リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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長野に旅行に行ってきました。
今の時期はホント過ごしやすくて、帰って来てすぐは、疲れと暑さで何もする気力がありませんでした……。
では、本編どうぞ!


第百二十五話 出現と作戦開始

「なんとも、まぁ・・・・・・相変わらず物凄いというか」

 

アースラのブリッジ。

雄一達のアイデアを聞いたリンディは呆れたように呟いた。

確かに、その方法なら海鳴はもちろん、この世界にもアルカンシェル使用の被害は一切出ない。

 

「計算上では実現可能っていうのが、また怖いですね」

 

リンディの呟きに、コンソール上で指を猛然と走らせているエイミィが同じく苦笑して返した。

彼女がしている作業は、この作戦が有効かどうかシミュレーションさせているのだ。

雄一達や守護騎士達は今までの戦闘データを、闇の書の暴走体は今までに観測されてきたものの中で最も難度の高かった個体のものを入力している。

最後の情報を入力し、計算結果の出力を待つエイミィ。

やがて、電子音と共に画面に現れたウインドウに表示された計算結果に、エイミィは笑みを浮かべてクロノに通信を繋いだ。

 

「いける! クロノ君、こっちのスタンバイは準備OK! 暴走臨界点まで後10分!」

 

 

 

 

エイミィの通信に頷くと、クロノは雄一達を振り返った。

 

「実に個人の能力頼みでギャンブル性の高いプランだが・・・・・・やってみる価値はある」

「いいじゃないか。完全消滅から少しだけど、楽になったんだから」

「・・・・・・完全消滅が、九割九分九厘になっただけだろ。あのサイズの内、コア部分がどれだけのサイズになるって言うんだ」

 

ケラケラと笑う雄一に、クロノはため息をつき湿った視線で睨む。

だが、雄一は気にせずはやて達に問う。

 

「それで、詳しい作戦についてだけど、手順は大丈夫か?」

「防衛プログラムのバリアは魔力と物理の複合4層式、まずはそれを破る!」

「そう。次は?」

 

現状、管制人格と融合しているため最も闇の書に詳しくなったはやて。

彼女に頷き、次にフェイトに。

フェイトは剣状に変えたバルディッシュを手に頷いた。

 

「バリアを貫いたら本体にむけて私達の一斉攻撃でコアを露出!」

「コアを俺達が叩き潰す必要はないからな。それで、なのは?」

 

最後になのはに。

彼女は頷くと、笑顔で空を指差した。

 

「そしたらユーノ君達の強制転移魔法でアースラの前に転送!」

『<後は、アルカンシェルで蒸発、と>』

 

なのはの言葉に、リンディが続けた。

問題も無ければ、余裕を持って暴走体を抑えることができる作戦。

 

『<上手くいけばこれがベストですね>』

「・・・・・・上手くいけば、ですけどね」

 

エイミィの同意に、ふと雄一は胸騒ぎを覚えた。

『問題が無ければ』『上手くいけば』。

それは、『もし、そうならなければ、取り返しがつかないかもしれない』ということ。

果たして、今回は何か不測の事態が起きたとき、取り返しがつくのか。

 

(願わくば、暴走臨界までにリカバリーできる程度のアクシデントであってくれれば助かるんだけど)

「雄一、少しいいか?」

 

物思いに沈む雄一に、クロノが声をかけた。

我に返った雄一は、クロノを振り返り用を問う。

 

「何だ? どうかしたのか?」

「ああ。今回の作戦だけど、君が指揮をとってくれ」

「・・・・・・なんで、そういうことになる?」

 

唐突な提案に、渋面を浮かべる雄一。

 

「今回の作戦で、管理局と守護騎士達の両方の陣営に深く関わっているのは君だ。それに、この作戦の立案者でもある。だったら、僕の思惑を混じらせるよりも君の思ったとおりに采配させた方が、対応しやすいはずだ」

「・・・・・・分かった。なら、作戦を始める前に一つ言っておく」

 

提案の理由を聞き、渋々ながらも引き受けることにした雄一は、発破を込めようと、一同に告げる。

 

「ここであいつを倒さないと、この世界は暴走体に破壊されるか、アルカンシェルで消滅するか、の二択しかなくなる、と言っていいだろう。だけど、勝てばはやては助かってこの世界も助かる。俺達にできるのは、総取りか破滅しかない。だから、やることはただ一つだ。ここで死力の限りを尽くして、必ず勝つぞ!」

『おお!!』

 

雄一の一喝に、一同が唱和し、眼下の闇を見据える。

すると、丁度エイミィの通信が事態の推移を告げた。

 

『<暴走開始まで後2分!>』

「あ、せや!」

 

そのとき、はやてが何かに気がついた。

雄一ははやてを振り返るが、彼女はシャマルを手招きしている。

 

「はやて?」

「ええからええから。シャマル」

「はい! 四人の回復ですね?」

 

はやての意図を察したシャマルは笑顔で頷くと、右手の指輪、彼女の相棒であるクラールヴィントに口づけた。

 

「クラールヴィント、本領発揮よ」

<Ja!>

「静かなる風よ、癒しの風を運んで!」

 

シャマルの足元に、ベルカ指揮の魔方陣が展開し、魔方陣から溢れた魔力がなのは・フェイト・ヴィータ・雄一を包み傷を癒していった。

 

「湖の騎士シャマルと風のリング、クラールヴィント。癒しと補助が本領です」

「凄いです・・・・・・!」

「ありがとうございます、シャマルさん!」

「サンキュー、シャマル!」

 

翠色の燐光を放つ魔力片を両手で受け止めながら、微笑むシャマルに礼を言うなのは達。

そのなか、雄一は首を捻った。

 

「あれ? なんで俺も回復されてるんだ?」

 

彼の怪我は<デル・ドーレ>で治るから、治療は不要なのだが。

だが、シャマルは、笑顔で首を横に振った。

 

「ただ怪我を治しただけじゃないのよ? 魔力の方も回復させているんだから」

「・・・・・・本当だ」

 

シャマルの言葉に、雄一が確かめてみると魔力が回復している。

これで、リインフォースの姿の暴走体と戦ったときのダメージは消えた、とみていいだろう。

 

「あたし達はサポート班だ。あのウザいバリケードを上手く止めるよ!」

「うん」

「ああ」

 

海中から突き出し蠢く様々な無数の触手を強く見据えながらのアルフの言葉に、ユーノとザフィーラが頷いた。

雄一は、三人に露払いを頼む。

 

「露払い、任せる。けど、ユーノは戦えるのか?」

 

ジュエルシード事件のときは、彼はなのはのサポートに徹していて戦闘系の魔法を使う場面を雄一は目にしていない。

先日の戦いのときも、バインドなどの補助に徹していたはずだ。

だが、ユーノは雄一の疑問に苦笑しながら頬を掻いた。

 

「うーん、確かに僕は攻撃魔法は苦手だけど・・・・・・基本的な魔法の使い方なら負けるつもりはないよ」

 

そう自信を持って言い切るユーノに何かを言おうと口を開いたそのとき。

眼下の闇の周囲の海から、闇が柱のように立ち上った。

 

「始まる!」

 

クロノの言葉の通り、今までゆらゆらと蠢いていた触手もその身を激しくくねらせ、何かが起きることを予感させている。

 

「・・・・・・夜天の魔導書を、呪われた闇の書と呼ばせたプログラム、闇の書の闇・・・・・・」

 

眼下で突然活発化した闇を見据え、はやてが呟く。

それに答えるように、闇が僅かに浮上すると、周囲の柱が姿を消し、闇はその身をより深い色に染めた。

注視する中、闇はその身を弾けさせ、中身を晒した。

 

――LaーーLaーー――

 

現れたのは、巨大な合成獣。

ベースになっているのは、いつか雄一・ヴィータ・ザフィーラで討伐した大亀だろうか。

背には先ほどまでのように黒い翼を生やし、大亀の甲羅の名残だろう鋭い突起が複数生えている。

赤い四本の角が生える頭部には、リインフォースを模しているのか、銀髪の女性が腰から上を生やしており、歌声を響かせている。

だが、その髪は振り乱されており、その目は深紅に、肌も薄紫に染まっていて、美しさではなく禍々しさを見る者・聞く者に伝えている。

その姿に、雄一は展開させたカナメの柄を握り締めると、声を張り上げた。

 

「この世界を守るためにも、そして、呪いの輪廻をここで終わらせ、夜天の魔導所にあるべき姿を取り戻させるためにも・・・・・・手加減無用だ! かかれぇ!!」

 

 

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