リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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前話の最後を少し変更しました。
話が繋がらないので、お手間をかけますが、よければそちらを先にご覧ください。
では本編どうぞ。


第百四十二話 帰還と希望

「え!?」

「な!?」

 

突然のことに一同が硬直する。

その間にも、罅は広がり一気に砕け散った。

それはついさっきにも目にした光景、<アルス・マグナ>が起こした現象とよく似ていた。

だが、今度のそれは逆のもの。

 

(まさか・・・・・・<アルス・マグナ>が解けるのか!?)

 

雄一が危惧を悟って周囲を見渡すと、既になのは達の姿は見えなくなっていた。

同時に、

 

『けど、どうするの? 私はこの様よ?』

『シグムントの許には俺が行く』

『そんな!? いくら、貴方が――――ても、』

『大丈――――、それに、目的は――――夜天――――』

 

リンとシルヴィの姿が朧になっていく。

それにつれて、声も聞き取れなくなってい。

 

(ま、まだだ! まだはやて達を救う方法が・・・・・・)

 

消え行く光景に、薄れ行く意識を耐えながら雄一は手を伸ばすが、その手を伸ばす力も抜けてしまい、膝が崩れると共に身体が前のめりになっていき、

 

『そうだ、――――、シルヴィにこれを渡して――――』

『これは?』

『やて――――オリジナルのデータ――。何か――――これ――――』

『けど、そんなもの――――兄――――手を出して――――』

『なら、――――これを開く――――鍵は、この子に――――』

 

その会話を最後に雄一の意識も途切れた。

 

 

 

 

 

 

「――――! ――――君!」

「・・・・・・ぅ」

「雄一君!? 目が覚めた!? 提督! 雄一君が目を覚ましました!」

「本当!?」

 

耳を打つ音に、雄一がぼんやりと目を覚ますと、雄一を覗き込むようにしていた女性、エイミィが血相を変えた。

エイミィの声に、傍にいたのだろうリンディが駆け寄り同じく雄一を覗き込む。

状況が分からず、雄一が首を傾げていると、雄一は横になっていることに気がつき身を起こした。

雄一がいたのはアースラの一室、どうやら医務室のようだった。

何故このようなところで横たわっていたのか、と雄一は首を捻ろうとし、同じく横たわっているなのは達の姿に気がついた。

 

「な、なのは!? フェイト!? はやて!? 皆!?」

「うぅ・・・・・・」

「・・・・・・んぅ」

「・・・・・・なんやぁ?」

 

雄一の声に、気がついたなのは達が顔をしかめながら体を起こした。

 

「くっ・・・・・・一体何があったんだ?」

「クロノ君、覚えてないの? 驚いたよー、気がついたら皆倒れてたんだもん」

「倒れてた?」

 

顔をしかめながら身を起こしたクロノの疑問にエイミィがフェイトの背を支えながら答えた。

その答えに、雄一は眉をひそめ、

 

ズキンッ!

 

「あぐっ!?」

「「「「雄一(君)!?」」」」 

 

突然走った痛みに、雄一は思わず頭を押さえてうめき声を上げた。

その声に、なのは達は息を呑んで駆け寄ろうとするが、雄一は残った手でそれを制した。

雄一は頭痛に紛れる形で脳裏を過ぎる光景に、事の次第を思い出した。

 

(そうだ! 俺は、夜天の書のオリジナルのデータを手に入れる為に<アルス・マグナ>を!)

 

思い出した雄一はユーノの姿を探す。

ユーノの姿はすぐに見つかり、雄一はその手元に目を向ける。

ユーノの手には一つのブローチ、待機状態のエルミナがあった。

 

「くっ!」

「ちょ、雄一君!? 何をしてるの! 大人しくしていないと!」

「待ってくれ・・・・・・ユーノ、おいユーノ!」

「ん・・・・・・雄一? あれ、ここは・・・・・・アースラ?」

 

押し留めようとするエイミィを制しつつ、雄一はユーノに数度呼びかける。

その呼びかけに瞼を震わせたユーノが頭を振りながら身を起こした。

ユーノは状況を確かめるように周囲に目を向けるが、雄一は構わず問いただす。

 

「ユーノ、エルミナを持っている理由を覚えているか!?」

「エルミナを? あれ、そういえばなんでこれを」

「いいから! 覚えているのか、覚えていないのか!?」

「お、覚えているよ!」

 

雄一の剣幕に身を退きつつ頷くユーノ。

その答えに、雄一はなのは達にも同じ剣幕を向けると、彼女達も頷いた。

皆の様子に、安堵しつつユーノにデバイスを返してもらい、彼女達にも確認をとる。

 

「カナメ、エルミナ! データは!?」

 

雄一の問いに、なのは達も目を丸くし、二機に期待の視線を向ける。

だが、

 

『すまない・・・・・・肝心のデータは写されていない』

『私もだ・・・・・・』

 

現実は無情だった。

確認するが、やはりそれらしきデータは写されていない。

 

「くそっ!」

 

失敗、という事実に顔を歪ませる雄一は、はやてとリインフォースに目を向けた。

はやては絶望に凍りついていて、リインフォースは予想していたとばかりに諦めたような笑みを浮かべていた。

 

「やはり・・・・・・私は消え去るべきなのだな」

「そ、そんなんあかん!」

 

リインフォースにはやては必死に訴える。

だが、リインフォースは静かに首を振った。

 

「ですが主、希望は既に無くなりました。暴走プログラムも直に再生し貴女を狙うでしょう」

「そんなん、また倒せば」

「それが如何に困難か。貴女も理解なさっているはずです」

「それでも何とかしたる!」

「お気持ちだけ・・・・・・受け取らせてください。主が私を喪いたくないように、私も主を危険に晒したくないのです」

「そんな・・・・・・」

「私の願い・・・・・・聞き届けてくださいませんか?」

 

リインフォースの訴えにはやては凍りつく。

皆も沈痛な表情で二人の遣り取りを見ていた。

 

(何か・・・・・・何か無いのかよ!?)

 

そのなか、雄一は何か覆す方法は無いか、必死に記憶を探っていく。

だが、彼からしても<アルス・マグナ>による過去視が打てる最善の一手だった。

だからこそ、その失敗には彼も少なからずショックを受けていた。

だからこそ、彼の思考も空転を続けて、

 

『やて――――オリジナルのデータ――。何か――――これ――――』

(っ!? 今のは?)

 

一瞬脳裏に引っかかった何かに、雄一は必死に手を伸ばす。

思い出すのは、<アルス・マグナ>が解けるなか聞こえてきたであろう二人の会話。

都合のいい想像かもしれないが、もしあれがオリジナルデータに関わるものなら。

 

(賭ける価値はある!)

 

まだ希望が途絶えていないことに表情を改める雄一。

そのまま、一同を振り返り、雄一はリンディに問うた。

 

「リンディさん。ミッドチルダにダールグリュンとエレミアという家はありますか?」

 

突然の問いにリンディは眉を寄せるが、頷いた。

 

「たしか、あったと思いますよ。ミッドチルダにではなくベルカ領にだったかと思いますけど。それがどうかしたんですか?」

「それらの家に連絡をとってほしいんです。『リンと呼ばれていたエレミアとシルヴィと呼ばれていたダールグリュンについて何か不明な遺品はありませんか』と」

 

雄一の言葉にリンディ達だけでなく、彼らのことを知るなのは達も首を傾げる。

雄一は、リンディ達に<アルス・マグナ>中で見たことを報告し、なのは達に最後に聞いた会話を思い出せる範囲に補填して伝えた。

 

「そ、それならリインフォースは助けられるんやよな!?」

 

再び見えた希望に目を輝かせるはやて。

なのは達も目を輝かせる。

一方、考え込むのはクロノとユーノ。

 

「問題なのは、それが残っているか。そして残っていたとしてもそれに掛かっているプロテクトはどうやって解くのか、か」

「そうだね。そこはもう一度手記を当たってみるよ。何か新しく見つかるものもあるかもしれないし」

「頼んだ」

 

頷きあうクロノ達。

ただ、事情を聞いても見たわけではないリンディ達は、皆の盛り上がりに首を傾げるが、エイミィを振り返った。

 

「事情はよく分からないけど・・・・・・エイミィ、両家に連絡を入れてみてくれる?」

「分かりました!」

 

敬礼すると、すぐに部屋を飛び出していくエイミィ。

リンディはその背を見送り、室内に視線を戻すと、ポツリと呟いた。

 

「さて、これで一体どうなるのかしら?」

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