リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第百八話 副作用と落とし穴

「しっ!」

「はあ!」

 

仮面の男が放ったスフィアを<キー・アーン>で撃ち落とす。

返す刀で、能力を切り替え<デル・ドーレ>の身体能力で間合いをつめると、勢いを殺さず拳を放つが、最小の動きで捌かれる。

 

体勢が流れ、無防備に開いた腹めがけて仮面の男が蹴りを撃つ。

 

「終わりだ!」

「終わらねえよ!」

 

だが、雄一も流れた体をそのまま前に倒すように軸足を蹴り出すと、膝で蹴りを迎え撃った。

ドォン! と鈍い音を上げて、二人が吹き飛ぶ。

 

「くぅっ!?」

「ちぃ!?」

 

両者すぐに体勢を整えると、お互いを睨み構えた。

僅かに呼吸を整えると、雄一は体を取り戻した弊害に顔をしかめた。

 

(くそっ、今度は間合いが狂ってやがる)

 

彼が仮面の男相手に攻めきれないのはそれが原因だった。

ペインの身体から元の榊雄一の体に戻った。

その結果、使える精霊が統合され、戦略の幅が広がったのはいい。

子供の身体だから小回りが利くのも利点だ。

だが、成長しきっていない子供の身体。

ペインの身体と比べ、手足は短く、視界も低い。

さらに、筋肉が付ききっておらず、身体が軽いため攻撃に重さが乗らないのだ。

ちょうど、半年前にペインの身体で感じていた違和感を雄一は再び味わっていた。

 

(それ自体は、予想していたけど、まさか眠り続けるとは)

 

そのロスが雄一の誤算だった。

今日までにそれをある程度馴染ませておくつもりだったのだが。

 

(まさか、ぶっつけ本番になるなんて・・・・・・ままならないな)

 

思わずため息をこぼした雄一。

そんな彼に、仮面の男が苛立たしげに問うた。

 

「・・・・・・分からないな」

「ん?」

「何故、お前がここにいる? いや、それよりも、何故そいつらのために戦う?」

「・・・・・・ん?」

 

仮面の男の気にするところがいまいちハッキリせず首を傾げる雄一。

その態度に仮面の男はさらに怒りを募らせていく。

 

「だから! アースラのベッドの上で眠り続けていたはずのお前が何故このタイミングで現れて! その上、闇の書の味方なんてしている! 答えろ!」

「・・・・・・。ああ、そういえば、お前らのどっちか。俺に触ろうとして腕を吹き飛ばされたんだったな」

「っ!!」

 

どうでもよさそうに呟いた雄一に、仮面の男は殺気を発する。

だが、その殺気にも雄一は顔の筋一つ動かさない。

 

「それより、それを知っているってことは、大分容疑が固まってきたわけだが。今はそれは問題じゃねえな。そっちの質問だが、簡単だ。エルミナ」

『何用かね?』

「バリアジャケット変更。サイズを自動調整」

『了解した。いつでもいいぞ』

「一体何を?」

 

雄一の行動に、今度は仮面の男が戸惑った。

それでも警戒は解かずに雄一を睨んでいるが、雄一がしようとしているのは攻撃のためではない。

 

「踊れ、<フィン・ターン>」

「っ、貴様は!?」

 

異能に雄一の身体が変わっていく。

手足は伸び、髪の色が変わり、所々に鋭い傷が走る。

その身体を包む服は、執事服から軍服様の格好へと変わった。

その姿はまさしくペイン。

彼を見て、殺気を濃くする仮面の男。

<フィン・ターン>を解除し、元の姿に戻った雄一は細工をしつつ、説明した。

 

「俺は一心異体とでもいう状態だったのさ。ペインも俺の姿の一つだったということさ」

「なるほど・・・・・・貴様を目覚めさせようとしたのは間違いだったというわけだ」

 

忌々しそうに吐き捨てる仮面の男。

だが、その言葉にさらに小声で何かを足した。

首を捻るが、聞き取れず、雄一は諦めると、指を細かく動かした。

 

「・・・・・・そんなことのために腕を・・・・・・」

「? まあいい。それより、御託はいいな。それじゃ・・・・・・終わりだ!!」

「何、くっ!?」

 

隙を突く様に、雄一は気がつかれないよう伸ばしていた鋼糸を勢いよく引き絞った。

仮面の男の周囲を囲んでいた鋼糸が一気に窄まる。

 

「っ、こんなもの!!」

 

仮面の男はすぐに反応し、カード型のデバイスで周囲を囲むように障壁を張った。

鋼糸は障壁に絡みつくと、ギシギシと軋ませた。

だが、結界を砕くことはできなかった。

 

「(勝った)コレで終わりか?」

 

鋼糸を防ぎきり、雄一に自分の優位を示そうと、余裕たっぷりに彼の方を見て、

デバイスを振りかぶった雄一の姿に己の失策を悟った。

 

(しまった!? 鋼糸は囮! 本命は私の足を止めて、私に一撃を入れること! だが、障壁が・・・・・・いや、待て! 確かやつには触れたものを破壊するレアスキルがあったはず!)

「砕け、<フェル・ディア>!」

 

とった、と思い雄一は<フェル・ディア>を纏わせエルミナで障壁を打ち据え、

やられた、と思い、仮面の男は来る衝撃に覚悟を決め、

 

ガァン! とエルミナが障壁に阻まれた。

 

「なっ!?」

「っ! おぉおおおおお!!」

 

驚愕に動きが止まってしまった雄一より、僅かに先んじて立ち直った仮面の男が雄一をバインドで拘束した。

今回は、手がバインドに触れないよう磔刑のように拘束していく。

 

「しまった!?」

「くっ・・・・・・ハァ、ハァ・・・・・・やれやれ、てこずらせてくれた、な!」

「ぐぅ!?」

 

拘束された雄一の腹部を蹴り上げる仮面の男。

雄一は痛みに荒い息をつきながら、先ほどの<フェル・ディア>の不発を思い出していた。

 

(なんだったんだ、さっきのは? 魔力はそれほど減っていないし、魔法みたいに細かい計算を必要とするものじゃないんだけど)

 

首を傾げつつ、思いあたるのは、やはりヴィータとの契約とその発動。

 

(となうと、やっぱりあれが原因か。考えられるのは、異能の封印。さすがに永続じゃない、と思いたいけど)

「フ、フフフ・・・・・・いい様だな」

「・・・・・・ハッ、どっちがだよ・・・・・・片腕が義手だって事が隠せてないぞ、大間抜け?」

 

雄一の指摘に、ハッと片腕を抑える仮面の男。

その反応に大笑いする雄一。

実は、雄一は仮面の男の腕が義手であることに確証を持っていたわけではない。

ただ、ブラフで言っただけだったのだが、ここまで顕著な反応を示されて思わず笑ってしまった。

 

「っ、貴様!!」

「が、ぁ・・・・・・」

 

仮面の男も引っ掛けられたことに気がついたのだろう。

今度は雄一の顎を蹴り上げた。

今度は耐え切れず、雄一は意識を刈り取られてしまった。

ぐったりと脱力した雄一の髪を掴むと、仮面の男は雄一の意識の有無を確認した。

 

「落ちたか。さて、こちらは抑えた。そっちはどうだ?」

 

仮面の男は、雄一の抵抗がないことを確認すると、もう一人を振り返った。

そちらも決着がつこうとしていた。

先ほどまでは、互角だったのだが、雄一が敗れたことにヴィータが動揺し、天秤は仮面の男の方に傾いていた。

 

「心配するな。すぐに終わる」

「っ、嘗めるんじゃねえ!! アイゼン!」

<Exprosion!>

 

アイゼンがカートリッジを吐き出し、得た魔力をヴィータはブースターに叩き込んだ。

 

「行っけー!! ラケーテン、ハンマー!!」

 

遠心力とブースターの威力を乗せたハンマーヘッドを仮面の男めがけて振るうヴィータ。

だが、

 

「しっ!!」

 

仮面の男は拳を構えると、ハンマーヘッドに拳を合わせ、向きを上に変えてしまった。

 

「なっ!?」

「はあ!!」

 

ブースターの勢いに引っ張られ、無防備になってしまったヴィータに仮面の男の蹴りが突き刺さった。

 

「ああああああ!?」

 

吹き飛ばされてしまったヴィータは、屋上から弾き出され、隣のビルの壁を破って中に飛び込んだ。

 

「しまったな・・・・・・闇の書の糧が」

「いや、やつはもう蒐集できない。構うだけ無駄だ」

「だが、」

「構わない。ページは集まり、闇の書は完成している。それに、あれだけ痛めつけたんだ。あいつはもう間に合わない。予定とは違ったが、こいつを使って主を覚醒させよう」

「・・・・・・そうだな。では、早速」

 

仮面の男は、カード型のデバイスを手に持つと、登録しておいた魔法を展開した。

二人の姿が変わり、二人のいた場所には、

 

「それじゃ、始めようか」

「闇の書の因縁・・・・・・その終焉を」

 

酷薄な笑みを浮かべた、なのはとフェイトの姿があった。

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