東京レイヴンズ 〜もっと夏目と仲良しで、夜光の記憶が戻っていたら〜   作:かんむり

9 / 10
やめろって言われると余計にしたくなるよね

 

 

陰陽塾では特に席順というものは決まっておらず、皆好きなところにいつも座っている。

そこで春虎は昨日同様に生徒からの注目を浴びていた。なぜなら、春虎の顔中に治癒符や絆創膏が貼られていたからだ。

夏目には事情を説明してなんとか誤解を解いておいた。そのせいか、今日は夏目の視線が凄く痛い。いかにも心配していますみたいな感じだ。

そんなことは無視して、俺は大友先生のする授業を受けていた。

自分の知識と大友先生が教えてくれる知識、夏目の本とで今の陰陽術がどのようになっているのかを理解する。

それでも、この塾で半年も学んでいる塾生とはまだまだ差は開いている。

この差を早く埋めるためにも、俺は授業に集中することにした。

 

「おお、今日はえらい気合入っとんな。新入生。春のつく方。」

「えっ、あ、ああ。ありがとうございます。」

「昨日はどないしよかと思ったが、まあその態度見とったら安心したわ。」

「ど、どうも。」

 

大友先生は笑いながら春虎を見ていた。

 

「でも、いくら勉強熱心でもいきなり講義についてこいって言うんも、難しい話かもしれんな。うちのカリキュラムって無駄がない分、一回やったことは見直したりせぇへんからな。本に載ってないことだって当然やっとるし。」

「そ、そうなんですか。」

 

大友先生は手にしていた本を音を立てて閉じた。

 

「…そやな。ちょうど新入生も二人入ったことやし、一回ここらで前期分のおさらいしてみよか。」

 

突然の大友先生の発言に教室がざわめく。

だが、

 

「冗談はやめてください!」

 

机を叩きながら立ち上がった塾生がいた。倉橋京子だった。

 

「先生自ら『無駄がない』と仰ったカリキュラムを、たった二人の転入生のために、捩じ曲げるっていうんですか!?」

 

大友先生は困ってないのか困っているのかよくわからない顔をしていた。

 

「ちゃんと聞きぃや、京子クン。これはみんなの復習も兼ねてるんやで?」

「復習なんか、個人でやればいいことじゃないですか!講義に遅れている自覚がある人が、自分の責任で復習するのが当然です。」

「けど、その論法やと、ついて来れへん者は切り捨てるべきやと、そう言うてるように聞こえるな。」

 

大友先生は何かを試すような目を京子に向けている。

京子も、それに臆することなく即答した。

 

「無駄のないカリキュラムって、そういうことだと思いますけど?」

「うん、そやな。」

 

大友先生は否定することなく、逆に肯定した。

塾生もざわつき、言った本人の京子まで驚いた顔をしている。春虎はそんな方針作ったっけな?と首を傾げている。

 

「陰陽師というんは、めちゃめちゃ特殊な職業やからな、ちょっとやそっとでなれるもんじゃない。陰陽塾にしても、先のわからんもんを、わざわざすくい上げたって意味ない。『ぬるい』連中は、さっさとご退場願った方がええ。それが陰陽塾の方針なんや。実は。」

 

おそろしく素っ気なく、大友は言った。

春虎は考えていた。自分の考えた陰陽塾が現代では違うようになっている。夜光の考えていた理想の陰陽塾とは掛け離れていた。

春虎は今の陰陽塾にがっかりした。

しかし、

 

「…でもな、僕はこの方針はあんまり好かん。」

 

春虎は顔を上げて大友先生を見た。

 

「す、好かんって。」

「矛盾しとるよな。でも、そうやねん。しかも陰陽塾は、僕がここの方針に反対してることを承知の上で、担任に据えとるんやで?矛盾を矛盾と承知で容認してるんや。なんでそないなことしてるんか、君らにはわかるかな?」

 

にこやかに尋ねる。

大友先生が得意げに答えようとすると、一人だけ、それに答える者がいた。

 

「それが、呪術だから。」

 

春虎は自然と答えていた。

大友先生や塾生、夏目と冬児までもが意外そうに春虎を見ていた。

 

「…そうや春虎クン。それが呪術というもんやからや。」

 

カツンと、義足が鳴った。

彼はこの中で唯一、プロの、本物の陰陽師なのである。春虎はそのことを理解した。

 

「まあ、そういうわけやさかいに、ここは陰陽塾で、僕は君らの担任講師や。僕の指示には従ってもらうで。」

 

気がつけばいつ間にか大友先生のペースだった。

–––あの先生、ただの陰陽師じゃないな。

春虎はそう確信を持って、大友先生を見ていた。

だが、大友先生が、披露した長口上も、すべての塾生を化かしきれたわけではなかった。

 

「納得、できないわ。」

 

またしても京子だ。

 

「どう言ったって、これは転入生二人に対する–––いえ、土御門家の転入生に対する贔屓じゃないですか!納得できません!」

 

頑として京子は言い張る。

まるで昨日の再現だ。

 

「倉橋京子!昨日言ったことをもう忘れたか!」

 

バンと机を叩いて夏目も京子に反論する。

ああ、もう。

 

「夏目君は関係ない!あなたの事を話しているのよ!土御門春虎!」

「倉橋京子、いい加減にしろ!」

「どうなの!?土御門春虎!」

 

教室にいる塾生みんなが春虎の方に注目していた。

俺の後ろでコンが動いた。俺は動くなと念じ、京子の方を見た。

夏目は何も言わなくても言いと叫ぶがそうはいかない。あそこまで倉橋京子が自分を出して聞いてきたのだ。

それに応えないでなんとする。

 

「俺はまだ、確かに講義について行けてない。先生が復習をしてくれるのなら、それは凄く助かる。」

「そのために、他の塾生が迷惑を被っても平気なわけ!?」

「いや、悪いと思う。」

「だったらなんで!」

「悪いとは思う。けど、遠慮はしない。先生が決めたことなら、俺はありがたく講義を受けさせてもらう。…まあまだ理解できるかはわからないけど。」

 

春虎は肩をすくめながら答えた。

それに付け足すように春虎は話す。

 

「それに、昨日も言ったろ?土御門がそんな贔屓とか、あり得ないから。実際、あんたらが勝手に恐れ入ってるだけだぜ?」

「なっ!」

「俺はあんたと同じ塾生だ。だから。」

 

春虎は京子の方を見て静かに告げる。

 

「自分が陰陽師になることを、俺は、第一に優先させてもらう。」

 

夏目が感動したように目を潤ませていた。

おいおい、こんなところで泣くなよ。冬児がひゅーと口笛を吹く。

京子の肩が小刻みに震えている。

–––これは、完璧に怒らせたな。

 

「…土御門春虎。あなたには自主退塾をお勧めするわ。」

「退塾?ここをやめろっていうのか?」

「そうよ!あなたがここの講義に付いてこれないのは昨日の講義で明らかだわ。あなたみたいな才能のない人は、お門違いだわ!」

 

ダンと机を叩く。

春虎は冷静だった。

逆上している京子に向かって

 

「ま、大目に見てよ。」

 

と、微笑んで見せた。

京子の顔が深紅に染まった。

京子が春虎に一歩踏み出そうとした瞬間。

 

 

「そこまでだ、痴れ者。」

 

 

京子の首筋には刀が添えられており、京子は自分の首筋に当てられている刀を見て、冷や汗を流していた。

 

「厳命ゆえ大人しくしておれば、春虎様に対してなんという非礼の数々。その愚行、もはや看過できぬ。我が愛刀の錆にしてくれる!」

 

そう言いながら刀をキラリと光らせる。

京子は呆然と立ち尽くしていた。

 

「大人しくそこに–––」

「コン!」

 

春虎が怒鳴る。

コンはビクッと尻尾をピンと伸ばして、春虎をみた。

明らかに春虎は怒っていた。

 

「は、はは、春虎様!コンは春虎様のことを思い!」

「–––コン。」

 

次は静かに言う。

 

「戻れ。」

「か、かしこまりました。」

 

有無を言わさぬ声にコンは京子から離れ、春虎の側へと戻る。

教室には奇妙などよめきがあった。

 

「…ほう、こら驚いたな。護法式やないか。」

 

大友先生が呟く。

 

「すみません先生。」

「かまへん、かまへん。可愛らしい健気な式神やないか。許してやり。」

 

すると、大友先生は顎に手をやり少し考え始めた。

 

「ちょっと驚いただけや。まさか君が護法式とは…僕も、他の先生方から君の評判を聞いて、先入観を持ってたみたいやな。反省せんと。」

 

そこまでコンを出したことが驚きだったのか?

春虎は少し考えた。

 

「まあ、席に座り。」

 

春虎も席に座ると、塾生からの視線が今までのものとは違うものになっていた。

しかも、

 

「白桜!黒楓!」

 

京子の鋭い召喚に応じ、彼女の前後に二体の式神が現れた。

人型の鈴鹿の操っていた阿修羅を彷彿とさせる姿だ。

陰陽庁製の護法式『モデルG2・夜叉』だ。

 

「よくも騙してくれたわね!大した演技だったわ!」

「……」

「黙っても無駄よ!わざわざ無能を演じるなんて、ずいぶん迂遠なやり方じゃない。いったいどういうつもり!?」

「……」

 

春虎の前には刀を逆手に構え、式神を睨みつけている。

近くにいた塾生は慌てて春虎たちから離れた。

 

「落ち着け。確かに俺が悪い、謝る。」

「ふざけないで!先に仕掛けたのはあんたの方よ。上等じゃないっ!受けて立つわ!」

 

春虎はどうしたらこの状況を切り抜けるか考える。しかし、どうしてもコンとあの京子の式神がぶつかる未来しか見えない。

目の端には呪符ケースに手を伸ばす夏目の姿も見えた。

冬児も椅子から立ち上がり、いつでも止められるようにしている。

 

「よっしゃ、わかった!」

 

大友先生は活気な声でこの静かな雰囲気を壊した。

 

「やる気と元気は、大いに結構。二人ともそこそこ式神は操れるみたいやし、ここはひとつ、二人に実技の手本を見せてもらおうか。」

 

「「は?」」

 

春虎と京子の声が重なった。

 

「どうせ今日の講義はここまでや。二人とも今から呪練場に移動して、式神勝負と行こうや。」

 

 

 

 

 

「…なるほど、実技はここでやるのか。」

 

アリーナの観覧席に座った冬児は辺りを見渡していた。

隣に座るのは天馬である。

 

「相当大きな呪術やフェーズ3の霊災でも破られない仕様なんだよ。時々、陰陽庁の人も利用しに来てるし。」

「そんな大層な場所で喧嘩か。贅沢な話だな。」

 

冬児は観覧する塾生たちの中に、ひとつ後ろでぽつんと一人で座っている夏目を見つけた。

夏目の表情は今にも泣き出しそうな顔をしている。多分、春虎が怪我をしないか心配なのだろう。

–––いや、昨日あんだけ春虎に怪我させたのお前だろ。

 

アリーナには京子一人だけが夜叉を解いた状態で立っていた。

 

「このクラスって、いつもこんなノリなのか?」

「そんなことはないんだけどね。」

「我らが担任も適当すぎやしねか?」

「そんなこと…なくはないかも…」

 

ハハハと苦笑いする天馬。

 

「しかし、春虎が式神出したくらいで、やけに敏感に反応したよな。なんでだ?」

「ああ、あれね。春虎君の出した式神、護法式だったから。」

「そういや、昨日も言ってたな。護法式を持ってるのは夏目と倉橋だけって。」

「護法式とか使役式は二十四時間召喚してなきゃいけない式神だからね。霊力が強い人じゃないと扱うことが出来ないんだ。」

「ああ、要は霊的にタフでなきゃ難しい。」

「そう、だから陰陽師にとって護法式や使役式を使役することは、一種のステータスなんだよ。」

 

天馬は冬児の方へと体を寄せてきた。

 

「本当のところ、春虎君ってどうなの?てっきりど素人だと思ってたけど。」

「ああ、丸っ切りのど素人だ。」

 

しかし、冬児はニヤリと笑った。

 

「だからって、あいつを侮ると、痛い目見るぜ。この夏にも一人、前例がいるからな。」

 

 

 

「夏目クンは大変優秀な生徒や。」

 

一緒に移動している時に大友先生はそんなことを言った。

 

「特に彼の使役式、流石は土御門家の守護獣というべきか、たとえプロでも並大抵の陰陽師は太刀打ちできへんわ。」

「大友先生、さっきから何を言って–––」

「けど、それだけじゃ十二神将の相手は無理や。」

 

春虎は立ち止まり、大友先生を見た。

大友先生も振り返って春虎の方を見る。

 

「春虎クン。君は確かに素人かもしれへんがあまり自分を卑下したらあかんで。塾長も言うてはったやろ。素質のないものはとらんって。やからもうちょっと安心しいや。」

 

大友先生は優しい口調で話し、また歩きだす。

 

「大友先生。」

「ん?なんや?」

「少し、欲しいものがあるんですけど。」

 

 

 

アリーナに春虎が出てきた。

その手には一本の錫杖が握られていた。

 

「…ほんまにそないなもんでええんか?用具庫から引っ張ってきただけのやつやで。」

 

大友先生は、春虎の近くに行き、声を潜めて春虎に改めて聞く。

 

「十分です。ありがとうございます。」

「は、はは、春虎様。そ、その錫杖は一体?」

 

コンも恐る恐る聞く。

 

「よし、作戦を言うぞコン。しっかり聞けよ。」

「は、はい!」

お前は手を出すな(・・・・・・・・)。」

「はい!かしこまりまし…ええ!?」

 

コンが困惑した顔で春虎の方を見る。

 

「春虎様、あ、あの、仰ってる意味がコンには少し分かりかねま–––」

「いいから見てろ。」

 

そして京子の前に一本、足を出す。

 

「馬鹿じゃないの?」

「何が?」

「式神同士の戦いなのよ。戦うのはあくまで互いの式神。…まあそれでも怖いなら、好きにすれば。」

「おのれ、無礼者!春虎様にまたしても!」

「コン。」

「ひうっ!」

 

コンはビックリしながら春虎の方を恐る恐る見る。

さっき怒られたので、まだ少し怖いようだ。

 

「そんなにあたしの式神が恐いの?」

「まあな。刀とか薙刀とか持ってるし。素手で喧嘩するよりは、これ一本持つだけで凄く変わる。」

 

京子はやっと春虎の言うことを理解した。

春虎は自分も式神として戦う気なのだ。

 

「は、春虎様!そんなにもこのコンは不甲斐ない存在でしょうか!?それでしたらこのコンが全身全霊をもってあの式神なと一瞬で倒します!ですから!ひしゃまぐぼぼっ!」

 

コンが飛車丸と言いそうになったので、慌てて手で口をふさぐ。

 

「馬鹿。別にお前を信用してないわけじゃない。」

「ならなぜ!」

「いいから見てろって。」

 

再び京子を見る。

 

「術者が直接式神と戦おうなんて馬鹿げてる!これは式神勝負よ!?式神で戦いなさいよ。」

「だから、俺だって式神じゃん。」

 

京子は信じられないと首を振った。

 

「それに、先生の許可は取ったぜ。」

「本当ですか先生!?」

「ホント。」

「頭おかしいんじゃないの!?」

「キツイな。でも元気があってよろしい。」

「いいのかよ。」

 

京子は不意に観覧席を見上げ夏目を見つけた。

 

「夏目君!これが土御門のやり方なわけ!?あなた、止めなくていいの!?」

「…っ。」

「いい加減にしろよ、てめー。勝負すんのは俺であって夏目じゃねーだろ。」

 

春虎は京子を睨む。京子も無言で春虎を睨む。

そして、再び夜叉が京子の前に現れた。

 

「どうなっても知らないわよ。」

 

京子は霊気を強めていく。

周りで見ている塾生も

 

「おいおい、まじで?」

「やばいって…本気なの?」

 

つぶやきが大きくなっていく。

夏目もぎゅと手を握りアリーナを見る。

そして、春虎はコンの方を見て言った。

 

「コン。」

「は、はは、はい!」

「久しぶりに、見せてやるよ。主人のいいところをよ。」

 

そう言い春虎はコンにニヤリと笑った。

 

「では–––始め!」

 

式神勝負は始まった。

 

 

 

 

「どうしたの、こないの?」

 

京子は挑発するかのように、春虎に言い放つ。

 

「いや、お前から来ると思ってたんだ。」

「先手はあなたにあげるわよ。」

「それはありがたいな。そっちからこないなら好都合だ。」

 

リィン!

春虎は左手で印を結び、右手で錫杖を振り錫杖の先端で床を叩き、音を鳴らした。

 

リィン、リィン、リィン、リィン、リィン

 

何度も音を鳴らす。

 

「なにしてるの?」

「…ここからは俺の時間だ。だれも手出し出来ないぜ?」

「ふん、ほざいてなさい。」

 

京子は吐き捨てるように春虎に言った。

 

リィン、リィン、リィン

 

ここで春虎はひとつ、京子に問いた。

 

「なあ、倉橋さん。これなんだと思う?」

「………」

 

春虎は手に持つ錫杖を見せた。

京子は答えず、黙ったままだ。

 

「これはな大友先生が俺にだけ作ってくれた錫杖なんだ。それも、俺が土御門だからっていう理由で特別製のな。」

「なっ!?」

「意外と簡単に作ってくれたぜ?やっぱり先生も土御門だから作ってくれたのかな?」

「そ、そんな!?」

「元呪捜官が作った特別な錫杖だ。どんな効果なんだろうな。」

「そ、そんなのハッタリに決まってるわ!!」

「おいおい、さっきまで自分で言ってただろ?陰陽塾は土御門に贔屓してるって。自分の言葉を否定するのか?」

「それは!?」

「…この錫杖、今九回鳴らしてるんだ。」

「それがどうしたのよ!?」

「あと一回鳴らしたら…」

 

 

「どうなると思う?」

 

 

京子は自分の背中に悪寒が走るのがわかった。

すぐさま、自分の後ろに控えている式神に命令を与える。

 

「白桜!黒楓!いきなさい!!」

 

だが、

京子の式神はピクリとも動かない。

 

「ど、どうして!なんで動かないの!?」

「だから言ったろ?だれも手出し出来ない(・・・・・・・・・・)って。」

 

春虎はニヤリと笑い、京子の頰に冷や汗が垂れた。

 

「甲種…言霊…」

「正解。」

 

春虎はニコッと笑い、錫杖を肩に担いだ。

それからまた違う印を結んで、

 

「ごめんな–––オン・ビシビシ・カラカラ・シバリ・ソワカ」

 

春虎は呪文を唱えて京子を拘束した。

不動明王の縛り。

京子は簡単に捕まってしまった。

京子は必死に抜け出そうと暴れるが、呪術の前ではそんなことは無意味だ。

春虎はそんな京子に近づいていく。

春虎は京子の前に立って、京子を見ていた。

 

「…なによ。殴るんなら殴りなさいよ!」

 

京子は叫ぶ。

春虎はそんな京子に勢いよく、頭を下げた。

 

「悪かった倉橋さん!」

「…は?」

 

殴られると思っていた京子は春虎の意外な行動に驚いていた。

 

「俺の式神が悪いことをした。謝る、この通りだ。」

「え、ええ、なに?」

「…この機会逃したら、謝る機会が無くなると思ってさ。それにやっぱり式神の失態は主の失態じゃん。それならやっぱり俺が謝らないと。」

「そ、そうかも、しれないけど。」

「さっきの錫杖のくだりも全部嘘だぜ。だから安心してくれ。」

「安心しろって…言われても…」

「だからさ。仲直りしようぜ、倉橋さん。ほら、そんな顔してると可愛い顔が台無しだぜ?」

「なっ!?」

 

京子の顔が真っ赤になる。

 

「はいはい、そこまで〜。」

 

大友先生がパンと手を叩いて試合を止めた。

 

「勝者は土御門春虎クン。ほらみんな拍手。」

 

観客席からはパチパチとまばらに拍手が聞こえた。

 

「春虎クンも早く縛りを解いてあげな。」

「あ、はい。」

 

春虎はブツブツと呪文を唱えて京子の身体を解放した。

 

「…ふん!」

 

京子はそのままアリーナの外へと歩いて出て行った。

 

「…仲直り、出来なかった。」

「あほ、あんな状況でなんで仲直りなんかするねん。どう考えても逆効果やろ。」

「そ、そうですかね。」

「そうや、春虎クン。」

「はい?」

「式神勝負で術者への甲種言霊はOKでも縛りの呪文はあかんで。」

「ということは?」

「あとで先生のところに来てや。反省文やで。」

 

春虎はがくりと膝から崩れた。

結局、春虎は運が悪かった。

 

 

 







今回はここで終わりです。
中途半端で申し訳ないです。
次回もよろしくね!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。