踏み台だった野郎共の後日談。   作:蒼井魚

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10:全滅

 それは、とても辛い出来事だったと表現したらいいのだろうか、それとも、良い経験と表現したらいいのだろうか、だが、あの事件が無ければ、俺は輝夫と真の意味でわかりあえなかっただろうし、人間という存在の脆さを理解することも出来ていなかっただろう。だからこそ、今の自分が存在している。

 

 

 公園のベンチ、そこに並んで座っている少年、西風輝夫の表情は酷く虚ろで、人間の表情と表現するよりは、死人と表現した方がマシだと思える。でも、彼がこういう表情をしている理由を理解しているので、俺自身も、たいして良い顔はしていないだろう。

 

「......どんな気持ちだった?」

「......殺すのは怖くない。殺した後が怖い」

 

 西風の表現は的確で、それでいて、人を殺した人間の風格のようなものを感じさせた。だが、それを誇ることは一切なく、逆に、自分を責めているようにも感じられる。

 

「......アリシアみたいに生き返らせれば」

「彼女は、アビーは犯罪者だ。生き返らせたとしても......わかるだろ?」

「......すまない」

 

 西風は溜息を吐き出して、また、虚ろな表情を見せる。それくらい、人を殺すということは人間の心にダメージを与えるものなのだろうか? ゲームやアニメでは、平然と人が死んでいる。それを傍観して何とも思わない。だが、それを経験したら? 俺も、こいつのようになるのだろうか......。

 

「でも、俺達が入隊しないと、プレシアは外の世界に出られない。西風、おまえはどうするんだ?」

「......プレシアに任せる。まだ、プレシアの見解を聞いていない。もし、彼女が外を望むなら、俺は、犠牲になるだけ。内を望むなら、俺は、ただの一般市民に成り下がるだけさ......」

「.....覚悟は出来てるんだな」

「ああ、覚悟は最初からしてる。......逆に、付き合わせて悪い」

「いいさ、俺達は一応は仲間だ。互いに同じ利益を手に入れようとした、な?」

「......俺のことは輝夫って呼んでくれ」

「......じゃあ、俺のことは武蔵でいい」

「「死ぬなよ」」

 

 互いに死ぬなよ、と、一声かけて、各々の向かう場所へ移動する。

 

 

 鋭い音が響き渡る室内、この場は管理局が所有しているヘリの中、そして、その中にはテロリストを鎮圧するために編成された精鋭の魔導士達が静かに鎮座している。キョロキョロと辺りを見渡していると、隣に座っている魔導師に珍しいか、ヘリコプターが? と、言われた。

 

「いや、仮契約の嘱託魔導師がここまでの作戦に連れて来られるとは思わなくて......」

「......お偉いさんの考えることはわからんな。まあ、新人は後ろで俺達のバックアップをしてくれ。流石に嘱託魔導師を最前線で使う気にはならない」

「にしても、嘱託魔導師が連れて来られるとは、偉い人は俺達をバカにしてるのだろうか?」

「それは無いだろ、一応は対テロ部隊として編成された組織なんだ。そうだな、嘱託に実戦の惨さを知らしめるために連れてきたんじゃないのか? 俺は入隊当初は実戦部隊のバックアップしてたから」

「僕も同じく」

 

 魔導師達は自分の実力を理解しているのか、けっして俺のことを悪く言うことはない。それは慢心からか、実力からか、それは想像しえないものだ。

 

「新人、ベルトを外せ」

「へっ?」

「ああ、隊長、このヘリ落ちるんですね? わかりました」

 

 魔導師達は一斉に自分を拘束していたベルトを取り外し、デバイスをゆっくりと手に持った。

 俺も、それに合わせて一通りの行動を一緒にすると、ガタン、と、ヘリが揺れた。

 

「ああー落ちた」

「こら、質量兵器を使われてパイロットがお釈迦になったな」

「降りるぞ、あと、新人......この世界に地獄が存在していると思うか?」

「......?」

「外は地獄だ――まあ、楽しくない鬼ごっこだと思って、身に刻め」

 

 魔導師達は扉を開いて一斉に外に飛び出す。俺も追従した。

 地獄と表現するに値する風景が目を抉る。

 

「......地獄、か、こりゃ、地獄より地獄だ」

「だろ? 俺は大好きだ。生き延びた後の酒が美味いからな......」

 

 魔導師達は重力に任せて高速で地上まで素早く移動する。

 地上には見せしめだろうか、首を切られた死体が大量に転がり、中には妊婦、子供......赤子も転がっている。

 敵は俺達のことのことを見つけたのか、大量の魔導弾が飛んでくる。だが、シールドを張ればどうとでもなる程度のものだ。全員がシールドだけを張って落下する。

 

「多分、テロリストは廃城を根城にしてる。親分を殺せば手下の大半は動きを止める。それ以外は適当に倒すか、殺すかすればいい」

「どっちが犯罪者なのかわからんな」

「それが対テロ部隊だろ」

「......俺は、何を?」

「僕が地上で雑魚の相手をするから、それに追従してくれ」

「了解」

 

 魔導師の一人に付いていき、素早く地上に着地する。

 

「まあ、あっちの三人に任せれば城内はどうとでもなる。さて、あんまり綺麗な仕事じゃないけど、雑魚を殺すよ」

「......はい」

「覚悟が出来てないなら、まあ、非殺傷にしてもいいけど――僕が〆るから、たいした意味は無いよ」

「......大丈夫。決意は、心の中に」

 

 デバイスを構えて、ゆっくりと敵の位置を計算する。そして、魔力弾を一発、二発、三発と放った。基本的に自分の魔力を乱暴に使った攻撃を得意とする俺だが、今回ばかりは精密射撃に頼る必要がある。実を言うと、俺は大量の攻撃を放つとクールタイムが必要になる。まあ、その前に敵を殲滅すればいいだけの話なのだが、今回は敵人数が不特定多数であり、計算できない状態。そんな状態でクールタイムに入れば、まあ、死ぬのは免れない。だから、苦手意識を持ち合わせている精密な攻撃を連鎖させる。それが、現状、一番取らなければならない戦術だと理解している。

 

「......輝夫なら、どう戦ってるかな」

 

 ワラワラと溢れるように湧いて出てくる敵達を慈悲も無しに撃ち殺す。

 ゲームやアニメと変わらない。ただ、目の前で人が生き死にしているだけの空間。

 ――怖いのは、自分が死ぬことだけだ。

 

「流石に数が多いね......」

「ええ......」

 

 少しずつ死体が増え、そして、時間が深く経過していく。

 

「お、城から炸裂音が、こりゃ、隊長がやったかな?」

「終わり、ですか――なんだよ、あれは......」

 

 城から溢れ出るドスグロイ何か、それは、とても禍々しく、そして、気味の悪い蛇のようだった。

 

「......僕達以外の生命反応が消えた」

「......敵が、全員死んでる」

 

 溢れ出るように湧いていた敵達がゴロリと地面にすべて伏せていた。外傷なんて一つもない、だが、生命を感じさせる何かは感じられなかった。

 

「本部に連絡を入れる、流石に二人では、まあ、対処出来そうにないからね」

「......突入した人達は?」

「......それを考えるのは、すべてが終わった後だ」

 

 飛行魔法を使用してその場から逃げようとするが、魔法が使えない。

 

「......魔法が使えない?」

「......まさか、奴は魔法封じの獣だというのか?」

「魔法封じの獣?」

「ああ、百年くらい前に管理世界から外された世界に存在した伝説の魔物。たしか、魔法を完全に封印して、攻撃手段をすべて失うとか、なんとか......」

 

 魔導師は少し考えて、その場から離れることを提案した。少なからず、魔法が使えない状態で戦闘の持続は困難であり、本部で対応を協議する必要があると理解したからだ。

 

「足を使っての退避行動は習ってないけど、まあ、逃げられるところまで逃げるしかないね」

「はい......」

 

 俺は一目散に走り、そして、安全な場所を探した。

 だが、そんな場所、ありはしない。

 魔導師は突然に苦しみ、もがく、そして、胸に手を当てて、死んだ。

 

「......どう、なって」

 

 辺りを見渡して、突破口を見つけようとする。そして、不思議と自分の胸が痛くなったことを感じる。

 

「まさか、魔力が吸い取られて、リンカーコアが壊れた?」

 

 冷や汗がダラダラと流れて落ちる。

 

「......死ぬのか? 俺」

 

 その場に跪き、考える。すると、輝夫の顔が浮かんだ。

 

「――死ねない。アイツを本当の意味で慰めるまで、死ねないな」

 

 俺も、アイツの気持ち、輝夫の気持ちがわかったから......。

 自分に与えられた魔力、それは、神から授かった物。神の力を越える獣なんて存在しない。なら、俺は、奴を越える力を持っている――筈。

 吸い取られる魔力を自らの魔力で補って、空を飛ぶ。

 俺は、最強の力を持ってる。だから、おまえ程度に負ける筈がないんだ!!

 

「死ね! 気色悪い蛇野郎が!!」

 

 自分の出せる最大の破壊力の砲撃魔法。それも、殺傷設定のものだ。

 

「......崩壊の嵐!!」

 

 

 対テロ部隊の隊員の死体を一人一人探し、そして、ドッグタグを回収して歩く。

 

「隊長の名前、アダムって言うんだな、それと、ロイドとジャック。俺と一緒に戦ってたのがトム。エリートなのに、名前は普通なんだよな......俺の枚方武蔵っていう名前の方が絶対珍しいな、これ」

 

 トムが持っていた通信機を使って本部に連絡を入れる。

 

「全部終わった。でも、四人が死亡しました。はい、俺以外は全滅です......」

 

 

「正直、俺さぁ、プレシアが務所に入ってくれて嬉しかったわ」

「どうしてだ?」

「まあ、正直に言っちまうと、おまえは殺しても死ななそうだし。守ることとか考える必要ないじゃん。俺、守るの苦手だし、もう、仲間に死なれるのはこりごりだぜ」

「多分、俺の方が寿命短そうだがな」

「その時は、まあ、豪勢な墓を建ててやるよ――親友」

「出来れば、アビーの近くに埋めてくれ――親友」




【枚方武蔵】
 魔力量SSSの魔導師、実力は低いが、その魔力量から繰り出される強力な魔法は凄まじい。管理局が彼を何度もスカウトしたが、彼はそれを頑なに拒絶する。理由は「後ろを守ってくれる奴は輝夫だけで、それ以外は死んじまうから」かららしい。

【作者から】
 暑くて文字が伸びません。あと、次から日常ほのぼのの再開です。

投稿ペース

  • 一秒でも早く書いて♡
  • ネタの品質を重視してじっくり!
  • 冨樫先生みたいでええよ~
  • 絵上手いから挿絵積極的に
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