お待たせして申し訳ありません。
では本編どうぞ。
「「きゃぁあああああ!!」」
「ユウ!?」
胸を貫かれた雄一の姿に悲鳴を上げるなのは達。
ヴィータは、二人より荒事に慣れているため二人ほど取り乱してはいないが、間違いなく致命傷であることに冷静とはいかなかった。
だが、
「!?」
闇の書も顔を険しくした。
何かに気がつき、すぐに手を引き戻そうと、
「捕まえた!!」
引き戻そうとした瞬間、胸を貫かれていたはずの雄一が腕を伸ばし、貫いていた闇の書の腕を掴んだ。
「くっ!?」
「させるか、よ!!」
闇の書は表情を歪め、雄一の手を振り払おうと力を込めるが、雄一も手にあらん限りの力を込めつつ抵抗する。
その光景を、なのは達は目を丸くしつつ信じられない思いで見つめていた。
「え? なんで? なんで雄一君、無事なの?」
「わ、分からない・・・・・・どう見てもあれは致命傷だったはずだけど・・・・・・」
「あ、あれも契約ってやつの力なのか?」
可能性を思いつき、なのは達に確認するヴィータだったが、なのは達も難しい顔で首を傾げた。
「どうだろ・・・・・・私達も雄一君がどういう力を持っているのかは分からないの」
「むしろ、ヴィータにはあれが何か分からないの?」
「・・・・・・すまねぇ、私もあんなことができるとは思わなかった。けど、だとしたら、あれは一体どういうことなんだ?」
ヴィータの視線の先、貫かれたはずの雄一の胸はよく見れば、血が一滴も零れていない。
それどころか、傷の周りが揺らいでいるようにも見える。
雄一が使ったのは、<沙波>の異能だった。
『身体を液状化させることで攻撃を無力化する』こと。
それが、フェイトとの契約で得た、新たな異能だった。
<沙波>の以前の契約者であったカナメは対価の影響で、そして雄一の場合、今までの<沙波>では対価の無効化によって不可能となっていた使用法だったりする。
ただし、能力が解けてしまうと、攻撃された場所によっては致命傷になるので使用に注意が必要ではあるのだが。
そのため雄一は、闇の書を拘束するために能力を使っていない。
純粋に腕力のみで相手をしている。
そのため、九歳の身体では対抗しきれず振り回されてしまっており、雄一は<沙波>の制御に集中力の大部分を割いている。
だが、雄一もようやく得たチャンスを無駄にするつもりは毛頭ない。
雄一は振り回されつつ袖からナイフを滑り出させると、振り回される一瞬をついて闇の書めがけて斬りつけた。
ナイフの刃は闇の書の腕を切り裂き血を噴き出させた。
「やった!」
「よしっ!」
攻撃が通ったこと、そして血が出る傷を付けることに事に成功し、喜ぶなのはとヴィータ。
だが、一人冷静さを保ちながら見ていたフェイトが表情を険しくして首を横に振った。
「ううん、駄目だ!」
彼女の見る先、闇の書の腕に付けられた傷が徐々に塞がっていく。
無限再生機能の影響ですぐに回復してしまうらしい。
同じくそれに気がついたなのは達が、成功の喜びから失敗の失望へと落とされ、
「っ!」
る直前、雄一はナイフをもう一閃すると、ナイフを握る手とは別の、もう一方の手の掌を切り裂くと、塞がりかけていた傷口に押し当てた。
傷から流れていた血が、辛うじて闇の書のものと混じり、
「・・・・・・」
「・・・・・・あれ?」
何も起こらなかった。
失敗に呆然とした雄一の手を振り払うと、闇の書は雄一から腕を引き抜き、逆の手で雄一の頭を掴んだ。
掴まれる直前、再起動した雄一だったが、時既に遅く、避けるどころか反応する間もなく捕らえられてしまった。
「丁度いい・・・・・・お前も、我が内で眠るといい」
闇の書は雄一を捕らえた手と逆の手で闇の書を構えると、何を思ったか、開いたページを雄一に向けた。
「くっ、ああ!?」
その行為に、危機感を感じ逃れようとする雄一だったが、掴む手の力は緩まない。
だが、闇の書の方が一歩早く、雄一の身体が光に変わっていった。
<Absorption>
「すべては、安らかな眠りの内に・・・・・・」
「あ・・・・・・あぁ・・・・・・」
闇の書が一際強く輝くと、雄一の身体は弾けるように消えてしまった。
「・・・・・・ぇ?」
「う、嘘だろ? おい、ユウ! 出てきやがれ!」
雄一の消失に、呆然とするなのはにそれでも再び現れると信じようとするヴィータ。
二人も強いショックを覚えているのだが、フェイトが最もショックが酷いようだった。
「・・・・・・ぁ・・・・・・ヤダ、雄一、消えちゃ、ヤダ・・・・・・」
顔から血の気が引き、消えてしまった雄一へと手を伸ばすフェイト。
彼女の脳裏には、半年前異能の無理な使用で倒れる雄一の姿が過ぎっていた。
半年前に比べて自分は強くなっていたと思っていた。
だが、今は、その手に何かを掴めるはずも無く、
「・・・・・・い・・・・・・いやー!!」
なす術も無く、その手から再び零れ落ちていったことに、悲鳴を上げるのだった。
「・・・・・・ん?」
ふと我に返った雄一は、きょろきょろとあたりを見渡した。
今、雄一がいるのは彼の自宅の彼の部屋。
椅子に座って机に向かっているということは、勉強でもしていたのか、と考えて机に目を落とすとやりかけの課題が広げられている。
いつもなら、あっさりと片付けてしまえる程度の難易度のその課題。
それが途中で放り出されていることに、はて、と首を傾げる。
だがすぐに、息抜きでも挟んでいたのだろう、と結論を出すと残りを一気に片付けてしまう。
先ほど我に返ったように感じたのも、息抜きの間に何かを考えていたか、それとも居眠りでもしてしまっていたのだろう。
そう結論付けようとして、雄一はふと胸中に燻る違和感に気がついた。
(・・・・・・なんだ? なんで、俺はここにいることに違和感を覚えているんだ?)
改めて見回しても、間違いなく『榊家の榊雄一の部屋』であることは間違いない。
間違いないのだが、
「どう思う、<■ ■・■ ■ ■>?」
足元の影に問いを投げようとして、
「って、俺は何をしようとしているんだ?」
すぐに、その行動の不可解さに気がつくと首を傾げつつ視線を戻した。
すると、机の隅に置かれた懐中時計が目に入った。
「こんなもの、持ってたっけ?」
手にとって見るが、特に見覚えがない。
念のために開いてみたが、絡み合った蛇の文様は特徴的なのに、やはり記憶にはヒットしなかった。
「父さんの持ち物か?」
念のために聞いてみるかとポケットに仕舞うと、他の課題も片付けようと机に向かおうとし、
『雄一、ちょっと来てくれ!』
「・・・・・・今度は何したんだ、あの人』
丁度思い描いた人物の声に、痛みだした頭を押さえつつ、扉へと向かう雄一。
その間にも、階下から聞こえてくる悲鳴と騒ぎはどんどん大きくなってきている。
扉を開けると、その騒ぎがより鮮明に聞こえてきた。
「あっはははははは!!」
「雄一ー!早く来て、母さんを止めるのを手伝ってくれ!!」
「・・・・・・はぁ」
階下から聞こえてきた馬鹿笑いと、それ以上に必死な救援要請に、またかと思いつつため息をつきながら階下に下りていく雄一。
ドスン、バタン、と激しい音が響くリビングに足を向けると、いつものようにドアを開けようとして
「・・・・・・あれ?」
そのいつもが思い出せず、首を傾げた。
ここしばらく、家のリビングには入っていないような・・・・・・それどころか、家にいなかったような気がしたのだけど・・・・・・。
(気の所為か?)
雄一はより強くなった違和感に、顔をしかめ、
「雄一!? そんなところで、どうかしたのか!?」
突然、ドアが家から開けられ、そこから眼鏡をかけた男性が顔を出した。
ドアの前で突っ立っていた雄一に、首を傾げる男性に雄一は違和感をひとまず忘れると応えた。
「なんでもないよ、父さん。母さんは?」
「ああ! そうだった! 早く来て手伝ってくれ!」
用件を思い出したのだろう、リビングに引っ込む父こと榊春臣についてリビングに入ると、酒が入っているのだろう、暴れている母こと榊彰子を取り押さえる作業を手伝うのであった。
<沙波>の変化は、『R・O・D』のミス・ディープの物質透過能力のようなものと考えてください。『R・O・D』、好きなんですよ。紙使いとか、偉人戦とか。