要塞に入った敵兵等に対し、管理局の軍は予備兵力を向けて対応に当たるが、一つの射線が減ったことで、侵入して来る敵兵の数が多くなり、退き気味になる。

 勢いに乗ったシュン達は、機関銃陣地やミニガンを潰していき、捕虜の軍集団の前進を支援する。

 六つ目の火点を潰した後、七つ目の陣地を攻撃しようとしたが、そこに後退した者達が防御線を張っており、潰そうと群がって来る集団に向けてライフルや分隊支援火器を撃ち込んで来る。

 

「流石に近付けないか」

 

 味方が撃ち殺されていく中、シュンは遮蔽物に身を隠してチャンスを窺う。

 すぐ隣で、直ぐに死ぬかと思っていた大佐が敵兵のバトルライフルを弄くりまわしていた。

 

「な、なんで撃てないんだ!? どうなっている!?」

 

 銃が撃てないことを慌てているようだ。直ぐに歴戦の下級兵士が、管理局の軍が使用する銃が他の者に使用できない理由を明かす。

 

「連中の使う銃はどれもハイテクだ。持ち主しか撃てない仕様になっている。おたくらの軍隊もそうじゃないのか?」

 

「ID登録の銃だと!? ISAじゃあるまいし!」

 

 管理局の軍が使う銃は、どれも兵士の個人IDが搭載されており、その者以外に撃てぬ仕様となっている。安全装置も同様で、他者が使うにはIDを解除するか、分解してID装置を取り出す必要がある。

 他の捕虜の連邦兵や下級兵士たちは、そのことを知らないらしく、銃を弄っている間に撃ち殺された。

 

「まぁ、ろくでもねぇことは確かだ。もう直ぐで機甲部隊が到着するはずだ。それまで耐えるぞ」

 

 次々と突撃して殺されていく味方の兵士たちを他所に、シュンは突撃銃の再装填を終えてから射撃を再開した。

 数分後、恐ろしい数の捕虜の連邦兵達の屍を越え、一切の損害が無い機甲部隊が要塞内へ入った。迫撃砲やロケット弾の射程内に入ったため、砲弾やロケット弾の雨を浴びせられる。

 だが、機甲部隊も砲の射程内に要塞を収めたので、火点を潰しながら要塞内へと入ろうとする。

 

「よし、吹っ飛んだぞ! 前進だ!!」

 

 ミニガンを数台ほど配置した七つ目の機関銃陣地が吹き飛んだので、シュン達は前進を再開した。

 敵は既に第一防衛線を放棄したのか、第二防衛線へと重機関銃やミニガンを抱え移動して既に迎撃の準備を整え、再び槍しか持たない捕虜達を虐殺していた。

 

「駄目だ! 要塞の外で半分以上は死んだんだぞ! もうやってられるか!!」

 

 また重機関銃やミニガンによる掃射が再開されたので、複数の捕虜が逃げ出そうとしたが、後からやって来たワルキューレの機甲部隊とその随伴する歩兵部隊に残らず撃ち殺される。

 

「下がるな! 前進せよ!」

 

 歩兵隊の将校はエンフィールドNo2回転式拳銃で逃げる捕虜の連邦兵を撃ち殺しつつ、前進を続けるように脅した。

 なおも捕虜は死に続けているが、敵の火力は減ってこちらに機甲部隊が居るので、マシな方だ。

 前進するチャーチル歩兵戦車やクロムウェル巡航戦車を盾にしつつ、無数の重機関銃やミニガンを掃射する火点を一つずつ潰していく。

 流石に突っ込んで来る二百万相当の敵兵の相手に弾薬をかなり消耗したのか、抵抗は少なかった。

 敵は使い魔や様々な魔法で押し寄せて来る捕虜の連邦兵を殺し続けたが、機甲部隊の存在もあり、手を挙げて降伏する者が現れる。

 

「うわぁぁぁ!!」

 

 投降した敵兵に対し、数名の捕虜の連邦兵は槍を突き刺そうとしたが、ステン短機関銃に全員が撃ち殺される。

 

「あ、ありがとう」

 

「早く来なさい!」

 

 数名の敵兵を捕虜にした歩兵隊は、彼らを連れて所属している大隊本部へと連れて帰る。

 抵抗拠点は幾つか潰したが、敵の師団本部か軍団本部なのか、抵抗は強固な物であった。籠城のために弾薬や食料に水が運び込まれていたのか、針鼠のような要塞となっていた。他にも使い魔を使って抵抗している局員や召喚魔導士も居る。

 そこへ無数の捕虜の連邦兵達が突撃を行うが、外と同じように死にまくるばかりだ。

 一体、どれくらいの人間がこの一度の戦闘で死んだのだろうか?

 おそらく敵軍の将兵よりも死んでいる。周辺が足の踏み場も無いほどの死体で溢れかえっている。

 

「一体、何人死んでんだ?」

 

「さぁ、おそらく最高記録だろう」

 

 突撃する捕虜の連邦兵を殺し回る局員の使い魔であるゴーレムを見たシュンは、背中の大剣を抜いてこの戦闘の戦死者を名も分からぬ髭面のハンマーを持った同僚に問うた。

 無論、自分と同じ無学者の下級兵に分かるはずもなく、彼は最高記録を抜いたと答え、おお振りのハンマーを持ってシュンと共にゴーレムに立ち向かう。

 数名が吹き飛ばされ、あるいは拳を打ち込まれてミンチになるかして、シュンとハンマー持ちはゴーレムにそれぞれの得物を叩き込んだ。

 シュンの大剣は突き刺さった程度であったが、ハンマー持ちはひび割れを入れることが出来た。

 ゴーレムが反撃する前に、二人は急いで離れて物陰に隠れ、次の攻撃に備える。

 

「ほら、やっぱ大剣じゃ無理だろう。大人しく打撃物か、両手剣に変えるんだな」

 

「確かに考えたことがあるが、こいつが身に染みててな、他の武器じゃどうにも」

 

「あぁ、分かるな。その気持ちは。命賭けてる職業じゃ、慣れた武器が一番いいもんな!」

 

 物陰に隠れたハンマー持ちは、シュンに大剣から他の武器に変えないのかと問うが、彼はこの武器が一番慣れていると答えた。

 確かに、一歩間違えれば命とりな戦場で、慣れ親しんだ武器はどの戦友よりも心強い味方だ。

 シュンの答えに賛同しつつ、ハンマー持ちは回り込んで来た召喚士が魔法で召還した使い魔のハイエナを叩き殺した。シュンもまた自分の方に来たハイエナを大剣で惨殺して、捕虜の連邦兵を殺し回るゴーレムに再び立ち向かう。

 振り下ろされた拳を躱したシュンは、つなぎ目に向けて大剣の刃を叩き込んでゴーレムの右手を切断した。

 

「トドメは俺だ!」

 

 ハンマー持ちはゴーレムの巨体を支えている左足にハンマーを叩き込んでバランスを崩させれば、ゴーレムから転落した主の頭に向けてハンマーを叩き込んで殺害した。

 主の頭はスイカのように潰れ、主を失ったゴーレムは、砂のように崩れ落ち始める。

 動物の類は主が死んでも戦い続けるが、ゴーレムのような何らかの物質より作られた使い魔は、主が死ねば自動的に機能を停止して元に戻るのだ。

 

「たくっ、戦車や戦闘爆撃機はなにやってんだ? 俺らが全部やらねぇと駄目なのか?」

 

 ゴーレムを倒した後、それらを倒すための戦車部隊や戦闘爆撃機が何所にも居ないことにシュンは苛立ち、続けて味方の兵を殺し回っている召喚された使い魔の排除に向かった。

 虎を初めとした獰猛な動物や魔物の類の使い魔を自分の得物で殺しつつ、同じく殺し回るハンマー使いに名前を問うた。

 

「そう言えば、名前を聞いてなかったな。名前は?」

 

「俺か? 俺はズールだ。元々は突撃歩兵師団に居た。キレて上官の頭をハンマーで叩き潰したら、下級兵送りになった」

 

「そうかい。俺は命令違反で下級兵士送りだ。囚人部隊送りの方が良かったな」

 

 ハンマー使いの名はズールで、下級兵士になった経緯は上官の頭をハンマーで叩き潰したからだ。普通なら銃殺物だが、下級兵士送りになっただけ幸運だろう。

 向かって来る小型や中型の使い魔を殺しつつ、シュンも下級兵士になった経緯を話した。囚人部隊の方が良かったと、蛇の使い魔を噛み付いて素手で引き千切ってからぼやく。

 だが、誰かも分からぬ二振りのメイスを持ったスキンヘッドの大男に囚人部隊は酷いと聞いても居ないのに告げる。

 

「囚人部隊は止しておけ。穴掘りばかりされるぞ」

 

「そう言えばそうだな」

 

「誰だお前」

 

 メイス使いにズールは見たことがあるのか、納得したが、変な男が割って入って来たので、シュンは名前を問う。

 その男は名前も答えず、ひたすら使い魔や逃げ遅れた局員を殺し続けていた。戦闘後、シュンはようやく彼の名を知る事となる。

 

『嫌だ! 死にたくない!!』

 

 局員や軍の兵士、使い魔を殺し続ける中、捕虜の連邦兵達が一斉に逃げ出して来た。

 

「なんだ、ドラゴンでも現れたか?」

 

 逃げ出す連邦兵達を見て、シュンは女の局員の屍に突き刺さった大剣の刃を引き抜き、使い魔のドラゴンだと思った。

 だが、逃げる連邦兵達の頭上に落ちて来た落雷で、雷の魔法を使うドラゴンと判断して、同じく感付いた下級兵士等と共に屋根のある場所へ向かう。

 

「電撃竜か?」

 

「いや、違う。グリフィンだ。初めて生で見たぜ」

 

 先のメイス使いがカウボーイハットの中年男に問えば、彼はグリフィンだと答えた。

 中年男の言う通り、そこにグリフィンが居た。背中に主であろうか、女の魔導士が跨っており、自分の得意な雷魔法で逃げ回る連邦兵や下級兵士らが乗るBT-7戦車やT-26軽戦車を破壊しまくっていた。

 

「空軍は何やってんだ?」

 

 大剣を背中に背負い、56式自動歩槍に切り替えたシュンは、空を飛ぶ使い魔を排除できる戦闘機や戦闘爆撃機は何所に行ったのかとぼやき始める。

 航空隊はジェット戦闘機は全て対連邦戦線に回されているためか、レシプロ航空機ばかりであり、地上か空を飛ぶ使い魔に下級兵士らに配備されている複葉機と共に次々と落とされていた。

 

「やるしかねぇな」

 

「あぁ、やるしかねぇ。死んでいる奴から銃を集めよう。女共はあてにならん」

 

 あのグリフィンを倒すのは自分たちしか居ないと判断して、シュンを含める熟練の下級兵士たちは銃を集めた。グリフィンの主であるあの女魔導士を撃ち殺すのだ。それなら機甲師団に属する歩兵連隊の狙撃兵の仕事であるが、ここに機甲師団に属する車両も兵も見えなかった。

 集めた銃で、空を飛んでいるグリフィンに向けてひたすらイ一斉射撃を浴びせるが、バリアジャケットや魔法の盾で守られているのか、グリフィンには当たらず、乗っている魔導士が放つ雷魔法で次々と殺されていく。

 

「戦車は何所だ!?」

 

「要塞本部の攻撃にでもいってるんだろう! 煙幕はあるか!?」

 

 味方次々と殺されていく中、スキンヘッドの男は戦車が何所に行ったのかを問えば、シュンは要塞本部の攻撃に向かったと答え、誰か煙幕を持って居る物が居ないか問うた。

 これに、ズールは腰に吊るしてある煙幕手榴弾を取って、自分が持って居ると大声で応える。

 

「俺が持ってるぞ! これで十分か!?」

 

「そいつで十分だ! 投げ込んで動きを隠す!」

 

 シュンに言われた通り、煙幕手榴弾のピンを抜いて煙幕を撒いた。

 煙が撒かれる中、十分に煙が充満したところで、シュンは死んでいる下級兵より回収した閃光手榴弾を手に取って煙の中へと飛び込んだ。それから安全ピンを外し、グリフィンの頭上の上に来て爆発するように計算してから投げる。

 充満した煙はグリフィンの羽ばたきで起こした強風で晴らされるが、シュンが投げ込んだ閃光手榴弾はグリフィンの頭上で爆発し、乗り手の女魔導士と使い魔のグリフィンの目が眩む。

 この時を待っていたのか、シュンはメイス持ちが来て刀身に片足を付けたところで、思いっ切り力を込めてグリフィンに向けて振る。

 振られた勢いで飛んだメイス持ちはグリフィンに掴まり、そこから一気に乗り上げ、持って居るメイスで乗り手に殴り掛かる。

 殴り掛かって来たメイス持ちに、乗り手である女魔導士は抵抗したが、白兵に優れるスキンヘッドの男に敵うはずが無く、グリフィンから叩き落とされた。

 乗り手が叩き落とされたことで、乗っているメイス持ちを振り落とそうとするグリフィンだが、後頭部をメイスで殴られて地面へと落ちた。

 

「これで終わりだ!!」

 

 落ちたグリフィンに向け、シュンは大剣の刃を首に向けて振り落とし、その首を切断した。

 次に落下した衝撃で前進を骨折した女魔導士に向け、大剣の刃を振り落とそうとしたが、突如となく飛んできたライフル弾を左肩に受ける。

 

「全員、動くな! 戦闘は終わった!!」

 

 自分を撃ったのは、自分等を弾除けにしていた機甲師団の女将校であった。彼女の背後からは、一個中隊規模の歩兵が続き、管理局の局員や軍の兵士等を殺そうとする下級兵士と捕虜の連邦兵達に銃を向ける。

 大剣を地面に突き刺し、両手を挙げながら周囲に耳を澄ませていれば、銃声はほとんど聞こえない。要塞本部で抵抗していた敵部隊が、弾薬でも切らしたのか投降したようだ。

 遠くの方を見れば、両手を挙げた軍の兵士や局員たちが列をなして連行されている。

 まだ戦おうとする下級兵士や捕虜の連邦兵たちが居たが、続々とこの場に対した損害も無くやって来た歩兵部隊や戦車部隊の一斉射で撃ち殺され、ようやくの所で戦闘を止めた。殺されそうか、犯されそうになった投降した者達は助け出され、仮の捕虜収容所へと連れて行かれる。

 

「なぁ、俺は正規軍に戻れるか?」

 

 戦闘を終えたシュンは、撃たれた傷を自分で治療しながら、泣きじゃくったり茫然としている捕虜の連邦兵達の元へ向かう佐官、それも陸軍大佐に問う。

 

「いや、お前は投降した者を殺そうとした。後、二戦くらい頑張って生き残れ」

 

「やれやれ、あの女の所為で二つも増やされたか。ぺっ!」

 

 陸軍大佐はシュンが無抵抗な敵兵の殺害未遂で、正規軍に戻れるのは後二戦ほどだと答えた。

 これにシュンは、担架で運ばれる自分が殺そうとした女魔導士を見て、壁に向けて唾を吐き捨てる。

 傷の応急処置を終えれば、シュンは要塞内を見渡せる場所まで上がり、そこから戦友達と共に要塞周囲に広がる光景を見て呆然とする。

 

「なぁ、たかだか一万三千人が立てこもる要塞に、一体どれだけの損害が出たんだ?」

 

「さぁな。少なからず、この死体だらけの平原と要塞内を見れば、この戦いの異常さが分かるだろう」

 

 呆然としている一人が口を開いてどれほどの死人が出たのかを問えば、シュンは正確な数は分からないが、この戦闘が異常だと言う事だけは分かると答えた。

 

 この戦いにおける双方の戦死者を合わせて百八十九万人以上。防衛側の管理局は九千人以上の死傷者を出して降伏した。対する攻撃側のであるワルキューレ側は投入した兵力二百八万の内、百八十八万以上という夥しい数の戦死者を出している。

 それも、弾除けの為に投入した捕虜の連邦兵と監視のための下級兵士が大部分だ。投入された二個機甲師団の損害は、彼らを弾除けにしたおかげで殆ど皆無であった。

 余りにも損害を出し過ぎた勝利であるが、ワルキューレは衰えることなく、奪われた自分等の領地を奪還し、次なる領土奪還のため、再びこのような無謀とも言える作戦を決行した。

 

 生き残った十万余りの捕虜の連邦兵達は、ワルキューレ陸軍の参謀本部より素質ありと認められ、再訓練を受けた後に下級兵士として部隊に組みこまれるか、反連邦十字軍としてかつての所属先である連邦軍との戦いに投入された。







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