しんけん!! ― ひふみ歌 ―   作:黒海透

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壱話

 

 21世紀は、人類にとって苦難の時代となった。

 発展を続ける機械文明と共に続く人類の歩み。

 連綿と繰り返される人間同士の争い、流血の歴史。

 いつまでも続くと誰もが信じていたそれらは、

 宙の果てから襲来した一つの存在により中断を余儀なくされた。

 

 大天狗――後の世でそう呼ばれることとなる巨大隕石の到来である。

 もし地球へ衝突すれば人類の滅亡は確実、地球という惑星すら無事では済まないだろうと予想されるものが観測された。

 

 無論人類も大天狗に対しなんの対策も打たなかったわけではない。

 英知という英知を結集し、人類の滅びを回避するために打てる手を尽くしたと断言できる。

 滅亡を目の前にし、あるいは人類史上初めて、すべての人々は心を一つにし災厄へと立ち向かったかも知れない。

 

 しかし、それでも人の歴史に幕を下ろそうとする禍を止めることは出来なかったのだ。

 原因がなんであったのか――当時、大天狗の襲来に最前線で対処していた人間ならば、こう云うだろう。

 

「我々はまだ無知であった」

 

 そう、無知だった。

 地球上のあらゆる知識を総動員したにも関わらず災厄を防ぐことができなかったのは、

 一重に、地球という惑星の常識にとらわれてしまったため、

 飛来する大天狗がどういったものなのかを理解できなかったことが原因といえた。

 

 大天狗――その存在はただの岩の塊ではなく、一つの生物だったのだと知ることが出来ていれば、また違った道を人類は歩むことができたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 †††

 

 

 

 

 

 自分の人生を不幸と思ったことはない。

 祖父母は昔を懐かしみ、今の世の中を嘆いているが。

 両親は刻一刻と崩壊する世界を見て育ったからなのか希望を持っていないが。

 

 私は自分の一生を特に面白いものだとは思っていない。

 緑の深い山中に生まれ、自然の恵みを得ることで命を永らえ、ただ日々を浪費してきた。

 おそらくそう遠くない内に、見知った村人の誰かとの間に子供をもうけ、何かを成すこともなくひっそりと死ぬのだろう。

 物語としての価値など存在しない、酷く薄味の日々――そんな私の一生を、きっと私の家族や周りの大人たちは、酷くつまらないものだと思っているに違いない。

 

 昔はこんなはずじゃなかった、という言葉は祖父母のものだったか。

 あるいは両親だったかもしれない。

 

 電気、水道、ガス等が整備され、移動も両の足を使わず車というもので行い、電話とやらを用いて離れた友人と雑談に応じる。

 そういったものが当然のように存在していて、今の世にはそれらが一つも残っていないから生き難くてしょうがない――

 

 そんなことを云われても、とは思う。

 私が生まれた頃にはもうそんなもの極僅かにしか残っていなかっただろうし、今はもうきっとすべてが失われてしまっているんじゃないか――なんて予想は、きっと間違いじゃない。

 

 全てが終わりを迎えた日。人類の黄昏。

 そう呼ばれる日からずっと、人類はただひたすらに文明を衰退させている。

 日が暮れるのもそう遠くないのではないか――そんな風に思ってしまうのは私が無意識の内に悲観的な考えをするような人間だからなのかもしれない。

 

 憑喪、という存在がいる。

 あまり学のない私からすれば人を食うおそろしい化け物という認識しかないそれ。

 

 粉々に砕かれ、本来であれば軌道がそれるはずだった巨大隕石は、しかしまるで誘引されるかのように地球へと降り注いだ。

 その悲劇によって生じた被害は筆舌に尽くしがたく、しかし、それだけならば人類がここまで衰退するような状況にはならなかった、という風に私は聞かされている。

 

 隕石の中には侵略者が眠っていた。

 人類のような炭素を元とする生命体ではなく、その存在を予想されていた珪素生命体に近く、しかし厳密には違うもの。

 それらは大天狗の衝突によって生じた被害から人類が立ち直ろうとしている中姿を見せ、そしてその習性に従い、機械文明を蹂躙し始めた。

 

 曰く、エネルギーを好む。エネルギーそのものだけではなく、その原料となるものも。

 曰く、無機物を依り代に姿を変える。人類が生み出したあらゆるものが奪われ、憑喪の肉体と変わっていった。

 曰く、通常の手段で破壊することはできない。物理的衝撃を与えて破壊することは出来てもそれは一時的なものですぐ再生してしまう。

 

 そうした特徴を持つ化け物に人類が対抗できたのはそう長い期間ではなかったと聞いている。

 エネルギーというエネルギーを奪われ、社会基盤が崩壊し、けれども原因たる憑喪を駆逐することもできず、終いには人間すらも憑喪に食われ始める始末。

 一部の武装組織だけは未だに抵抗を続けているが、人類という尺度で見れば、もはや組織的抵抗を諦めた状態と云えるかもしれない。

 あと何年、何十年、人類はその存在を維持できるのか――

 

 そうした絶望が私の家族にまとわりついている。

 ――けれどこれが私にとっての日常だから、そんなに悲しいことだなんて思わないけど。

 

 大体、憑喪の有無に関係なく人は簡単に死ぬのだ。

 先週だって山に入った猟師が滑落し、その際に出来た裂傷が原因で命を落とした。

 軽い風邪といわれていた病をこじらせ、友人が死んだこともある。

 家族に云わせればそれもまた前の世界であれば救えただろうに、という話だけれど、私にとってはそう思うことなどできない。

 

 世界は人間にとって厳しい存在で、ただ生きるだけでも命がけ。

 そんな当たり前のことを嘆くなんて、理解はできても共感などできるわけがなかった。

 

 だから――こうして死が身近に迫っている今という瞬間も、

 ああとうとう私の順番が回ってきたのか――という風にしか思えなかった。

 

 物思いにふけっている内に俯いていた顔を上げる。

 森の中にできていた小さな広場には、四十人ほどの住人が皆暗い表情をしたまま地面に座り込んでいる。

 その誰もが見知った顔だ。

 つい二日前まで共に村で暮らしていた人々――その村は今、どうなっているのだろう。

 あまり良い状況でないことだけは確かだろうけれど。

 

 私の生まれた場所は、山の中に切り開かれた小さな村だった。

 疎開村、という種別に属するらしく、元はそれなりに大きな町に住んでいた者たちが住処を追われ落ち延びた場所。

 そんな成り立ちだから特に産業らしい産業があるわけでもなく、

 生きるために生きる――ある意味では純粋に日々を過ごしていた者たちの集い。

 

 それがこうして山中に逃げ込んでいるのは、山を隔てた先にある村――同じ疎開村である鈴鳴郷と呼ばれる場所へ憑喪が発生したことが原因だ。

 無論、ただ憑喪が出ただけで生活していた土地から離れるなんて事は滅多にない。

 憑喪を討伐する手段は"ある"のだし――ただ今回はその討伐に失敗し、鈴鳴郷から溢れた憑喪が山を越えて私たちの村へと出現したことが発端だ。

 

 私にはまったく縁のない話だし、そういったことを生業にしている人を見たこともないのだが、出現した当時と違い、今は憑喪に対抗する力が人類にはある。

 

 ただその力は誰にでも扱えるような代物じゃなくて、

 特定の条件を満たす者にしか憑喪と対峙する力を得ることができない。

 そういった都合があるため、今の私たちのように無力な人間は相変わらず憑喪から逃げることしかできないけれど。

 

「……休憩は終わりだ。日が暮れるまでに山を降りるぞ」

 

 誰かがそう口にすると、皆は言葉もなく立ち上がった。

 私も同じように、着替えや小物といった物を詰めた鞄を手に。

 

 男が先頭に立ち、急ぎ気味で歩き出す。

 それに追い、誰もが息を殺しているつもりなのか喋り声一つも上げずついてゆく。

 

 憑喪の出現は唐突なものというわけではなかった。

 ただ、犠牲になるのは鈴鳴郷の人たちだけで、私たちの日常は特に狂いもなく続く物だという根拠のない自信があった。

 その結果がこの様だ。家財道具を持ち出せた人や私なんてまだ幸運な方で、中には着の身着のまま生まれ育った土地を離れる決断を迫られた人もいる。

 

 そうした人たちの表情は酷く暗く、声なんてかける気にもならなかった。

 ……そもそも私だって、運が良いわけじゃないのだし。

 弾む息を整え、足下に注意しながら歩みを続ける。

 そうしてどれぐらい進み続けただろう。日は徐々に傾いてもう一時間もしない内に夜になる。

 それまでに麓へ出られるだろうか――そんなことを考えていた時だった。

 

――出たぞ! 逃げろ!

 

 背後からの大声に、私は思わず振り返ってしまった。

 そんなことをせず、ひたすらに前へ進むべきだったのに。

 

 視線の先、木々の合間――おそらく50メートルほど先には、目を見開き顔面を蒼白にした男が恐怖をその顔に貼り付け、走ってくる姿があった。

 家財道具を放り出し山の斜面を転がり落ちるような勢いで駆け下りてくる。

 

 ――イツマデ。イツマデ。イツマデ。イツマデイツマデイツマデイツマデ――

 

 男の絶叫に混じって、木々のざわめきを圧倒するような合唱が響き渡る。

 金属を擦り合わせる様にも似た雑音が強引に音声を奏でているような絶叫。

 それはここまで私たちを追い立ててきた存在が現れる合図でもあり――

 

 ああ、夜がきたんだ。

 

 そう思った瞬間、スッ、と夕日が一気に暮れ視界が薄闇に染まった。

 そして"それ"が姿を現す。

 

 木々の合間から降り立ったのは、一目で評すならば羽の生えた箱だろう。

 紐のような脚をぶら下げた首のない鳥。さっきのイツマデという声を発したのはあれだ。

 それは、すい、と弧を描いて飛び寄ってくると、必死に逃げている男の背中めがけて近寄り――嘴を突き刺した。

 箱のような部分から飛び出した頭部は猛禽を思わせる造形で――鳥の形を成した妖怪、それから名を得、以津真天と呼ばれている憑喪。

 

 それが一匹、二匹と男へ舞い降りては次々に嘴を突き刺してゆく。

 もう助からない。そう一目で分かる。ああなって逃れることが出来た人間を、少なくとも私は知らない。

 私の家族もああなった(・・・・・)ならば助けることなどできなかった。

 

 絶叫が上がる。

 あるいはその叫びをもってしても憑喪を追い払おうとしたのかもしれない。

 傍目から見ても男の声からは怒りと悲しみと絶望が込められていたから。

 罵声、怒声、怨嗟、懇願、それらをひとしきり口にした後、嘔吐の前兆のように息を詰まらせ――石と石を噛み合わせるような異音が連続する。

 

 パチパチと甲高く鳴り響く音が連続すると共に男は喉から声を絞り出す。

 あるいはあれが断末魔なのか。

 男の体は嘴を突き立てられた胴体を中心にして、徐々に赤みがかった石へと変化し――五秒もしない内に、甲高い音と共に砕け散った。

 

 衣服も、男が持っていた荷物も含め、それらがすべて爆ぜる。

 それを待っていたかのように、頭上の木々に隠れていた以津真天が次々に姿を現し、男だったものを啄んでゆく。

 

 その光景は常人を狂乱させるに充分な代物だろう。

 泣き声と絶叫が周囲に木霊し、けたたましい音を上げながら道筋を無視して山の斜面を下ってゆく。

 

 私もそれに続くように――けれど斜面を下るという選択はせず、獣道同然の山道を駆け出した。

 太陽はまだ完全に沈みきっていないから辛うじて足下は見える。

 どこまで走ることが出来るのか分からないけど、行けるところまで走り続け――そうして、どうなるのだろう。

 今日もまた生き残ることができるのだろうか。

 自分だけは大丈夫なんて根拠のない自信は湧いてこない。

 今までただ必死に逃げてきて、今もまたすぐ側まで迫る化け物に背を向けて一心不乱に走り続けている。

 

 上がる息なんて無視して、歩きづめで棒のようだった脚に鞭を打ち力を込める。

 鞄が邪魔で仕方ないけれど、もう私に残された物はこれしかないのだから――それでもいざという時には捨てようと覚悟を決めて。

 

 そうして、背中を抉る熱と衝撃を感じた瞬間、私は走り続けていた勢いそのままに地面へと倒れ込んだ。

 地面に倒れ一転二転――その衝撃は凄まじく、呼吸することも忘れ頭は真っ白になってしまった。

 がつん、と大きな衝撃と共に背中が叩きつけられたのは木の幹だろうか。確認する余裕などない。

 気を抜けば今にも気絶してしまいそうな衝撃の中、歯を食いしばって立ち上がろうとし――イツマデ、と金切り声が聞こえた方へ目を向けた。

 

 夕闇の中、一対、二対、と赤い光が点る。

 その数はどんどん増えてゆく。私の頭上にある木にどれほどの憑喪が止まっているのか――それを私が知ることは、もうないだろう。

 

 衝突の衝撃で足腰は痺れ動けない。

 仮に立ったとしても、もうここから逃げることなんて出来るわけがない。

 辛うじて上体を起こし、しかしズキリと走った痛みに息が詰まる。

 その場に蹲ってしまいそうだった。それでも顔を上げると、滲む視界の中、私は頭上の憑喪たちを睨み付けた。

 もう何が出来るわけでもないけれど、それでも何もせずに死ぬのは嫌だったから――それが今の私に出来る精一杯の反抗だった。

 

 ……まだやりたいことはあったのに。

 好きな人すら出来ることなく人生を終えてしまうのは、少し、残念――

 

 そんな風に胸中で呟き、今にも走馬燈が始まろうとしていた瞬間だった。

 

 銀光一閃――私を貪るべく舞い降りてきた以津真天が、その光によって両断された。

 音はただ風が斬られたものだけが私の耳朶に届く。

 一体、何が――

 

「……もう大丈夫。安心するといい」

 

 混乱する私の耳に更なる音が届く。

 ひたすら頭上を注視していたせいで――何よりもう助けなんてくるとは思っていなかったから、その声を聞くまで私は隣に誰かが現れたことに気付けなかったのだ。

 

 隣で、私を守るように立っているのは――私の幻覚を見ているわけじゃないのなら、同い年ぐらいの少年だった。

 長すぎず、短すぎない黒髪。着ている服は詰襟、立襟の紺一色で染まった学生服。シルエットが大きく見えるのは、黒い外套を肩にかけているからか。

 周囲の闇に溶け込むような暗色の中に映えるいくつかの色の内、まず目に入ったのは彼の腰に差されている二振(・・)の刀の内、朱色に染まった鞘の方。

 鮮烈な赤色で染められた鞘から刀は抜き放たれており、その武器は今彼の手の中にある。

 打刀……というのだったか。私を喰い殺そうとしていた憑喪を両断したそれは、消え入る寸前の陽光、そして差し始めた月光を反射し鈍く輝く。

 

 そしてもう一つ――目深に被った制帽の下から覗く、一対の黄色い(・・・)瞳――

 

 宵闇の中うっすらと輝くその瞳は、宝石のようにも見えた。

 

「この程度、すぐに終わる」

 

 少年がそう口にすのが合図となったのか、樹木に止まっていた以津真天が一斉に襲いかかる。

 重なり合う羽音に憑喪の叫び。聴覚はそれ以外の音を拾うことが出来ず、視界も憑喪一色に埋め尽くされる。

 そのはず、だった。

 憑喪の生み出す騒音に混じったのは、小さな苦笑。次いで、再び銀光が抜き放たれる。

 

 少年が腕を一振りする度に、一撃で以津真天が両断される。

 羽をまき散らし、断末魔を上げることもなく――自分たちが殺した人と同じように、石となって砕け散る。

 

 切り上げ、唐竹に振り下ろし、身を捻りつつすれ違い様に一閃し、刃を返して刺突を繰り出す。

 常人の私にはただ黒一色でそまりつつある森の中を、風切り音と共に光が舞っているようにしか思えなかった。

 そう、舞だ。祭の際に見る神楽――振るう武器は凶器で身を置いている場は戦場だというのに、それを意に介さない振る舞い。

 

 見惚れていたといえばそうだろう。

 きっと私はこの瞬間、彼に――

 

 しかし、おかしい。私の知っている限り、憑喪をあんな風に相手取れる人間は数少ないはず。

 そしてその人たちは皆、少女であるはずなのに。

 ……じゃああの彼、いや、彼女もそうであるだけなのでは?

 あくまで少年と思ったのは、声の調子から勝手に判断しただけだ。

 

 声――そう、いえば、彼が云ったように以津真天との戦いは既に終わりを迎えようとしていた。

 この程度、という言葉は真実だったのだろう。並の人間にとって脅威だったとしても、彼からすれば以津真天ていどの憑喪は脅威たり得ないということなのか。

 

 キィキィと悲鳴のような声を上げながら、一匹、また一匹と両断され砕け散ってゆく。

 数え切れないとすら思っていた憑喪は残り三つ、二つ、一つ――最後の一匹が断ち切られ、斬神の神楽は終わりを迎えた。

 

 大きく息を吸い、吐く。強引に呼吸を落ち着かせるかのような振る舞いと共に、手に握る刀へと視線を落とす。

 特に問題はないと判断したのかそのまま彼は刃を鞘へ収めると、動き続けてズレた帽子の位置を直しながら口を開いた。

 

「怪我は……してるみたいだね。応急手当ぐらいなら出来るから、傷を見せて」

 

「え、あの……」

 

「ん?」

 

「男の人……ですか?」

 

「あぁ……そうだね。まぁ憑喪と戦える男もいるんだ。少ないけど」

 

 喋りながらも、彼は外套の内ポケットから麻袋を取り出す。

 医療品が入っているのか、いくつかのボトルを取り出しながらガーゼへ液体を含ませる。

 染みるよ、と一言告げ――あまりに手際よく、そして心の準備が出来ていなかったから、思わず女の子が上げちゃいけない素っ頓狂な声を上げてしまった。

 しかし彼はまったく意に返した様子もなく、てきぱきと手際よく手当を続ける。

 

「……出血は派手だったけど、傷そのものは深くないのが不幸中の幸いか。けど、これはあくまで応急手当でしかないから、落ち着いたらちゃんと医者に診て貰った方が良い。遅れたら痕が残るかもしれないし、気を付けて。それじゃあ俺は、他の人を助けに行くから。もうここに憑喪はいないと思うけど、念のため物音を立てないよう隠れてて。後で迎えに来る」

 

「……はい、あ、あの」

 

「ん?」

 

「ありがとうございました。命を助けて頂いて……。それで、その……お名前を……聞かせて頂いてもよろしいですか?」

 

「名前……?」

 

 そんなに不思議なことを聞いただろうか。

 彼は不思議そうに瞬きした後、何か考えるように首を傾げ、

 

「……瑞泉(ずいせん)。そう、三笠(みかさ)瑞泉……かな」

 

 そう、口にした。

 

 

 

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