リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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遅くなりました。
それでは本編どうぞ!


第百四十三話 箱と鍵

その後、エイミィが両家に連絡を繋いだ。

エレミアは連絡がつかなかったが、ダールグリュンから返答があった。

確かに彼女達の遺品といわれる物の中に、詳細の不明な物があったらしい。

そこで、雄一達はクロノとリンディに頼み、引き渡しを依頼してもらった。

向こうはさすがに渋ったが、クロノが聖王教会の方にも働きかけることで承諾を得た。

のだが、

 

「待たせた。受け取ってきたぞ」

 

クロノの手には一辺が十センチ程度の箱があった。

それを受け取り、色々なところから見ながら問う雄一。

 

「それでこれか?」

「ああ。ダールグリュンが言うとおりならな。だけど」

「ん?」

 

クロノの声の変化を疑問に思いつつ、雄一は蓋に手をかけ、

 

「んん?」

 

ビクともしない蓋へと視線を戻した。

数度力を込めるが、やはりわずかも浮かない蓋に眉をひそめる。

その様子に、クロノも溜め息を吐いた。

 

「向こうが言うには、開けることができないらしい」

「なんだと? けど、鍵穴はないぞ」

 

雄一の言うとおり、留め具のような物は見受けられない。

しかし、何で止まっているのか判らないが蓋が動かないのだ。

 

「ああ。だから、向こうも手の打ちようが無かったらしい。せめて中の物が調べられないか、と色々と試したらしいけど、よほど特殊なものなのか透視もできないらしい」

「それは随分厳重だけど、何か開ける方法は伝わっていないのか?」

「どうやら、何かの方法で封印されているらしいんだが。その方法が失われているらしい」

「失われたって・・・・・・じゃあ、何も手がかりはないん?」

 

はやてが顔を青ざめさせるが、クロノは答えず、雄一に問うた。

 

「むしろ、雄一は何か気がついたことはないか? この箱の事に気がつけたのもお前が聞くことができたシルヴィとリンの会話のおかげなんだから」

「とは言ってもな」

 

クロノに促され、雄一はもう一度会話の内容を思い出してみる。

だが、特に変わったことは、

 

「・・・・・・あった」

「本当なん!?」

 

はやては勢い込み身を乗り出すが、雄一は苦い顔のまま首を横に振った。

 

「期待を裏切る様で心苦しいけど、俺にもハッキリしていないんだ」

 

そう断って、リン達の言葉を思い出せる限り口にする。

一頻り聞くと、皆は一様に腕を組み考え込んだ。

 

「鍵とは言っているけど・・・・・・」

「それが何かは分からないまま、か」

「『あの子』って誰のことだろう?」

「ダールグリュンやエレミアに下の子や知り合いがいたのかな?」

「下の子とかやったらええけど、知り合いまで含めたらキリが無いやろな」

「「「「「んー・・・・・・?」」」」」

 

考え込むが答えは見えてこない。

そのなか、ユーノは席を立つと、

 

「念のため、あの手記を調べてくるよ」

「頼んだ」

 

無限書庫へと向かった。

その背を見送ると、雄一は念のために、とリインフォース達を振り返った。

 

「皆にも、何か思い当たることは無いか?」

 

だが、芳しくなくまずシグナム達が首を横に振った。

 

「すまない。あの様子では我々が作り出される前のことだろう。力になれそうにはない」

「それもそうか・・・・・・それならリインフォースは?」

 

管制人格の彼女なら、と思い彼女を振り返るが、彼女も苦い顔を浮かべた。

 

「すまないが、私も全ての主の記憶があるわけじゃない。何があったかは」

「・・・・・・そうか」

 

空振りに再び場の空気が沈む。

その空気に耐えられず、なのはは雄一に問うた。

 

「そ、そうだ! 雄一君って物をすり抜ける事ができたよね! それを使えば箱だけを抜けることもできるんじゃないかな!?」

「あー、誤解しているようだから説明するけど、あれは物をすり抜けるというか触れた物の形を崩しているんだ。あれの中身によっては箱ごと崩す危険もあるだろうな」

「そんな・・・・・・」

「ただ、試すだけ試してみるか。壊せ、<クフ・リーン>」

 

気落ちするなのはの姿に、雄一は<クフ・リーン>で箱の外殻を剥ぐ事を試してみる。

人の形から解れた影が箱を囲むように伸びていき、

箱に触れた瞬間、影が弾け飛んだ。

同時に、

 

「がっ!?」

 

雄一の胸を鋭い痛みが走った。

雄一は胸を押さえて蹲る。

 

『雄一(君)!?』

 

雄一の異常になのは達が駆け寄ろうとする。

だが、

 

『今のは・・・・・・もしや精霊殺しか!?』

 

カナメの驚きに、一同は彼女へと視線を向けた。

 

「カナメ、精霊殺しって何?」

『精霊殺し、というのは通称じゃ。通常、契約者を攻撃する術はあれど精霊に直接攻撃する方法は無い。じゃが、例外はある。精霊自身に直接ダメージを与えるものもあるのじゃ。それを私達は精霊殺しと呼んでおった』

「それがこれか・・・・・・けど、何故雄一もダメージを負っているんだ?」

『精霊ち契約者は密接に繋がっておるのじゃ。だから、精霊への影響はそのまま契約者へと伝わる。その逆は確認されておらぬがな』

「ゆ、雄一君、大丈夫なの?」

 

カナメの説明に、血の気が退きながらも雄一に手を伸ばすなのは。

雄一はなのはの手を取ると、胸を抑えながらも立ち上がった。

 

「ありがと、なのは。もう大丈夫だから。それより、ちょっと思いついたことがある」

 

怪我の功名とでもいおうか、激痛の影響か雄一は一つ予想を立てることができた。

発言に視線が集まるなか、雄一は彼女に目を向ける。

その視線を辿り、一同の視線が彼女、リインフォースに向いた。

 

「わ、私がどうかしたのか?」

 

一斉に視線を向けられ、たじろぐリインフォース。

彼女に、雄一は説明する。

 

「いいか。まず、今回の話にシルヴィ、リン、シグムント、そして夜天の書以外のメインキャストがいないと仮定する」

「それで確定でいいと思う。少なくとも調べた限りではダールグリュンに他に子供はいなかったそうだ」

 

雄一の仮定にクロノが補足を入れる。

 

それに頷く一同に雄一は説明を進める。

 

「そうなると、会話をしていた二人は除外し、シグムントに権限を渡すことも『あの子』と呼ぶわけもない。なら、『あの子』に当てはまるのは夜天の書、その管制人格と考えられる」

「だが、それでは根拠が弱いのではないか? それこそ記録に載せられていない私生児の可能性もあるだろう」

「いや、その心配は無い」

 

シグナムの指摘ももっともだが、今回はそれは無い。

何故なら、

 

「先代のダールグリュン当主は早逝しているんだ。二人以外の子供がいないのは間違いない。エレミアの方は、ダールグリュンと付き合いがあったのかリンだけだったから、シルヴィも知っている人物でない以上その線は無視していいはずだ」

「だが・・・・・・」

「それに、シルヴィは夜天の書をとても大事にしていたようだしな」

 

先ほどの光景の最中にも、『この子』と呼んでいたのだから。

 

「色々といったけど、試して失敗したところで何か問題が起こるわけじゃないんだ。試すだけ試してみてくれないか」

「・・・・・・分かった。箱を渡してくれ」

 

リインフォースが手を差し出すと、その上に雄一は箱を置いた。

リインフォースは僅かに躊躇っていたが、息を整えると蓋に手を掛ける。

だが、

 

「・・・・・・動かないな」

「ハズレだったか?」

 

目の前の結果に、落胆に髪を掻き毟る雄一。

他の者達も、落胆に肩を落とした。

すると、

 

『認証開始』

「「「「!?」」」」

 

箱から発せられた機械音声に一同は思わず身を退く。

構わず音声が流れる。

 

『製作者によって設定された、特定権限を有する個体のアクセスを確認。セキュリティへのアクセスを開始・・・・・・完了。認証を完了。封印を解除』

「・・・・・・」

「リインフォース。もう一度試してみてくれ」

 

それ以上音声が続かないことを確認し、雄一はを促す。

リインフォースは恐る恐る再び蓋に手を掛けると、力を込める。

すると、

 

「・・・・・・ぁ」

 

抵抗無く蓋が動き、中身が明らかになった。

それは、

 

「これは・・・・・・記録媒体か?」

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