リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第百三十一話 終わりの実感と不穏

『<という訳で現場の皆、お疲れ様でした~! 状況、無事に終了しました! この後まだ残骸の回収とか市街地の修復とか色々あるんだけど・・・・・・皆はアースラに戻って一休みしていって!>』

「あ、あのアリサちゃんとすずかちゃんは?」

 

エイミィの報告に、思い思いに喜び合う中、ふとなのはが零した。

あの二人はまだアースラで保護されているのか、と思っていたらエイミィの答えはノーだった。

 

『<被害の酷い場所以外の結界は解除してるから、元いた場所に戻ってもらったよ。大丈夫!>』

「そうですか! よかった」

 

胸を撫で下ろすなのは。

同じく、二人の安否に方の力を抜いた雄一は深く息を吐き、

 

「はやて!!」

「っ!?」

 

ヴィータの叫びにすぐに振り向いた。

見れば、力無く倒れたはやてがシグナム達に抱きかかえられ、ヴィータが悲痛な顔で覗き込んでいる。

 

「はや」

 

て、と雄一も異常に気がつき駆け寄ろうとした。

だが、突然視界が暗転し、雄一も抗う間もなく意識を手放した。

 

 

 

 

 

「・・・・・・ん・・・・・・はやて!?」

 

意識が戻ろうとするや否や、雄一は直前の自体を思い出し体を跳ね起こした。

荒い息を吐きながら、周囲に目を向けるとカーテンに遮られているが、天井と匂いから、ついさっきも目にしたアースラの医務室の光景だと推察した。

 

「あら? 気がついたの?」

「ん? フェイト・・・・・・か?」

 

横からかけられた声に雄一が振り向くと、フェイト・・・・・・に良く似た少女が笑いながら雄一を看ていた。

少女の顔にフェイトかと思ったが、その表情に雄一は違和感から否定して少女の正体にすぐに思い当たった。

 

「アリシア、か」

「正解! けど、一回で分かって欲しかったかな?」

「それはすまないな。寝起きだったってことで勘弁してほしい。それより、いくつか確認していいか?」

「いいわよ?」

「ここは、アースラでいいのか?」

「ええ。雄一は闇の書の防衛プログラムとの戦いのあと、突然倒れたの」

「倒れた?」

「それについては、私から説明するわ」

 

問い質そうとする雄一の言葉に、アリシアではなくカーテンを開けて入ってきたプレシアが応じた。

 

「プレシアさん?」

「無事に目が覚めたようね。あと、アリシアはリハビリの時間じゃないの?」

 

プレシアは雄一に近づくと、手早く瞳孔や脈拍の確認を済ませるとアリシアを振り返り微笑みながら言った。

アリシアは、僅かに唇を突き出したが、首を横に振った。

 

「そうだけど、いまは雄一とお話していたいの。いいでしょ、母様?」

「仕方ないわね・・・・・・それより、貴方が倒れたのは緊張から解放されたから、というのが有力ね。貴方のデバイスから聞いた限り、強敵だったんでしょ?」

「そう・・・・・・ですね。正直、相手が本物だったらやられていたのはこっちだったかもしれません」

「そう」

「それより、はやては?」

 

自分の容態については特に気にする必要はなさそうだ、と判断した雄一はすぐに話題を移す。

プレシアはちょっと待ちなさい、と言うとカルテを取り出した。

 

「あの子は隣で眠っているわ。原因は、多量の魔力を慣れていない状態でいきなり消費したから身体がついていけなかったのよ」

「ああ・・・・・・」

 

プレシアの言う症状に、心当たりのあった雄一は深く納得した。

確かに、雄一も初陣の後は泥のように眠っていた。

 

「それにしても、末恐ろしい子ね。あれほどの威力をいきなり撃てるなんて」

「そう、ですね。けど、なのはやフェイトも大したものですよ」

「そうね。なのはちゃんも確かに凄いわ。魔法に触れた時間はあのこと変わりないくらいなのに。正直、心配でもあるわね」

「やっぱり何か不具合が出る恐れがありますか?」

 

雄一の危惧に、プレシアは真剣な表情で頷いた。

 

「未成熟の身体であれほどの魔力を運用することもそうだけど、本来負担が大きくて廃れたカートリッジシステムの使用や全力解放の影響もあるわ」

「それはフェイトもですよね」

「あの子は、全力解放まではしていないわ。けど、もちろん検査して少しでも異常があったら休ませるわ、絶対に!」

「・・・・・・そうですか」

 

突然、拳を握り締めるプレシアに、思わず引きながら応じる雄一。

すると、突然プレシアは額に手をあてため息をついた。

 

「正直、いまからあれだけのオーバーワークを当然としていくとなると、将来的にも不安が大きいのよね。今のうちから誰か支えてくれる人がいればいいんだけど」

 

言いながら、何やら含みのある視線を雄一に向けるプレシア。

その含みに何故か背筋が凍りつく雄一はその意図を問おうとしたが薮蛇を察して口を閉ざした。

 

「支えてくれる人がいればいいんだけど」

「・・・・・・心配しなくても、なのはやはやて、アルフもいますよ?」

「それもそうだけど、あの子達じゃできないサポートがいて欲しいのよ」

 

そういいながら、プレシアは両手を雄一の肩に乗せる。

さらに危機感を強めた雄一は、手を振り切って距離を取ろうと、

 

(う、動けない!?)

 

するが、どういう力の込めようなのか、プレシアの両手はびくともしなかった。

その間にも、プレシアの言葉の熱は温度を上げていく。

 

「そういう意味では、貴方は有望なの。あの子も気を許しているし、実力も申し分ないわ」

 

プレシアの気迫に、雄一はそっとアリシアに視線を向けて助けを求める。

だが、

 

「確かに、雄一ならいいかな? 今度から私のことをお義姉ちゃんって呼ばせて・・・・・・」

(何か、不穏なものを感じるような・・・・・・)

 

小声でブツブツと呟く様子に、救援は得られないと判断した雄一。

仕方ない、とプレシアに意図を問うた。

 

「つ、つまり、どういうことで?」

「あら? ここまで言ってまだ気がつかないかしら? つまり」

「つ、つまり?」

「私のことをお義母さんと」

「って、何をやっているんですか、貴女は!?」

 

とうとう最高潮に達したプレシアを医務室に飛び込んできた女性が張り倒した。

 

「きゃっ!?」

「まったく・・・・・・あら?」

 

後頭部を強く叩かれ身悶えるプレシアを見下ろしため息をつくと女性は雄一に気がついた

その女性が、医務室で対峙したリニスと呼ばれていた女性だと気がついた雄一は僅かに身構えるが、リニスは雄一の様子に申し訳なさそうに頭を垂らし腰を折った。

 

「失礼いたしました、榊雄一様。私はそこで醜態を晒しているプレシアの使い魔のリニスと申します。先日の非礼、深くお詫びいたします」

 

リニスからすれば、雄一は主の命を救い愛娘達のことも救った恩人なのだ。

それなのに、あの時はプレシアが危険人物と対峙していることに動揺してしまい、恩人に刃を向けたことを悔いていたのだった。

だが、謝られた雄一は堪ったものではない。

 

「ちょ、頭を上げてください! 別に俺は気にしてませんから!」

「・・・・・・寛大な処置に感謝します。さて、」

 

僅かに微笑むと、リニスは顔をしかめ足元のプレシアを見下ろした。

丁度プレシアも後頭部を抑えながら立ち上がるところだった。

 

「リ、リニス・・・・・・主の頭を殴るとはどういう了見かしら?」

「喧しいですよ、プレシア。そういう話はフェイトも交えなさい。貴女の主観で割り入っていいことではありませんよ?」

「ぅっ・・・・・・」

「まったく・・・・・・けど、雄一様はまだ幸運といえるでしょうね」

「幸運?」

 

リニスが半ば呆れながら零した呟きに、雄一はふと食いついた。

先ほどの会話の何が幸運なのか。

雄一の疑問を察したリニスは説明することにした。

 

「雄一様、貴方はプレシアに力を示しており彼女に気に入られている。これが、例えばアリシアに言い寄る男が現れようものなら、まず攻撃を入れ、無理難題を突きつけることでしょう」

「当然よ! アリシアに手を出す輩にかける温情は無いわ!!」

「「・・・・・・」」

「あ、あははは・・・・・・」

 

力説するプレシアに、雄一とリニスは生暖かい眼を向けアリシアは苦笑した。

 

(アリシアは苦労しそうですね)

(困った主で)

 

リニスとアイコンタクトを交わすと、雄一は身を起こしていたベッドに横になりなおして、ふと呟いた。

 

「・・・・・・こんな会話ができるってことは、今回の事件は終わったってことで、いいんだよな?」

「・・・・・・っ」

 

雄一の呟き。

それを聞きとがめたプレシアは僅かに表情を強張らせた。

その様子に、雄一は言い知れない予感を感じて身を起こすとプレシアを問い質した。

 

「何かあったんですか?」

「・・・・・・これからする話は、貴方が眠っている間に完成プログラムから聞いた話よ。今頃、執務官があの子達にも同じ話をしているはずよ」

 

その後、プレシアの話に雄一は静かに耳を傾けた。

そして、話が一区切りつくや否や雄一は医務室を飛び出した。

 

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