平凡な俺と巫女のきみ【完結】   作:うたたね。

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遅れてすいません。

また今回も、後半シリアスです。
あと、色つきました! ありがとうございます。



第六話 芽生え始めるその感情

 冬という季節は、何故こうも寒くなるのだろうか? 

 別に冬という季節が嫌いなわけではない。むしろ、好きだ。けれど、どうにもこの寒さには慣れないのだ。単純に自分が寒がりなだけなのかもしれないが。

 

 ま、それでも冬という季節がなくなって欲しいとは思わない。春夏秋冬、すべての季節にはきちんと意味があるのだし、それぞれが美しいのだから。

 

 春夏秋冬の最後の四季。

 それが冬。

 

 自室の窓から外を覗いてみると、純白の雪が降っていた。とても綺麗で、儚い。

 結局のところ、俺はすべての四季が好きなのかもしれない。春も、夏も、秋も、そして冬も。

 

 そういえば、小さい頃はよく霊夢と雪だるまを作っていた気がする。

 まあ、結局完成させることが出来なかったけれど。途中から雪合戦になったんだよな。普通に俺がボコされて終わったけど。俺、弱すぎだよ。

 

 でもまあ、懐かしい思い出であると同時に良い思い出だよなぁ。今となっては、それ以外に思い出すことは出来ないが。ま、思い出なんてそんなもんだろう。大まかなことだけ覚えていて、細かいところは忘れてしまう。それぐらいがちょうど良い。

 

「さてと……」

 

 ゆっくりと立ち上がり、背をぐいっと伸ばす。ポキポキ、と何だか病みつきになりそうな音が鳴る。

 

「──博麗神社に行きますか」

 

 暑かろうが寒かろうが、俺の日常は変わらないみたい。

 

 

 

 

 

 

 神社の中を覗いてみると、案の定霊夢が炬燵の中で丸まりながら、みかんを食べていた。

 そんなに怠けていると、太るよ?とは言わない。というか、言えない。女の子にそんなことを言ってはダメだというのは、身を以て経験しているので、そこら辺は抜かりない。

 いつかの紫さんは本当に怖かったからねぇ。あの目は完全に人を殺す奴の目だった。ものすごく怖かった。

 

 紫さんは、警告だけで済ましてくれたけども、霊夢の場合は容赦ないだろう。俺を思い切り殴った後、みぞに踵落としを食らわす彼女のことだ。そんなことを言った日には、俺はもう2度とこの世界を見ることは出来なくなるかもしれない。

 流石にそれは冗談だけど(冗談だよね?)、それでまあ、ボコされることは確実だ。頬に一発受ける覚悟はするべきだろう。

 まぁ、こんなことを考えている時点で、十分失礼なのだけど。

 

「や、霊夢」

 

 取り敢えず、軽く会釈を。

 

「……やっぱり来たのね。まあ、良いわ。来るとは思ってたし。ほら、早く入りなさい」

「うん、じゃあお言葉に甘えて」

 

 軽く笑って、部屋に入る。

 おお……! 暖かい! 外が異様に寒かったからだろうか? とても暖かく感じる。

 うん、良いね。やっぱり炬燵は最高だよ。

 

「どう? 外が寒いから余計暖かく感じるでしょう?」

 

 ふふん、と自慢気に語る霊夢。何故きみが自慢気なのから分からないけれど、その、何だろうか。……かわいいね。

 でも、何だかなぁ……。

 

「……霊夢、ちょいと酔ってる?」

「酔ってないわよ、別に。ちょっとぽわぽわしてるだけ」

「それを酔っているって言うんだよ。昼間から1人で夜に酔うまでお酒なんて飲むなよ……しかも1人でさ」

「確かにお酒は好きだけど、流石に真昼間から一人で酒飲んだりはしないわよ!?」

「うん? さっきまで誰かいたのかい?」

「ええ。あんたとちょうど入れ替わりで、魔理沙がいたのよ」

 

 ほう、魔理沙がいたのか。あの子、この前本を返してくれると言った後、何回か会ったけど、結局何かと理由をつけられて返してもらってないんだよな。

 『死ぬまで借りるだけ』が座右の銘の彼女ことだ(違う)。もしかしたら一生返してもらえないかもしれないね。

 

「今度会ったらさ、伝えておいてくれないか? いい加減に本を返せってさ。結果は期待しないけど」

「ええ、一応伝えておくわ。期待はしないでよ? ていうか、あんたが自分で伝えればいいじゃない」

「いや、俺は魔理沙の家には行けないからさ。いくらきみ達と関わりを持ってたとしても、俺は平凡な人間だ。魔法の森には入れないのさ」

 

 魔法の森には行ったこともないし、見たこともないけど、聞いた話じゃ、彼処は瘴気っていう毒が蔓延しているらしいじゃないか。だから、魔理沙と会うのは運次第なんだ。

 でも、魔理沙も博麗神社によく来ているのに、あんまり会わないなんて、俺って意外と運が悪いみたい。

 

 そんなことを考えていると、霊夢が口を開いた。

 

「そういえば、あんたって変な交友関係持っているわよね。私や魔理沙はともかく、紫やレミリアと知り合いなんて、普通の人間だったらありえないわよ?」

 

 む、確かに言われてみればそうなのかもしれない。霊夢達ならともかくとして、特に秀でたところのない俺が、妖怪の賢者さんやカリスマ溢れる吸血鬼さんと関わりを持っているなんて、端からみればおかしいよなぁ。

 ……タダでさえ、俺は人里のほとんどの人間から変な目で見られているというのにさ。

 

 もしかしたら、俺って交友関係に限っていえば、平凡ではないのかもしれない。……いや、『かもしれない』じゃなくて、確実にそうだ。

 

「……確かに、おかしいよな」

「ええ、確実におかしいわよ、あんた」

 

 断言された。

 少し悲しい。

 

「……でも、笑いごとじゃ済まされないわよ? もし、変なこと考えている妖怪にあんたのことを知られたら、かなりまずいことになるわよ」

「あはは、もし、俺がそんな妖怪に利用されたらさ。遠慮しなくていい、──殺してくれても構わないよ」

 

 『殺してくれても構わない』

 この言葉は多分、俺の精一杯の意地だ。臆病な俺が勇気を振り絞って言えた言葉。

 勇気なんて大それたものではないかもしれないけれど、それでも、それなりの覚悟を込めて言ったつもりだ。こんな冗談を、俺は吐かない。

 

「……本気で……言ってるの?」

 

 そんな霊夢の声は、確かに真剣味を帯びていた。

 

 俺の答えは決まっている。

 

 

「ああ、本気だよ。──俺は、きみ達になら、殺されても構わないさ」

 

 

 もし、俺が誰かに殺されるのなら、きみ達の中の誰かが良い。

 

 だけど、やっぱり死にたくは、ないよなぁ。

 

「ま、そんな展開が起きないことを願っているよ。それが一番だろう?」

「……ええ、そうね」

 

 あーあ。変な空気になっちゃったなぁ。最近は、本当にこんな空気によくなってしまう。俺は、楽しい雰囲気が、きみと何気ないことを話すことが好きなのに。

 

 この空気の中、此処にはいにくいかな。

 臆病な俺は、逃げることを選択する。

 

「ちょっと早いけど、俺は帰るよ」

「……うん」

 

 今度来た時、謝ろう。

 きみのそんな表情(かお)を見るのは、嫌なんだ。俺が、そうさせたのだけど。

 

 思えば、何でだろうね。きみがそんな表情(かお)をすると、胸が締め付けられるように痛くなる。

 持病ではない。そんな感じではない。部位ではないんだ。心が痛くなるような、そんな感じ。

 

 

「私は、あんたに……死んでほしくないわ」

 

 

 霊夢のそんな言葉に、俺は目を見開く。

 その言葉に俺は──

 

 

「……そっか」

 

 

 そんな言葉しか、返せなかった。

 

 でも、彼女のその言葉は、とても嬉しかった。

 

 

 




最近、こんな展開が多いよなぁ。
あと2話で終わります。

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