平凡な俺と巫女のきみ【完結】   作:うたたね。

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知ってる人はおはこんばんにちは。初めましての方は初めましてです。


第始話 そんな2人の何気ない日常

 梅雨が明け、季節は夏。太陽がジリジリと照りつけてくる。

 もう夏が来たかと思うと、げんなりとしてくる。しかもただ暑いだけじゃなくて、蒸し暑いときた。氷妖精でも捕まえてこようかしら?

 確か一度だけ、氷妖精を捕まえて部屋に吊るしたことがあったが、あれは本当に涼しかった。まぁ、すぐに逃げられたけど……。勝手に逃げてんじゃないわよまったく。

 

 

「やぁ霊夢。こんにちは」

 

 そんな声が聞こえた。

 声が聞こえてきた方を見ると、黒髪黒瞳のアホ毛をぴょこぴょこ動かしてるアイツがいた。

 

 コイツは此処に来る以外で何かすることはないのだろうか? 魔理沙も此処にはよく来るけれど、毎日来るほどではない。かなりの頻度では来るんだけど。

 コイツの場合、毎日のように此処に来る。いつものように軽く笑って、私に会いに来る。

 

「あんた、他にすることないの?」

「あはは、こんにちはって言ったんだから、きちんと返してくれよ。きみは本当に昔から変わらないねぇ」

「そういうあんたもね」

 

 私たちは俗に言う幼馴染というヤツだ。と言っても、家が隣同士なわけでもない。私は昔から此処に住んでるし、この神社の周りには家はない。コイツはわざわざ、人里の方から30分ぐらいかけて此処まで来るのだ。なんでそんなに此処に来たがるのかしら? そう聞いてみたら、『きみに会いたいからだよ』と言ってきた。さすがにアレは恥ずかしかった。

 

「毎度毎度思うんだけど、あんた、人里に友達とかいないの?」

「うん? いるにはいるけど、きみといた方が楽しいからね」

「………」

「照れてるの?」

「………」

「いや、悪かったよ。だからさ、脛を蹴るのはやめようぜ?」

 

 ……これだ。時々こんな事を言うから恥ずかしい。私は別にコイツに対して恋愛感情は抱いてないけど、突然そんなことを言われたら、気恥ずかしくなるに決まってる。しかもそれが本音だからタチが悪い。顔が赤くなってるのが自分でもわかる。

 

 そんな私の反応を見て、コイツはカラカラと笑う。

 ちょっとイラッと来る。少しは恥ずかしがりなさいよ。

 

「うん、いや、悪かったよ。だから、そんなに怒らないでくれ」

「……その代わり、今日の夕飯を作りなさい」

「それは別に構わないよ」

 

 コイツはまた軽く笑った。

 本当に笑顔が似合う。

 

「ねえ、霊夢」

「何よ?」

「いや、そんな重大な話でもないんだけど、あんたあんただけじゃなくてさ、昔みたいに(かなで)って呼んでよ」

 

 そんなことを気にしてたの? うーん、確かにいつの間にか奏って呼ばなくなってた気がするわ。

 本当にいつ頃からだったかしら?

 

「きみがほら、思春期に入ってからだよ。ちょうど一年前」

「自然に心を読まないでよ」

「きみと何年一緒にいると思ってるんだ。きみが考えてることくらい、だいたいわかるよ」

「何それこわい」

 

 一年前……ああ、あの時か。無性に男からの視線が気になるようになってきたのよね。それでコイツにもツンツンしてたんだった。今はそんなことないけど。

 よくよく考えてみれば、コイツとは兄妹みたいな感じ。そこまで深く考える必要はなかったかも。

 

「こわいって……霊夢も俺の考えてることぐらいすぐわかるだろ?」

「これだけ長く一緒にいれば、ねぇ」

 

 十何年も一緒にいると、だいたいコイツが考えてることくらいはわかる。

 実際、こいつが奏って呼んで欲しいのは本当なんだろうし。

 

「か、奏、とりあえず、座ったら? 私の前に突っ立ってないで」

 

 一年ぶりに名前で呼ぶから、ちょっと違和感がある。慣れというものはおそろしい。

 

「そうさせてもらうよ」

 

 そう言って奏は私の横に一個分間を空けて座った。昔からずっとこうだ。私の横に間に一個分間を空けて座り、空いたところに和菓子とお茶を置く。それが私と奏の位置関係だ。昔から全然変わらない。

 

 奏にお茶を入れてあげると、いつものように笑ってありがとうと言う。こんなやり取りももう何千回も繰り返した。それもそうよね。奏の場合、毎日此処に来てるから。

 風が吹き、奏のアホ毛がぴょこぴょこ揺れる。

 

 奏のアホ毛は昔からある。直さないの? と聞いたこともあるが、これが僕のトレードマークだからと直そうとはしなかった。

 背丈は大きくなっても、声代わりを迎えても、このアホ毛だけはずっと変わらない。

 

「霊夢が入れてくれるお茶、やっぱり美味しいね」

「毎回言ってるわよね、それ」

「その返しも毎回言ってるよね」

 

 奏は私が入れたお茶を飲んだら、いつもそう言う。私もいつもそう返す。

 自分が入れてくれたお茶を奏はいつも美味しいと言ってくれる。お茶を入れた私も、その言葉を聞いただけで満足だ。

 適当なことを言って私を揶揄ってくる奏だけど、こういう言葉は本心で言ってくる。そういうところはズルいと思う。

 

 ふと横を見ると、奏は和菓子をポイポイ口の中に放り投げていた。そして美味しそうに頬をほこらばせる。

 奏は私にとって、兄みたいな存在だけど、こういう姿を見ると、弟みたいな感じがする。いつもは余裕のある大人みたいな感じ。でも、時々こういった幼い様子を見せてくる。

 だからかな? 奏といると安心感がある。

 

「あんた、醤油せんべい好きよね」

「うん。甘辛い味が結構好きなんだよ。まぁ、おはぎとかの方が好きなんだけど」

「甘いもの好きだものね」

 

 奏の甘いもの好きは異常だ。おはぎを30個食べるとかちょっとおかしい。

 

 すると、奏がせんべいを食べる手を止め、私に言ってきた。

 

「今度さ、みんなで花火しないか?」

「えぇ……花火した後、毎回宴会するじゃない。片付けするのが面倒臭いったらありゃしない」

「そんなこと言わないでさぁ。片付けくらい、俺が手伝うよ。それならいいだろう?」

「それなら別にいいけど……」

「そりゃあ良かったよ」

 

 ニコニコと嬉しそうに笑う奏。

 大人っぽいくせに、どこか子供っぽい。

 

「お? ちょうちょだ。ちょっと捕まえてくるよ」

 

 私の返事を待たずに奏はちょうちょを追いかけていく。ちょうちょを捕まえてくるってなんだよ。子供か。

 

 それにしても、今、奏は浴衣に下駄でちょうちょと鬼ごっこをしてるけれど、そのうち転けないだろうか?

 あんたはちょっとだけドジなんだから、走り回るのは止めなさい。

 

「大丈夫だよ、霊夢。これくらい全然……痛っ!」

「ほら、言わんこっちゃない」

 

 こんなことはいつものことだが、やっぱり心配である。此処に来るための階段なんかで転けそうで本当に心配。

 

「いたた……やっぱり下駄で走るもんじゃないな」

「本当よ。もう止めておきなさい」

「そうしておくよ。さすがに霊夢に心配かけるのはよくないからね」

「心配なんてしてないわ」

「顔、赤くなってるよ。図星?」

 

 ………。

 

「痛い痛い! わかったわかった。俺が悪かったよ。だからさ、脛を蹴るのは止めてくれないかな?」

「ふん!」

 

 コイツは本当に一言多い。しかも笑いながら言ってくるもんだから、さらにイラっときてしまう。悪気はないんだろうけど……。

 

「転けたのより霊夢に蹴られた方が痛かったよまったく……」

「あんたが悪いのよ」

「わかってるよ」

 

 軽く笑いながら、私の方を見てくる。

 な、なによ……。

 

「そろそろ夕飯の時間だ。ご飯、俺が作る約束だろ?」

 

 気がつけばもう夕方。夏だから太陽が沈むのが遅い。そのせいでもうそんな時間だということに気がつかなかった。よく気がついたわね。

 

「何が食べたい?」

「普通の料理でいいわよ」

「じゃあもう夏だし……素麺でもしよっか」

「それにしましょう!」

 

 

 縁側でお茶を啜ってお話をする。

 そんな普通だけれど、大切な日常を、私は案外気に入っている。

 

 前を歩く奏の背中を見つめながら、私は小さく微笑んだ。

 

 

 




初めての東方作品。うまく書けたかな?
次の更新は、早ければ3日以内。遅ければ一週間後です。
試験が来週あるので、まぁそれくらいでしょう。

それでは!
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