リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第百二十二話 契約と反撃

「それで、何をすればええん?」

「とりあえず、二人とも。手を出してくれ」

 

雄一の指示に、はやて達は手を差し出す。

それを確認し、雄一はカナメを再び展開させると、二人の指を浅く切った。

 

「っ!」

「痛っ!」

「すまない。我慢してくれ」

 

二人に謝りつつ、傷から血が滲むのを確認する。

確認すると、

 

「次に・・・・・・カナメ、カートリッジ、ロード」

『承知した』

 

カナメに二発カートリッジをロードさせる。

そして、雄一は刀を返すと掌に突き刺した。

 

「ちょ、雄君!?」

「だから大丈夫だって」

「せ、せやけどなんでそんなことするん!? ウチらみたいにちょっと切るだけでええやん!」

「それが、そうもいかないんだ」

 

心配するはやてに苦笑を返しつつ、二人の手を取ると傷に血を垂らしていく。

血が触れ合うと同時に、強い光が起こり雄一の体を虚脱感が襲った。

 

「・・・・・・っ」

 

しかし、それは以前のものほど酷いものではない。

カートリッジの解放で魔力を底上げしつつ、その余剰分から契約に使用する。

それが雄一の策だった。

雄一の目論見は上手くいったらしく、以前のように昏倒することはないだろう。

 

「あ、あれ? 傷が、無い? どないなってるん?」

「契約したときに、体についている傷とかは治ってしまうんだ。ただ、はやての足までは効果が及ばなかったようだけど・・・・・・」

 

雄一ははやての両足に目を落とした。

おそらく、はやての足を治すなら、<アルス・マグナ>で干渉した方が魔力は少なくなるだろう。

はやては雄一の視線に、苦笑しながら手を振った。

 

「構へんよ。これからゆっくり治していけばええんやから。それより、これで終わりか?」

「これで第一段階。それじゃ次に行く前に、<クフ・リーン>」

 

雄一の呼びかけに、控えていた<クフ・リーン>が動いた。

はやて達に近づくと、鼻面を寄せ、じっと見つめる。

はやて達は、身の丈以上の犬に見つめられ、動くに動けなくなっていた。

やがて、<クフ・リーン>は一つ頷くと身体を引き戻し、雄一を振り返った。

 

――相棒、はやては<憑黄泉>、こっちの嬢ちゃんは俺だな――

「へぇ? そうか・・・・・・それじゃ、二人とも、いや」

 

二人に唱えてもらおうとしたところで、はた、と雄一は気がついた。

 

「どうした?」

「いや・・・・・・ふと、思ったんだけど、はやての魔力を強化したら、表の暴走体が吸い上げる分も上がるのか、と思ってな? どうしたものかと」

「っ、それは・・・・・・」

 

雄一の疑問に管制人格も眉をひそめた。

闇の書は、主の魔力を食い潰すまで暴走を続ける。

短い間とはいえ最大量を弄れば、最悪干渉とみなして転生機能が働き、はやてが死ぬ恐れがある。

 

「・・・・・・なら、主には下がっていただき、私を強化すればいい。そうすれば、リスクも避けられ、お前もこの後に魔力を温存できるだろう」

「そう・・・・・・だな。だけど、お前だけで暴走体を抑えられるのか?」

「それは・・・・・・いや、主に比べれば効率は落ちるだろうが、不可能ではないはずだ」

 

雄一の懸念に、管制人格は僅かに間を挟んだがしっかりと頷いて見せた。

 

(・・・・・・嘘、ではないと思うけど、真実でもないってところか? おそらく、『効率が悪い』どころじゃないってところか)

 

管制人格の意図を悟った雄一は、どうしたものか、と考え、

 

「・・・・・・分かった」

 

頷いた。

 

「雄君!?」

「ただし、不味いと思ったらすぐに介入するからな」

 

信じられない、と振り返るはやてを制し、条件を挟む。

管制人格は僅かに悩んだようだが、頷き

 

「そんなんあかん!」

 

はやてが遮った。

 

「主? ですが」

「そんなんあかん! 何で、貴女だけが背負わなあかんの! ウチかてやれる!」

「ですが、それでは暴走体が貴女を殺してしまいます」

「そんなことない! 外では戦ってくれている人たちもおるし、雄君もおる! ウチは、皆ならやってくれるって信じとる!!」

 

はやては断言すると、管制人格に車椅子を近づける。

管制人格も、はやてに合わせて膝をつき視線を合わせる。

管制人格の傍まで車椅子を近づけると、はやては身体を伸ばして管制人格の頬に手をあてた。

 

「せやから、忘れたらあかん! あなたのマスターは今は私や! マスターの言う事は、ちゃんと聞かなあかん!」

 

はやての強い宣言と共に、足元に白いベルカ式の三角形の魔方陣が広がった。

 

「これは・・・・・・」

『管理者権限の使用が可能になったようだね』

「マジか。はやて!」

 

エルミナの応えに、雄一は慌ててはやてを呼んだ。

 

「え、なんや?」

「管理者権限を使う前に、ブーストをかけろ。二人ともだ」

「っうん!」

「雄一・・・・・・だが」

「はやても言っていただろ。俺達を信じろ」

「・・・・・・分かった」

 

管制人格を納得させると、カナメに新たなカートリッジを装填させ、再度数発ロードさせる。

 

「それじゃ、二人とも。これを持ってくれ」

 

カナメを待機状態に戻し、エルミナを首から外すと二人にそれぞれ渡した。

 

「これは?」

「デバイス? どういうことだ?」

「その説明は後回しだ。それより、はやては<憑黄泉>、管制人格は<クフ・リーン>って唱えてくれ」

「そうすればええんやね? <憑黄泉>!」

「<クフ・リーン>」

 

首を傾げながらはやてが、はやてに比べあっさりと管制人格が言うと、再び雄一の体を虚脱感が襲った。

 

「くっ・・・・・・」

 

先ほど以上に魔力を吸われ雄一が呻くが、はやて達には気がつかせないように振舞う。

 

「名前をあげる。もう闇の書とか呪いの魔導書とか言わせへん・・・・・・私が呼ばせへん!」

「・・・・・・っ」

「私は管理者や。私にはそれができる」

「っ、はいっ」

 

目を涙で潤ませながら、涙声で頷く管制人格。

彼女に、はやては頷いて見せ、

 

「止まって」

 

はやての呟きに、足元の魔方陣が一際強く輝いた。

 

 

 

 

 

『・・・・・・という具合やねん』

「<そう・・・・・・雄一も一緒にいるんだね?>」

『<せや。ただ、外に向けて話すことはできへんみたいや>』

「<・・・・・・そう>」

「<はやて! 二人とも、大丈夫なのか!? 無事!?>」

『<ヴィータ・・・・・・ウチらは大丈夫や! けど、>』

 

はやての声の様子が突然変わり、闇の書が本へと手を伸ばす。

 

『<くっ!? ちょっと抑えるのに精一杯やねん! ごめん、なのはちゃんにフェイトちゃん! なんとかその子を止めてあげてくれる? 魔導書本体からはコントロールを切り離したんやけど・・・・・・その子が止まらんと管理者権限が使えへん・・・・・・今そっちに出てるのは自動行動の防御プログラムだけやから!>』

「え?」

 

はやての言葉を理解しきれなかったのか、固まるなのは。

その様子にすかさず、フェイトがフォローを入れる。

 

「あのね、なのは。分かりやすく言うと、あの子を動けなくすればいいの」

「なるほど! 分かりやすい!」

「それでいいのかよ!?」

 

あまりな要約に、思わず突っ込むヴィータ。

だが、なのははウンウンと頷くと、レイジングハートを再度構える。

一方、状況も進んでいく。

 

闇の書も抵抗しているのだろう、鈍くなった動きを補うように、先ほどの触手をさらに召還する。

だが、

 

「露払いは任せろ! いくぞ、アイゼン!」

<Ja! Schwalhe Fliegen>

 

ヴィータが鉄球を複数生み出すと、片っ端からアイゼンで弾いていく。

弾かれた鉄球は触手を根元から食いちぎっていく。

 

さらに、

 

「バルディッシュ!」

<Yes Sir,Haken Saber>

 

フェイトはバルディッシュをハーケンフォームに変更すると、魔力刃を撃ち放ち、ヴィータが撃ち洩らした触手を切り刻む。

さらに、魔力刃を操作し闇の書へ向けると、

 

「セイバーブラスト!」

 

一気に爆発させる。

魔力刃が一度収縮したかと思うと瞬時に膨張し、衝撃を撒き散らした。

その衝撃を闇の書は防御する。

その結果、闇の書は鈍った動きも合わさり、完全に足を止めることになった。

 

「エクセリオンバスター、バレル展開! 中距離砲撃モード!」

<All Right,Ballel Shot>

 

レイジングハートの先端から、不可視の魔力が発射され、闇の書を磔に固定する。

さらに、なのははレイジングハートの前方と後方にそれぞれアンカーとして魔法を展開し、先端に魔力を収束させていく。

 

「ブレイク、シュート!!」

 

なのはの叫びと共に、桃色の本流が奔り、闇の書を吞み込んで爆発を起こした。

 

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