リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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風邪で倒れていました……。
皆様も、エアコンの使い過ぎにはご注意を。
では本編どうぞ。


第百十九話 作戦と親

<Call Me Exelion Mode>

<Me too.Call Me Zamber Form,Sir>

「確かに、いけるかもしれないけど・・・・・・」

「!? 駄目だよ! あれは本体を補強するまで使っちゃいけないって!」

 

愛機達の提言に、フェイトは逡巡し、なのはは反論する。

彼らの提案は、カートリッジを大量に解放する『フルドライブ』を前提としている。

確かに、それならば闇の書の障壁を破壊してダメージを与えることも可能かもしれない。

だが、それには膨大な魔力を精密にコントロールすることと、その魔力に耐える肉体が必要になる。

もともと、カートリッジシステムは使用者に与える負担が大きいのだ。

カートリッジシステムと相性の悪い、ミッド式のインテリジェントデバイスである、レイジングハートとバルディッシュでは、その負担を処理しきれない恐れがある。

そのため、エイミィはなのは達に、特になのはには、フルドライブの使用に釘を刺していた。

だが、

 

<Call Me>

 

レイジングハートは再度訴える。

バルディッシュは無言で指示を待っているが、その意図はフェイトに伝わっている。

すると、

 

「うわぁあああ!?」

「っ、ヴィータちゃん!?」

「っ!!」

 

闇の書と一人で対峙していたヴィータが二人のもとへ吹き飛ばされてきた。

三人が集まったことに危機感を抱いたフェイトは、すぐさまなのはとヴィータの手を掴むとその場を離れた。

 

「・・・・・・放て」

<Nightmare>

 

瞬間、三人のいた場所を砲撃が貫いた。

 

「くっ!?」

「フェイトちゃん!? レイジングハート!」

<Devine Buster>

 

再度放たれる砲撃を、避けきれないと判断したフェイトに代わってなのはが迎撃する。

砲撃はぶつかり合うと、互いに爆発し黒煙を広げた。

煙に紛れて、三人は一度身を隠した。

 

「だ、大丈夫、ヴィータちゃん?」

「この程度、かすり傷だ。それより、いつまで揉めてんだよ、お前ら」

「「うっ・・・・・・」」

 

確かに、ヴィータの言う通り、長々と戦闘中にすることではない。

だけど、なのは達にも言い分はある。

 

「け、けどヴィータちゃん、」

「うるせえ。何か手があるなら、出し惜しみしてないで使え。お前だって二人を助けたいんだろ!」

「っ!?」

 

ヴィータの叱責に胸を打たれるなのは。

さらに、

 

<Call Me,My Master>

「・・・・・・分かった。やろう、レイジングハート」

 

レイジングハートの後押しを受け、迷いを振り払うと、なのははレイジングハートに告げた。

 

「だったら、私達も」

「ううん、フェイトちゃんは援護に集中して」

 

フェイトも続こうとしたが、なのはは首を横に振った。

フェイトも、指示を了解しようとしたバルディッシュも聞き間違いかとなのはを見るが、なのはは再度首を横に振った。

 

「どういうことだ? さっき、出し惜しみすんなって言ったよな?」

 

眉根を寄せたヴィータが、二人のやり取りに割り込んだ。

二人とも、納得のいく説明がなければ引かないだろう。

なのはは、まずヴィータを振り返った。

 

「なら聞くけど、ヴィータちゃん。カートリッジは残りいくつ?」

「・・・・・・残り、七発だ」

 

なのはの確認に、顔をしかめながら応じるヴィータ。

この少なさは、蒐集を急いだ結果、カートリッジを精製するシャマルも前線に立たざるを得なかった結果、十分な補給ができなかったのだ。

 

「だったら、いくら出し惜しみしちゃいけなくても、ここで使い切るわけにはいかないよ。あの人を止めて終わりじゃないんでしょ?」

「・・・・・・ああ、分かったよ!」

 

負けを悟り、そっぽを向くヴィータ。

彼女の様子に苦笑しながら、なのははフェイトを振り返った。

 

「それでなのは、私は?」

「フェイトちゃんより、私の方がカートリッジに余裕があるでしょ? それに、闇の書さんのバリアを抜くなら、私の方が適役だと思うから」

「・・・・・・なるほど」

 

確かに、ザンバーに比べると、なのはの収束砲撃は瞬間的な圧力で勝っているだろう。

だが、威力では決して劣るものではないはずだ。

 

「けど、それなら私がやってもいいはずだよね?」

「・・・・・・正直に言うとね、怖いんだ、二人も吸収されちゃうんじゃないかって」

 

フェイトのバルディッシュも、ヴィータのアイゼンも近接戦向きだ。

吸収が近距離に限定されている以上、近づくのは危険だろう。

なのはの不安を察したフェイトは、それ以上の反論を呑みこみ、頷いた。

 

「分かった。そういうことなら、私は援護に徹することにする。それでいい?」

「私もだ」

「フェイトちゃん、ヴィータちゃん・・・・・・うん!」

 

二人の同意を受け、なのはは笑顔で頷くと、闇の書に対峙した。

闇の書は、燃え盛る炎の柱を背に滞空している。

その姿に、なのははレイジングハートを強く握りしめた。

 

「行こう! 二人を助けに!!」

「「おお!!」」

 

再び、火蓋を切って落とした。

 

 

 

 

「・・・・・・痛っ!?」

 

頭痛とともに、溢れ出た情景に雄一は呻きながらも目を凝らしていった。

どこかの家。

先ほど僅かに心に浮かんだ少女が、家族だろう女性達と会話している。

ムキになる赤い髪の少女を冷静に諭す桃色の髪の女性。

二人の遣り取りに笑う少女を慈しむように微笑む翠色の髪の女性。

やれやれとばかりに顔を背ける青い犬。

見ているだけで温かさが伝わってくる様子に、知らず雄一の顔に笑みが浮かぶ。

ふと、もう一人いることに気がついた。

ソファに腰掛け、一同の様子を見ている男性。

何故か、見覚えがないはずなのに雄一はその姿に既視感を覚えた。

その男性に、少女が笑いながら手招きする。

男性は苦笑しながら、少女のそばへ歩いていく。

その様子を見ながら、雄一はふと少女の名前に引っかかった。

 

(そういえば、何ていったっけ、この子? たしか・・・・・・は? は、何だっけ?)

 

痛む頭を堪えつつ、記憶を探っていく。

 

――・・・・・・オ・・・・・・ォン――

 

集中のせいか、妙な音も聞こえてくるが、気にせず記憶に集中する。

 

(は・・・・・・はや・・・・・・はやと? これじゃ、男の名前だよな?)

――・・・・・・オオォン―― 

(違うな・・・・・・はや、はや・・・・・・はや、て? そう、はやてだ!)

――オオオオォォォン!――

 

少女の名を思い出した瞬間、雄一はカチリと何かが繋がるように感じた。

瞬間、足元の影から、彼の背丈ほどの体高の何かが飛び出した。

それは、影のように真っ黒な犬だった。

その目は赤く、鋭い牙がのぞいている。

だが、不思議と恐怖は感じなかった。

なぜなら、

 

「ずっと呼んでいたんだな、相棒」

――気がつくのが遅いぞ、相棒――

 

ニヤリ、と口を歪める犬、<クフ・リーン>の鼻面を撫でてやる雄一。

すると、突然の事態にフリーズしていた春臣達が我に返った。

 

「ゆ、雄一!? 何それ!?」

「なんなんだい、それは?」

「こいつは俺を起こしに来た相棒だよ。それより・・・・・・父さん、母さん。俺は行くよ」

 

戸惑う二人に、雄一は振り返ると頭を下げた。

その様子に、二人ははっとすると、やがて穏やかな表情を浮かべた。

 

「もう、いいのね?」

「ああ。ありがと、母さん。おかげでいろいろ思い出せた」

「雄一」

 

彰子に礼を言う雄一に、春臣が声をかけた。

その表情は先ほどのものとは違い、真剣なものとなっている。

自然、雄一も背筋を正した。

 

「雄一は、なぜ彼女を救いたいと思うんだい? こう言ってはなんだけど、お世話になったとはいえ、本来関わる相手じゃなかっただろう? なのに、なぜそこまで必死になるんだい?」

「それは」

「契約のためかい?」

 

春臣に先回りされ、雄一は口を閉ざす。

その様子に、春臣は顔をしかめるとため息をついた。

 

「いいかい? 君は、『順当な』形で契約したわけじゃないんだ。必ずしも、契約に縛られる必要はない」

「別に縛られているつもりは、ない」

「そうかな? まあ、君がそういうなら、それでいいけど・・・・・・ただ、覚えておきなさい。君は一度自分の戦う理由を見つめ直すべきだよ」

「・・・・・・覚えておくよ」

「そうか・・・・・・なら、行くといい。その扉を出るといいだろう」

 

春臣の指す扉に足を向けると、雄一は一度二人を振り返り頭を下げると、勢いよく扉を開いた。

 

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