伏線を遠回しに回収したり、わざとしなかったり、または何の伏線も貼ってなかったやつを出したりと大忙し。
テンプレかもしれませんが、どうかご勘弁を(´・ω・`)
『ねぇねぇ、奏』
『どうしたの?』
『わたしね、おおきくなったら、奏のお嫁さんさんになるの!』
『え?』
突然の告白に、少年はぽかんと口を開ける。
『おれでいいの?』
『奏がいいの! だからね、わたしたちがおおきくなってもね……』
『おおきくなったら……?』
確か……6歳ぐらいだったかな? 少し舌足らずなとこを見る限り、きっとそれぐらいだね。
そして、少女は満面の笑みを浮かべて、けれど恥ずかしいのか、顔を真っ赤に染め上げながら──
──わたしの、隣にいてね?
☆ ☆ ☆
いつから俺は、こんなにも弱く──そして、こんなにも臆病になってしまったのだろうか?
昔は、一歩踏み出せてた。
どんなに怖くたって、どんなに恐ろしくたって、勇気を持って踏み出せてた。
だけど、今の俺は──弱い。弱すぎる程に。
怖いんだ。恐ろしいんだ。
周りの人間が、みんなが、そしてきみが、何を考えているのか、分からないから。
……いや、そうじゃない。分からないんじゃなくて、分からなくなったから。俺が、他人を信じることが出来なくなったから。
『お前なんて友達と思ったことねーよ! みんな嫌ってるよ!』
霊夢には、人里にも友達がいるなんて言ったけど、あれは嘘だ。俺には、友達なんて、いない。否、友人が『いた』って言い方が正しいかな?
裏切られた……とは違う。そもそも、彼らは俺のことを、友人とさえ思ってなかったから。
ただ、俺が1人で友達と思ってただけ。
彼らはずーっと、俺のことを敵として見ていて、そして自分達のことを友人と思っている俺のことを、嘲るように嗤っていたんだ。
理由は分からない。今となっては、分からない。今も昔も。これからも。
……彼らはもう、この世にはいないのだから。
まぁそういうことだ。俺が人を信じられなくなったのは、俺が臆病になってしまったのも、そういうこと。
霊夢がそんなことを思う人間だとは思わないけれど、でもやっぱり、怖いものは怖い。
周りが何を考えているか分からない。
周りが俺のことをどう思ってるか分からない。
きっと俺は最低なのだろう。
彼女達は──霊夢は、俺のことを本当に信用してくれてると言うのに、俺は彼女達を信用出来ない。
『俺のことを殺してくれて構わない』
俺がこの前、霊夢に言い放った言葉。
勇気を出して、言えた自分の思い。今こうして考えてみれば、あれは勇気とは程遠い、寧ろ真逆の思い。
俺はあの時、知った。思い知って、しまった。
彼女の思いに。
霊夢が、俺のことをどう思っているのかを。
きみは、本当に──俺のことを思ってくれていた。
だけどそれと同時に、俺が言った一言が、紛い物の勇気が、霊夢を傷つけた。
俺が霊夢の思いを知るのと同時に。彼女の思いを傷つけてしまった。
浅はかだった。霊夢の思いを考えていなかった。自分の意見だけ言って、それを相手に押し付ける。何ともまぁ、傲慢で醜い行為だ。人間として、最低だ。
ああ、クソ……
ダメだ……思考が上手く回らない。考えれば考えるほど、自分に対して怒りが湧き上がる。
初めてだ。こんなにも怒りが湧き上がってくるのは。彼らの真実を知った時でさえ、怒りよりも悲しみが上だったと言うのに……
「──俺は、弱いな」
「──ええ、そして今の貴方は、見苦しいわ」
誰に聞かせるつもりなく呟いた言葉。でもどうやら、誰かが聞いていたみたいだ。
ゆっくりと振り返ると、其処には変わったドレスを着た女性がいて、その瞬間、俺の頬に痛みが走った。
☆ ☆ ☆
『わたしねー、春が好きっ!』
『へぇ、そりゃまたなんで?』
『だって、奏と初めて出会った季節が春なんだもん!』
『きみらしいね』
なんとなく、少年はそう思った。
『奏は?』
『うーん、おれは秋かなぁ』
『へぇ、それまたどうして?』
『さぁ、理由はないかもな。多分、紅葉が綺麗だからじゃない?』
『なんかしっくりこないわね』
『そういうもんだよ』
☆ ☆ ☆
ヒリヒリと、頬が痛む。
口の中に鉄の味が広がる。どうやら、口の中が切れたみたいだ。
「なに、するんですか──紫さん」
「つい、ね」
紫さんはそう言って、扇子で口元を隠す。
紫さんは、この時期は冬眠しているんじゃなかったのだろうか? 冬は冬眠していると、霊夢から聞いた。
「今年は少し、遅くまで起きてたのよ。そうしたら偶然、ね?」
「盗み聞きは褒められたことじゃないよ」
「論点をずらさないで」
……そりゃバレるか。
流石は紫さんだよ。そういう細かいことに気がつく観察眼、羨ましい限りだよ。
「貴方、一体いつまでうじうじしてるつもり? いい加減にしなさい。見ていて気分が悪いわ」
「でしょうね。俺もそう思う」
好きで、こんなことをしてるわけじゃないんだ。
「でもさ、どうすれば良いか分からないんだ」
「…………」
「あの子の側に居たいんだ。だけど、俺じゃ相応しくないんだ。あの子の側に居るには。霊夢が、そんなことを気にしないのは分かってる……けど──」
彼女の側に居たい。でも、それを邪魔しているのは、他ならぬ自分自身。
この問題を解決するには、まずは俺を考えなきゃいけない。俺の根本を変えなければいけない。
「……そうね。確かに貴方には何の能力も才能も無いわ。人里を探せば貴方以上の存在なんて、何処にでもいるもの」
「だから、「でも」」
「──でも、貴方にしか無いものも、あるわ」
紫さんの目を見る。まっすぐこちらを見つめていた。
俺にしか、無いもの? そんなもの、本当にあるのだろうか? 俺には、分からない。
「そんなもの、俺にはない。誇れるものなんて、無い」
「あるわ……貴方には、他の誰にも負けない、立派なモノを持っているわ」
紫さんが虚空に向かって手を伸ばし、すーっとなぞるように手を下ろすと、ぱっくりと空間が割れた。
「それは、何なんですか?」
「それを教える役目は、私じゃなくてよ」
ふふふ、と妖しく笑って紫さんは空間の裂け目へと入っていく。
それを教える役目……それが一体誰なのか。もう大体検討はついている。
ありがとうございます。紫さん。貴方のおかげで、紛い物じゃない、本当の勇気を持てました。
「それと、そろそろ
今度こそ、紫さんは消えた。
ははは。結局、紫さんには全てお見通しってわけか。本当に、凄い妖怪だ。
「それじゃあそろそろ、始めようか」
やっとだ。
漸く、自信が持てた。そして、自分の『想い』にも気が付けた。それはきっと、良いことだと思う。
いつからか止まってしまった物語。
そんな物語にもいい加減、終止符を打とう。
そして、彼女に──博麗霊夢に、想いを伝えよう。近くに居すぎて、気づくことが出来なかった、この想いに。
まずはそこから。
まずはそんな一歩から踏み出してみようと思う。
だから。
だから俺は──
「なぁ、霊夢」
「なによ」
「好きだぜ」
次回、最終話です。
第終話 平凡な俺と巫女のきみ