リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第百二十一話 闇の書の異常と策

「やった!」

「・・・・・・おいおい、なんて魔力だよ」

 

成功に快哉を上げるフェイトと顔を引き攣らせるヴィータ。

砲撃の余波で距離をとったなのははレイジングハートに放熱させながら左肩を押さえた。

先ほどの砲撃はなのはも無事では済まなかった。

レイジングハートがほぼ相殺させたが、レイジングハート自身にも所々に傷ができている。

 

(っ、ほぼ零距離、バリアを抜いてのエクセリオンバスター直撃・・・・・・これで駄目なら)

<Master!>

「っ!?」

 

レイジングハートの警告に、まさかと思いつつ仰いだ先、闇の書はほぼ無傷で佇んでいた。

フェイトとヴィータも同じく気がつき、顔を強張らせる。

 

「もう少し、頑張らないとだね」

<Yes>

「うん」

「ああ・・・・・・けど、あれ以上の攻撃って持ってるか」

「「・・・・・・」」

 

ヴィータの問いに、なのは達は言葉に詰まった。

バリアを抜いたことで一切減衰のない砲撃でダメージが無いのだ。

これ以上となると、身体にどれだけの負担が掛かるか。

 

「それでも、やるしかない」

 

それなのに、フェイトは怯むことなく、闇の書へバルディッシュを構える。

その不屈の思いに、なのは達もデバイスを構える。

もう一度挑もうとして、

 

「・・・・・・」

 

突然、闇の書の動きが固まった。

 

「・・・・・・え?」

「何が・・・・・・?」

「どうしたっていうんだ?」

 

まるで油の切れた機械のように体を軋ませる闇の書の様子に、なのは達は戸惑い様子を見る。

すると、

 

『<外の方、管理局の方! こちら、えと・・・・・・そこに居る子の保護者、八神はやてです!!>』

「はやてちゃん!?」

「「はやて!?」」

 

突然周囲に響いた声に三人は目を見開いた。

それは確かに、闇の書に取り込まれたはやての声だった。

 

『<なのはちゃん!? それにフェイトちゃんに・・・・・・ヴィータか!?>』

「<うん、なのはだよ! 色々あって、闇の書さんと戦っているの!>」

「<はやて。フェイトだけど、どうなっているの? 闇の書の動きが止まっているけど?>」

『<実は・・・・・・>』

 

フェイトの問いにはやては経緯を話していった。

 

 

 

 

時は遡って、闇の書内部。

 

「見つけたぞ、はやて」

「雄君!? 大丈夫なんか!? 誰か知らんけど、散々にやられとったやろ!?」

「大丈夫だ。もう治っている」

 

血相を変えて安否を問うはやてに、頷いて見せる雄一。

だが、それでは信じられないはやては、雄一に近づくと体をペタペタと触っていく。

 

「ちょ、はやて!?」

「こことか、こっちもやられとったやろ!? 痛ないんか?」

「だから、大丈夫だというに・・・・・・説明するから、ちょっと離れてくれ」

「せやけど」

「主。話を聞きましょう。心配はその後でもよろしいかと」

「・・・・・・分かったわ」

 

尚も渋ろうとしたはやてだったが、管制人格の説得に矛を収めた。

彼女に感謝しつつ、雄一はカナメを展開させる。

突然現れた刀に目を見開くはやてをかばうように、管制人格が前に出る。

警戒する管制人格に苦笑しつつ、雄一はカナメを自分の腕に走らせた。

 

「なっ!?」

「ちょ、雄君、何しとるんや!」

「落ち着け。二人とも、よく見ていろよ」

 

突然の奇行に慌てる二人を制し、傷に注目させる。

そうしている内に、血を吐き出している傷口の肉が盛り上がり、傷を埋めてしまった。

目を見開く二人に見えるように、傷口を拭うと傷は跡形も無く消えており、血だけが先ほどの傷の証明となっていた。

 

「これは・・・・・・」

「<デル・ドーレ>。『血を変質させる』ことで身体能力や身体感覚を大幅に引き上げる能力なんだが、新陳代謝も上げることができるんだ。だから、どんな傷でもすぐに治すことができる、ってことだ」

 

管制人格に応えつつ、ポカンとしているはやてに見えるように腕を曲げてみせる。

はやては慌てて止めようとするが、傷が開く様子も無く複数回繰り返す雄一の姿に言葉を吞み込んだ。

 

「そういうことなら、安心したけど・・・・・・これからどうするん?」

「そこだな。まず俺がここにいるのがなんでか、はやては知ってるか?」

「え? うぅん・・・・・・分からへん」

 

突然の問いに、はやては首を横に振った。

 

「俺がここにいるのは、外側から魔力を供給しようとして、闇の書に吸収されたからだ」

「魔力を?」

「ああ。もともと、外側から暴走体の魔力を削りつつ、内側から管理者権限で抑えてもらうっていうのが俺の考えていた作戦だった。だけど、シグナム達は蒐集されて、戦場は海鳴。結界がいつまで持つかも分からない状況だ」

「・・・・・」

 

シグナム達のことを思い出して、表情を曇らせるはやて。

雄一もそれに気がついたが、説明を優先することにする。

 

「そこで、契約を利用して、管理者権限にブーストを掛けるつもりだったんだ」

「契約?」

「詳しい説明は置いておくけど、俺は血を交わすことで、契約を結んだ相手に魔力を譲渡できる。それを利用して、管理者権限を強化する・・・・・・はずだったんだが、予想外だったのは、はやての体を闇の書が取り込んでしまったことだった」

 

それが誤算だった。

本当なら、闇の書起動前に結んでおきたかったのだが。

 

「おかげで、暴走体に取り込まれた、というわけだ」

「なら、どうするん? ここは私がその管理者権限を」

「不可能です」

 

意気込むはやてを遮り、そう述べる管制人格。

 

「根拠は?」

「根拠は二つ。まず、今までの主の中に、管理者権限を使えたものがいないこと。二つ目は、たとえ発動できても、自動防御プログラムは止まりません」

「それだけか?」

 

淡々と言われた問題に、だが、雄一はあっさりと問い返した。

それには、却って管制人格の方が戸惑った。

 

「は? き、聞いていなかったのですか? それ以上の何が」

「その二つは問題ない。一つ目は、そもそも主の性根が違うしこの場で目覚めていることも無かったはずだ。二つ目はさっき言った方法で何とかなるし、外にはなのは達がいる」

「ですが・・・・・・」

 

尚も渋る管制人格。

その様子に、雄一は切り口を変えるため、はやてに念話を繋いだ。

 

「<はやて。はやてから、こいつの説得をしてくれ>」

「<突然どないしたん?>」

「<俺がいくら言葉を重ねるよりも、はやてから言った方が効果が大きいからな。それに>」

「<それに?>」

「<脱出のためにも準備があるからな。そっちを進めなきゃいけないんだ>」

「<準備?>」

 

首を傾げるはやてに雄一は頷いた。

 

「<そうだ。管理者権限を使う寸前に、契約を交わすようにしないといけない>」

「<なんで? 前もってしておけばええやん?>」

「<そうもいかない。契約で渡される魔力は、言ってみれば無色の魔力なんだ。無色の魔力は、拡散しやすくて、時間が経てばそれだけ失われる>」

 

カートリッジを魔法の発動の寸前にロードするのも同じ理屈だ。

 

「<だから、まずは管理者権限を発動できる状況に持っていってほしいんだ>」

「<・・・・・・分かった。やってみるわ>」

「<頼んだ>」

 

意気込み闇の書に向き直るはやてを見つめながら、準備を始めようとする雄一にカナメが声をかけた。

 

『<良いのか?>』

「<何がだ?>」

『<契約を交わすには大きな魔力がいる。御主も、初めは昏倒しておったろ?>』

 

カナメのいうとおり、ヴィータの時もフェイトの時も契約後雄一は昏倒していた。

この局面でそれは不味いだろう。

 

「<ならどうするっていうんだ?>」

『<あやつらに任せるか?>』

「<却下だ。さっきも四人で攻めきれなかったんだ。強化は必要だろう>」

『<分かっておるが・・・・・・ならば、どうする?>』

「<・・・・・・一応考えていることはある>」

『<・・・・・・そうか。なら、お手並み拝見といくとしよう>』

 

カナメに応え、雄一ははやて達に近づいていった。

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