平凡な俺と巫女のきみ【完結】   作:うたたね。

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さて、今回はシリアス全開でいきます。
伏線を遠回しに回収したり、わざとしなかったり、または何の伏線も貼ってなかったやつを出したりと大忙し。

テンプレかもしれませんが、どうかご勘弁を(´・ω・`)


第七話この物語に終止符を

『ねぇねぇ、奏』

 

『どうしたの?』

 

『わたしね、おおきくなったら、奏のお嫁さんさんになるの!』

 

『え?』

 

 突然の告白に、少年はぽかんと口を開ける。

 

『おれでいいの?』

 

『奏がいいの! だからね、わたしたちがおおきくなってもね……』

 

『おおきくなったら……?』

 

 確か……6歳ぐらいだったかな? 少し舌足らずなとこを見る限り、きっとそれぐらいだね。

 

 

 そして、少女は満面の笑みを浮かべて、けれど恥ずかしいのか、顔を真っ赤に染め上げながら──

 

 

──わたしの、隣にいてね?

 

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

 

 

 いつから俺は、こんなにも弱く──そして、こんなにも臆病になってしまったのだろうか?

 

 昔は、一歩踏み出せてた。

 どんなに怖くたって、どんなに恐ろしくたって、勇気を持って踏み出せてた。

 

 だけど、今の俺は──弱い。弱すぎる程に。

 

 怖いんだ。恐ろしいんだ。

 

 周りの人間が、みんなが、そしてきみが、何を考えているのか、分からないから。

 

 ……いや、そうじゃない。分からないんじゃなくて、分からなくなったから。俺が、他人を信じることが出来なくなったから。あの時から(、、、、、)、ずっと。

 

 

『お前なんて友達と思ったことねーよ! みんな嫌ってるよ!』

 

 

 霊夢には、人里にも友達がいるなんて言ったけど、あれは嘘だ。俺には、友達なんて、いない。否、友人が『いた』って言い方が正しいかな?

 裏切られた……とは違う。そもそも、彼らは俺のことを、友人とさえ思ってなかったから。

 

 ただ、俺が1人で友達と思ってただけ。

 彼らはずーっと、俺のことを敵として見ていて、そして自分達のことを友人と思っている俺のことを、嘲るように嗤っていたんだ。

 

 理由は分からない。今となっては、分からない。今も昔も。これからも。

 

 ……彼らはもう、この世にはいないのだから。

 

 まぁそういうことだ。俺が人を信じられなくなったのは、俺が臆病になってしまったのも、そういうこと。

 

 霊夢がそんなことを思う人間だとは思わないけれど、でもやっぱり、怖いものは怖い。

 

 周りが何を考えているか分からない。

 周りが俺のことをどう思ってるか分からない。

 

 きっと俺は最低なのだろう。

 

 彼女達は──霊夢は、俺のことを本当に信用してくれてると言うのに、俺は彼女達を信用出来ない。

 

 

『俺のことを殺してくれて構わない』

 

 

 俺がこの前、霊夢に言い放った言葉。

 

 勇気を出して、言えた自分の思い。今こうして考えてみれば、あれは勇気とは程遠い、寧ろ真逆の思い。

 

 俺はあの時、知った。思い知って、しまった。

 

 彼女の思いに。

 霊夢が、俺のことをどう思っているのかを。

 

 きみは、本当に──俺のことを思ってくれていた。

 

 だけどそれと同時に、俺が言った一言が、紛い物の勇気が、霊夢を傷つけた。

 俺が霊夢の思いを知るのと同時に。彼女の思いを傷つけてしまった。

 

 浅はかだった。霊夢の思いを考えていなかった。自分の意見だけ言って、それを相手に押し付ける。何ともまぁ、傲慢で醜い行為だ。人間として、最低だ。

 

 ああ、クソ……

 ダメだ……思考が上手く回らない。考えれば考えるほど、自分に対して怒りが湧き上がる。

 

 初めてだ。こんなにも怒りが湧き上がってくるのは。彼らの真実を知った時でさえ、怒りよりも悲しみが上だったと言うのに……

 

 

「──俺は、弱いな」

「──ええ、そして今の貴方は、見苦しいわ」

 

 

 誰に聞かせるつもりなく呟いた言葉。でもどうやら、誰かが聞いていたみたいだ。

 ゆっくりと振り返ると、其処には変わったドレスを着た女性がいて、その瞬間、俺の頬に痛みが走った。

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

 

『わたしねー、春が好きっ!』

 

『へぇ、そりゃまたなんで?』

 

『だって、奏と初めて出会った季節が春なんだもん!』

 

『きみらしいね』

 

 なんとなく、少年はそう思った。

 

『奏は?』

 

『うーん、おれは秋かなぁ』

 

『へぇ、それまたどうして?』

 

『さぁ、理由はないかもな。多分、紅葉が綺麗だからじゃない?』

 

『なんかしっくりこないわね』

 

『そういうもんだよ』

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

 

 ヒリヒリと、頬が痛む。

 口の中に鉄の味が広がる。どうやら、口の中が切れたみたいだ。

 

「なに、するんですか──紫さん」

「つい、ね」

 

 紫さんはそう言って、扇子で口元を隠す。

 

 紫さんは、この時期は冬眠しているんじゃなかったのだろうか? 冬は冬眠していると、霊夢から聞いた。

 

「今年は少し、遅くまで起きてたのよ。そうしたら偶然、ね?」

「盗み聞きは褒められたことじゃないよ」

「論点をずらさないで」

 

 ……そりゃバレるか。

 流石は紫さんだよ。そういう細かいことに気がつく観察眼、羨ましい限りだよ。

 

「貴方、一体いつまでうじうじしてるつもり? いい加減にしなさい。見ていて気分が悪いわ」

「でしょうね。俺もそう思う」

 

 好きで、こんなことをしてるわけじゃないんだ。

 

「でもさ、どうすれば良いか分からないんだ」

「…………」

「あの子の側に居たいんだ。だけど、俺じゃ相応しくないんだ。あの子の側に居るには。霊夢が、そんなことを気にしないのは分かってる……けど──」

 

 彼女の側に居たい。でも、それを邪魔しているのは、他ならぬ自分自身。

 

 この問題を解決するには、まずは俺を考えなきゃいけない。俺の根本を変えなければいけない。

 

「……そうね。確かに貴方には何の能力も才能も無いわ。人里を探せば貴方以上の存在なんて、何処にでもいるもの」

「だから、「でも」」

 

「──でも、貴方にしか無いものも、あるわ」

 

 紫さんの目を見る。まっすぐこちらを見つめていた。

 

 俺にしか、無いもの? そんなもの、本当にあるのだろうか? 俺には、分からない。

 

「そんなもの、俺にはない。誇れるものなんて、無い」

「あるわ……貴方には、他の誰にも負けない、立派なモノを持っているわ」

 

 紫さんが虚空に向かって手を伸ばし、すーっとなぞるように手を下ろすと、ぱっくりと空間が割れた。

 

「それは、何なんですか?」

「それを教える役目は、私じゃなくてよ」

 

 ふふふ、と妖しく笑って紫さんは空間の裂け目へと入っていく。

 

 それを教える役目……それが一体誰なのか。もう大体検討はついている。

 ありがとうございます。紫さん。貴方のおかげで、紛い物じゃない、本当の勇気を持てました。

 

 

「それと、そろそろ想いを伝えなさい(、、、、、、、、)

 

 

 今度こそ、紫さんは消えた。

 

 ははは。結局、紫さんには全てお見通しってわけか。本当に、凄い妖怪だ。

 

 

「それじゃあそろそろ、始めようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やっとだ。

 

 漸く、自信が持てた。そして、自分の『想い』にも気が付けた。それはきっと、良いことだと思う。

 

 

 いつからか止まってしまった物語。

 そんな物語にもいい加減、終止符を打とう。

 

 そして、彼女に──博麗霊夢に、想いを伝えよう。近くに居すぎて、気づくことが出来なかった、この想いに。

 

 まずはそこから。

 まずはそんな一歩から踏み出してみようと思う。

 

 だから。

 だから俺は──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、霊夢」

「なによ」

 

 

「好きだぜ」

 

 

 

 

 




次回、最終話です。

第終話 平凡な俺と巫女のきみ

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