踏み台だった野郎共の後日談。   作:蒼井魚

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38:こたつ

 どうも輝夫です。

 最近はお日様が顔を見せてくれる時間が減ってどんどんお月様が下剋上の準備をしている今日この頃ですね。そんな寒がりなぼっくんは日本人の心であるこたつを引っ張り出してリビングに設置してあります。もちろんこたつの上には若干青いみかんも完備していますよ! 甘いみかんも美味しいのですが、この季節だけの酸味の効いたみかんも格別ですよ。

 

「ああ、こたつっていいなぁ……輝夫、ジャンブ買ってこいよ」

「殺されてぇのか? 自分のフットで買いに行け」

「ワンピース読みたいんだよ……」

 

 みかんを手にとって手の中で転がす。そして皮を剥いて一口。

 

「あれ、輝夫ってみかんの白い部分も食べられるタイプ?」

「いや、普通に食えるよ? もしかして食えないタイプ」

「いや、食うよ」

「なぜに質問したし……」

 

 もぞもぞとこたつの中から這い出てきた美少女が俺の膝に腰掛ける。そして剥いたみかんを略奪して甘酸っぱいと言わんばかりの表情で貪り喰っている。

 

「ヴィータなんか久しぶり」

「この一年の八割をお前達クズと一緒に過ごしてるのになぜ久しぶりだ……」

「クズ言うなよ……間違ってねぇけど……」

 

 こたつでぬくぬくしていると強烈な眠気が襲ってくる。食料の備蓄も布団の天日干しも昨日やっているわけだし、今日やることは夕食の準備まではない。そうなってくると本でも読んで静かに時間を過ごそう。

 ――聞き慣れた炸裂音。

 携帯電話を取り出していつものガラス屋さんに連絡を入れる。

 

「もしもし、いつものようにガラスをお願いします。え? 新製品の防弾ワイヤーガラスですか……リビングの窓ガラス全部でいくらですか。ああ、百二十万ですか、保証とかあります? 二年無料取り替えですね、わかりましたカードで」

「二年無料取り替えとか超良心的だな」

「ああ、普通のガラスよりトータルで安くなりそうだぜ」

「外の風が……さむっ……」

 

 窓から侵入してくる八神、今日は珍しく一人で侵入しているし平日の真っ昼間だ。この場合は仕事に行ってみたらやることなくて直帰したというパターンだろう。

 八神は寒い寒いと連呼しながらこたつの中に入ってくる。清々しいくらいのマッチポンプで尊敬できますよマジで……。

 とりあえずこたつから抜け出して雨戸を閉めに肌寒い庭に出る。本当に何なんですかねヒロインって……。

 

「おかえりー」

「ただいま……」

 

 こたつの上のみかんを笑顔で食べている八神を睨んでみるが効果は無いようだ。こいつの性格という毒を解毒する毒消し草ありませんかね?

 とりあえず家のこたつは長方形の四角形なので上限は四人、俺のスペースはある。

 

「ヴィータは俺の妹的存在だから許すけどさ、八神さんよぉ……君はもう少し他人との距離をね」

「だって暇やもん、そんな遠慮する関係やないやん」

「ありますね、大いにありますね。君は年に一回会うか会わないかの従兄妹か再従兄妹くらいの距離だからね、マジで窓を破壊して侵入して許されるくらいの関係なんてないからね!」

「従兄妹でも結婚できるよ?」

「その無駄なポジティブやめーや」

 

 初期状態の輝夫キライキライモードがマジで懐かしいぜ、こいつも今やガチで俺の童貞を奪おうとしている一人だからな……。

 もう住居侵入されたので逃れる術が存在しないのでこたつに潜り込む。

 ――股間に伸びる腕を防ぐ。

 

「こたつという死角でなにしようとしてんだよおめぇー」

「なんとなく」

「なんとなくで股間を触ろうとするな! エッチな本じゃねぇんだぞ!!」

 

 八神は渋い顔で手を引っ込める。

 これが俗に言うガッツリスケベという存在なのでしょうか?

 

「まあ、ヴィータが最近暇そうにしてるから仕事が少ないとは薄々感づいていたわけだけど……」

「平和やからな、書類仕事も少なくて労働者としては楽でええわぁ」

「ニートとしては絡まれたくない存在に大量のお仕事を降らせたいですね……」

 

 お昼の昼ドラが始まったので全員の視線がドロドロとした愛憎劇に釘付けになる。この時間帯のドラマって本当に人間の醜さが出てて最高に……この感情を言葉で言い表すことができない。

 唐突に頭の中から声が聞こえる。

 

『ご主人はん……種銭くだはい……』

「また負けたのかよ、最近の勝率悪いなおい……」

『だって、だって! プレシアはんがおるんやもん!!』

「テスタロッサママンと勝敗になんの因果関係が……?」

 

 自称パチプロの言ってることがわからん。でも、あの爺さんの葬式で色々と手助けしてもらったわけだし……小遣い分くらいは渡しておくか……。

 

「取りに戻ってこい。8万だけだがな」

『マジでっか!? うっわ、ご主人はんが優しいとかめっちゃキショイ!!』

「殺すぞテメェ……」

『ワイの場合は壊すの方が正しいでっせ』

「揚げ足とるなよ……」

 

 テーブルの上にある財布を手に取り中身を確認する。二つ折り財布に十万円以上入れるとポケットにいれにくいのよね、でも長財布はギャル男っぽくて使いたくないのよ。あ、武蔵は100万くらい入る長財布使ってるよ!

 

「ご主人はん! お金!!」

「早いなオイ……」

「空飛んで来ました!!」

「八神さん、この機械を逮捕していただけませんか? この世界で空を飛ぶ使うと犯罪ですよね」

「魔道士限定やから、機械はノーカン」

 

 仕事しろよ管理局と心の底で叫んでバルに8万円を渡す。するとぴょんぴょんと飛び跳ねてから窓を開けて飛び立っていった。嵐のように来て嵐のように去る粗大ごみだな、SNSでバズりそう。

 心を無にして静かに本を読みすすめる。読書少女である八神は本を読んでいる人間の邪魔なんてできないだろう。本さえ読めば絶対に安全だ。

 

「お、あの先生の最新刊やん!」

「ナチュラルに俺の膝に乗るなバカ、座高低い方なんだよ……」

「最初のページから……」

「せめて栞入れさせてよぉ……」

 

 読書少女なら邪魔してこないと思っていたのだが、俺の予想なんて絶対に外れるのがこの世界ですからね。受け入れますよ。

 妙に股間に響く女の子の香りで頭がクラクラする。

 

「あ、マミちゃん? 今夜暇。え、ミホちゃんとお茶してんの! じゃあ、今夜ごはん食べに行くよw え? 夕飯の後は何するって……わかってるくせにぃw 二人とも食べちゃうぞぉ!!」

「なあ、輝夫。あのゴミってよく殺されへんな」

「わたしにもわからん」

 

 武蔵のセフレ達は本当に寛容だな、普通の女なら独占欲で2Pなんて絶対に許さないだろ……。

 子狸の頭を眺める。俺が同じことしたら嫉妬で殺されるより酷いことされるだろうなぁ……。

 

「同じことしたら手足切り落として、目玉を刳り……舌を引っこ抜くよ……」

「……未来の彼氏可愛そうだね」

「未来の旦那様が何言うとるん?」

「ノーコメントで」

 

 ヒロイン武力派の一派であるこいつに拒絶なんてしたら……ああ! 恐ろし!!

 武蔵の暴走とみかんを米のように食うヴィータ、俺の本を強奪して普段どおりのかわいい顔で物語に熱中する八神……俺だけ暇つぶしができてないのですが……。

 まあ、こういう日もあるよね――雨戸が取り外され地面に着地する音。

 

「はやて……抜け駆け禁止だよね……」

「こたつ温かいよー」

「輝夫に座るなんて……」

「ねえ、君達? 君達の敵はこの八神さんだよね! なんでぼっくんに武器を向けるのかな!?」

 

 もう嫌だこんな生活……渡米してやる……。




 12月31日までに一話投稿したいなぁ(お正月特番)

投稿ペース

  • 一秒でも早く書いて♡
  • ネタの品質を重視してじっくり!
  • 冨樫先生みたいでええよ~
  • 絵上手いから挿絵積極的に
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