リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第百二十四話 作戦会議

「すまないな、水を差してしまうんだが・・・・・・時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ」

 

今まで何をしていたのか、遅れて合流したクロノに視線が集まる。

 

「クロノ、遅かったな。何かあったのか?」

「ああ。別件を済ませていたんだ」

「・・・・・へえ? そっちは押さえられたのか?」

 

クロノのいう「別件」に思い当たった雄一の確認にクロノははっきりと頷いた。

これで、背後を気にせず暴走体の対処に集中できるということだ。

 

「ああ。だけど、それは後回しだ。今は時間がないので状況を簡潔に説明する」

 

そういうと、クロノは眼下に広がる澱みに目を向けた。

 

「あそこの黒い淀み、闇の書の防衛プログラムが後数分で暴走を開始する。僕らはそれを何らかの方法で止めないといけない。停止のプランは現在管理局から提案できるのはは二つ」

 

そういうと、懐から一枚のカードを取り出すクロノ。

 

「一つ、極めて強力な氷結魔法で停止させる。二つ、軌道上に待機している艦船アースラの魔導砲アルカンシェルで消滅させる。これ以外に他に良い手はないか、闇の書の主とその守護騎士の皆に聞きたい」

「ええっと・・・・・・最初のは多分難しいと思います」

 

おずおずと手を挙げて言うシャマル。

 

「その心は?」

「主のいない防衛プログラムは魔力の塊みたいなものだから・・・・・・」

「凍結させても、コアがある限り再生機能は止まらん」

 

シャマルの説明を、シグナムが補完する。

たしかに、その仕様なら無限に増殖するうちに氷が圧力で内側から弾け飛ぶだろう。

 

「なら二番目は?」

「アルカンシェルも絶対駄目!」

「そのアルカンシェルっていうのは?」

 

強く拒否するヴィータの様子に、雄一はユーノに詳細を尋ねる。

 

「かなり簡単に説明するけど、発動起点を中心に百数十キロ範囲の空間を歪曲させながら反応消滅を起こさせる魔導砲、ってところだね」

「ほー・・・・・・」

「分かっただろ! 絶対反対だ! こんなところでそんなもの使ったら、はやての家までぶっ飛んじゃうじゃんか!!」

「はやての家どころか、海鳴の街が消し飛ぶぞ」

 

それでもまだ控えめだ。

おそらく、周囲の県の幾つかは吞み込まれるだろう。

被害はどれだけの数に上るか、考えたくもない。

 

「反対、反対!」

「同じく、絶対反対!」

 

あまりの威力に、なのはもフェイトも同じく強く反対を訴える。

だが、二人を安心させるように、クロノは首を横に振った。

 

「僕も艦長も使いたくはない。だからこっちだって、早々使うつもりはない。さっきまで挙げていたのは、僕らが提案できるものというだけで、ここからが本題だ。雄一の契約の異能であれを何とかできないか?」

 

クロノの言葉に、皆の期待の篭った視線が雄一に向けられる。

問われた雄一は、少々考えると口を開いた。

 

「一番確実なのは、<アルス・マグナ>であれの存在ごと消し飛ばすことなんだけど」

「「絶対ダメ!!」」

「だろうな」

 

提案と同時になのは達から強い反対があがった。

雄一も二人の反応は予想していたので、すぐに取り下げる。

事情を知らない八神家メンバーは、要領を得ず首を傾げる。

問うたクロノも、その提案には苦い顔で反対を掲げた。

 

「さすがに、それは僕もやめて欲しい。他には何かないか?」

「といってもな・・・・・・ほとんどの能力があの大きさのものを消し飛ばすには火力不足だし、希望があるとすれば、<バーラ・ルー>くらいか」

 

一点を破壊するということなら、相手の防御力を無視して破壊できる<クフ・リーン>や瞬間的なインパクトならトップだろう<ルー・グー>で破壊できるし、<ダー・グッザ>で破壊することもできる。

だが、それらは広範囲の攻撃という点では不向きだった。

<クフ・リーン>の自律操作もあの規模のものには焼け石に水でしかないだろう。

「視界に入るものを灰に変える」<バーラ・ルー>なら、あれ全体を視界に納められる場所から使えばいいだろう。だが、この能力は相手の抗魔力によってはレジストされてしまうらしいし、灰に変える端から再生されるというイタチごっこになる可能性もある。

やはり、総体を一撃で消滅させるなら<アルス・マグナ>が一番確実なのだが、おそらくなのは達が止めるだろうし、事情を説明したらはやて達も許しはしないだろう。

それに、

 

(使い所はここじゃない・・・・・・そんな気がするんだよな)

「・・・・・・どうだ?」

「っ、ああ、いや、すまない。それ以外には、な。シグナム達はどうだ?」

 

雄一も打つ手無しと知り、若干気落ちした雰囲気が流れる。

その流れを広げないよう、雄一はシグナム達に水を向ける。

だが、

 

「すまない・・・・・・あまり役に立てそうにない」

「暴走に立ち会った経験は我らにもほとんどないのだ」

 

シグナム、ザフィーラの二人が首を横に振った。

たしかに、守護騎士達の記憶が、プログラムが成立してからの全てではないこと、そして完成直前には蒐集されていた事を考えれば、僅かでもあったことが奇跡だろう。

 

「そういえば、聞きそびれていたけど、あれの暴走は最終的に何処まで規模が広がるんだ?」

「・・・・・・そうだな」

 

同じくこの空気は不味いと感じていたのだろう。

クロノは雄一の問いにすぐに応じた。

だが、クロノの表情を見て雄一は悟った。

 

(これは、状況を好転させる情報じゃなさそうだ)

「まず、そんな一歩間違えれば大惨事になる実験をする前に、アルカンシェルで吹き飛ばしているだろう、ということを前提にして聞いてくれ。予測だが、おそらく規模は無限大だろう」

「・・・・・・なんだって?」

 

予想外の答えに雄一は顔を引き攣らせながら再度問うた。

無理もない、と思いつつ、クロノは理由を説明する。

 

「蒐集機能にも破損があるのか、暴走が始まると触れた物を侵食して無限に広がっていくんだ」

「ということは、市街地じゃなくて海上で戦っていたのはラッキーだったな。コンクリートとかを吸収されるより、形のない海水の方が問題は少ないだろう」

「そうかもしれないが・・・・・・どうしたものか」

 

それからは、やはりアルカンシェルは、とか、もっと沖合いなら、と意見が飛び交った。

だが、どれも反論が挙がり、相談は進まず、途中エイミィからタイムリミットを告げられた。

そのなか、ついにアルフが切れた。

 

「あー、もう! なんかゴチャゴチャ鬱陶しいな! 皆でズバッとぶっ飛ばしちゃう訳にはいかないの!?」

「ア、アルフ・・・・・・これはそんなに単純な話しじゃあ・・・・・・・」

「・・・・・・むぅ」

 

クロノに呆れながら反論され、アルフは唇を尖らせる。

ただ、アルフの意見に、雄一は苦笑しながらある程度の同意は見せる。

 

「まぁ、言わんとするところには納得もできるな。アルカンシェルさえ撃てれば話は簡単だ、ろう・・・・・・し?」

 

言いながら、ふと何かが引っかかり言葉が途切れた。

 

「雄一?」

「・・・・・・なぁ、クロノ。そのアルカンシェルって、空間歪曲に反応消滅ってことは、酸素燃焼で焼いた上で衝撃を伝えるわけじゃないよな?」

「あ、ああ。だが、それがどうした?」

 

その様子を心配したクロノは、突然雄一に問われ、思わず答えた。

その答えに、雄一は二度三度頷くと、アルフを振り返った。

 

「アルフ!」

「な、なんだい? あんたも何か」

「その案、貰いだ!」

「は?」

 

唐突な言葉に目を丸くするアルフに構わず、一同を振り返る雄一。

 

「皆、聞いてくれ! アルカンシェルを使う!」

「おい、雄一! だけど、それじゃはやての家やこの街が吹き飛ぶって言ってるじゃねえか!」

 

すぐにヴィータが反論するが、雄一もそのことは百も承知している。

 

「もちろん、撃つために場所は移す。だけど、何処に移したって何かしらの被害は出る」

「だったら」

「地球上、ならな?」

 

雄一の言葉に、皆は始めは理解できずきょとんとし、理解するや頭上を振り仰いだ。

その様子に、雄一はニヤリ、と笑い頭上を指差していった。

 

「そう、宇宙空間で撃ち込む。それなら問題ないだろう?」

 

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