リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第百十七話 永遠と家族

 

『フェイト、落ち着きなさい!』

「・・・・・・っ、母さん?」

 

プレシアの一喝に、フェイトは表情を歪ませながら応えた。

彼女の様子に、闇の書へ憎しみを込めた目を向けながら、伝えることを伝える。

 

『よく聞きなさい。彼はまだ生きているわ』

「ほ、本当!?」

『間違いないよ! バイタルも健在!』

 

プレシアではなく、エイミィが応える。

プレシアは、チラリとエイミィに視線を向けたが、説明を続けた。

 

『彼は闇の書の内部空間に閉じ込められているだけよ。助け出す方法は、まだ調査中だけど・・・・・・貴女は思うようにやってみなさい』

「はい!」

 

プレシアの言葉に頷くと、バルディッシュを構えるフェイト。

フェイトが立ち直ったことに、安堵してなのは達もデバイスを闇の書に向けて構えた。

対する闇の書は大した構えも取らずに三人を睥睨している。

 

「・・・・・・我が主も雄一も、覚めることない眠りの内に終わりなき夢を見る。生と死の狭間の夢・・・・・・それは、永遠だ」

 

いつの間にか、涙が枯れた赤い目。

その目に炎を映しながら、闇の書を見つめ独白をこぼした。

どのような想いが込められているのか、それは彼女にしか分からないことだが、その独白になのはが否を唱えた。

 

「・・・・・・永遠なんてないよ・・・・・・皆変わってく・・・・・・変わっていかなきゃいけないんだ」

 

俯きながらこぼれた思い。

その思いはどんどん強くなり、比例して声も強くなっていく。

 

「私達も・・・・・・貴女も!!」

「・・・・・・鉄騎。お前もそう思うのか?」

 

なのはの言葉に、何を思ったのかヴィータに水を向ける闇の書。

彼女の問いに、ヴィータは迷わず頷いた。

 

「ああ。はやてとユウに会って、私は、ううん、私達は変わった。ベルカから戦が失われて、それでも私達はただの道具として扱われて、私達にとってもそれが当たり前で・・・・・・ずっとそうなんだと思ってた。けど、はやて達が、温かさや優しさを教えてくれたんだ。私達がただの道具じゃないことを教えてくれたんだ。だから」

「そうか・・・・・・」

 

闇の書がヴィータの言葉を遮った。

 

「例えそうであったとしても・・・・・・私は主の願いを叶えよう。鉄騎、お前も我が内で眠るといい」

「っ、そうかよ・・・・・・だったら、私は二人を取り戻す。それだけだ」

 

主張を変えようとしない闇の書に、ヴィータは舌打つとアイゼンにカートリッジを装填した。

 

瞬間、闇の書が腕を掲げた。

掲げた腕の先、掌に展開した魔方陣に、神速で背後に回り不意を打ったフェイトが振り下ろしたバルディッシュが突き立てられた。

 

「くっ!?」

「お前も・・・・・・我が内へ」

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「っ、この!」

 

再び光を放とうとした本に、フェイトは咄嗟に闇の書の障壁を蹴りつけると、反動で距離を取り、吸収から逃れた。

 

「フェイトちゃん! 無茶しすぎだよ!」

「ごめん、なのは・・・・・・だけど、雄一は絶対に取り戻さないと・・・・・・だから!」

 

心配するなのはに応え、バルディッシュを握り締めると、再びフェイトは闇の書へ打ちかかっていった。

 

 

 

 

「いやー、二人にはご迷惑をお掛けしました」

「それはいいから。それで? 何で、こんな時間から母さんはお酒が入っていたんだ?」

 

笑いながら頭を掻く彰子に、雄一は掛かった苦労に応じた湿った視線を向けた。

時計はまだ夕方。

いい大人とはいえ、酒が入るには少々早くないだろうか?

 

「あー、それがね」

「実は、昨日大きな仕事が片付いてね。昨日はそれどころじゃなかったし、かといって仕事のメンバーが次に全員揃うのは何時になるか分からなかったんだ」

「・・・・・・へぇ」

 

たはは、と頭を掻く彰子に代わって春臣がする説明を、彰子に向けた視線を同じく向けながら聞く雄一。

その視線に、春臣は冷や汗を掻きながら説明を急いでいく。

 

「だ、だから、皆で集まるよりも、それぞれで思い思いに楽しもう、ということになって、それで母さんと二人でささやかだけど楽しもうということになって」

「それで、思いのほか深酒をした結果、母さんが見事に酔っ払って暴走した、と」

「「仰るとおりです、はい・・・・・・」」

 

雄一のため息混じりの包括に肩を落とし頷く二人。

二人の様子に、雄一はため息をもう一つつくと苦笑した。

 

「そんなに落ち込まなくていいよ。別にお酒を飲むな、って言ってるわけじゃないんだし」

「いや、さすがに今回は私も浮かれすぎたかな、と思うんだけど」

 

すっかり酒も抜けたのか、先ほどまでの酒乱振りを恥じる彰子。

その様子に、少しでも空気を換えようと雄一は台所へ足を向けた。

 

「それより、父さんもまだ飲み足りないだろ? 何か肴でも作るよ」

「あれ? 雄一、料理ができたのかい?」

「何言ってるんだよ。そんなのいつも」

 

驚く春臣に苦笑しながら振り返り、

 

「あれ?」

 

何時から料理を始めたか思い出せず固まった。

 

「そう、だよな。私達がいない間の食事を心配していたけど、大丈夫そうだね」

 

その間に、春臣は自己完結していた。

春臣に問うてみる雄一。

 

「父さん、俺って何で料理を始めたんだっけ?」

「ん? 何故って、仕事の都合で家を空けてしまうから、その間の食事を作るためじゃないのかい?」

「・・・・・・そう、だよな」

 

春臣の説明に、納得しながらもどこか腑に落ちない。

もっと切羽詰った末に学んだ気がするのだが・・・・・・。

 

「まあ、いいや。それより、父さん達って何の仕事をしているんだっけ?」

「あれ? 母さんから聞いていないのかい?」

「私も春臣さんが伝えているとばかり思っていたんだよ」

 

雄一の問いに、顔を見合わせる二人。

ただ、雄一も何故両親の仕事を知らないのか、それも分からなかったのだが。

 

「私達は、考古学関係で遺跡の調査をしているんだよ」

「遺跡?」

「そう。ただ、場所が場所だから手軽に行き来できる場所じゃないんだけどね」

「・・・・・・ふぅん?」

 

概略の説明に、とりあえず納得する雄一。

そんな雄一に構わず、二人はさらに話を盛り上げていく。

 

「そういえば、スクライアに雄一と同じくらいの子がいるって言ってなかったかい?」

「ああ、そういえば。今度の発掘には雄一も連れて行くのもいいかもしれないわね」

「・・・・・・よく分からないけど、とりあえず何か作ろう」

 

盛り上がる二人を軽く無視し、台所に向かい冷蔵庫を改める。

適当にいくつか材料を取り出すと、手早くつまみを作っていく。

出来上がったつまみを皿に盛り付けると、リビングへ運んでいった。

 

「ほら、できたよ」

「おお、これは楽しみだね」

「それじゃ、早速!」

 

雄一の用意したつまみに早速箸を伸ばす彰子。

箸を口へ運ぶと、笑顔で頷いた。

 

「うん! 美味しいよ、これ!」

「へぇ。どれ、僕も」

 

彰子の様子に、春臣も箸を伸ばす。

つまみを口に運び、こちらも笑顔で頷く。

 

「うん、確かに。いい味だよ、雄一」

「それはよかった」

「けど・・・・・・」

 

ふと、春臣はもう一口口に運ぶと、噛み締めながら首を傾げた。

 

「どうかしたの?」

「いや・・・・・・美味しいんだけど、何だろう? 僕達の味付けとは違うような気がするんだ。誰かに習ったのかい?」

「誰かに? いや、心当たりは」

 

ない、と言おうとした雄一の脳裏に、ふと誰かの顔が過ぎった。

茶色の髪の車椅子の少女。

彼女の他にも誰かがいたような気が・・・・・・。

 

「雄一? どうかしたのかい?」

「っ、い、いや。なんでもないよ」

 

春臣に問われ、我に返る雄一。

その際、先ほどの少女の表情に、何故か引っかかるものを感じる雄一だった。

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