リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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お待たせしました。
それでは本編、どうぞ。


第百三十九話 侵入と発覚?

「さて、どうするかな?」

「て、雄一。何か考えがあったんじゃないのか?」

 

腕を組み眼前の扉を睨む雄一に、クロノは半眼を向ける。

何事かというと、どうやって夜天の魔導書のデータを得るか。

干渉できないのならば、扉も開けられないのでは? と皆と合流した後に気がつき、慌てて戻るも既に扉は閉まった後。

これは不味いと冷や汗を流すが、扉に手を伸ばせばあっさりと開いた。

拍子抜けしつつ屋敷へ入ったのだが、この屋敷の何処に彼らがいるのか分からないのが問題の一つ目。

手分けして探せばいいのだが、エレミアクラスの武芸者がいた場合、察知されかねない。

さらに問題なのが、エレミアに近づき必要なデータをどのように得るか。

得るだけなら、雄一が<憑黄泉>を使って覗き見ればいいのだが、それでは必要な部分が分からない。

そのため、より知識を持つユーノも傍にいる必要があるだろう。

二人していい案も浮かばず唸っていると、待ちくたびれた様子ではやてが切り出した。

 

「とりあえず考えとってもしゃあないし、二人を探さへん?」

「それもそうだな。はやての言うとおりまずはあの二人の居場所を突き止めよう。とりあえず、二人ずつで組んでくれ。もし見つけたら念話で連絡ってことで」

「分かったの! 行こう、フェイトちゃん!」

「な、なのは!? そんなに急がなくても」

 

雄一の提案に一同が頷く中、一足先になのはがフェイトの手を掴むと駆け出していく。

 

「な、なのは!? 待って!」

「あ~、雄一。あたい達は二人を追うよ。同じ方向へ行くなら、ユーノも落ち着くだろうし」

「・・・・・・頼んだ」

 

なのはの跡を追うユーノとその様子に苦笑するアルフ。

 

「それじゃ私達も行こか」

「はい、わが主」

「では、私とシャマル。ヴィータはザフィーラと組め」

「オッケー! んじゃ、行くぜザフィーラ!」

「ああ」

「それじゃ雄一君。またあとでね」

 

はやてとリインフォース・シグナムとシャマル・ヴィータとザフィーラにそれぞれ別れる八神家。

 

「それじゃ、僕達も行こう」

「ああ。俺達は二階へ向かおう」

 

そして、クロノと雄一は一階ではなく、二階へ足を向けた。

 

 

 

 

「<この部屋は・・・・・・外れか。そっちはどうだ?>」

「<こっちにもいないな。それより、本当にこの階にいるのか?>」

「<そのはずだ>」

 

半信半疑で問うクロノに雄一は頷く。

階段から見た限り、この屋敷は三階建て。

普通なら、入り口から遠い三階に主人の家はあるはず。

だが、魔法には飛行魔法もあるのだから地面から遠いことは必ずしも安全には繋がらない。

そうなると、次点なのはおそらく中層階。

そのため、ニ階を重点的に手分けして調べているのだが。

 

「<だが、ここまで空振りが続いているとなると、やはり違うんじゃないのか?>」

「<気持ちは分かるけどな・・・・・・まぁ、根気よく探すしか、っ!?>」

「<雄一?>」

「<見つけた>」

 

突如言葉を詰まらせた雄一にクロノが振り返ると、雄一は扉を僅かに開けて部屋の中を鋭い目で注視しながら短く言った。

 

「<本当か!?>」

「<ああ。ほら>」

 

雄一が場所を譲ると、クロノはそこから部屋の中を覗いた。

部屋は質素ながら、質の良い家具が用意されており、中央のテーブルで先ほどの二人が話している。

そして、女性の手元にあるものに、クロノは目を見開いた。

 

「<あれは、夜天の書か!?>」

「<ああ。大当たりだ>」

「<ど、どうするんだ!?>」

「<とりあえずクロノは皆、特にユーノを呼んでくれ。俺は話をできるだけ聞き取るから>」

 

分かった、と応じてクロノが皆に念話を送りだしたのを確認すると、雄一は<デル・ドーレ>で聴力を強化し、室内の会話に耳を傾けた。

 

 

 

 

 

「やれやれ、兄様もいい加減に私を放っておいてくれればいいのに」

 

心底から億劫そうに、頬杖をつきながらため息をこぼすシルヴィに同席するリンは苦笑する。

 

「仕方がないさ。シグムント殿も決して弱くはないけど、君ほどじゃない。武力や魔力はもちろんのこと、求心力とでも言おうか、カリスマという点でも君の方が上だからね」

「そうらしいわね。そして、その意見は貴方だけでなくいろんなところから聞こえていた。それを聞き続けていたからこそ、私は家督の継承から身を引いて、兄様に家督を譲ったというのに」

「それで、風聞から解放されたなら話は別だったんだろうけど。生憎周囲から常に比較され続けたんだろうな。だからどんな手段を使ってでも君を消したいんだろう」

「馬鹿馬鹿しい話ね」

 

エレミアの予測にシルヴィは鼻を鳴らす。

 

「たとえ人知れず私を葬ったとしても、兄様の評価を変えることにはならないというのに。それどころか、私の方の風聞が、実際の私を離れて上げられかねませんわ。それでより苦しめられることになるというのに」

「それが分かるなら、君に手を出そうなんて思わないさ」

「それもそうだけど・・・・・・憂鬱な話は置いておきましょ? それより、頼んだ調査はどうなったか聞かせてもらえるかしら?」

「そうだね。これを」

 

シルヴィの催促にエレミアは姿勢を正すとデバイスにスクリーンを展開させる。

 

「それじゃ、説明するから聞いててくれ」

「ええ。お願いね」

 

 

 

 

「<クロノ、まだか?>」

「<もう呼んだ。そろそろ来るはずだが>」

「<お待たせ>」

 

クロノを急かしていると、ちょうど話題にしていたユーノが合流した。

 

「<来たか。けど、どうするんだ? ユーノが来たとしても、彼の気配察知を潜り抜ける方法が>」

「<それについては、見つからないことを祈るしかないだろう>」

「<君の、たしか<憑黄泉>だったか。あれは他の者に使えないのか?>」

「<試したことは無いが・・・・・・やってみるか>」

 

ユーノに触れながら<憑黄泉>を使用する。

姿が消え、肝心のユーノに雄一が眼を向けるが、

 

「<上手く、いったか?>」

「<多分?>」

 

頼りない返事だったが、ユーノの姿は消えていた。

雄一の手には確かに体温が伝わっているのだが、その姿は忽然と消えていた。

 

「<上手くいったみたいだな>」

「<ああ。それじゃ、俺達は二人の傍までいく。それと、>」

 

クロノに応じながら、雄一はエルミナを外すとユーノに渡す。

 

「<雄一?>」

「<ユーノにエルミナを預けとく。俺はカナメで、ユーノはエルミナでそれぞれ記録を>」

「<分かった>」

 

ユーノが返事をすると、雄一はユーノを連れ、二人の傍まで近寄っていった。

 

 

 

 

「まず、夜天の書を解析すると、表の文章とは別のコードが隠れていたんだ」

「表? 別のコードですって?」

 

首を傾げるシルヴィにリンは問題の部分を指差した。

 

「ここ。調べてみると、これは破損修復の式だね。長い時間蓄えた術式が変質するのを防ぐものだった。それから、こっちは独立行動の式だね」

「何かと思えば・・・・・・この子の機能を考えればおかしくないじゃないの」

 

呆れたように唇を突き出すシルヴィ。

 

「この子は貴方以外で私の傍に居てくれた友達なのよ? それを曲げて調査を頼んだのに」

「そう言われてもね。なんでこんなふうに裏に隠すようになっているのか、気になるじゃないか。何か、意図がありそうで」

「意図はあるでしょうね。改変を防ぐ、といったところじゃないかしら」

 

シルヴィはそう言うと、夜天の書の表紙を撫でた。

 

「この子に溜め込まれた術式は今のベルカにとっても大変貴重なもの。その中にはとてつもない破壊力を持ったものも存在する」

「そうだね。そして、そういう分かりやすい力に食いつくものは跡を断たない」

「兄様みたいに?」

「さて。だけど、問題が一つ」

「ええ」

 

シルヴィのからかいに、惚けて答えなかったリンは指を立てながら表情を真剣なものに変えた。

シルヴィも表情を改める。

 

「問題は、中にある魔法を使えないこと」

「ええ。マスターとして認証されているはずなのに、その力を使うことができない。肝心のこの問題については何か分かりまして?」

「おそらくだけど、管制人格が機能していないか、備わっていないんじゃないか?」

 

部屋の外で聞き耳を立てていたなのは達の視線がリインフォースに向けられる。

 

「どういうことかしら?」

「このタイプの大容量の魔法具ならそれをナビゲートする管制人格プログラムが入っているはずなんだ」

「それが無いから、使えないと?」

「多分ね。ただ、マスター認証とかは出来るから、それらの機能が権限の外にあるのかも・・・・・・」

「・・・・・・? リン?」

 

突然、言葉を切ってあらぬ方を向いたリンにシルヴィがおずおずと問うと、

「しっ、静かに。誰だ?」

 

リンは鋭く遮り、虚空――雄一達がいる方へ誰何を飛ばした。

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