――GoAAAaaa!!――
ドミニクを氷に閉じ込め一同が安堵の息を洩らした矢先。
ドミニクの手元の氷が弾け飛び、氷から溢れ出た防衛プログラムが体の所々を血で染めながら雄叫びを上げた。
先ほどまでの防衛プログラムは、その機能の一切をドミニクに抑えつけられていた。
だが、ドミニクが討たれ、その手からコアが離されたことで、コア内の支配率が変化し、再びプログラムが支配権を握った。
さらに、防衛プログラムは支配権の無い状態でも、己の破損を修復しようと再生機能にリソースを注ぎ続けていた。
結果、解放されるや否や、氷で身体を押し潰され拉げさせながら、膨圧で氷を強引に弾けさせると同時に己の体を急速に再生して見せたのだ。
「くっ、一難去ってまた一難か!? もう一度あれの相手を」
クロノが表情を険しくし、再度氷結させようとデュランダルを構え
「五月蝿い」
る寸前、オレンジの光を曳いた金属片が防衛プログラムに突き刺さり、エネルギーを解放させてその肉片を辺りにぶちまけさせた。
半年前の事件の最中に見覚えのある光景に、頬を引き攣らせながら射手を振り返った。
「ゆ、雄一?」
「正直に言って、相手の暴発に救われた形で終わったから、試合に勝って勝負に負けた気分なんだよ。それでも、一応勝ちは勝ちだからな。後は、シャマル達にもう一働きしてもらって終わりだと思ってたんだよ。それなのに」
クロノに答えず、雄一は防衛プログラムを据わった目つきで見据える。
もちろん、再生する隙を与えないためにも、次々に<ルー・グー>で瓦礫や防衛プログラムの肉片から硬い骨や角などを引き寄せては撃ち込んでいく。
「今さら出てきてなんなんだよ。往生際の悪い」
「ゆ、雄一君?」
ブツブツと文句を垂れ流す雄一の姿に怯えながら、なのはが声をかける。
だが、雄一はそれにも答えず、ただ深くため息をつくと一同を視界に入れないように前に進み出た。
その背に、気を取り直したクロノが怒鳴る。
「雄一! 何が不満なのかは知らないが、いまは防衛プログラムをもう一度抑えないと!」
「問題ないよ。ドミニクと戦ったあとじゃ、厄介だと思い込んでいた複合障壁も再生能力もそのデカブツぶりに合った生命力も、まったく危機感を刺激されないんだよ」
クロノの怒声に僅かに視線を向けるが、響いた様子も無く。
だから、と続けて雄一は灰色に染まった瞳で蠢く防衛プログラムを見下ろした。
「お前はもう舞台を降りろ。焼き払え、<バーラ・ルー>」
途端、防衛プログラムの身体が灰へと変わっていく。
――GyAaaaaa!?――
身体が灰へと変えられる苦痛に絶叫を上げる防衛プログラムだったが、反射の域で再生機能を動作させると身体を修復していく。
灰化と修復がいたちごっこの様に繰り返されていき、辺りに灰が撒き散らされていく。
その勝負はやがて、灰化の方へと天秤が傾いていった。
このままいけば、やがて本体コアを露出させることもできるだろう。
だが、厄介な知らせがエイミィから届けられた。
『<皆、急いで! コアから高エネルギー反応! もう時間が無いよ!!>』
エイミィの言葉を裏付けるように、先ほどまで勢いを収めていた火の手が勢いを取り戻し、辺りに地鳴りが響きだした。
ドミニクが討たれ、タイムリミットが再起動したらしい。
おそらく、このままではコアを露出させる前にタイムリミットを向かえることになるだろう。
雄一もそれには気がついたが、いま<バーラ・ルー>を解くと一気に盛り返されてしまう。
一進一退の攻防が続く中、さらにその勢いを強めようと雄一は
「皆、頼んだ!」
振り返らずに背後の皆を頼った。
「分かったの!」
「雄一の頼みを断るわけないよ」
「シャマルはコアが露出したら一気に転送やで」
「はい、はやてちゃん!」
「私らはさっきもあまり活躍してなかったからな。お前達は休んでたらどうだ?」
「ヴィータの言うとおりだな。我々に任せてテスタロッサ達は休んでいたらどうだ?」
「・・・・・・」
「ここで闇の書の一切の連鎖を断ち切ってみせる!」
「僕も微力だけど頑張るよ!」
「フェイトに手を出した礼をキッチリ込めてやるよ!」
力強い一同の言葉と共に。
なのはのディバイン・シューターが、
フェイトのプラズマランサーが、
はやてのブラッディ・ダガーが、
ヴィータのシュワルベフリーゲンが、
シグナムの紫電一閃が、
ユーノ・アルフのバインドが、
防衛プログラムの肉体を削っていく。
その攻撃に、ついに
「っ、コア捕捉! 捕まえた!」
旅の鏡を構えて機を窺っていたシャマルが、今度こそ防衛プログラムのコアを捕捉した。
すぐさま、コアを切り離す。
「今よ!」
「長距離転送!」
「目標軌道上!」
シャマルが切り抜いたコアを、ユーノとアルフの張った転送魔法が挟み込む。
そのまま三人は大きく手を振り上げた。
「「「転送っ!!」」」
三人は強制転移魔法でコアを宇宙空間に送り込んだ。
あとは、
「頼みますよ、リンディさん」
見えぬ空の先を振り仰ぎながら、雄一は呟いた。
「コアの転送、来ます!」
軌道上。
観測手の言葉に、アースラのブリッジが緊張感を高めた。
「転送されながら生体部品を修復中! 凄い速さです!」
「アルカンシェル、バレル展開!」
エイミィがコンソールを操作すると、アースラの前方に魔力が収束されていく。
ブリッジのモニターでそれを確認すると、リンディは立ち上がりコンソールに音声入力を立ち上げた。
「ファイアリングロックシステム、オープン! 命中確認後、反応前に安全距離まで退避します! 準備を!」
『了解!』
リンディの目前に現れたキューブ、アルカンシェルの発射キーであるそれに解除キーを差し込みながらの指示に、アースラスタッフの返事が唱和する。
そして、準備が整うと、防衛プログラムが転送されるのを待つ。
転送光の柱は頂で途絶えている。
そこへ、再生中なのだろう、肉体を醜悪に蠢かせる防衛プログラムが放り出された。
「アルカンシェル・・・・・・発射!」
現れた防衛プログラムめがけて、リンディは差し込んでいたキーを捻り、アルカンシェルを放った。
解き放たれた魔力は、別の魔力が作ったレンズ状の魔力を通り、その威力を上げて防衛プログラムに喰いつくと、空間に亀裂を入れ周囲のものを吞み込みだした。
防衛プログラムは僅かに抵抗しようとするが、無重力の中自由に動くことはできず、亀裂に吞み込まれ消滅した。
「・・・・・・効果空間内の物体、完全消滅・・・・・・再生反応、ありません!」
「・・・・・・そう。準警戒体制を維持。もうしばらく反応区域を観測します」
モニターで防衛プログラムの消失を見届けていたリンディは、エイミィの報告を聞いても、万が一を疑い警戒を残すよう指示を出す。
その理由を知るエイミィは了解を返す。
「了解!・・・・・・ふぅ」
だが、エイミィの役割は通信主任。
警戒は哨戒チームに任せて、危機が去ったことに椅子に凭れかかると、深く息を吐き、肩を落とし安堵するのだった。