リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第九話 面倒事と厄介ご・・・・・・え?

なのはの先導のもと、すずかの部屋に行くと、アリサ達と彼女達の側にいたメイドさんが迎えてくれた。

ファリンと名乗る彼女は俺となのはの飲み物の注文を聞くと部屋をあとにしていった。

 

「遅かったわね」

「いらっしゃい、二人とも。お姉ちゃん達はどうしたの?」

「忍さんはノエルさんと一緒に恭也さんを連れていった。あの人達の関係性がひどく気になったな」

 

なのはに椅子を引いてやりつつそう答えると、事情を悟ったらしいアリサ達は苦笑した。

 

「それは・・・・・・災難だったわね。なのはのお兄さんに捕まるとは。ちなみに、恭也さんと忍さんは恋人どうしよ」

「え、マジで? 災難だったのはまったく同感だ。しかもいきなり問答無用で殺しにかかるとは思わなかった。なのは、愛されているな」

「そ、そんなことないよ。うー、お兄ちゃんのバカ。なんてことするの」

「お姉ちゃん、何も言ってないよね・・・・・・何か言ってた、雄一君?」

「特になかったと思う・・・・・・ああ、むしろ俺が聞きたい。忍さんに俺をどういう人間として紹介していたんだ?」

「そ、それは・・・・・・あぅ」

「まるで、チェシャ猫のような笑みを、ってどうかしたのか、すずか。顔が赤いが」

「な、なんでもないよ」

「「むうぅぅ・・・・・・」」

「???」

 

顔を赤くしたすずか、突然不機嫌になったなのはとアリサに首を傾げる。

すると、

 

「キューーー!!」

 

妙な鳴き声、というには聞き覚えがあるような。

見れば、ユーノが飼い猫の一匹に追いかけられている。

 

「ユーノ君!?」

「アイン、ダメ!」

 

なのはとすずかが止めようとするがどちらも止まらない。

そこに騒ぎをさらに大きくする存在も現れた。

 

「は~い、お待たせしました~! イチゴミルクティーとクリームチーズクッキーで~す、ってうわぁ!」

 

ティーセットとお茶菓子を乗せたトレーを手に扉を開けたファリンの足下を二匹が駆け回った。

ファリンも突然のことにパニックになりつつ、二匹を踏まないようにと、跳ね回り、そのうちに目を回してしまい倒れ、って!

 

(間に合え! ってぇ!?)

「ファリン、危ない!?」

「うん!!」

 

とっさに影を踏もうと足を踏みおろす直前、すずかとなのはが飛び出した。

・・・・・・。

 

「ぅ、うぅ」

「セ、セーフ・・・・・・」

「・・・・・・でもないな」

 

え、とファリンとトレーを死守したなのはとすずかが振り返ると、手に空のティーポットを持って頭から紅茶を滴らせた俺の姿があった。

 

「にゃー! ゆ、雄一君、大丈夫!」

「きゃ~! ご、ごめんなさ~い!」

「落ち着きなさい、あんた達!! あんたは顔冷やしてきなさい! すずかは洗面所に案内して! なのはは私と一緒にここの掃除!」

「う、うん! ファリン! 着替えを用意して! お風呂に連れて行くから!」

「か、畏まりました~!」

 

ファリンが部屋を飛び出していき、俺はすずかに手を引かれて脱衣所につれて行かれた。

 

 

「・・・・・・で、これはなんでだ?」

 

シャワーを浴びているうちに用意された服を片手に脱衣所で途方に暮れた。

しかし、いつまでも裸でいるわけにもいかない、ととりあえず着込んで脱衣所を出る。

脱衣所の前で待っていたすずかは俺の格好を見て目を丸くした。

 

「ゆ、雄一君? どうしたの、その格好?」

「どうしたもこうしたも・・・・・・すずか、ファリンさんは? この格好について、ちょっと聞かなきゃいけないことができた」

 

すずかが驚くのも無理はない。

今俺が着ているのは、

『執事服』だからな!

何で、サイズがぴったりなんだろ、これ?

ため息をついていると、すずかが乾いた笑い浮かべていることに気がついた。

 

「どうした?」

「うん。たぶん・・・・・・その服はお姉ちゃんの仕業、かな? 前に恭也さんに着せようとして失敗したって言ってたような・・・・・・」

「その通りよ!」

 

思いだしながら苦笑していたすずかの言葉に相槌が入った。

みれば、ものすごく良い笑顔をしている忍さんの姿があった。

 

「それは、すずかの言うとおり恭也に着せるつもりだったんだけど、一つ小さいサイズで買っちゃったの。それで、すずか達に着せようかとも思ったんだけど、この子達には大きくて。大きくなるまで待とうかと思ってたんだけど、君の話を聞いて急いで仕立て直してもらったの!」

 

・・・・・・とりあえず言わせてください。

どうせ仕立て直すなら恭也さん用に仕立て直せよ!

 

「・・・・・・元の服は」

「紅茶のシミって結構頑固なのよ? そもそもすぐには乾かないわ」

「他の服は」

「あら、他の服って私達の服だけど、雄一君は女装したいのかしら?」

「・・・・・・。執事服で良いです」

そう言われてどう返せと?

俺は肩を落としてすずかと共に部屋へ戻るのだった。

 

 

部屋に戻った俺を見て、なのはとアリサも驚いていた。

俺は憮然としつつも、せっかくだと考えるようにして、執事として振舞っていた。

三人もそんな俺の姿に笑顔を向けていたから失敗はなかったはず。

だが、穏やかな時間は唐突に終わりを告げた。

 

『―――! ―――!』

「いたっ!?」

「? どうかしたの?」

「い、いやなんでもない」

 

突然の頭痛と金切り音に顔をしかめた俺をアリサが訝しんだので、なんでもないように振る舞いつつ、なにが起こったのか考える。

すると、

 

「キュッ!」

「ユーノ君!?」

 

なのはの膝の上にいたユーノが突然どこかへ走り出した。

慌てた様子で立ち上がったなのはは、

 

「私、追いかけてくるね!」

 

何かに気がついたようで、一人駆けだしていった。

 

「なのは! もう、あたし達も手伝いにいくわよ!」

「ちょ、待て待て」

 

出遅れる形になったアリサが席を立ち上がろうとしたので慌てて止める。

あの様子からしておそらく魔法関係。

なら、どんな展開になるにしてもアリサ達にいかれると都合が悪い。

 

「俺が手伝いにいくから、おとなしく待ってろ。何かあっても男の方が対応しやすいだろうし」

「う、そう言われたら・・・・・・分かったわよ」

「気をつけてね」

 

渋々座るアリサとすずかに見送られ、俺も気配の方へ足を向けた。

 

 

『主殿、気がついているだろうが、ジュエルシードだ』

「そのようだな」

 

部屋から離れたところで、カナメの切り出しに同意する。

おそらく、さっきの頭痛はユーノの念話だったのだろう。

一芝居打ったユーノを追ってなのはが動けるように、といったところだろう。

『分かっておるならよい。なら、念のためじゃ。バリアジャケットも着ておくのがよかろ』

「? 別にこの格好でもいいんじゃ」

『自分の格好を思い出さんか、馬鹿者。その格好は借り物なんじゃから汚すわけにはいかんじゃろ。それにバリアジャケットであれば何かあっても私がすぐに補助できる』

 

確かに今着ている執事服は忍さんから借りている品だから汚すわけにはいかないのは確かだし、バリアジャケットが有用なのは分かる。

分かるんだが、

 

「結局・・・・・・執事服、か」

『ブツクサ言っとらんと早くせんか!』

「ハイハイ・・・・・・セットアップ」

『<BarierJacket,Setup>』

 

カナメの処理と共に、服装が“僅かに”変わる。

燕尾服はそのままに、両手に銀啼鳥という鳥を象った刺繍がついた白手袋がはまった。

 

「変わったのは、手袋くらいか」

『さっきから喧しいわ! それより急がんか、中庭、森の中じゃ!』

 

カナメの叱責にため息をつきつつ、ギアをあげて、駆ける。

カナメの示す先へ足を進めていくと、

 

「結界、展開!」

 

ユーノの声と共に世界が色を失い固まった。

ユーノの結界の効果か。

 

「なのは!」

 

ラストスパートをかけ、二人と合流する。

 

「雄一君!来てくれたんだ!?」

「ああ。それより、ジュエルシードは?」

「わかんない。私達もさっき来たばかりで」

 

ずぅん!

なのはの台詞に被さる形で何かが響いた。

まるで、大きなものの足音のような。

ずぅん!!

 

「さて、何が出ると思う?」

『私は月村家の誰かにジュエルシードが憑いた、と予想しようかの』

「いいな。そろそろ人間に憑いたジュエルシードが出てくる頃だ」

「二人とも、物騒な事言わないで!!」

 

ユーノに叱られつつ、近づく音に緊張感を高め、

ズゥン!!! がさがさっ!

木を揺らして何物かが姿を現す!!

現れた物を高まった戦意を込めて見上げ、

 

「『・・・・・・は?』」

―――にゃーお・・・・・・―――

 

・・・・・・姿を現したのは巨大な猫でした。

俺は地面へと見事にこけることになった。

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