踏み台だった野郎共の後日談。   作:蒼井魚

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35:一日

 西風輝夫の朝は遅い。

 平均的に人間が最も行動的になる八時頃から二時間過ぎて十時頃にだいたい目を覚ます。

 そして、必ずと言っていい程に口に出す一つの言葉、それは。

 

「どうも、輝夫です」

 

 誰も部屋にいないのにこの言葉だけは必ず忘れない。自分という存在を西風輝夫だということを提言することが快感になっているのだろうか? 理由は未だにわからない。

 彼はパジャマ姿のままで洗面所に行きイケメンフェイスと白い歯を維持するためにキッチリと洗顔、ブラッシングをする。マメな清潔感は非常にイケメンらしいと言える。

 

「あら、ヴィータ来てたのか」

「今日は休みだからな」

 

 リビングルームに入るとソファーに腰掛けてテレビを眺めている。

 彼は隣に座ってヴィータを抱き上げて自分の膝の上に乗せて頭を撫でる。可愛らしいお人形を愛でるような行為だが、彼女は嫌がる素振りは見せずいつものことだという顔で二人でテレビを眺める。傍から見たら非常に仲のいい兄妹にも見えなくはない。

 

「昼飯なにがいい?」

「うーん……和食……」

「納豆は」

「あれは嫌いだからやめろ」

 

 ヴィータの頭を一通り撫でて彼女を抱き上げて隣に移動させる。

 立ち上がってキッチンに到着すると冷蔵庫の中身を確認する。和食と言われたのでオーソドックスな和食系の朝食に近い感じの料理を作ることを決める。

 まず欠かせないのは味噌汁、彼は赤味噌より白味噌のまろやかな味わいが好きなので八割程度の割合で白味噌を使用した味噌汁を作る。変化を求める時に限って鰹節を濃ゆく抽出したダシの白米が進む味噌汁を作ることもある。

 

「あ、米が夕飯分ないわ……買い物行かねぇと……」

 

 大型の米びつには昼食分程度の米しか入っておらず補充するために買い物に行かなければならない。

 とりあえず残っている三合分の米を取り出して米研ぎ、冷蔵庫からミネラルウオーターを取り出して少しだけ水の量を多めに調整する。これも彼の趣味だ。硬めの白米も悪くないのだが、米の甘みと風味を口に入れた瞬間に感じられるのは柔らかめの調整だ。

 

「ああ……腰が……」

「おはようございます」

「湿布ある?」

「熱冷まシートしかねぇよ」

 

 顔色の悪い武蔵が冷蔵庫から栄養ドリンクを取り出して一気飲みする。その後の渋い表情は栄養ドリンクの類があまり好きではないという現れだ。輝夫に至っては栄養ドリンクは一滴も飲めない。飲んでいるのはビタミン剤くらいだろう。

 

「味噌汁の具は豆腐がいいのですが」

「今日は玉ねぎと溶き卵だ」

「それに豆腐入れて、出来ればワカメも」

「春雨スープに豆腐入れてやるよ」

 

 味噌汁に豆腐を入れないのは非国民だと罵る武蔵にローキックを放って台所に立ち直す。

 味噌汁の味付けは満足がいくものになったので他の食材の準備にとりかかる。

 冷蔵庫を見回してみると鮭のパックが転がっているので適量の塩をふりかけてグリルに打ち込む。

 

「魚って切り身の状態で泳いでるよな」

「ペットが死んだら電池入れろってか」

 

 一昔前の定番ジョークを互いに言い放って無言の時間が続く。

 炊飯完了の音が鳴り響いたと同時にしゃもじを取り出して米を混ぜる。

 

「卵焼きと目玉焼きどっち」

「目玉焼き」

「卵焼き」

「はいはい、どっちも作りますよ」

 

 乱入してきたヴィータの鶴の一声で二つの卵料理の支度に入る。

 卵焼きはオーソドックスに砂糖で仕上げた甘めの味付けで調整を入れる。実際、輝夫は甘い卵焼きは好きではないのだが、日本人が作る卵焼きはスウィーティーでないと叩かれるので基本的にゲロ甘に近い味付けをしている。

 

「なんで卵焼きって甘いのがいいのでしょうね?」

「え、卵焼きって甘いものだろ?」

「固定概念って怖いねぇ……」

 

 キッチンペーパーに油を染み込ませてフライパンに塗り、卵を流し込む。その後は油を塗りながら少しずつ焼いていく、最後には綺麗な卵焼きが出来上がってまな板の上で適量に切り分けられて皿の上だ。

 目玉焼きは卵4つを普通のフライパンに乗せて出来合いの塩コショウをふりかけていい感じに焼けたところで水を少量入れて蓋をする。

 

「ああ、朝ごはん作るのしんどい」

「俺の得意料理はカップラーメンだ!」

「おまえのカップ麺はお湯の量が足りないんだよ」

「濃ゆいほうが美味しいだろうが!?」

「これが若さか……」

 

 鮭を取り出して朝食のおかずは出揃った。

 リビングルームに並ぶ質素だが和風の朝食、簡単に見えるが作り手の手腕が試される食事だ。

 

「「「いただきます」」」

 

 こうして一日がはじまる。

 

 

 輝夫は冷蔵庫の貯蔵量を確認してメモ帳に不足している食材を書き記してリュックサックを背負う。地方ではからうと言うらしい。

 

「買い出し行ってくる」

「寝ます」

「ハーゲン」

「君達は自立という言葉を辞書で調べなさいよ」

 

 この二人は自分という存在が消えたら確実に自滅すること革新する。長生きをするつもりは一切ないのだが、自分が死んだら二人を道連れにしてしまうと考えると死ねないと思ってしまう。

 ダメ人間を見る目で二人を眺めるが開き直ってる二人に効果はないようだ。

 溜息を吐き出して家を出た。

 扉を開くと地面にパンツと手紙が置かれていた。

 

「……またか」

 

 輝夫はパンツと手紙を拾い上げて確認する。

 

【手紙】

 

 輝夫、ごめんなさい。

 深夜に輝夫の部屋に入りました。窓の鍵も壊しました。

 輝夫の寝顔凄く可愛かったよ♡

 パンツを盗んだけど、わたしのパンツを渡したら許してくれるよね?

 

『フェイト・テスタロッサ』

 

「窓の鍵壊したのフェイトだったか……」

 

 手紙とパンツを庭仕事のゴミ箱に捨ててスーパーマーケットに足をすすめる。

 ――刹那、ニュータイプの閃き音が響き渡る。

 輝夫は玄関の上に設置されてある監視カメラを引き抜いた。

 

「月村の野郎……また仕掛けてやがったか……」

 

 輝夫の行動を監視するためだけに付けられた監視カメラ、これで三台目になる。これもゴミ箱に投げ捨てる。が、まだ視線を感じるのはなぜだろうか? 周辺を注意深く確認してみると黒塗りの高級車が家の前に停まっている。

 

「輝夫様、メガネを着用してください」

「鮫島さん……お嬢様の躾をちゃんとしてください……」

「これも仕事なので」

 

 手渡されたメガネを着用した瞬間に大量のシャッター音が響き渡る。

 メガネを返して助手席に座る。

 

「米買うんで付き合ってください」

「わかりました」

 

 ストーカー怖いなぁ、とずまりしとこ。

 

 

 一週間分くらいの食材を鮫島さんと一緒に運び込んでコーヒーブレイク、鮫島さんが帰った後は庭に出てトレーニングを開始する。

 

「飽きねぇな……輝夫って三日坊主体質なのに……」

「ヴィータさん? ぼっくんはステータス高くしないと変態に捕食される立場なんですよ、察せ」

「男って女に食われるのが最高の幸せじゃねぇのかよ」

「俺にだって選ぶ権利がある」

「100人が一瞬でお願いしますと言うような奴しか侍らせてないくせによく言うな……」

 

 汗だくのTシャツを脱ぎ捨てて懸垂を開始する。が、三十回目に到達した瞬間に携帯電話が鳴り響いた。輝夫は溜息を吐き出して電話を取ると優しい声色だが、奥底に冷たい何かを含ませた何かを感じさせる。電話の相手は月村すずかだ。

 

「また……監視カメラ壊したよね……」

「他人の家に監視カメラ設置していい法律あるんですかね?」

「恭也さんが頑張って設置してくれてるんだよ……」

「義理の兄貴に何させてんだよ君は!?」

 

 戦闘民族高町の長男さんがこんな雑務に従事しているという事実に項垂れる。あの人、プライドの塊的な性格していると思っていたが、案外、頼られたら断れない性格してるのかもしれない。そう思う共この頃である。

 

「君はもう少し年上を敬いなさいよ……」

「じゃあ壊さないで♪」

「いやです」

「なんで(マジギレ)」

 

 通話を終わらせて電源を消す。学校が終わって二十分くらいだから、到着までの時間を逆計算すると追加で二十分くらいだろうか。彼はトレーニングを早めに切り上げて風呂場に向かう。

 

「風呂入って逃げよ」

「おまえも忙しいなぁ」

「運命のいたずらに翻弄されてるんだよ、悲しいねぇ」

 

 

 硝煙の香りが漂う薄暗い部屋、ここは輝夫&武蔵ハウスの地下室。3レーンの射撃訓練用の的が用意されており、輝夫の網膜認証で入ることが出来るこの家で最大のセキュリティーを誇る部屋だ。

 部屋には輝夫が今まで集めてきた銃火器類が几帳面に並べられておりハンドガンから無反動砲まで多種多様なラインナップとなっている。

 

「油差しは三日前にやったからなぁ……」

 

 ガンロッカーに並べられている中の一丁、輝夫にしては珍しいオートマチックの拳銃、ベレッタM9A1を取り出して段ボール箱に入ってある9mmパラ弾を取り出してマガジンの中に六発込める。そして装填、レーンの前に立って人形のペーパーターゲットに向けて引き金を引くと玉は発射されることなく撃鉄を叩く音だけが木霊する。

 M9A1はダブルアクション拳銃であるため、何度も引き金を引くが弾薬は飛び出すことがない。

 スライドを引いて不良品の弾薬を取り出して新しい球でトリガーを引くと一応は球は弾けたがペーパーターゲットに銃痕は残っていない。

 

「はぁ……オートマチックに嫌われてんだよなぁ……」

 

 マガジンを抜き取って薬室に球が残っていないことを確認してからM9A1をばらしてく。そしてバレルの中身を確認すると銃口の中に弾頭が詰まっていた。

 チープアーモというのを聴いたことがあるだろうか? 日本のような国では闇の人間でも拳銃弾の入手は非常に厳しいものになっている。弾薬の形状が変形していたり、炸薬が液化していたり、弾頭と薬莢の噛み合わせが緩いなどの要因で銃に異常は無くても、球に問題が出ることである。

 

「武蔵が弾くと普通に球が出るんだがなぁ……」

 

 M9A1を置いて撃ち慣れたM686を取り出してペーパーターゲットに向けて引き金を引く。

 下腹部に着弾しているが輝夫の表情は渋い。

 

「なんでだろうな……人が殺せる場所ばっかり狙うようになってしまったんだろうな……」

 

 ペーパーターゲットに残る銃痕は下腹部、臓器で言えば肝臓に着弾している。一撃で死ぬことはないが、治療をおこなわなければ確実に死ぬ臓器だ。

 

「だめだなー……弾薬の無駄だし上がるか……」

 

 M686に新しいマグナム弾を装填して階段を登っていく。

 網膜認証を通して押入れの隠し戸を開けてリビングに戻るとヒロイン達がお茶会を繰り広げている。こいつらは他人の家をファミレスか何かと勘違いしているのではないかという表情になっている。

 

「あー……ランニングに行くんで勝手に寛いでて……」

「「サンドバッグとうちゃーく……!」」

「地獄に落ちろクソ女共……」

 

 まず最初にアリサの炎を纏う拳が輝夫の顔を抉る。

 

「あべし!?」

 

 次ははやての闇のパワーを纏う蹴りを放つ。

 

「おぼば!?」

 

 その後はモザイク必須な絵面になる。

 

「俺は……なんでこんな辛い思いをしないといけないのか……」

「十六話から読み返してきて」

「フェイトさん……そのネタは駄目だって……」

 

 こうしてヒロイン達が気が済むまでリンチされた。




 親戚のお葬式があったからごめんなさい! 遅れました!!

 というわけで、出来る限り月曜日までに仕上げるので頑張ります。

【追記】

 梅雨が近付くと偏頭痛が頻発する体質なので辛いです。
 食欲不振とゲリ気味なのでゆっくり書かせてくれたら嬉しいです。
 活動報告にも動揺のことを書きました。ご理解お願いします。

投稿ペース

  • 一秒でも早く書いて♡
  • ネタの品質を重視してじっくり!
  • 冨樫先生みたいでええよ~
  • 絵上手いから挿絵積極的に
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