リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第百十一話 援軍と決意

「なのは!」

「フェイト!」

 

雄一が作戦を説明しようとした矢先、ユーノとアルフが合流した。

タイミングを外された雄一は、若干恨めしく思ったが増援と割り切ると、二人を歓迎した。

 

「ユーノ、アルフ。久しぶりだな」

「あ、うん・・・・・・って、雄一! 目が覚めたって聞いてはいたけど、本当だったんだね!」

「ああ。それより、二人が来たってことは援軍ってことでいいんだよな?」

「うん。アルフも」

「・・・・・・」

「アルフ?」

 

複雑そうな目で雄一を見るアルフに、フェイトが声をかける。

なのはやユーノも怪訝そうに首を傾げた。

 

「アルフ? どうかしたの?」

「いやね・・・・・・フェイト達から事情は聴いたんだけどさ。雄一がペインだったんだよね?」

「ああ」

 

雄一が頷くと、さらに顔を歪ませるアルフ。

どうしたのかと皆の視線が向けられていると、アルフが突然頭を下げた。

 

「あ、アルフ!?」

「いいんだよ、フェイト。雄一、フェイトを助けてくれてありがとう」

「・・・・・・フェイトが蒐集されたときのことか?」

「そうだよ」

「・・・・・・」

 

アルフの肯定に今度は雄一が苦虫を噛んだような表情を浮かべた。

 

「あの時は、まだ契約のリスクも分かっていないとき・・・・・・いや、いまでもリスクは分かっていないんだ。そんなものを無断で使ったんだ。感謝されてもな」

「・・・・・・正直、それに思うところがないって言ったら嘘になるね。けどね、それを使ったおかげでフェイトが無事だったのも事実だろ? だったら、あんたはあたしとの契約を守ってくれていたんだから、頭も下げるさ」

「・・・・・・そうか」

 

アルフの感謝に、照れくさくなりながら顔を背ける雄一。

そんな彼に、なのははおずおずと告げた。

 

「え? えっと、雄一君」

「ん? どうした、なのは?」

「えっと、『ラブコメってる暇はねえだろうが、相棒』って<クフ・リーン>さんが」

「ああ、そうだった。なのは、フェイト。<クフ・リーン>とカナメを」

「うん」

「分かった」

 

なのはは頷き、フェイトは懐から懐中時計を取り出した。

フェイトが懐中時計を渡している間に、なのはの足元から影の一部が山犬に姿を変え、雄一の影に飛び込んだ。

 

――シシシシ、久しぶりだな、相棒――

『無事で何より、といったところかの?』

「そうだな。二人とも、よくなのは達を守ってくれたな」

 

にやりと笑う影と手に持った懐中時計に礼を言う雄一。

そのとき、

 

「「っ!?」」

「「ぅあっ!?」」

「「きゃっ!?」」

 

突然広がった魔力に思わず眼を瞑った。

風のように正面から吹きつけた魔力に瞑っていた眼を開けると、世界の様子が変わった。

 

「これは、結界か?」

「ああ。前と同じ、閉じ込めるタイプの結界だ!」

 

前、とアルフが言ったのはおそらく、ヴィータ達となのは達の初戦のことだろう。

 

「やっぱり・・・・・・私達を狙っているんだ」

「今クロノが解決法を探している。援護も向かっているんだけど・・・・・・まだ時間がかかる」

「援護?」

 

雄一は、ユーノの言葉の一部を聞きとがめると、ユーノを振り向いた。

 

「その援軍ってのは?」

「それは、分からない。けど、さっきも言ったように時間がかかると思う」

「ならよ。その援軍はないものとして考えて、ここにいるやつらで、さっき雄一が言おうとした作戦を進めるしかないんじゃねえのか?」

 

首を横に振るユーノの言葉に、いままで口を閉ざしていたヴィータが言った。

焦れていたらしく、その様子は落ち着かないようだった。

 

「っと、その説明をしようとしていたんだったな。といっても、この結界が張られたってことは捕捉されるのも時間の問題だろうし・・・・・・いや、説明しておく」

 

僅かに考え込んだが、すぐに結論を出して皆を注目させる雄一。

 

「俺が提案する作戦はヴィータやフェイトのときと一緒だ」

「私やフェイトってことは、例の『契約書』ってやつか?」

「ああ。もともと、はやての管理者権限が使えるまで、暴走体の力を削ぐのが俺達の役割だったわけだが、何も相手の力を削ぐだけじゃない。仲間の力を底上げしてもいいわけだ」

「つまり、どういうこと?」

 

理屈が分からず先を促すなのは。

他の面々も、同様だ。

唯一、契約の恩恵を受けたヴィータも理屈までは分からないため同じく促す。

 

「俺と契約を結んだ、相手は特定の状況でカートリッジのように魔力を供給できる。この理屈ではやての力を強化することで、管理者権限の後押しを図る」

「そういうことならさっそく!」

「待て待て」

 

すぐさま飛び出していこうとするヴィータを、襟首を掴むことで止める。

 

「ぐえっ!?」

「話は最後まで聞け。この案にはいくつか問題があるんだ。まず、契約させるには血がいる。つまり、殺傷設定で戦う必要があるんだ」

「「「「っ!?」」」」

 

殺傷設定と聞き、顔色を変える四人。

特に、なのはの顔色が悪い。

非殺生設定のおかげで、気絶以上のダメージを相手に与えずに済ませられている現状で、手を汚せと言われたのだ。

まして、九歳の女の子なのだから無理はない。

フェイトも血の気が下がっている。

 

「け、けど非殺生設定でも血が出るくらいの傷は負わせられるはずだよ!」

「いや、それじゃあ駄目だと思っておいた方がいい」

 

ユーノの懸命な反論に、雄一ははっきりと首を横に振った。

何故、と問うユーノに、雄一は一言、無限再生とだけ返した。

 

その言葉に、ユーノは、あ、と思い至った。

確かに傷は付けられるだろうが、回復してしまうのだ。

もちろん、回復のために魔力は消費する。

だが、そのままではすぐにタイムアップしてしまうだろう。

だからこそ、出力をセーブする非殺生設定を解除する必要があるのだ。

ヴィータも四人の様子に気がついたのだろう、表情を改めると、四人に言った。

 

「お前達は無理すんな。私がやるから。アイゼン」

<Ja>

「だ、駄目だよ! ヴィータちゃん!!」

 

なのはがヴィータを引き止めようと手を伸ばす。

だが、

 

「じゃあ、お前は魔法で人を傷つけられるのかよ。なのは」

「そ、それは・・・・・・」

 

ヴィータの指摘に、言葉に詰まるなのは。

力なく肩を落とすなのはに、雄一は近づくと頭を撫でた。

 

「ふぇ? 雄一君?」

「なのは。無理に手を汚そうとするな」

「無、無理なんて、して、ない・・・・・・」

 

想像してしまったのだろう、なのはは泣きそうになりながらそう言うが、雄一はなのはを撫でながら首を横に振った。

 

「それでいいんだよ。むしろ、さっきのヴィータの質問に傷つけられる、なんて言っていたらなのはに怒っていただろうからな。それと、

 

雄一は言葉を切ると、フェイトを振り返った。

 

「フェイト、君もだ」

「でも、私ならそういったことにも耐性は」

「耐性の問題じゃない。二人とも、まだそこまで踏み込むな。そういうことはゆっくり考えて結論をだしな。それと、今回はヴィータも駄目だ」

「なんでだよ!? 血がいるなら、誰かがやらなきゃいけないんじゃねえのか!?」

 

突然の雄一の拒絶に、剣幕を変えるヴィータ。

彼女を宥めつつ、雄一は意図を説明する。

 

「落ち着けって・・・・・・これは、問題の二つ目にも関わるんだけど、血が採れたとして、あの身体ははやてなのかどうかが問題なんだ」

「どういうこと?」

「つまりだな・・・・・・俺達は、はやてが姿を変えるのを見ていたから、あの人物がはやてなんだ、として案を立てているんだが」

「うん、それで?」

「あの女性が、はやての体なのか、管制人格のものなのか、それとも、闇の書の暴走体の身体なのか。それによって大分状況が変わってくる」

 

雄一が何を言いたいのか、理解した面子は表情を変えた。

雄一は、その予想を肯定するように、頷き説明を再会した。

 

「はやてや管制人格のものなら、それでいいんだ。だけど、暴走体の身体だった場合、ダメージの一切が回復されて、しかも俺の魔力が食われて、俺は無防備にってことになってしまう」

「そ、それは随分とリスキーだね」

 

顔を引き攣らせるユーノに、雄一は、まったくだとため息混じりに同意する。

そもそも、この作戦は、はやてと事前に契約を交わしておいてから実行するつもりだったのだ。

この事態まで、想定などしているはずもない。

現状出せるこの案は、ハイリスクハイリターンではあるが、リターンと吊りあわないほどリスクが高すぎるのだ。

 

「だけど、この作戦が実行できれば、消費を少なくできる」

「それは分かったけどよ、なんで私がやっちゃ駄目なんだ?」

「ヴィータ、お前ははやてかもしれない、と思って武器を向けられるのか?」

「そ、それは・・・・・・」

 

ヴィータの顔が凍りつく。

もちろん、この問いは雄一自身にも跳ね返ってくる。

だが、

 

(それでも、俺ははやてを助けられるなら、恨まれても構わない)

 

それを知りながらも雄一は、覚悟を決めてヴィータに告げた。

 

「血の件は俺が受け持つ。だから、殺生設定は解除しておいてくれ」

「だ、だけど・・・・・・雄一は」

 

何を問おうとしたのか、雄一に手を伸ばすヴィータ。

だが、

 

『っ!? 主殿、上じゃ!!』

「「っ!?」」

 

カナメの突然の警告に、すぐに上を振り仰ぐ雄一達。

遅れて、上空を振り仰いだなのは達の目に、翼を広げて飛行する、闇の書の意思の姿が映った。

 

「スレイプニール、羽ばたいて・・・・・・」

「ちぃっ!!」

 

黒い羽を羽ばたかせると、雄一達めがけて一気に加速して急降下した闇の書の意思は雄一めがけて、その拳を振り下ろした。

 

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