東京レイヴンズ 〜もっと夏目と仲良しで、夜光の記憶が戻っていたら〜 作:かんむり
「…夏目…」
俺は目の前にいる美少女に見惚れていた。
しばらく会っていなかったからだろうか、夏目から出るオーラと言って良いのだろうか、雰囲気が大人の雰囲気が加わったような気がした。
うん、可愛い、そして、綺麗だ!
「あぅ…その、ぁぃた…です。」
何を言ったのか聞こえなかったが、まあ何か言ったのだろう。
「夏目、久しぶりだな。」
頭を撫でながら言うと、夏目はむすっとした表情になった。
「こ、子ども扱いしないでください。これでも私は土御門家の次期当主なんですよ!」
「それでも、夏目は夏目だろ?」
夏目の髪をくしゃくしゃと乱暴になでながら、笑う。
「そ、そうですけどぉ…」
顔を赤く染めて、横を見ながらまだ春虎の撫でを受けていた。
「陰陽塾はどうだ、楽しいか?」
「いえ、その…」
少し顔に雲がかかる。
「やっぱり難しいのか?」
「いえ、勉学の方はそれほど、しかし、家のしきたりが…」
「なんかしきたりがあるのか…」
面倒くさそうだな。
「それにしても、まさか今日だとは思わなかったぞ。」
夏目の頭を撫でていた手を離しす。
夏目はあっといった表情になったが直ぐに普通の顔に戻った。
「ふふふ、ドッキリですよ春虎君。」
「見事に引っかかったな。」
「どうです?驚いたでしょう。」
「なら、そのお返しもしないとな。」
「えっ?」
俺は夏目をぎゅっと抱きしめた。
夏目の小さい体は春虎の体に普通に入ってしまう。
うーん、良い匂い。
夏目は口をパクパクと開きながら顔を赤くしていた。
「春虎君!?こ、ここ、こんな所で誰かに見られたら…!!」
「大丈夫だよ。誰も見てないって。」
「そそそ、そんなこと言っても!!」
グイッと春虎の胸を押して春虎から離れる。
「別に春虎君に抱きしめられるのが嫌なわけじゃなくて!ただやっぱり場所を考えて欲しいというか…」
「じゃあ夏目はどこだったらいいんだ?」
「そ、それは…!」
夏目は気づいたようにコホンと一つ咳払いをしてから、冷めた目で俺の方を見てきた。
「春虎君、からかいましたね。」
「ごめんごめん、久しぶりに会った夏目が可愛かったからさ。」
「か、可愛いっ!?」
コロコロ表情を変える夏目を見ていると、やっぱり楽しくなってくる。
「夏目、この時期花火大会があるの覚えてるか?
「この時期で花火大会…あぁ、あれですか。」
「そう、よかったら一緒に行かないか?」
「花火大会…春虎君と一緒…二人きり…行きます!!」
「そうかじゃあ明日夜、あの神社の前でな。」
「はい。では私はこれで。」
「家まで送っていくぞ?」
「そんないいですよ。」
遠慮するように手を横に振る。
「そう言うなって、俺だって土御門の分家だからな。未来の当主様を送るのは当然だ。」
「…春虎君は陰陽師はもう目指さないんですか?」
夏目は手を胸の前で握って俺を見ていた。
「…ごめんな夏目。」
そう言いながら夏目の頭を撫でる。
「俺はまだ、陰陽師になりたい。でも、お前の横には立てないんだ。それに俺は陰陽師になるんならお前の横に立ちたいんだ。」
「…春虎君らしくないです。」
「そうだな、俺らしくないな。」
「…春虎君!実は父から「夏目」」
「帰ろうぜ?」
そう笑う。
夏目はワンピースの裾を握りしめ、はいと返した。
「そうかそうか。なるほどよくわかった。それで俺たちは今こういう状況になっているのか。バカ虎。」
「バカ虎って言うな。」
「春虎君なんて知りません!!」
今日の夏期講習も終わり、そのまま夜になり神社の前で待ち合わせをしていた春虎と冬児。
待ち合わせ場所に一番早く着いたのは春虎でその次に冬児だった。冬児は春虎に中へ行こうと誘ったが、春虎がまだくる奴が居ると言った時点で少し嫌な予感がしていた。
数分後そこにやって来たのは、浴衣を着たとても綺麗な女の子だった。その女の子は春虎を見つけた瞬間とびきりの笑顔になって春虎に駆け寄った。冬児も何処かで見た顔だと思い、記憶の中を探ってたどり着いたのが春虎のスマホの壁紙に写っている女の子だった。
冬児は冷や汗が出てきた。そのままバカ虎と呟きながら頭を押さえた。
「は、春虎君、その人は…」
「こいつ?冬児っていうんだ。俺の親友。今日は三人でまわろうぜ!」
夏目は手に持っていた小袋を落とした。
「花火大会…二人きり…デート…」
「…すまん。」
「ん?なんだ二人とも?祭りなんだから楽しまなきゃ!」
「…春虎君なんか知りません!!」
夏目はプンスカ怒り始めた。
「うわっ!なんだよ夏目!?」
「春虎君のバカバカバカバカ!」
胸をポンポン叩いてくる夏目。
「な、どうしたんだよ夏目。なあ冬児?」
「自分の心に聞け。」
「冬児まで!」
春虎のそばには胸を叩く夏目、春虎の少し横で頭を押さえながら呆れる冬児がいた。
春虎はわけがわからないといった感じで夏目を受け止めていた。
「もう!期待した私がバカでした!」
「なあ夏目、機嫌なおしてくれよ、何に怒ってるんだよ?」
「知りません!」
「夏目ぇ〜」
「春虎。なんかしたらどうだ?ほら、金魚すくいあるぜ。」
「おっ、いいな!夏目、一緒にしようぜ!」
夏目の手を引き、屋台の方へ向かう。
夏目はあっ春虎君そんないきなり!とか言っているがそんなことは無視して夏目と一緒に金魚が入っている青い箱の前に座った。
「おいちゃん!一回頼む!」
「おう、らっしゃい!一回三百円だ!」
お金と交換してポイを受け取る。
「よしっ!とってやるぜ!」
「彼女にいいとこ見せてやれよ!」
「か、彼女!?」
泳ぐ金魚を見てどいつがいいか考える。
そして、ノロノロ動いているやつを見つけた。
こいつだ!
そいつを取ろうとポイを入れた。
しかし、乗りはしたのだが最後の金魚の頑張りが光り、ポイを破って水槽へと戻っていった。
「くぁ〜…」
「惜しかったな兄ちゃん。」
「惜しかったですよ春虎君!」
「まあ、こんなもんか。」
そのまま俺たちは金魚すくいの屋台を後にした。
それからは、りんご飴を食べたり、焼きそばを食べたりと祭りを満喫していた。
ふと、夏目が射的の前で立ち止まった。
「どうしたんだ夏目?」
「えっ!?あ、いや、何も…」
「ん?あれか?」
夏目の視線の先にあったのは、ピンク色のリボンで包装された箱だった。
「よし、一回頼む!」
「は、春虎君!?」
店員から弾をもらって、おもちゃの銃を構える。
何発も撃つが、当たりはするが倒れない。俺の財布の小銭もどんどん減っていた。
「春虎君、もういいですよ。」
「いいって、俺がお前にあげたいんだ。」
「っ!そんなの…反則です…」
夏目が顔を赤くしながら俯く。
そして銃を構えている春虎の顔の側へ行き、そっと呟いた。
「…春虎君。」
「…夏目、今話しかけんな。」
「あ、あれ、と、取ってくれたら…」
「だから夏目。」
「き、きき、きす…してあげても…いいですよ?」
「っ!?」
放たれた弾は春虎の狙った場所とは違う方向へ飛んでいったが、上手いことに箱の方に飛んで行き、軽い音をたてながら箱は落ちていった。
冬児はたこ焼きを食べながらおーっと声を上げた。
「な、夏目!?」
「な、なんです春虎君!?べ、別に私は何もしてませんが!!」
「嘘つけ!お、お前、俺にさっき、き、きす…!」
「な、なんのことでしょうか?私は知りません!」
顔が赤いまま店員から箱を受け取っていた。
「夏目、お前どこでそんなこと覚えたんだ?」
「さっきから何を言ってるのかわかりません!」
景品の中身はシャボン玉のキットだった。
「中身はそれだったのか。」
「いいんです、欲しかったのはこっちですから。」
夏目は箱に付いていたリボンを取って自分の髪の一部を結んだ。
「に、似合い…ますか?」
「ああ、可愛いよ。」
「そ、そうですか…」
結んだリボンを手で弄りながらそっぽを向いた。
「春虎、そろそろ俺たちも移動しようぜ。」
「春虎君。私行くところがあるので少しそちらへ行ってきます。」
「あっ、ちょっと夏目!」
夏目はそのまま駆け足で神社のある方向に走って行った。
「なんだあいつ?」
「しらね。」
「神社の方に行ったけど。」
「追いかけるか彼氏?意外と他の男と逢いびきかもしれねーぜ?」
「そんなわけないだろ。」
「どうだか?俺はまだ土御門夏目ことは全然知らないからな。」
「…行ってみるか。」
「気になったか?」
「そんなんじゃねーよ。」
冬児の言葉を流しながら夏目が走って行った方向に向かっていった。
夏目は神社の絵馬を飾る場所の前にいた。
「何してんのお前?」
「春虎君!?どうしてここに!?」
夏目は隠そうとしたが、石灯籠の明かりでもその文字ははっきり見えた。
『春虎君が陰陽師になれますように』
「……」
「ご、ごめんなさい。でも、私、春虎君がどうしても陰陽師になるのを諦めてると思えなくて!」
「夏目…もう、やめてくれ。」
「春虎君!!」
「もう俺に期待しないでくれ。お前が願ってくれるのはわかってる。でも俺は陰陽師にはならないんだ。」
「でも!」
「夏目!!」
「っ!!」
「もう…やめてくれっ…」
俺は絞り出すように声を出した。
夏目は絵馬を落として、何処かへ走って行った。
「よう、モテ男。彼女はもう行ったぜ?」
「…見てたのか?」
「お前と一緒にここに来ただろうがよ。まあ、話してる時は居なかったがな。」
冬児は俺の側に立ち、俺の背中をポンと叩いた。
「俺は…ダメだな。」
「確かにな。」
グッと背筋を伸ばして、夏目の向かって行った方向を見た。
「追いかけるのか?」
「…心配だからな。」
「景気付けに一発殴ってやろうか?」
「なんでだよ。」
そして俺が夏目の方へ向かおうとした瞬間。
「どうも、こんばんわ。」
二人は振り向き声のした方向を見た。
そこには中学生にしか見えない妙に大人ぶった長いツインテールの少女がそこにいた。