② 空白の時
「シチュー・ブラニー・ルー、それが僕に用意された名前だよ」
そう言われてシーちゃんみたいな口調でしゃべるブラウンソースのような色の髪の毛
ゆでたニンジンの色の瞳をした幼女がそう名乗るので
「三田です、取り敢えずあまり気が進みませんけど一度実家に戻ろうと思いますが貴女はどうなさいますか?」
私がそう聞くと面倒臭そうに
「この姿じゃ単独行動なんかできないでしょ?すぐに拐われるか良くて警察のご厄介になるか…
貴方と違い実家に連絡して迎えを頼める訳じゃないのだからそのまま養護施設行きでしょうね
そう言うわけだからよろしくお願いしますよ、僕の身元引き受け人さん」
そう笑いながら言われ差し伸べられた小さな手を握ると私は苦笑いを浮かべ
「そうですね…ではそろそろ参りましょうか?」
そう言って私達はその空き部屋を後にしました、一度も振り返ることなく
私達は今東京某所のマン喫に居ます
私達があの世界に行き約一年半の月日が流れていたため季節はすっかり夏に変わってました
その為暑さに負けた私達はここで休憩をかねて情報収集をしているわけですが身体が縮んだ彼女は体力も落ちているため私のとなりで熟睡中
一通り目を通してみて然程の変化がないことを知りました
いや、色々ありますよ?例えば青色発光ダイオードの実用化とか市民生活に影響はあるけど私個人やその周辺に直接関係ありませんよね?
去年のアカデミー賞受賞者が誰とか映画見ない私にはあまり選んない話ですからね?
相変わらずスースート控えめな寝息をたてて眠るシチューの小さな身体を抱き上げ迎えに呼んだタクシーに乗り込むと私が告げた目的地に息を飲む運転手に
「無理ならチェンジしても良いんだけど?」
そう問い掛けるとその人は我に反って
「大丈夫です、お任せください」
そう答えてくれたから任せることにしました
都内と言われてもにわかには信じがたい山奥に私の実家はあります…
料金を支払う際に運転手さんの名刺をいただき指名で呼ぶかもしれないことを告げて反ってもらい私はシチューの手を引いて久し振りに実家の敷居を跨ぐことになりました
ミッション失敗の報告と家を捨てることの宣言をしに来たのが私の今回の一時帰還の目的です
お手伝いの…新人らしく見覚えの無い人に客間に通されお茶を出すと引っ込み暫くまたされました
この部屋に通されどれくらい待たされたのでしょうか?イラつく私に
「少々の事をあせってみたってなにもかわらないよ?」
澄まし顔で言われて溜め息を吐くと
「悪趣味なピーピングトムにも呆れるけど命令じゃ仕方ないのかな?お手伝いのおねえさん?」
表情を変えることなくとつとつと語るシチューを見ていましたら先程のお手伝いさんが入ってきて
「いつから気付いていましたか?」
そう聞かれたシチューが
「最初から貴女信用してないから警戒してた」
そう言われて驚く私を尻目にお婆様とお母様が客間に入ってきてシチューに対し三人揃って頭を下げると
「ようこそお出でくださいました」
そう歓迎の意を示しましたから更に驚いていると
「僕は未だ未熟者だから頭をあげてください」
その言葉を聞いて唖然とする私でしたが私を見て
「あれから一年半も経ったのに全く成長してせんね?貴方と言う子は…」
そう呆れ気味の声で言われた私は言い返そうと口を開ことしたら代りに
「そんな事を言ったら僕の方なんか成長しなかったどころか逆に幼児化してますよ
全く…どこぞの名探偵探偵なんでしょうかね…
と、まぁそれはそれで斜め後ろにおいとくとして
美田くんちょっときてよ、大事な話があるからさ」
そう言って呼び寄せた美田くんの額に触れ
ー開眼っ!ー
そうスペルを唱えるとミーちゃんが姿を表したので
「この世界じゃ自分の意思では変われないけど僕はそのスイッチの切り替えができる…
と、言うわけだから美田くんの側にいることを許してほしいです…今の僕には美田くんの他に頼る先はありませんから」
そう言って頭を深々と下げると
「貴女の名前は?」
そう問われたシチューは
「シチュー・ブラウニー・ルーです」
そう名乗りをあげると
「ならば貴女は今日からシチュー・ブラウニー・ルー・美田を名乗りなさい
兄として姉として貴女が面倒を見なさい、任せますよ」
そう言われて僕の今回の最大の目的である美田家から出されていた力の持ち出しと言うミッション失敗の報告を終えました
但し、僕が持ち出しすることはできなかったけど美田家にシチューを連れ帰ったのは結果的には力を持ち出せたことには変わりはなく成功していた事に暫くは気付けませんでした
ただそう、私と妹のシチューの新しい冒険が今この時から始まったんでしょうね