リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第百三十六話 頼みとはやての選択

「・・・・・・」

「雄一? どうかしたのか?」

 

回想に耽り遠い目をしていた雄一にクロノは訝しく想いつつ声をかけた。

 

「っと、どうした?」

「それはこっちの台詞なんだが。どうしたんだ? 何か様子がおかしかったが」

「いや、ちょっとな。それよりクロノ、後で頼みがある」

「? それは構わないが」

「ならこの話は終わりだ。それではやて」

 

荷物を脇に置くように両手を動かし、話題を切り替える雄一。

呼ばれたはやては肩を震わせて顔を雄一に向けた。

 

「結論は出たか?」

「・・・・・・確認したいんやけど、本当に雄君には問題はないん?」

「ああ、嘘は無い。対価が働くほどの事態にはならない、と予想している」

「さよか・・・・・・うん! それならええ!」

 

雄一に確認を取ったはやては二度三度頷くと、笑みを浮かべた。

 

「それなら、雄君のオススメの案。『過去を見る』方を選ばせてもらうわ!」

「そうか・・・・・・それなら、とりあえず三日ははやて達は休んでおいてくれ」

「それはありがたいんやけど・・・・・・雄君はどうするん?」

「俺達は、資料を探して改悪された時間の特定を急ぐから」

「それなら私らも!」

「それはできない」

 

資料の捜索の手伝いをしようと名乗りを上げるはやてだったが、雄一が答えるより早くクロノが却下した。

 

「申し出はありがたいけど、君達は管理局からすれば、局員を襲った犯罪者達だ。その君達が管理局のデータベースに干渉することは周りの危機感を煽ることになるだろう」

「それは・・・・・・そうかもしれへんけど」

「もちろん君達がそんなことをするはずがない、ということは僕だって分かっている。だけど、事情が事情だ。だから、君達は今回は大人しくしていてくれ」

「・・・・・・分かったわ」

 

クロノに言われ、渋々引き下がるはやて。

はやてが引き下がったことでシグナム達も同じく引き下がることになった。

 

「雄一、私達は?」

「うん、何でもやるの!」

 

気合を入れるなのは達。

だが、

 

「うん、二人にも頼みたいことがあってね。アリサ達の追及を凌いでおいて?」

「「へ?」」

 

予想外の頼みに、動きを止める二人に意図を説明する雄一。

 

「アリサ達には魔法がばれてしまったから説明は必要なんだけど、こっちに掛かりきりにならなきゃいけないから、正直そっちには時間が裂けないんだ」

「それなら、私達のことだけでも説明しておいて、雄一はまた次の機会にすればいいんじゃないの?」

「そういうわけにもいかない。二人にも説明していないこととかもアリサ達には説明するつもりだから二度手間は避けたいんだ。全員が揃っている方が説明もしやすいし」

「えーと・・・・・・うん、とりあえず分かったよ」

 

フェイトの疑問に応える雄一。

その答えに、苦笑しながらフェイトは頷いた。

見れば、なのはも同様に頷いている。

 

「それじゃ、この話はここまででいいだろう」

「そうだな。それじゃ、君の頼みを聞こうか?」

 

区切りがついたのを確認し、クロノは雄一を促した。

雄一は頷くと、一転して重々しく口を開いた。

 

「クロノ・・・・・・アースラに泊めてくれないか?」

「・・・・・・・・・・・・は?」

 

予想外の頼みに、辛うじてそれだけ答えるクロノ。

聞き間違いかと周りに視線を向ければ、他の者達も目を丸くして固まっていた。

その様子に、聞き間違いじゃなかったと悟ったクロノは、再度雄一に尋ねた。

 

「・・・・・・すまない。聞き間違えたらしいんだけど、もう一度言ってくれないか?」

「アースラに泊めてくれないか?」

「・・・・・・」

 

再度繰り返した雄一に聞き間違いじゃなかったことを理解し、クロノは痛みだした頭を押さえながらため息をついた。

大抵の頼みは聞くつもりだったが、この頼みは予想外だった。

 

「えーと、とりあえずなんでだ? 君はたしか海鳴に家があるだろ?」

「諸事情あって倒壊した」

「はあ!? 倒壊!?」

 

驚き問うクロノに、雄一は頷き、闇の書の内部で見たこと、海鳴での出来事を語った。

 

「・・・・・・そうか。それで、泊めてくれか」

「さすがに今の時期に野宿は死ぬからな。アースラなら部屋もあるんじゃないかって」

「まあ、そういうことなら構わないけど・・・・・・あれは放っておいていいのかい?」

「ん?」

 

クロノが疲れたように指差した先を振り返る雄一。

そして、

 

「・・・・・・え、何これ?」

「「「・・・・・・」」」

 

何故か睨みあって火花を散らすなのは・フェイト・はやて。

彼女達の様子に、雄一は理解が追いつかず固まった。

 

「ふふふ・・・・・・今まで家に住んどったんやから、雄君は八神家(うち)で暮らせばええんや」

「そんなこともないよ? 決着がつきそうなんだから、雄一だってこれ以上はやてに負担をかけたくないんじゃないかな? それより、テスタロッサ家(うち)で泊まってもらって、色々お返しをしたいかな」

「フェイトちゃんの家はアリシアちゃんやリニスさん達もいるから部屋に空きが無いんでしょ? それよりも、高町家(うち)で泊まってもらってもらえば、ユーノ君と密に連絡をとって事態の解決も図りやすいの!」

「「「・・・・・・ふふふ」」」

 

(怖っ!?)

「で、どうするんだい?」

「・・・・・・アースラに泊めてくれ」

「いいのかい?」

「正直、なんであんな空気になっているのか分からないが、押し付けあわなくてもいいだろうに」

「いや、あれは押し付けているんじゃなくて・・・・・・」

「? どうした?」

「いや。なんでもない。悪いが僕には答えられない」

「???」

 

答えかけてはぐらかしたクロノに、首を傾げつつ雄一は矛を納める。

四人の様子に苦笑すると、クロノはエイミィに部屋の用意を頼むのだった。

 

 

 

 

 

「それじゃ、始めるぞ」

 

三日後。

アースラを降りて海鳴の公園に一同は集まっていた。

はやては、経過が良好なこともあって外出の許可が下りている。

夜天の書を中心に、雄一とユーノが向かい合い、その少し外にクロノ達が、さらに外周にシグナム達とアルフが控えている。

 

「それで、ユーノ。調べはついたのか?」

「うん。これを見て」

 

そういうと、ユーノは一冊の本を取り出した。

 

「これは?」

「古代ベルカの手記だね。『雷帝』ダールグリュン家の者が遺したものだよ」

 

そういうと、ユーノはページを捲っていき、あるページを開いて置いた。

その頁のある行を指でなぞっていく。

 

「『――年――月――日、今日エレミアに頼み、例の本「闇の書」の解析を頼む。強力な品だが、彼女ならばやってのけるだろう。ただ、気になるのは兄の事だ。彼のことだから、強力な品だと分かれば手に入れようと画策するだろう。念のために考案しておいた、防衛プログラムを組み込むことも頼むとしよう』」

「凄い、凄いよユーノ君! そんなことも調べられるなんて!」

 

ユーノの読み上げた内容に驚きながらも喜ぶなのは達。

だが、ユーノは難しい顔で否定した。

 

「ううん、これだけじゃこの時に『再生プログラム』とかが改変された証拠とは言い切れないんだ」

「そうだな。ただ、防衛プログラムが組み込まれたときが分かっただけでも大きいだろ。それよりも」

 

雄一は、ユーノに同意しつつ手記の一部をなぞった。

 

「この、エレミアっていうのは?

「同時期にいた武道家らしいんだけど、色々な武勇が残っているみたいだね。一人で万の軍勢を退けたとか、分厚い敵門を拳の一振りで抉り取ったとか」

「それは凄いな・・・・・・眉唾だけど。それより、これ以上時間は掛けられないな」

 

雄一は苦笑から一変して真剣な表情を浮かべた。

 

「とりあえず、<アルス・マグナ>を使う。ユーノ、記録の準備は?」

「いつでもいけるよ。解析は取り込んだあとでやることになると思うけど」

「その方がいいだろう。それで、エルミナ」

『なんだい?』

「どうやればいいんだ?」

 

雄一の疑問に、一同はずっこけた。

まさか、提案した本人が方法を知らないとは思わなかった。

エルミナはため息をつくと手順を説明していく。

 

『<アルス・マグナ>を発動させつつ、『夜天の魔導書』に触れてみたまえ。おそらく反応するだろう』

「えっと・・・・・・こうか?」

 

言われたとおり、手を伸ばす雄一。

その手が表紙に触れる。

瞬間、夜天の書が砕け散った。

 

「なっ!?」

「えっ!?」

 

思わぬ事態に色を失くす二人。

その様子に異常を察したクロノ達も手元を覗き込み同じく色を失くしていく。

 

「ちょ、雄君!? なんてことを」

 

思わずはやてが雄一に詰め寄り責めようとした瞬間。

 

世界が罅割れ砕け散った。

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