リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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昨日テストで~とか書いておいて、今夜も投稿です。
現実逃避とか言わないで!
では本編どうぞ!


第百七話 目覚めと怒り

時は僅かに遡る。

アースラ第二医務室内。

ベッドの上で眠り続ける一人の少年の周りを複数の人影が忙しく動き回り、一方幾人かが静かに見つめていた。

そのなか、

 

「・・・・・・ん」

 

眠っていた少年が僅かに呻くと顔をしかめながら身を起こした。

周囲を囲んでいた局員は皆動きを止めると、少年を固唾を呑んで見つめた。

そのなか、少年はポツリと溢した。

 

「・・・・・・目を覚ましたと思ったら、いきなり人に囲まれているのはなかなか、威圧感があるな」

「目を覚ましたようね。それで、貴方は自分が誰か分かるかしら?」

 

呟いた雄一に、傍で控えていたプレシアが杖を向けながら問うた。

そちらを向き、杖とプレシアを交互に見ると、雄一は一度ため息をつき、目を眇めた。

 

「また杖を突きつけられるとは・・・・・・随分物々しいですね、プレシアさん」

「そこまで大袈裟、というわけじゃないわよ? それより早く答えてくれないかしら?」

「榊雄一、本人ですよ」

「・・・・・・そう。よく目覚めたわね」

 

雄一の答えに満足したのか、プレシアはフッと微笑むと杖を下げた。

代わりに、同じく控えていたクロノが前に出た。

 

「雄一、久しぶり・・・・・・でいいのか?」

「クロノか。この身体では確かに久しぶりなんだけど、あっちの身体で会っていたしな」

「なるほど・・・・・・やはり、ペインも雄一だったと言うのは本当だったのか」

「フェイトから事情は?」

 

表情を歪めるクロノに雄一が問うと、クロノは頷いた。

 

「ああ、聞いたよ。正直、いきなり何を言い出すんだと思ったものだけど・・・・・・こうして君が目覚めているんだから文句は言えないな」

「そうか・・・・・・ところで、いくつか聞かせてもらっていいか?」

「ああ。構わない」

「じゃあ・・・・・・」

 

許可を得ると、雄一はきょろきょろと周囲を見渡すと、目的の人物がいないので改めて聞いた。

 

「俺を追い詰めたお姉さんは誰だ?」

「お姉さん?」

「リニスのことよ」

 

首を捻ったクロノの代わりにプレシアが気まずそうに答えた。

 

「リニス? あれ、それってプレシアさんの使い魔ですよね?」

「・・・・・・? ああ、フェイトから聞いたのね。そうよ」

「それで、一体何があったんだい?」

 

すぐに事情を察したプレシアが頷く横で雄一に聞くクロノ。

彼に雄一は、顔を引き攣らせた。

 

「いや・・・・・・まさか、あの身体であそこまで防戦一方に追い込まれるとは思わなかったから、な」

「ああ・・・・・・さすがはフェイトの師匠とでも言うべきなのかな。彼女はとても戦い方が上手いんだ。ちなみに、僕も学ばせてもらっている」

「そうか・・・・・・それで、本題だけど、なのは達は?」

 

問うと、今度は二人が怪訝な顔を雄一に向けた。

何故そんな顔を向けられるのか分からず、雄一は眉をひそめて問うた。

 

「なんだ? どうしたって言うんだ、二人とも?」

「いや・・・・・・雄一、もしかして気がついていないのか?」

「だから何を?」

「貴方、二日間眠っていたのよ?」

「・・・・・・はあ!?」

 

プレシアの口から出た言葉に、目を見開く雄一。

まさか、と思いクロノに目を向けるが、彼ははっきりと頷いた。

 

「・・・・・・ということは、今日は」

「12月24日よ。二人は、友達のお見舞いに行くとか」

「っ!?」

 

プレシアから聞いた日付に雄一は表情を強張らせると、ベッドから跳ね起きた。

雄一に慌てて手を伸ばすプレシア。

 

「待ちなさい! 無茶よ! 半年間眠り続けていたんだから、そんな激しい運動は身体が保たないわよ!?」

「問題ない。それより行かないと!」

 

言葉通り、雄一はしっかりと両足で地面を踏みしめると、出口へと足を進める。

その雄一をクロノが呼び止めた。

 

「待て! 一体何をするつもりかは知らないが無茶だ! しばらく身を休めて検査をするべきだ!」

「そうも言っていられなくなった! クロノ、闇の書・・・・・・いや、夜天の魔導書のことは知っているな!?」

「何故それを知っている!?」

「それは問題じゃない! 知っているようだから続けるが、俺がここに来たのは、俺の身体を取り戻すことと管理局と同盟を結ぶためだ」

「それだ。フェイト達も言っていたが、どういうことなんだ?」

「フェイト達から聞いていないのか?」

 

クロノ達に、同盟の意図を説明していく。

管理者権限と暴走体について。

それを抑える戦力について。

今までの主と今代の主の違いも含めて説明するに連れて、クロノは顔を引き締めた。

 

「そんなことが・・・・・・だが、それなら納得もいく」

「だが、のんびりしているわけにも行かなくなった。今日は地球はクリスマス・イブだ。そして、闇の書の主ことはやてのもとには守護騎士が集まっている。そして、そこになのは達が近づいている」

「なんだって!?」

「俺から連絡がないことで、守護騎士達は俺が失敗したと考えているはずだ。そこに管理局側の二人が現れてみろ。すぐにでも戦いになってもおかしくないぞ!?」

「っ!?」

 

雄一の危機感を理解したのだろう、クロノはS2Uを展開すると、

 

「急ぐぞ! 転送ポートから海鳴に降りる!」

 

急いで室外へ駆け出す。

雄一もあとへ続こうとして、

 

『<シグナム! シャマル!>』

「――――っ!?」

 

突然、響いた声に足を止めた。

振り返った先には遠巻きにこちらを窺う局員達がいるばかり。

だが、先ほどの声の主はここにいないはずの彼女。

 

(ヴィータ?)

「おい!? 何をしているんだ!?」

 

チリチリと、首筋がひりつくような痛みを伝えるのを感じながら、嫌な予感を覚え足を止めていた雄一をクロノが怒鳴るように呼ぶ。

それに答え、雄一が足を踏み出そうとした瞬間、

 

ヂッ!

 

「ぐぅっ!?」

「どうしたの!?」

 

突然うずくまった雄一に、プレシアが駆け寄る。

だが、雄一にはそれを気にする余裕はない。

痛みが走ったのは背中。

そこにあるものがどういうものか、四月から痛いほど知ることになった雄一は、再び走った痛みの意味を考えて青褪めた。

 

(まさか、フェイトかヴィータに何かあったのか?!)

「おい!? 雄一、どうし」

「っ、あぁあああああ!!」

 

クロノが駆け寄ろうとした瞬間、雄一は背を反り返らせ叫びをあげると同時に転移魔法を展開させ、姿を消した。

 

 

耳元で鳴り響く風の音に、雄一は目を開ける。

眼下に広がるのは海鳴りの夜の街。

 

『マスター』

「ああ。エルミナ、飛行魔法とバリアジャケットを」

『了解した。<Flier Fin><Balier Jacket,Setup>』

 

雄一の指示に、エルミナが飛行魔法とバリアジャケットを展開する。

その間に、現在の位置を調べると、雄一は海鳴大学病院へと急いだ。

 

『マスター、向かう道中話しておくことがある』

「なんだ?」

『マスターがヴィータやフェイトと結んだ契約、あれについて条件が解析できたから伝えておきたい』

「本当か!?」

『条件は二つ。一つは、私かカナメが魔力を渡したい相手の傍にあること。もう一つはマスターが能力を使用していないことだ』

「一つ目はともかく、二つ目は厄介だな」

 

一つ目はどちらかを手元に残して置けるなら、魔法の発動に問題はないのだからいい。

だが、二つ目は、<デル・ドーレ>の回復力や<クフ・リーン>の防御力を失うことになる。

厄介さに顔をしかめる雄一だったが、遠目に見える病院の屋上の様子に視線を鋭くした。

 

「だが、そうも言ってられないな! エルミナ! 杖で展開!」

『了解』

 

すぐに杖の姿に変わるエルミナ。

その杖を掴むと雄一は、身体を捻り一気に解き放った。

 

「ヴィータ! 受け取れ!!」

 

放たれたエルミナは、仮面の男達の間を抜け、ヴィータの足元に突き刺さった。

 

「・・・・・・ぁ、ユ、ウ?」

「ヴィータ! 叫べ、お前が契約を結んだ精霊の名を!」

 

呆然とした様子のヴィータに、強く言う。

呆然としていたヴィータだったが、眼に力を取り戻すと、喉よ裂けろ、とばかりに叫んだ!

 

「<フェル・ディア>!!!」

「・・・・・・っ」

 

ヴィータの叫びの途端、雄一は体から抜けていく魔力に、僅かにたたらを踏んだ。

だが、その甲斐あってか、消えかけていたヴィータのリンカーコアが輝きを取り戻した。

 

「くっ、はぁ、はぁ!?」

「ヴィータ、無事か!?」

「ユ、ユウ! ユウなんだよな!! いままで何してたんだよ!?」

 

安否を問う雄一に詰め寄るヴィータ。

彼女に謝ると、雄一は問うた。

 

「すまない。こっちもいろいろあったんだ。けど、こうして元の身体に戻れた。それより、シグナム達は?」

「っ、それは」

 

雄一の問いに言葉を詰まらせるヴィータ。

彼女の様子に不穏なものを感じた雄一は彼女を問い詰めようとして、

屋上に落ちている、彼女達の服に言葉を失った。

そして悟った。

彼女達を守れなかったのだと。

 

「・・・・・・!!」

 

それを理解すると、雄一はそれをした犯人を振り返った。

そこには、雄一を警戒するように二人の様子を窺う仮面の男達。

 

「・・・・・・ヴィータ。何があったかは聞かない。だけど、これだけは聞かせろ」

「・・・・・・(コクン)」

「哀しいか?」

「・・・・・・(コクン)」

「あいつらが、憎いか?」

「・・・・・・っ(コクン)」

「なら・・・・・・戦えるか?」

「っ、当たり前だ!」

 

叫ぶヴィータの目には涙はなく、強い怒りの炎が揺らめいていた。

それを横目に見た雄一は、仮面の男達を睨みあげると、

 

「なら・・・・・・やっちまおう。あいつらを、やっちまおうぜ!!」

「おう!!」

 

デバイスを手に飛びかかった!

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