リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第百二十話 思いの強さと合流

「お前達も、もう眠れ」

「ああ、いつかは眠るさ! けど、それは今じゃねえ! アイゼン!」

<Schwalhe Fliegen>

 

闇の書めがけて、金属球を撃ち出すヴィータ。

だが、闇の書は事も無げにそれを弾くと、手を掲げ新たな魔法を展開した。

 

「・・・・・・撃ち抜け、轟雷」

<Photon Lancer Genocide Shift>

 

さっと腕を振り払うと、闇の書の周囲に無数の魔力弾が現れた。

 

「っちぃ!?」

「あれは、私の!?」

 

シュワルベフリーゲンを牽制に直接叩こうとしていたヴィータはすぐに軌道を変えて離れる。

闇の書の展開した魔法の正体に逸早く気がついたのは、フェイトだった。

 

「あっ!?」

 

僅かに遅れてなのはも気がつく。

それは、かつてなのはとの戦いでフェイトが使用した、ファランクスシフトの上位版だった。

 

「させないっ! バルディッシュ!!」

<Yes Sir>

 

フェイトは、急いで驚きから立ち直ると、バルディッシュにカートリッジをロードさせ、迎撃のため呪文の詠唱に入る。

 

「ヴィータ! 下がって! アルカス・グルカス・エイギアス。疾風なりし天神、今導きのもと撃ちかかれ。バルエル・ザルエル・ブラウゼル。フォトンランサー・ジェノサイドシフト!」

 

詠唱が進むに連れて、フェイトの周囲にも魔力弾が生成されていく。

両者の魔力弾は時折放電しつつ、発射の命令を静かに待っている。

その均衡が破れる。

 

「・・・・・・放て」

「打ち砕け、ファイア!!」

<Photon Lancer Genocide Shift>

 

同時に、お互いを貫こうとスフィアが火を噴いた。

スフィア38基が秒間7発の魔力弾を発射するこの呪文の効果時間は4秒。

1064発の魔力弾が斉射され、2128発の魔力弾が二人の間でぶつかり合った。

 

「くぅ!?」

 

フェイトは反動に呻くも、集中を切らさずに撃ち合いを続ける。

続けながら、背後にいるなのはに祈った。

 

(なのは、頑張って!)

 

そのなのはは、戦いから離れ、レイジングハートにカートリッジを一発ロードさせた。

 

「レイジングハート、エクセリオンモード・・・・・・ドライブ!」

<Ignition!>

 

レイジングハートの宝石が輝き、杖の姿を変えていく。

その身を伸張させ、二股に分かれていた穂先はその身を寄せ槍のように鋭くなる。

 

「繰り返される悲しみも、悪い夢もきっと終わらせる!」

 

変形したレイジングハートを一度振るうと、なのはは穂先を闇の書へと向けた。

そのとき、フェイトとの撃ち合いを征しヴィータを弾き飛ばした闇の書の目がなのはを捉えた。

 

「一つ覚えの砲撃・・・・・・通ると思ってか?」

 

両掌に魔力球を出現させながらなのはを見下ろす闇の書。

このままでは先ほどまでの様に障壁で受け止められてしまうだろう。

だが、なのはは、レイジングハートならできると信じている。

 

「通す! レイジングハートが力をくれてる! 命と心を賭けて答えてくれてる!!」

 

主の気迫に、レイジングハートはさらにカートリッジを二発ロードし翼を展開させた。

 

「泣いてる子を、救ってあげてって!!」

<A.C.S Standby!>

 

フルドライブの影響か、なのはの足元でミッド式の魔方陣が強く輝く。

 

「アクセルチャージャー起動! ストライクフレーム!」

<Open!>

 

レイジングハートの穂先、その隙間を埋めるように、桃色の魔力で鋭い刃が生成された。

 

「エクセリオンバスターA.C.S.・・・・・・ドライブ!」

 

レイジングハートが発生させた六枚三対の翼。

それが生み出す力を蓄え、なのはは一気に解放させると闇の書めがけて突き進んだ。

闇の書はとっさに魔力球を解れさせ、障壁で受け止めた。

障壁と刃の切っ先が火花を上げて削りあう。

 

「っ、届いて!!」

 

ギィン!!

なのはの思いによってか、切っ先が障壁を抜ける。

この好機を逃すわけにはいかない、そう判断したレイジングハートはさらに三発カートリッジを排莢させる。

 

「ブレイク・・・・・・」

 

注ぎこまれる魔力に、穂先に桃色のスフィアが生まれ翼がその身を大きく広げる。

 

「まさか・・・・・・」

 

闇の書はそこに込められた魔力に目を見開き、

 

「いっけぇえええ!!」

 

ヴィータは成功を信じ、

 

「なのはぁ!!」

 

フェイトはなのはの無事を必死に祈った。

 

「シュートッ!!」

 

瞬間、桃色のスフィアがその身を大きく膨張させあたりを吞み込んだ。

 

 

 

 

 

扉を出た先は、海鳴の町ではなく先も見えない闇の中だった。

 

「これは・・・・・・」

『ここはまだ闇の書の内部だよ、マスター」

『そうじゃな。おそらく外ではまだ戦闘が続いておるはずじゃ。急いだ方がよかろ』

「エルミナ、カナメ・・・・・・お前達も起動したか」

 

声に雄一は、首元からいつの間にか掛かっていたネックレスを、ポケットから懐中時計をそれぞれ取り出した。

 

――ここは、闇の書の管理プログラムの中だな。どこかに、管制人格とはやてがいるはずだ――

「本当か!? なら、すぐに探すぞ!」

――待て待て、闇雲に探すつもりか。当てもなく探せる場所じゃねえよ――

 

すぐに駆け出そうとした雄一を<クフ・リーン>は前に飛び出ることで遮った。

巨大な犬の姿に、ブレーキをかける雄一。

 

「っ、だったらどうしろって言うんだ!」

――何か、能力を使って捜してみればいいじゃねえか。思いつかないか?――

「能力を?」

 

言われて考えてみる。

真っ先に浮かんだのは、<バーラ・ルー>ではやての視界から位置を逆算すること。

だが、周りに目印になるようなものはなく、何処へ行けばいいのか分からないので却下。

他のものは捜索には向かないものばかりだし、はてと首を傾げていた雄一は、やがて肩をすくめた。

 

「駄目だ。思いつくのは、<デル・ドーレ>で聴覚と視覚を強化して探すくらいだな」

『確かに・・・・・・それくらいじゃろうなぁ』

『・・・・・・すまない、私では思いつかない」

「・・・・・・まぁ、やってみて駄目ならまた考えればいいだろう」

 

デバイス二機を慰めつつ、<デル・ドーレ>で強化を施し一歩目を踏み出す。

 

『――――――――!!』

「!?」

 

瞬間、微かに耳が捉えた音に、雄一はすぐさま勢いを殺して耳を済ませた。

 

「今のは・・・・・・」

『おそらく、当たりじゃな』

『思わぬ幸運だね』

――幸先が良すぎて、何か災難が待っていそうだけどな――

「<クフ・リーン>、不吉なこと言わないでくれ。それより、行ってみよう!」

 

皆にも聞こえたらしく、そちらへ足を急がせる雄一。

距離が近づいているのだろう、次第に声が聞き取れるようになっていった。

 

 

 

 

 

「私、こんなん望んでない! あなたも同じはずや、違うか!?」

「私の心は騎士達の感情と深くリンクしています。だから騎士達と同じように、私も貴女を愛おしく思います・・・・・・だからこそ、貴女を殺してしまう自分自身が許せない。自分ではどうにもならない力の暴走。貴女を侵食する事も、暴走して貴女を食らいつくしてしまう事も・・・・・・止められない」

 

諦めたように呟く管制人格の声。

そちらへ急ぐうちに、雄一達に背を向ける管制人格の姿が、そして、彼女の向こうにはやての姿が見えた。

管制人格の悲哀に、それでもはやては必死に言葉を紡いでいく。

 

「覚醒の時に今までの事、少しは分かったんよ・・・・・・望むように生きられへん悲しさ・・・・・・私にも少しは判る! シグナム達と同じや! ずっと悲しい思い、淋しい思いしてきた!」

「・・・・・・」

「せたけど、」

 

かつての主の死を思い出したのだろう、目を伏せる管制人格にはやては手を伸ばそうと、

 

「見つけたよ、二人とも」

「っ、雄君!?」

「雄一・・・・・・」

 

突然かかった第三者の声に、はやては慌てて手を引っ込めると管制人格を挟んだ向こうにいるものに気がついた。

ザフィーラをも超える大きな黒い毛並みの犬。

その傍で微笑む雄一の姿に、はやては目を見開き、管制人格は喜びと諦念を併せた複雑な表情を浮かべていた。

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