ここから徐々にことりちゃんが病んでいきます。
でも、デレ要素がまだまだ強いです。
scared : 怖がる、怯える
高坂と園田の二人と別れ、俺とことりの二人きりで下校している。二人きり、そう意識してしまうだけで顔から火が出てしまうくらいには緊張してしまう。
その時だった、ことりが俺を上目で見てこう言った。
「一哉くん、手つないでも、いいかな?」
下校 scared
「あっ、うん。ぜひ」
「やったぁ♪ えへへ……」
しまった。今日二度目の後悔をしてしまう。普通男から手を繋ぎに行くものじゃないのか?
そして、その後悔と同時に、ことりの意外な積極性に驚きを隠せない。いつもは一緒にいる高坂や園田に合わせて動く、といった感じで、自分から何か行動を起こす女の子ではない、そう思っていたからだ。
まぁその積極さがあるがために俺の意気地のなさが目立ってしまうことにいちいち悔やんでしまうが、少し一緒にいるだけで、ことりの良さがどんどん分かっていくこの感じは悪くない。
ことりが俺の手を握ってきた。温かくて優しいその手は、ふわふわしていてまさにことりを表しているかのようだった。
「えへへ、恋人繋ぎ、しちゃいましたっ」
「お、おう」
これまた意外なことに、ただ手を握るのではなく、指と指を絡ませる握り方、いわゆる"恋人繋ぎ"をしてきたのだ。手を握るだけでも緊張するだろうに、付き合って初めての手繋ぎがこれだ。実はことりって結構、自分からいくタイプだったんだな。
「これで一哉くんは――――ことりのものだねっ」
「え? あぁ、そうだな。じゃあことりも俺のものだな!」
「えへへぇ、一哉くんだけのもの……嬉しいっ♡」
一瞬、ことりから何か違和感を感じたが、特に気にせずにことりと会話する。何せこんなに可愛い彼女から"私だけのもの"だなんて言われて嬉しくならない男はいない。
恋人繋ぎしたまま腕まで絡ませて来ることりにドキドキしながら、帰宅路を歩いていく。幸い二人の家の方向は同じらしく、どちらかに合わせて帰るという必要がない。これもまた、運命のようなものを感じてしまう。
あ、そういえば。俺の頭に、ことりへの質問が浮かんだ。せっかく彼女になってくれたんだ、もっとことりのことを知りたい。
そんな思いでことりに
「なぁことり、ことりの幼馴染……高坂と園田とはいつくらいからの付き合いなんだ?」
だが、それがいけなかったんだ。
ことりの目の色が、なくなる。
「……え? どうして今それをことりに聞くの?」
明らかにさっきまでとは違う態度に、俺は今日三度目の後悔をする。俺は単純にことりのことをもっと知りたい、ことりともっと話したい、そう思ってことりに質問を投げかけたが、普通に考えれば彼女と一緒にいるっていうのに、別の女の子の話をする馬鹿なんていない。つくづく俺の頭の悪さに呆れる。
俺は慌ててことりに謝る。
「ごめんっ! ことりがいるっていうのに、他の女の子のこと話すだなんて、馬鹿だったよな。ごめんっ!」
「…………」
ことりは無言で、色のない目で俺を見続ける。
何も言わない、表情がない、それがただならぬ恐怖を感じさせる。
俺の手を握ることりの指が俺の手に食い込む。その痛さも恐怖をさらに煽ってくる。
数秒の沈黙ののち、ことりは口を開いた。
表情に色を戻して。
「ううん、ことりもちょっと過度に反応しすぎちゃったかも。ごめんなさいっ」
俺が悪いというのに、怒ってしまったことに謝ってくることり。
……本当にことりは優しいんだな。俺には勿体なさすぎるくらいだ。
「ごめんな、次からはことり以外の女の子の事、話さないようにするからさ」
「……うん、お願いします」
にっこりと笑って見せることりに胸を打たれた俺は、ことりを思わず抱きしめる。
「本当にことりは優しい女の子なんだな。大好きだ」
そう、こういう優しさに惚れた、そう言ってもいいくらいにことりが可愛く見える。
「あぅ……いきなり抱きしめてくれるなんてずるいですっ」
「ははっ、可愛いよことり」
「うぅ~っ」
俺の言葉一つ一つに頬を膨らませるその様子も、本当に愛らしい。俺は今、最高に幸せだ。
「一哉くん」
「ん、どうしたんだことり?」
「あの……もうちょっとだけ、このままでいても、いいですか?」
「……うん。俺ももっと、ことりのこと抱きしめていたい」
「……もうっ、なんで恥ずかしくなることそんなに簡単に言うんですかっ」
「いや、それはことりには言われたくないけどね」
頬を膨らませたままのことりから怒られてしまったが、それに関してはことりからは言われたくない。ことりに散々先を越されてしまってるから頑張って言ってみただけなのに。
まぁ、頬を膨らませたことりは小動物のような可愛さを感じられるから、このままでいるのも悪くないかもしれない。
ちょっと意地悪かもしれないが、俺はそっとことりの頭を撫でてみた。
「ふにゃっ!? あうぅ」
「ふにゃっ、だって。可愛いなぁことりは」
「ちょ、ちょっとぉ、急にしないでよぉ」
「あははっ、可愛い可愛い」
「うぅ……絶対に馬鹿にしてますぅ」
ことりは馬鹿にしてるだなんて言ってるが、本当に可愛い……やっぱり、俺には似合わないくらいに魅力が詰まった女の子だな、ことりは。
そんなことを思った時だった。
俺の手に絡ませていることりの指に、力が入る。
「一哉くん」
「どうしたの?」
少し深刻そうな表情を浮かべることりに、俺は少し不安になる。
まさか、やっぱり俺じゃ釣り合わない、とか?息をのんでことりの言葉を待った。
だが、ことりが言った言葉は、俺が思っていたものと正反対のものだった。
「もし、もしことりのことを、変だなぁって思ったとしても、ことりのことを好きでいてくれますか?」
その言葉は、むしろ俺がことりに聞きたいくらいのネガティブな言葉だった。ただ一つ、"変だと思っても"という言葉は引っかかるが。
俺はことりを強く抱きしめなおし、口を開く。
「もちろんだ。どんなことりでも俺は好きでいるよ。そうでなきゃ告白なんてできないさ」
紛れもない本心だ。俺がことりを嫌いになるわけなんてない、何せ二年来の想いがやっと叶ったんだから。
俺の言葉を聞いて、ことりの表情が明るくなり、握る手も力を緩めた。
「えへっ、えへへっ」
「やっぱことりは笑ってる方が可愛いよ。これからもずっと俺のそばで笑っててほしい」
「うんっ! やっぱりことりは、一哉くんのことが大好きですっ」
今まで見てきたどの笑顔よりも眩しい笑顔を見れた俺の心は、嬉しさと安堵でいっぱいになった。
そのあとは何事もなく、ことりや俺の好きなものとかそういったありきたりなことを聞いたり聞かれたりしながら歩いていった。
◇◆◇◆
「ことりの家はここだよっ。送ってくれてありがとう、一哉くん」
「おう、また――――明日も一緒に帰ろうな」
「うんっ! それじゃあねっ」
「また明日!」
ことりを家に送り届け、別れを告げたあと、俺は自分の家へと歩みを進める。思っていたよりことりの家は俺の家と近いらしく、ここからなら5分くらいで着けるだろう。
今日一日の事を振り返りながら、俺は歩く。
今日の昼休みに告白した、実はことりも俺のことを好きだったらしくて、初日にもかかわらず名前で呼び合ったり、手握ったり、抱きしめあったり……
とても一日で起こったこととは思えない濃厚な内容に、俺はついついニヤけてしまう。
「にしてもやっぱ、ことりって可愛いよなぁ」
周りに人がいないことをいいことに、つい口に出して言ってしまった。うわぁ、惚気てんなぁ、俺。
顔を引き締め、残り僅かの帰宅路を歩き出そうとした時だった。
「……っ!」
なぜだろう、人の気配を感じた。周りを見渡しても誰もいない。そしてここは割と道が開けているから、隠れるような場所もないはず。だから人がいればすぐに分かるはずなんだが……気のせいか?
「ちょっと不気味だな……走って帰るか」
少しばかりの恐怖を感じながら、俺は走って家へ帰るのだった。
だが、俺が家に入るその瞬間まで、謎の視線は感じたままだった。
「えへへ、今日は走って帰っちゃったんだね、一哉くん」
「それにしても……はぁ♡ 走る一哉くんもカッコいいっ」
「ふふっ、でも今日からは"憧れ"じゃないもんっ。だって一哉くんは――――――――」
「ことりだけのモノだもん」
いかがでしたか?
ことりちゃんってふわふわしていて気持ちよさそうですよね。
すいませんなんでもありません。