リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第百十四話 発覚と防衛

「逃げろ!」

「アルフ! ユーノ!」

「あいよ!」

「うん!」

 

雄一はヴィータの手を掴むと身を翻し、フェイトはアルフ達を促すとなのはの手を引き急いで離れた。

アルフ・ユーノは雄一・ヴィータ・なのは・フェイトと別方向へ逃れた。

それを気にせず、詠唱を続ける闇の書。

 

「・・・・・・貫け、閃光」

 

必死に距離を取る雄一とフェイトに、手を引かれるヴィータとなのはが苦言をこぼす。

 

「ゆ、ユウ! 何をそんなに焦ってるんだよ!?」

「そうだよ、フェイトちゃん!? こんなに離れなくても・・・・・・」

「ヴィータ、甘い! そしてなのはは、自分の魔法の威力を知ってくれ、頼むから!」

「至近で喰らったら防御の上から墜とされる! 回避距離をとらないと!」

 

SLBの被害を目にしていた雄一と直撃を受けたフェイトの必死の訴えに、二人は渋々納得し、飛ぶ速さをあげる。

そのまま、背後の桃色のスフィアから距離をとるため、海鳴の町を全速力で横切っていく。

そのとき、バルディッシュが発光した。

 

<Sir,There are noncombatants on the left at three hundred yards>

「「えっ!?」」

「なんだと!?」

 

バルディッシュの報告に、一同が驚く。

 

「カナメ、エルミナ!」

『わ、私はそういうのは苦手なんだ! エルミナ、どうじゃ?』

『少し待っていたまえ・・・・・・彼の言うとおりだ。約270メートル先に反応がある』

 

何故、この結界の内に一般人がいるのか、何故今まで引っかからなかったのかなど色々思うところはあるが、

 

「とにかく急いで保護するぞ! なのは、フェイト! 二人はそっちから探してくれ! 俺達はこっちから探していく! ヴィータはこっちに!」

「「分かった!」」

「おう!」

 

頷いた二人を見送り、ヴィータと共に、迷い込んだ一般人を探していく。

 

『距離残り、40・・・・・・30・・・・・・20・・・・・・』

 

エルミナのカウントに従い、高度を下げてあたりを見渡す。

 

「ヴィータ、どうだ? 誰かいたか?」

「いや、見当たらねえ」

「・・・・・・そうか」

 

首を横に振るヴィータに返しつつ、周囲に目を向ける雄一。

すると、少し先の交差点で砂煙が立ち上がった。

 

「っ!? 何だ!?」

「いや、あれは・・・・・・」

 

煙の掛かっていない信号の上に降りたフェイトを見つけた雄一は、警戒してアイゼンを構えようとしたヴィータを押し留めた。

あそこにフェイトがいるということは、土煙を上げて着陸したのはなのは、と当たりをつけた。

そのとき、両ペアの中間ほどにあった路地から二つの人影が現れた。

その影に気がついたなのはが人影に声をかけた。

 

「あの! すみません! 危ないですから、そこでじっとしていてください!!」

「っ!?」

「今の声って・・・・・・」

 

なのはの声に反応する人影。

その声に、聞き覚えのあった雄一はまさかと思いつつ影に駆け寄った。

 

「なのは・・・・・・?」

「フェイトちゃん・・・・・・?」

(やっぱり、アリサとすずかだったのか!?)

 

呆然と二人を見るアリサ達は、背後にいる雄一達には気がついていない。

なのは達も思わぬところでの発覚に対処が思いつかずに固まってしまっている。

雄一は、とにかく四人の硬直を解こうと声をかけようと、

 

『・・・・・・スターライトブレイカー』

「っ!? 皆、俺の後ろに下がれ!!」

 

闇の書の言葉が聞こえたように感じた雄一が振り仰いだ瞬間、スフィアが解れ圧縮された魔力が放たれた。

四人の傍を駆け抜け、全員を庇う位置に飛び出す。

 

「ゆ、雄一!? あんたこんなところで何を」

「え? 雄一君!? それに、ヴィータちゃんも!?」

「ヴィータ! 手伝ってくれ! 俺が合図したら、ここを思いっきりぶん殴ってくれ!」

「あ、ああ!」

 

アリサの詰問を遮り、驚くすずかをおいておき、雄一はヴィータを呼び寄せると問題の場所を指差した。

ヴィータは戸惑いつつアイゼンを構える。

その間に、なのは達にも指示を飛ばした。

 

「なのは達は二人に障壁を張ったら、全力で障壁を展開! 後ろに流さないようにするけど、気をつけてくれ!」

「分かったの! フェイトちゃん、アリサちゃん達を!」

「うん! 二人とも、そこでじっとしてて!」

 

フェイトは、カートリッジを二発ロードさせると、アリサ達にバルディッシュを向けた。

 

<Defenser Plus>

「「っ!?」」

 

身を竦ませたアリサ達を、金色の魔力光の障壁が覆った。

 

「レイジングハート!」

<Widearea Protection>

 

それを確認したなのは達が障壁を展開したのを見、雄一は叫んだ。

 

「今だ!」

「おぉらぁああ!!」

 

合図と同時に、雄一は身を屈ませ地面に手をつき<沙波>を発動させた。

触れた地面が液状化したところに、アイゼンが突き刺さり地面を巻き上げた。

 

「よし! ヴィータも下がれ! 括れ、<クフ・リーン>!」

 

すぐに立ち上がり、液体からもとの土砂に戻った瓦礫に手を触れ、<クフ・リーン>で影を括って即席の盾にする。

ヴィータも内側に障壁を張って砲撃に備えた。

その瞬間、六人を桃色の光が吞み込んだ。

 

「「きゃぁあああああ!!??」」

「「「くっ!?」」」

 

障壁の中、身を寄せ合って悲鳴を上げるアリサ達と、障壁に叩きつけられる砲撃の余波に歯を噛み締めるなのは達。

だが、彼女達を襲っているのはあくまで余波である。

そのほとんどは、最前列にいる雄一が引き受けていた。

だが、雄一も無事とはいかなかった。

 

「ぐぅ・・・・・・がぁあああああ!!」

 

最前線で壁となっている雄一は叩きつけられる衝撃に思わず叫んだ。

<クフ・リーン>で括ったものは破壊することはできなくなる。

たとえ、薄い紙であっても、銃弾を受け止める盾にできるだろう。

だが、その衝撃は押さえる腕に伝わってしまう。

たとえ銃弾を止めても、紙が弾かれるか手を怪我することだろう。

今も、壁を伝う衝撃で、雄一の腕から次々に血が噴出していく。

その瞬間、彼の両手の指が鈍い音を立てて折れた。

 

「ぎ、あぁああああ!!」

 

痛みに悲鳴を漏らしながら、土壁に肩を押し当て、拘束を維持する雄一。

 

『<なのは! なのは、大丈夫!?>』

『<フェイト!?>』

 

別方向に逃げて、砲撃の射程から外れていたアルフ達から念話が繋がった。

なのは達は障壁を維持しながら応じる。

 

「<っ・・・・・・大丈夫では、あるんだけど!?>」

「<アリサとすずかが、結界内に取り残されているんだ!>」

『<なんだって!?>』

『<エイミィさん!>』

『<余波が収まり次第すぐ非難させる! なんとか堪えて!>』

 

ユーノがエイミィに伝え、状況の打開を図るが、返答は『不可能』。

 

「「<はい!>」」

「<急げ! このままじゃ、ユウが保たない!>」

 

返事をするなのは達に対し、雄一の背後で障壁を張るヴィータは、砲撃の破壊音に紛れて聞こえる苦鳴に不安を覚え訴える。

やがて、砲撃の勢いが収まっていき、桃色に染まっていた視界が元の色を取り戻した。

その中、抱き締めあって震えていたアリサ達に、フェイトが振り返り声をかけた。

 

「もう、大丈夫」

「すぐに安全な場所に運んでもらうから! もう少しじっとしててね!」

 

なのはも振り返って声をかけると、二人は立ち上がった。

 

「あの・・・・・・なのはちゃん、フェイトちゃん?」

「ねえ、ちょっと」

 

アリサ達が何かを問おうとした矢先、彼女達の足元をミッド式の魔方陣が照らし、二人の姿が消えた。

二人が消えた場所を見つめながら、近づいてきたフェイトに、なのははポツリと呟いた。

 

「・・・・・・見られちゃったね」

「・・・・・・うん」

「ユウ!? おい、ユウ! しっかりしやがれ!」

「「!?」」

 

突然のヴィータの悲鳴に、振り返った二人は息を呑んだ。

いつの間にか崩れた土壁の傍、しゃがみこんだ雄一の両腕はズタズタだった。

指は不規則に折れ曲がり、所々変色している。

腕は皮膚が裂けて血を流しており、筋肉も何箇所か断裂しているようだ。

おそらく、骨にも異常が出ているだろう。

 

「ゆ、雄一君! ひどい怪我だよ!? ユーノ君!!」

「待ってて! 今、エイミィに頼んでアースラに搬送してもらうから!」

「待て!」

 

回復魔法が使えるユーノを呼ぼうとしたなのはとアースラに連絡をとろうとしたフェイトを、雄一が鋭く止めた。

思わず固まった二人に、雄一は首を横に振った。

 

「必要、ない。ここで、戦力外通告を出されるのも困るし、こんなのはすぐに治る」

「そんな、無茶だよ!」

「なのはの言うとおりだよ! それに、回復魔法じゃ、この怪我を治すのは」

「回復魔法じゃない・・・・・・<デル・ドーレ>」

 

<クフ・リーン>を下げ、<デル・ドーレ>を使い、回復を図る。

『契約書』の完成の影響か、回復力も上がっているらしく、以前よりも治りはいいが、戦線復帰には時間がかかりそうだ。

雄一は、仕方なく三人に頼んだ。

 

「皆、よく聞いてくれ。俺はしばらく動けない。だから、三人であいつの相手をしてもらうことになる。できるか?」

 

問われ、顔を見合わせる三人。

だが、すぐに不敵な表情を浮かべた。

 

「「「任せて(ろ)!!」」」

「分かった・・・・・・後は頼んだ」

 

そういい、雄一は近くの壁に凭れかかった。

 

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