東京レイヴンズ 〜もっと夏目と仲良しで、夜光の記憶が戻っていたら〜 作:かんむり
しかし、夏目愛は滲み出ています。
では、どうぞ。
何年も前の話
大人たちがいっぱい集まって会議をしている時、春虎と夏目はいつも二人で遊んでいた。大きなお屋敷の中にある大きな庭でいつも遊んでいた。
人見知りの激しかった夏目は友達が出来ず、唯一の友達であった春虎がお屋敷に来るのをいつも、まだかまだかと待ち続けていた。しかし、春虎が来ればいつも顔を真っ赤にして、それも時間が経てば春虎と一緒に笑顔で遊んでいた。
二人で遊んでいる時、夏目が泣きながら春虎にしがみつく時があった。
夏目が言うには何かが私を見ているらしい。
しかし、春虎にはそれが見えなかった。春虎は見間違いと言うが、夏目は首を振り絶対にいると言う。
春虎が一人で遊ぶと言うと、夏目は泣くのをやめて無理やり笑顔を作って春虎と一緒に遊んだ。
その事を春虎は父に言うと、夏目は「見える子」だという事を教えてもらった。
次の日、春虎は夏目に謝りに行った。
夏目はいいよと許してくれた。
それからは夏目が恐がると春虎はそこに向かって石を投げたり、大声を出しながら突っ込んだりした。
「はるとらくんは、わたしのシキガミになってくれるの?」
「シキガミ?」
「うん、わたしもよくわからないけど、わたしのことをずっと守ってくれるひとのことみたい。」
「ぼくそんなことしらないよ。」
「いえのしきたりなんだって。」
必死に春虎に伝える夏目。
「なってくれないの?」
「…いいよ、なってあげる。」
夏目はパァッと笑顔になった。
それから春虎と夏目は約束をした。
絶対にシキガミになるという約束を。
それから時間が経ち、春虎も高校生になっていた。
ベッドで目を開け、眠気の残る頭で今見た夢を考えていた。
そして、口を開いた。
「…夏目、可愛すぎだろ。」
この高校生。
土御門春虎は幼馴染の土御門夏目にデレデレだった。
春虎はベッドから出ると、ぐーっと体を伸ばした。
スマホを点け今の時間を確認する。スマホのロック画面には当然のように夏目と一緒に笑顔で写っている画像が登録されていた。
メール画面を見れば一通メールが着ていた。
『春虎くん、もう直ぐそちらに帰省します。』
春虎は笑みを浮かべながらそれを見ていた。
そのメールを保護してから数分、時間をようやく確認した。
「っ!やっべぇ!?」
春虎は急いできがえて学校へと向かっていった。
うどん屋でお昼を食べながら、テレビで映っている修祓の映像を見ていた。
「見ろよ冬児。すげーぜ。」
「流石は国家一級陰陽師だな。」
「国家一級?じゃああれが十二神将ってやつか。」
「おっ?流石の春虎も十二神将は覚えていたか。」
「馬鹿にしすぎだ!」
ズズッとうどんを啜るがむせてしまった。
涙目になりながら手前にある紙で口元を拭った。
「っはぁ〜。最近この手の中継増えてるよな。」
「そうだな。最近は霊災が増えてるらしいしな。しかもテレビ写りもいい。テレビ局は万々歳だろうよ。」
「そんなもんかな。」
再びうどんを啜る。
店を出てから、アイスを買って坂道を下りていく。
「こんな日にも夏期講習なんてな。」
「ほんとそれだ。」
額から流れてくる汗を拭いながら歩いていく。
「そういえば愛しの陰陽師の彼女から何かきたか?」
「彼女って誰のことだよ?」
「お前がいつも言ってる土御門夏目のことだよ。」
「夏目は彼女じゃねーよ。」
「そんなスマホ画面を女と二人で写ってるのに説得力ねーよ。」
「こんなの普通だろ。」
「普通じゃねーよ。」
冬児は頭を押さえながら、春虎の方を見ていた。
しかし、今日は暑い。
アスファルトの熱は履いている靴の底から熱さを足裏に無理やり感じさせてくる。
肌を焼くような暑さは春虎と冬児を蝕んでいた。
「…冬児。」
「…なんだ。」
「お前暑くないのか?」
「名前の通りでな。俺は冬の方が合ってるみたいだ。めちゃくちゃ暑い。」
ふと、目の端に何かが見えた。
「なあ、冬児。」
「奇遇だな春虎。俺も多分同じことを考えている。」
「「かき氷食おうぜ!!」」
見事に俺たち二人の息は合った。
「くぅ〜っ!美味い!」
「そうだな。」
ガツガツとかき氷を口に入れ込んでいく。
冬児も同じように食べている。
くおっ!頭が!
特有の痛みを感じながらも、食べていった。
「今日の修祓は凄かったな。」
「ん?ああ。どうした?やっと陰陽師になる気になったのか?」
「そんなわけねーだろ。」
「お前は血筋だけは良いんだからよ。」
「土御門っていっても俺は分家。本家の方には天才がいるからな。俺なんかが出て行っても良いところじゃねーよ。」
「ふん、そうか。俺は意外と合ってると思うんだがな。」
「合ってるも何も俺は『見鬼』の才が無いんだからまずスタートラインにも立ってねーよ。」
「でも、昔はなりたかったんだろ陰陽師。」
「………」
冬児の言う通り、俺は昔は陰陽師になりたかった。鏡の前で札を素早く抜いて投げるという。正にごっこというものだった。
しかし、段々と時間が経つにつれて俺には陰陽師としての才が全く無いことに気がついた。陰陽師として必要不可欠な『見鬼』としての才が欠如していた。
それから夏目と遊ぶ時はしきたりの話をしないようにしていた。約束してしまったからだ。その約束をぶり返さない為にも俺は夏目と陰陽師のことが考えられないくらいいっぱい遊んだ。
それはとても楽しかった。けれど、どこか胸の淵に寂しい何かを飼っているような気分だった。
「…悪い。言いすぎた。」
「いや、大丈夫だ。久しぶりに陰陽師なりたかった時の俺を思い出してたよ。」
「どうだ?なりたくなったか?」
「ふん、どうだか?」
手を広げおどけてみせた。
夕方になり、駅まで冬児と一緒に歩く。
「そういや明日、花火大会があるらしいぜ。」
「ああ、そうだな。」
「冬児は初めてか。」
「去年はどうしたんだ?」
「誘う相手も居なくて一人で家で寝てたよ。」
「寂しいやつだな。」
「うっせ。」
「まあ、俺も明日暇だしな。行ってやらないこともない。」
「なんで上から目線なんだよ!」
冬児と明日、花火大会に行く約束をした。
適当に駄弁っている間に駅前に着き、冬児と別れる。
俺の家は駅を挟んだ向こうだ。
そして、家に向かおうと歩道橋を登る。
すると、前の方から一人の女の子が歩いてきた。
その女の子は黒いワンピースを着ていて、大きな帽子を被り歩いてくる。
春虎は立ち止まりその女の子を見ていた。
その女の子も気がついたのか、立ち止まり俺の方を見た。
そして、慌てた様子で、でも何処か安心したような口調でこう言った。
「お、お久しぶりです。は、春虎くん。」
これが土御門夏目との再会だった。
ここまでは原作と同じ流れ。
次回からはもう少し春虎の夏目愛が滲みでてきます。