踏み台だった野郎共の後日談。   作:蒼井魚

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39.5:絶対に笑ってはいけない(前編2)

 フィギアと箱に入っていたデ○ルドをガムテープでぐるぐる巻きにして冷蔵庫の冷凍庫に隠して椅子に座る。もう嫌だ。絶対にメインターゲット俺だよ……。

 武蔵の方を見ると姿鏡に映る自分を凝視していた。

 

「……俺さぁ、ナルシストじゃねぇけど結構な美少女だな」

「ぷっ……あ!?」

 

『輝夫アウトー』

 

 高町が颯爽と現われて尻をシバいて帰っていく。

 

【笑うとお尻を叩かれる】

 

「いっつつ……自画自賛は反則だろうが……」

「いや、おまえも男の俺からしたらイケメンだぜ」

「はは、褒めるな……あ」

 

 高町が見事なスイングで骨盤を刺激して帰っていく。ソフトSなのにぃ……。

 武蔵はドヤ顔で口元を隠している。こいつ……嵌めたな……。

 指差して口元を隠している武蔵を指摘する。だがアウトの声は響かず監視カメラに手を振るが全然反応しない。

 

「ねえ、俺だけ判定広くない? むさしきゅんも微笑んでるじゃん……叩かれろよ……」

「微笑みはセーフなんじゃね」

「まじ? にひー」

「にひー」

 

『全員アウトー』

 

 振り向くと高町とヴィータが靭やかな棒を持って入ってくる。

 

「あへっ!?」

「おしりがオ○ンコになっちゃうぅ!!」

 

『輝夫! 言動的にアウトー』

 

 え? 言動的にアウトってなによ……?

 高町が靭やかな棒からプラスティック製の子ども用バッドで武装して戻ってくる。

 

「あの、えっと……靭やかな棒三回で許していただけませんか……」

 

 壁に背を向けてバッド攻撃を回避しようとするがニッコリ笑顔の高町は見事なスイングで腹部を振り抜いて腹筋破壊して帰っていく。

 蹲って靭やかな棒がいかに人道的な武器なのかを再確認する。

 

「うーん、あのスイングは全盛期の巨人阿部を連想させるな」

「ぽんぽんいたいでち……」

「輝夫、おかえりんこ」

「ただいマ○コ」

 

『輝夫! 言動的にアウトー』

 

 スキップしながら入室した高町がプラスティック製バッドで尻を振り抜いて帰っていく。

 むさしきゅんは完璧に俺を嵌めに来たな……。

 

「綺麗なバレンティン! 俺じゃなきゃ見逃しちゃうね」

「……おかえりんこ」

「ただいま」

「なんでだよ!? オマ○コ言えや!!」

 

『輝夫! 言動的にアウトー』

 

 二度あることは三度ある。

 高町の打撃の評価を考えている武蔵と冷蔵庫の水で尻を冷やす俺。

 

「あのスイングはなぁ……誰だろ……」

「もうさ、その選手に例えるのやめろや……高町が野球少女だと勘違いされるだろうが……」

「強いて言うならラミレスだな」

「ふっ……ハマの監督じゃねぇか……」

 

 武蔵が俺のことを指差す。そして監視カメラに手を振るが反応しない。

 おお、特番特有のちょっとしたミス! 一回セーフだったぜ。

 不服そうな武蔵が椅子に椅子に座る。

 

「不毛な貶め合いはやめようよ、平和が一番! LOVE&PEACE!!」

「でもさ、人が理不尽な暴力に苛まれるのって最高だぜ」

「小生も見たいんですけどぉ!?」

 

 武蔵の手のひらの上でコロコロされていることを悟り深呼吸を繰り返す。もう武蔵の罠に引っかからないぞ……。

 カタンという扉が開かれる音が響いて誰かが入ってくる。

 ……執事服を着た修一郎様?

 

「ミーは君達に執事としての心得を持ってい――ッ!?」

「「コショコショ」」

「あははははは! ギブギブ!!」

 

『修一郎アウトー』

 

 思った通りに修一郎様は刺客だと思い込んだこちら側の存在だ。

 高町が颯爽と現われて修一郎様の前に立つ。

 

「え、ええ!? 俺はお笑わせる立場でしょ!!」

「おう、はよ尻出してやれよ」

「ちょちょ! なのはの持ってるの棒じゃなくてバッドじゃん!?」

「間違えちゃった……まあいいか!」

 

 久々の高町の肉声で田村さんを感じながら修一郎様の醜態を眺める。武蔵はガード性能高いけど修一郎様はヨワヨワだから俺も積極的に攻撃するゾイ!

 修一郎様は許してくださいのポーズをするが高町は容赦なく腹部にスイング!

 

「これは紛うことなく筒香!? 左でこのスイングはすげーや」

「ああ、日本の野球は明るいぜ――!」

「いったいよもぉ!!」

 

 高町はスッキリという表情で部屋から出ていく。

 修一郎様は見事なスイングでノックダウンしているがそんなの関係ねぇ! 片隅に置かれていた机とパイプ椅子を二人で設置して三人目を確保する。被害は大きい方が楽しいからね!!

 

「お、修一郎くんようやく到着したな! 輝夫に武蔵、三人目の執事やから優しくしてやり」

「「は~い」」

「え、ええ!? 俺やなんだけど!! 叩かれたくないんだけど……」

「男の子でしょ! 根性出せよ!!」

「メイド服着せられる奴に言われたくないよ!!」

 

 修一郎様はどうにか逃亡しようと扉を開けるがその瞬間に音が響く。

 

『修一郎! 逃亡罪でアウトー』

 

 竹刀を持った高町が現われて修一郎様に満面の笑みを見せる。

 修一郎様はプルプルと震えながら机に両腕を置いて静かに処される。

 

「あがっごっごあぎぎぎげげっつつ!?!!?」

「逃亡したら竹刀かぁ……俺達逃げなくてよかったなぁ……」

「バッドの方がよかったなぁ……」

 

 修一郎様は諦めたのか持ってきてあげた机に座って顔を隠す。一方俺達の方はオモチャが現われて喜びの絶頂に達していた。

 武蔵は冷蔵庫からとある物を取り出して修一郎様の前にパッと出す。

 

「ちょっ!? そんな汚いの見せるなよ!」

「ここ見ろよ」

「え、え? ……ゴフッ!」

 

『修一郎アウトー』

 

 ザッフィーデ○ルドを見せられて吹き出した修一郎様を颯爽とシバいていく高町。

 

「もうやめてよ! なんで仲間割れしてるのさ!?」

「「……え? この空間に仲間とかいるの」」

「仲間意識持てよ!!」

 

 仲間という表現に驚いて仲間を探すがどうにも見つからない。ここにいるのは企画で笑うと尻を叩かれる奴らというだけで仲間意識なんて皆無に等しい。強いて言うなら俺と武蔵は修一郎様で遊ぼうという気がムンムンというところだけは一致している。

 

「うーん、ちょっちトイレ」

「お、俺も行くわ」

「……いってらっしゃい」

 

 修一郎様を置いてトイレに向かう。

 

「修一郎様という緩衝材が現われたから俺の被害がさがっていいわぁ」

「いや、俺はおまえも攻撃するけどな」

「性格悪いなぁオイ」

 

 他愛もない会話をしながらトイレに入るが一つ問題が出てくる。

 

「スカートで小便ってどうするんだ?」

「個室行けよ」

「いやさ、小便程度で大便器つかいたくねぇじゃん」

「女装させられてるんだから許されるから」

 

 武蔵は渋々個室に入り俺は小便器に発砲する。

 

「ふー……気持ちよかったぁ……」

「小便しただけだろうが……なに手を洗わないで出ていこうとしてんだよ。早く洗え」

 

 武蔵はトイレの後に手を洗わないタイプらしく渋い顔をしながら手を洗った。俺はどっちした時でもお手てキレイキレイです!

 談笑しながら待機室に戻ると聞きたくない天の声が何度も何度も木霊していた……。

 

『なのはってガード固いよなぁ~でも、俺は挫けないぜ!』

『すずかぁ~お茶して帰ろうぜぇ!』

『お、アリサじゃん! おいおい、嫌な顔するなよ~俺は世界で一番お前を愛してるのにさぁ!!』

「ゴハッ!?」

 

 修一郎様が高橋名人並みの連射で俺の黒歴史ボタンを押している。どうしてだよ!? アレの電池は俺のポケットの中に封印していただろ!! ま、まさか!?

 部屋の時計を確認すると動いていない。つまり、あのボタンを使用する為だけに電池を抜き取ったとでも言うのか!?

 

「……西風? 俺が言いたいことわかるよな」

「……はい、私めは絶対に修一郎様を笑わせません」

「……笑え」

「……それは流石に」

「押す「はははは!」」

 

『輝夫アウトー』

 

高町が小走りで入ってきて俺の尻を引っぱたいて帰っていく……ように見えたが修一郎様からボタンを奪ってそのまま退室してくれた!? やったぜ。

 

「修一郎様……俺が悪かったよ、互いに尻を叩かれる仲間なんだから攻撃は控えよう……」

「ああ、不毛だからな。西風が理解してくれて嬉しいよ」

「こっち見て……勃起!」

「「ん? ブッ!」」

 

 武蔵がザッフィーデ○ルドを自分の股間に生やして勃起と叫んだ。流石にこれは笑うよ!?

 

 

 二人が三人になって二人は結託して一人は被害者なのに被害者を攻撃する死神と化したこの空間、もうどうにでもなれという自暴自棄感漂う。でも、止まない雨はない! 俺は絶対に生きる!!

 重い雰囲気が流れる。どうにか反吐が出そうな空気を飲み込む為に水を飲む。

 ――扉が開く。

 

「「ザ・テスタロッサです!」」

「「「…………」」」

 

 フェイトとアリシアが入ってきて双子芸人のような芸名を使ってコントを披露するのだろうか? いや、あの双子芸人そこまで面白くないような? でもなぁ、武蔵が便乗して攻撃してきそうなんだよなぁ……。

 

「フェイト! あのネタをするよ!!」

「わかった!」

 

 フェイトが寝転がってアリシアがその上に乗る。そして定番の……。

 

「ゆーたいりだつー」

「「「…………」」」

「えっとえっと……ゆーたいりだつー!」

「いや、おもんないよ。ほんまに芸人なんか?」

「「ぶっ!?」

 

『輝夫・修一郎アウトー』

 

 武蔵!? おまえやめろよな!! 本心言っちゃダメだろ!!

 高町とヴィータがやってきてシバいて帰っていく。やっぱり武蔵が一番の敵だったのかよぉ!?

 

「えっと、お姉ちゃん……あの芸なら笑ってくれるかも……」

「そ、そうね!」

 

 二人は深呼吸をして芸を披露する。

 

「ボクは世界を救う勇者! 魔王!! 貴様を倒そうぞ!!」

「ハッハッハ! 我を倒したところでこの世界はどうにもならんよ」

「うおー!!」

「やめろ」

「どうしてだ」

「私は神だ」

「私もだ」

「お前だったのか」

「「暇を持て余した神々の遊び」」

「「「…………」」」

 

 笑えねぇよ……笑ってあげたいけど笑えねぇ……。

 

「いや、確かに一昔の芸だから思い出し笑いするかもしれないけどさ、それ面白くないから。衣装が面白いだけだから」

「「ぶっ!? 武蔵(枚方)! 可愛そうだからやめて!!」」

 

『輝夫・修一郎アウトー』

 

 高町とヴィータがいつものように尻を叩いて帰っていく。

 もうそろそろ武蔵に猿づくわ付ける頃合いだぞゴラ……。

 

「……輝夫も面白くないと思ってる?」

「え……」

「……輝夫に笑ってもらいたくて来たんだよ」

「えぇ……」

 

 二人の期待の眼差しが痛い……。

 

「あははは! 二人の芸は本当に最高だぜ!! あはははは!!」

 

『輝夫アウトー』

 

 高町の一撃が研ぎ澄まされてきたなぁ……。

 二人が帰った後に自分の弱さを思い知る。どうしてだろう? 俺は踏み台やめたのになんで突き放せなかったのかな……。

 

「古いネタ引っ張ってきたなー」

「むさしきゅん? 修一郎様を攻撃するのはいいけどさぁ、俺にとばっちりやめろや……」

「俺も攻撃されたくないよ……」

 

 水を飲んでDVDを取り出してケースを眺めるが文字一つ書いていない。どうせさっきのビデオと同じようなタイキック物だろうなぁ……。

 DVDを見るかを考えていると扉が開く音がする。

 

「おうおまえら! もうお昼やからな、昼食の準備してあるから少しゲームをしておかずを奪い合ってもらおうか!!」

「「「……いや、もう笑いたくないからお昼いらないです」」」

「じゃあ、おかずを選ぶくじ引きをしてもらうよ!!」

「「「いらないです」」」

 

『拒否は許されないので全員アウトー』

 

 俺達には自由選択という言葉は存在しない。体の隅々まで染み渡りました。




 いろんな意味で三部構成とか絶対にムリムリカタツムリ!! 笑ってはいけないシリーズを舐めてたわ……。

 最近はリフレッシュの為にマキONをよくプレイしています。仲居(相方)さんになってくれる優しい方がいたら活動報告にPS4のアカウント書くのでフレンドになってリボガンに蹂躙されましょう!

投稿ペース

  • 一秒でも早く書いて♡
  • ネタの品質を重視してじっくり!
  • 冨樫先生みたいでええよ~
  • 絵上手いから挿絵積極的に

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