踏み台だった野郎共の後日談。   作:蒼井魚

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28:絶唱

 ワイの名前はバルバロイ、この海鳴では有名なコスプレパチンカーや!

 今日も今日とてホールに並ぶ。今日はイベント規制される前の旧イベントと呼ばれる日なんや、やから駅前のホールには百人近い行列が出来とる。

 

「……今日は多いわね」

「なんでプレシアはんがいるんでっか……」

「また、やっちゃったのよ……」

 

【回想】

 

 プレシアはいつものようにテレビを死んだ顔で眺めている。娘達は輝夫の写真を賭けにトランプ遊び、オイチョカブとかいうものをやっている。彼女は思った、この子達は真っ当な人間から外れはじめているのではないかと……。

 

「ブタ……フェイト? お願いだからその写真だけは……!」

「姉さん……これは勝負なんだよ……」

 

 秘蔵のメガネ着用輝夫写真を奪い取るフェイト、その写真を奪われて涙目になるアリシア、この光景は他人から見たら異質としか言いようがない。プレシアは冷ややかな目でそれを眺めていた。

 

「お母さん! フェイトがわたしの写真とったー!!」

「ち、ちがうよ! 姉さんが写真を賭けて勝負しようって言ったから!!」

「あなた達……お母さん少し悲しい気分だわ……」

 

 確かに育児放棄していた期間が長い自分だが、ここまで自分の娘二人が一人の男に入れ込むなんて思ってもいなかった。確かに輝夫は超優良物件、大金持ちで容姿端麗、腕っぷしも強くて頼りになる男だが、自分の守備範囲外の女の子には一切の興味を示さない。黙って二十歳になるまで待てばいいとも思っている。

 

「お母さん! もう一回バルからパンツ買ってきて!!」

「え、えぇ……」

「フェイトも輝夫のパンツと交換だったら返してくれるよね!」

「……パンツならいいよ」

 

 プレシアの瞳から雫が一粒ながれた。

 

「……駄目よ、女の子が男の子のパンツなんて」

「お小遣い……いらないの……?」

「お小遣いがないと遊べないよね?」

「……わかりました」

 

 

【回想終了】

 

「娘から小間使いにされるとか母親としてどうなんですかね……」

「母親としての尊厳を剥奪された気がするわ……」

 

 プレシアはんはすっごいグロッキーな顔でワイのことを見つめる。これはパンツを買わせてくれという意思表示やろうか? でも、あの北斗無双事件以来はディスクアップを打って収支がプラス域に達したのでご主人はんのパンツなんぞ触るつもりはない。

 

「お願いよ……今回は一枚でいいから……」

「嫌や! ワイはご主人はんのパンツなんぞさわりとうない!!」

「お願いだから……」

「どうして娘はん達に主導権とられてんでっか……」

 

 プレシアはんがご主人はんが見てるアニメの【アクア】とかいう女神のように縋り付いて揺らしてくる。そこまでして人間としてどうだろうかと思うのだが、ここでマズイことが起こる。

 

「お客さん……喧嘩はおやめください……」

「喧嘩じゃありまへんがな」

「お願いだからパンツを!!」

「え、その人変質者ですか……? 警察を」

「え、ええ、違いますんで! もう行きますわ……」

 

 せっかくのイベント日なのにプレシアはんの言動のせいでワイは抽選を受けることが出来なくなった。

 

 

 場所は移ってホールの近くにある公園、そこのベンチに腰掛けている。

 イベント日の列の中間と言うたら良い番号が引ける場所やのに……この紫髪ババアに邪魔されてもうた……。

 

「プレシアはん……お願いやからワイの趣味の邪魔をしないでくださいな……」

「だって、パンツを手に入れないとお小遣いが……」

「ファミレスとかで働けばええでしょうが……」

「私、ミッドチルダの名門大学を主席で卒業した超エリートなのよ……?」

 

 この人、元犯罪者なのにプライドだけは一丁前やな……娘から貰える小遣いで遊び回ってるちゅーのに……。

 ワイは席を立って近所のマ●ハンに向かって足をすすめる。あそこは釘も設定もウンチなゴミやけど、駅前のホールはだいたい打たれてるやろうしマ●ハンかダ●ナムくらいしか打てる場所があらへん。

 

「……パンツを」

「じゃあ、ワイと出玉勝負しまへんか? ワイに出玉で勝ったらパンツを売ってあげましょう」

「本当!? 早く行きましょう!!」

「どうしてパンツなんか……」

 

 ワイとプレシアはんはボッタクリ店へと続く地獄の道を歩みはじめた。

 

 

 タクシーを拾って郊外の大型ボッタクリ店マ●ハンに到着する。駐車場にはそれなりの車が止められており大型店の風格が感じられる。まあ、サービスなんてワイにはいらんのですがね、永久機関積んでるロボットやから寝なくてもいいし、飯も食わんでええ。

 

「マ●ハンでスロットは自殺やからパチンコにしましょうか」

「隣を打つからなんでもいいのだけど」

 

 グルグルとパチンコの島を回って決心した。北斗無双はプレシアはんと相性がいいからシンフォギアにしよう! サミーと相性がいい人間は基本的にサンキョーと相性が悪い! ワイは昔からサミーと相性が悪いねん、でもサンキョーさんはワイと相性ベリマッチグーなんや!!

 

「へへっ、今回はワイが勝ちまっせ……」

「勝たないとパンツが……」

「いい加減にパンツを脳みそからデリートしていただけませんかね?」

 

 サンキョーが偶然にもヒットさせた歴史的名機【CRF・戦姫絶唱シンフォギア】に着席する。流石はマ●ハンと言わんばかりの処女のようにキツキツのへそを見て若干だが心が折れそうになりますわ。でも、優良店は軍団が選挙する時間帯やし、このマ●ハンで勝負するしかないんや!

 

「これ……なに待ち……?」

「保留変化したらオールレンジチャンスくらいですわ、プレミアもいっぱいありますから」

「どこからでもチャンスなのね……」

「じゃあ、失礼して……さらば諭吉!」

 

 CRF戦姫絶唱シンフォギアの特徴は規制されたとは思えない程の出玉効率の高さ、最終決戦のドキドキ感、一万円で勝負できる199というスペック、どれも絶妙なバランスで設計されとる。一種二種混合機が今の時代に台頭してきた理由になった一台や! こんな楽しい台で負けるわけあらへん!

 

『夜の九時以降は食事を控えている』

「え? この子……フェイトとアリシアに声が似てる……」

「知りませんがな……」

 

 生粋のパチンカスであるワイが声優のことなんてわかるわけあらへんのでそのまま流す。でも、ご主人はん的に言えば中の人が一緒だとかそういう感じなんやろうなぁ……。

 千円が消えたところで回転数は12……これは客に遊ばせるつもりあらへんと一瞬で気がつく回転数やん……。

 パチンコはだいたい千円で18くらい回らないと遊技なんてできまへん。ボーダーライン20超えの台が沢山あるのにホールでは千円12~15という釘設定が多すぎて頭痛くなりますわ……。

 

「……青保留か」

「え、青保留消化したんでっか!?」

「え、ええ……青保留だったけど……」

 

 プレシアはんの台が速攻でプレミアの青保留消化を果たした。何千回転と回して一度も達成したことのない青保留消化とか……。

 音量設定を3にしていたのか鳴り響く爆音が島に響き渡る。

 

「プレシアはん……音量を2にしてください……」

「えっと、このボタンかしら……」

 

 プレシアはんの豪運はワイにはわからん……でも! このシンフォギアは319ではなく199なんや!! ワイだって最終決戦を突破できたらイケるはずや!!

 

「最終決戦?」

「右打ちして保留を貯めるんやで」

「へぇ……」

 

 プレシアはんが右打ちを開始する。そして一発目に絶唱パネルが出現した。

 この時、ワイは確実に負けること理解してしもうたんや……。

 

「あ、扉が閉まったわ!」

「おめでとうございます……」

 

 プレシアはんは右打ちを続けてV入賞させる。そしてチラリとセグを見たら16Rだった。この人のツキはどこから湧き出てるんやろ……。

 

「キャラクターを選べるのね……フェイトとアリシアに声が似てるこの子で……」

「ワイも熱いのほし――ッ!?」

『そいつが切り札だ!!』

「デュランダル来たー!! ワイも土俵に立ったるわ!」

 

 38回転目にしてデュランダル! こんなの外すわけ無いやん!!

 デュランダル保留はそのまま70億人の絶唱に突入していく。

 

『わたしが束ねるこの歌は……70億の……絶唱だぁああああああああ!!』

「ありがとうございまーす!」

『スカッ』

「へ?」

 

 Vコントローラーを引いた瞬間に響き渡るスカ音、ワイの心が凍りついた。

 

 

「この台凄いわね……二時間で三万発……」

「また、またでっか……またこのパターンでっか……」

 

 回転数はいつものように600回転、199の三倍の数字が表示されている。パチンコは完全確率のはずなのにワイの台はパーペキに死んどる……。

 プレシアはんは右打ちし続けて毎回毎回保留連させて八割が16Rという化け物っぷり、下振れと上振れというのはロボットにしか通用せんのかもな……。

 

「ワイは諦めないで……打つのを諦めないで……!」

 

 

「フェイト……アリシア……よく頑張ったわ……」

「……ご主人はんと無理心中しようかな?」

 

 1300回転ハマってるシンフォギアとかはじめて拝見させてもらいますよ、199で1300はヤバイですね、これは逆に神がかってる何かを感じますわ。

 

「もう財布が空っぽですわ……パンツ拝借してきます……」

「……倍プッシュ」

「え?」

「二枚よ、一万円貸すから二枚! 一枚あたり一万円で買い取らせてもらうわ……!」

 

 え、ご主人はんのパンツを一枚強奪するだけで一万円!? ええやん!!

 

 

 どうも、輝夫です。

 自室でダラダラしているとバルが扉を蹴破って部屋に侵入してきました。こいつは脳みそが故障したのでしょうか?

 

「今履いてるパンツを寄越せぇえええええええええええ!!」

「は?」

「貴様が渡す小遣いが少ないのが悪いんや……貴様が悪いんや……!!」

「えぇ……」

 

 この後、ボロボロになるまで破壊してからアセンをフラジールにしました。




 シンフォギアで1300回転ハマらせたのはいい思い出(白目)

投稿ペース

  • 一秒でも早く書いて♡
  • ネタの品質を重視してじっくり!
  • 冨樫先生みたいでええよ~
  • 絵上手いから挿絵積極的に
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