リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第九十八話 うっかりと邂逅

翌日。

昨日の今日だが、もう一度翠屋へ行こうとしていた雄一は、家で留守番をしているシャマルが寄越した念話に朝から頭を抱えることになった。

 

「<すまない、シャマル。もう一度言ってくれ。今何て言った?>」

『<だから、フェイトちゃんとなのはちゃん、管理局魔導師の二人が今日、はやてちゃんのお見舞いにきちゃうの! すずかちゃんのお友達だから!>』

 

あちゃあ、と雄一は額に手をあてて天を仰いだ。

昨日感じた違和感。

それは、二人のことだったらしい。

 

(そうだよ、すずかが友達って言ったからにはアリサだけじゃなくてあの二人もいるに決まっているじゃないか・・・・・・あー、何で忘れてたんだよ、俺・・・・・・)

 

信じられないミスに頭を抱える雄一。

シャマルもいい考えが浮かばずにいるらしい。

 

『<ああもう! どうしよう、どうしよう!?>』

『<落ち着け、シャマル! 大丈夫だ! 幸い主はやての魔法資質はほとんどが闇の書の中だ。詳しく調べられなければ問題はない>』

『<そ、それはそうかもしれないけど・・・・・・>』

「<だが、はやてはいいとしても、俺達はどうする? 迂闊に顔を見せられないだろ?>」

 

同じく念話を繋いでいたシグナムの言葉に落ち着きを取り戻すが、問題は残っている。

シグナム達が迂闊に顔を見せたら、はやてが関与を疑われてしまう。

 

「<仮に、行かなくてもはやてだけでなく石田先生やすずかから知られないとも限らないな>」

『<・・・・・・我らの方から鉢合わせることを避けるしかあるまい>』

『<う~・・・・・・顔を見られたのは失敗だったわ・・・・・・出撃したときに変身魔法でも使っておけば良かったのに・・・・・・>』

「<今さら後悔しても仕方ないだろ。それに、この状況を想定しろってのは無理があるって>」

 

悔いるシャマルにフォローを入れつつ、一度思考を切り替える。

 

(待てよ? なのは達が来るってことは接触する機会じゃないか? なら、むしろチャンスが来たと考えよう)

『<とにかく、御友人のお見舞いのときは私達が外そう。それに、主はやてと石田先生に我らの名を出さぬようお願いをしなければ>』

『<はやてちゃん、不審に思わないかしら>』

 

雄一が考えている間にシグナムが話を進める。

シャマルは、その提案に懸念を示す。

その懸念にシグナムはすぐには答えられなかった。

 

『<仕方あるまい・・・・・・頼んだぞ>』

『<あ! シグナム!?>』

 

念話が切れ、ため息をつくシャマル。

そのシャマルに雄一は自分の提案を告げる。

 

「<シャマル。さっきのシグナムの意見だけど>」

『<雄一君・・・・・・私、どうすればいいのかしら?』

「<それなんだけど・・・・・・俺が行こうと思う>」

『<え?>』

「<さっきも言ったように、はやてと石田先生を抑えられても、すずかから伝わりかねない。俺は昨日会っているから尚更だ。それなら、いっそ俺に話題を集中させて、シグナム達の話題に広がらないよう抑える>」

『<でも、はやてちゃんに疑いが向くんじゃ>』

「<それは大丈夫だろう。シグナムが言っていたように、はやての魔法資質が闇の書の中なら、いまのはやては管理局から見ればただの一般人と変わらない。闇の書の主として現状最も疑われている俺が同じ場にいれば、はやてに目が行くことはないだろ?>」

 

シャマルに説明するが、この方法には穴がある。

これは、雄一が闇の書の主という疑いがあってこそ意味がある。

だが、アルフがフェイト達にそうではないことを伝えていたら・・・・・・。

その懸念をおくびにも出さず、それに、と続ける。

 

「<それに、元々管理局には会うつもりでここ数日街をうろついていたんだ。ここで会えるなら、この機会を使わない手はないはずだ>」

『<あ・・・・・・そうだったわね>』

「<それで、どうだ?>」

『<私はそれでいいと思うわ>』

 

問うと、シャマルは賛成してくれた。

 

『<けど、無茶はしないでね。雄一君に何かあったら、はやてちゃんとヴィータちゃんが悲しむから>』

「<よく分からないけど・・・・・・了解。シグナム達に、管理局に接触するから、食事は各自で頑張れ、って伝えといてくれ>」

『<分かったけど・・・・・・雄一君も分かってあげて、本当に>』

「<???>」

 

首を傾げつつ念話を切ると、雄一は放課後になる時間を思い出しつつ、それまで図書館で時間を潰そうと足を向けた。

 

 

 

「そういえばはやてちゃん、ペインさん達は?」

「「!?」」

 

はやての病室。

すずかの発した問いに、なのはとフェイトは驚いた。

何かの間違いかと思いつつ問おうとするが、その前にアリサがすずかに問うた。

 

「誰よ、そのペインって?」

「家に住んでるお兄さんや。顔はちょう怖いけど、優しいんやで」

「そんなこと言ってると、また怒られちゃうよ? はやてちゃん」

「あ!? 秘密にしといてな、すずかちゃん!」

 

からかう様に言うと、慌ててすずかに頼むはやて。

その様子にクスクスと笑うすずかに、アリサは意外そうに言った。

 

「へー! お兄さんってことは男の人よね。それなのに、すずかがあっさり懐くなんて」

「懐くって、ひどいよアリサちゃん」

「何言ってるのよ。あんた、初対面の男に近づかれると逃げるでしょ」

 

頬を膨らませるすずかに、アリサが笑いながら言うと、すずかも首を傾げた。

 

「そういえば、なんでだろ? ペインさんって初めて会ったときも、怖いって感じなかったんだ。むしろ、なんだか惹きつけられるっていうか・・・・・・」

「惹きつけられる?」

 

アリサが首をかしげていると、なのは達がようやく口を挟んだ。

 

「ね、ねえ、すずかちゃん、はやてちゃん。そのペインさんって、顔に傷がある怖い感じの人?」

「うん、そやよ」

「そうそう。あれ? なのはちゃんも知ってるの?」

「え、えっと・・・・・・そう、昨日翠屋に来てたらしいの!」

 

夕食の席で、店に来ていたことを家族から聞き仰天したことを思い出し、咄嗟にいうなのは。

そんななのはのフォローを入れようと、フェイトも口を開いた。

 

「わ、私も知ってるよ」

「そうなんか!?」

「嘘!? ってことは、知らないのは私だけなの!?」

 

思わぬ乱入に、驚くはやてとアリサ。

二人の反応にたじろぎながら、フェイトは頷いた。

 

「うん。ちょっと理由があってその人を探してるんだ。ねえ、はやて。その人、ペインさんに会えないかな? あ、もちろんペインさんの都合がよければだけど」

 

もしかしたら、と思って出した問い。

フェイトも、彼が応じないだろうと思っていたのだが、はやてはあっさりと言った。

 

「あれ? そうなん? なら、丁度よかったわ。さっき連絡があったんやけど、雄、やなかった。ペインさん今日来るらしいから、待ってたら会えるよ」

「「え!?」」

 

思わぬ展開に、言葉を失う二人。

 

「あ、そうなの? なら、すずかが御執心の人がどんな人なのか確かめないとね♪」

「あ、アリサちゃん!?」

 

ニヤニヤしながらからかうアリサに、紅くなりながら俯くすずか。

その姿に、雄一とすずかが会ったときの危機感を思い出したはやては、胸中に広がる危機感を雄一にぶつけようと彼の到着を待つことにした。

 

『<はやて? いまいいか?>』

 

丁度そのとき、渦中の雄一から念話が届いた。

表情に出さないようにしつつ、すぐに応じる。

 

「<ええよ。どないしたん?>」

『<もうすぐ着くんだが、もう皆来ているのか? よければ飲み物でも買っていくけど>』

「<ホンマか? それなら六人分お願いな? あとお話もあるから>」

『<よく分からんが、了解>』

 

念話が切れる。

もうすぐ、という言葉に、はやては体を起こすと枕を手に取り扉に向けて構えた。

突然のはやての行動に四人は何事かと様子を窺う。

やがて、コツコツと硬質の足音が聞こえてくると、病室の前で止まった。

はやてが腕を引き、投擲の構えを取る。

何をしようとしているのか悟った四人が止めようと手を伸ばし、

 

「はやて、来た」

「ていやー!!」

「ぞ!?」

 

扉を開けて入った人にはやてが投げた枕が直撃した。

避けようとしなかったのは両手に抱えているジュースの缶の所為だろう。

 

「は、はやてちゃん!?」

「何してるのよ!」

「え、え!?」

「えーと・・・・・・」

 

四人が混乱する中、己の為した結果にはやては満足そうに頷いた。

 

「ん、これで済ませたるわ」

「よく分からんが・・・・・・なんで俺は枕をぶつけられたんだ?」

 

両手が塞がっているから、首を振って枕を振り払う。

そこに現れたペインの顔に、なのはとフェイトは警戒心を高めていった。

 

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