平凡な俺と巫女のきみ【完結】   作:うたたね。

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序盤は魔理沙が出ますが、即退場で。
ちょっとしんみりとした雰囲気になります。それと少し文章おかしいかも。



第五話 隣にいても

 十二月下旬ともなると、もう立派な冬だ。乾いた風が吹き、容赦なく体を冷やしてくる。

 俺も浴衣だけでは流石に寒いので、紅い首巻きと手袋を装備している。この二つは冬には確実に必要な物。此れ無しでは俺は冬を越せそうにはないです。

 

 

「なあ魔理沙。この前貸した本返せよ」

「あ? ……ああ、あの小説か! あれまだ読んでないんだよ」

「その言い訳、もう何度目だ? どうせ借りてたのを忘れてたんだろう? 取り敢えず、早く返してくれないかな?」

 

 魔理沙の手癖には困ったものだよ。その小説も半年前に貸してあげた物。良い加減、返して欲しい。

 誰だって借りてた本を返してもらえないのは心配になる。汚されたり、破れてたりしたら嫌になるんだ。そこら辺、この子は分かっているのかな?

 

「まあ良いよ。次は絶対に返してくれよ? 次返さなかったら、二度と本は貸さないからな」

「おう! 約束するぜ!」

 

 はぁ、少し甘やかし過ぎたかな?

 どうにも俺は年下には甘くなってしまう。というか、他人に甘いんだよなぁ。

 その甘さは俺の長所でもあり、短所でもある、と何処かの巫女さんが言っていた。確かにその通りかもしれないね。甘さと優しさは違うのだから。

 

「あ、そういや奏は博麗神社には行ったのか?」

「うん? まだ行ってないけど……それがどうかしたの?」

「いや、神社に行ったらお前がいなかったからさ。珍しいなぁと思って」

「今日は昼から行くつもりだったからね。きみはもう行ったのかい?」

「ああ。弾幕ごっこしたんだよ。結構良いところまで行ったんだがなぁ……ま、次は勝つさ!」

 

 ニカッと魔理沙が笑う。俺も軽く笑う。

 

「それじゃあ俺はもう行くから」

「そうか、またいつかな!」

「ああ、またね」

 

 魔理沙はものすごいスピードで何処かへ飛んで行った。俺はそれを少し見送った後、博麗神社へと歩を進めた。

 

 

 

 

 

 博麗神社に着くと、霊夢が境内を箒で掃いていた。俺はカランコロンと下駄の音を立てながら彼女の方に向かう。すると、此方に気がついたのか、霊夢が手を止めた。

 

「こんにちは」

「あら、今日は昼からだったのね。てっきり朝から来るのかと思ってたわ」

「今日は昼から来る気分だったから」

「気分屋ね、あんた」

 

 気分屋って程、気分に流されるわけじゃないよ? 気分が乗らなくても勉強したりはするしね。気分屋なら、きみの方が気分屋だと思うんだけどなぁ。

 

 すると、霊夢は何かに気がついたように俺の首元を見てきた。

 ……ああ、此れ? 確かに懐かしいかもしれないね。何年も前の事だし。

 

「まだ、大事にしてくれてたのね……」

「去年も言ってたよね、その言葉」

「ええ、そうね」

「此れはきみがくれたものだから、大事にしてるんだよ。俺は貰い物は大事にするから」

 

 まあ、きみが一生懸命作ってくれたってのもあるけどさ。そんなことは口が裂けても言わないけれど。

 それにきみも巻いてくれてるじゃないか。俺が編んだ山吹色の首巻き。少しからかってやろうかな。

 

「霊夢も、巻いてくれてるじゃないか。大事にしてくれて嬉しいよ」

「別に、大事にしてたわけじゃないわ。偶々残ってただけよ」

 

 ふふ、きみならそう言うと思ってたよ。きみは案外恥ずかしがり屋だからね。あんまりそう言うことは表に出せないんだろう。

 紫さんが言ってた、『つんでれ』ってヤツなのかな? 案外合ってるかもしれないね。

 

「まあ、きみが言うならそういうことにしといておくよ。ね、恥ずかしがり屋の霊夢ちゃん」

「あんた殴るわよ!?」

「あはは、ごめんごめん」

 

 箒で殴りかかるなよ。避けることは容易いけど、危ないのは危ないんだぜ? それに道具で人を殴ってはいけません。殴るなら素手でやりなさい。……まあ、素手でもいけないんだが。

 つまり、何が言いたいかというと、すぐに暴力を振るうのは、いけないことだと思うんだ。

 

「ま、落ち着けよ」

「あんたが悪いんだけどね」

 

 それを言われちゃおしまいだ。

 

「まあ良いわ。ほら、早く神社の中に入りましょう? こんな寒い日に外で突っ立ってたら凍え死ぬわよ」

「それは大袈裟な気がするけどなぁ……まあ、中に入るのは賛成だね。でも、掃除は良いの? まだ途中なんだろう?」

「もう良いわ、面倒臭いし。正直、この寒さの中で掃除なんてやってられないもの」

「確かにこの寒さだと風邪ひいちゃってもおかしくないもんなぁ。冬の風邪はしつこいし」

 ホントに冬の風邪ってしつこいもんなぁ。俺は冬に一度は風邪になる。一度風邪になったら、一週間は治らないんだよね。

 今年も小鈴ちゃんのお世話になりそうだ。

 

「ほら、さっさと入りなさい」

「ああ、今から行くよ」

 

 いつの間にか神社の中に入っていた霊夢にそう言われた。

 

 さてさて、今日はどんな話をしましょうかね?

 

 

 

 

 

 下駄を脱ぎ、縁側へと上がる。すると、神社の中から暖かい空気が流れてきた。

 ……霊夢の奴、暖炉を付けっ放しにしておいたな? 大方、掃除が終わった後に暖かい部屋の中でゆっくり過ごすつもりだったのだろう。

 きみはホントにだらだら過ごすのが大好きだよね。まぁ、その気持ちは分からんでもないのだけれど。

 

 とりあえず、此処に突っ立ってても仕様がない。さっさと炬燵に入ろうかね。此処に来るまで随分体が冷えたから温めましょう。

 

 炬燵が置いてある広間に行くと、霊夢が幸せそうな顔で炬燵の中で丸まっていた。

 ふふ、なんか猫みたいだね。猫は炬燵で丸くなるなんていうが、それは人間にも当てはまるのかもしれない。猫耳っていうのかな? あれを霊夢につけたら可愛いと思うんだ。

 

「炬燵、暖かそうだね」

「ええ、とっても暖かいわよ」

「そんじゃ、入らせてもらうよ」

 

 座布団に腰を下ろし、足を炬燵に入れると、先ほどまで冷え切っていた足がだんだんと暖かくなっていく。それが何とも気持ち良くて、俺も霊夢同様丸くなる。

 炬燵は人間の発明の中で、最高の物なのかもしれない。いや、かもではなくて、絶対にそうだ。

 

 正面を見ると、霊夢と目が合った。黒曜石のような綺麗な黒。ちょっと見惚れてしまったのは内緒です。

 それを誤魔化すように俺はいつものように軽く笑う。すると霊夢も小さくだけど、笑い返してくれた。その笑みは可愛らしくて、彼女らしい笑みだった。じんわりと頬に熱が灯る。

 

「そんなジッと見つめないでよ」

「あはは、ごめんごめん。それにしても、きみの笑みが綺麗だね」

「……うっさい」

 

 ふふ、ちょっとからかっただけなのにね〜。頬を朱くしちゃって。きみはやっぱり恥ずかしがり屋だね。

 

「はぁ……あんたは相変わらずね。何年経っても変わりそうにないわ」

「人間そんなもんじゃないの? 背丈や声なんかは変わるけど、よっぽどのことがない限り、人の性格なんて変わらないさ」

 

 それでも昔に比べたら変わっているんだろうけどさ。俺も昔は臆病ではなかったはずだから。平凡で、なんの能力もないけれど、一歩踏み出す勇気はあったはずだから。

 

「……それがなんで、こんなに臆病になったのかな」

 

 ぽつりとそんな弱気な言葉を落とす。

 たぶん、これは俺の本心で、今の俺からの逃げなんだろう。いつものように、自分から逃げて。

 

「なんか言った?」

 

 ……どうやら、俺の今の呟きは聞こえていなかったみたい。それに何処か安心している自分がいて、そんな自分がちょっと嫌だった。

 

「何でもないよ」

 

 そう答えておいた。霊夢は「そう」と短く返し、また猫みたいに丸くなった。

 

 

 ……俺は、この子の隣にいても良いのかな?

 

 

 いつか、きっと、その答えを知ることができるはず。

 

 何となく、そう思えた。

 




次はお正月のお話。
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