リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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では本編どうぞ!


第百四十四話 歴史と夜天の光

箱の中にあった記憶媒体をクロノが摘み上げると中身を確認していく。

 

「これは・・・・・・古代ベルカの言葉だな。僕じゃ読めないだろう」

 

なのは達も横からのぞき込むが、一様に顔をひきつらせて引き下がる。

 

「それならどうするんだ?」

「フェレットもどきに見せるのが確実だろうな。あいつが来るまでは・・・・・・エイミィに解析を頼むとして、とりあえず無限書庫に連絡してみるか」

「た、大変だよ!」

 

クロノが通信を立ち上げようとした矢先、渦中の人物、ユーノが駆け込んできた。

そのただならぬ様子に、皆は目を丸くした。

 

「ど、どうしたんだユーノ。何かあったのか?」

「雄一! た、大変なんだよ!」

「だから何がだ」

 

話にならない様子に、雄一はとりあえずユーノを落ち着かせることにした。

 

「まず落ち着け。こっちもユーノに用があったから丁度いい」

「そんな場合じゃ」

「いいから。こっちが話している間に話す内容をまとめておけってことだから」

 

言い募ろうとしたユーノを遮る雄一。

その強さに、ユーノも我に返ったのか、数度深呼吸して自分を落ち着かせると頷いた。

 

「ぐっ・・・・・・分かったよ。それで、そっちこそ何かあった? もしかしてあの箱を開けられたの?」

「ああ。それで、中には記録媒体があったんだけど、内容は古代ベルカの言語で書かれているから読めなかったんだ」

 

問題の記録媒体をユーノに示す。

どれどれ、とユーノは画面をのぞき込み、しばらくその文面を睨んだ。

 

「これは・・・・・・調査結果とオリジナルデータだね。たぶん、夜天の書の」

「それって!」

「リインが助けられるんやな!?」

 

現れた光明に表情を輝かせるはやて。

はやてに、ユーノは力強く頷いた。

 

「リンことリンドブルム=エレミアは研究者としても優秀だったみたいだね。とても読みやすかったよ。それぞれ標題で分けられていたから、再生能力と転生機能についてもどの部分か探し出せる。あとは、バグを探し出して施術する事ができれば、リインフォースが消える必要はなくなるはずだよ」

「そうか・・・・・・」

 

ユーノの断言に、雄一は胸を撫で下ろした。

ただ無為に時間を使ってしまったのでは、という思いが無いわけではなかったのだ。

光明が確かなものになるに連れて、この半年の出来事が報われる思いだった。

安堵したところで、雄一達はユーノの要件を促すことにした。

 

「それなら、この話は一旦脇においておくとして。それでユーノは血相変えてどうしたんだ?」

「あ、そうだった。それなんだけど」

 

ユーノも用件を思い出したのだろう。

表情を変えると腰のポーチから一冊の本を取り出した。

その表紙を見て、雄一は首を傾げた。

 

「これは・・・・・・ダールグリュンの手記か?」

 

その本はシルヴィアン=ダールグリュンの手記。

だが、特に何があるわけではないらしく、雄一は首を傾げつつ、ユーノに手渡した。

 

「それで、これがどうしたんだ?」

「これを見てほしいんだ」

 

騒ぎの原因がこの本の何処にあるのか問うと、ユーノは険しい顔で、腰元のポーチから一冊の本を取り出し、手記の横に並べた。

並べられたその本に、一同は目を丸くした。

それは、

 

「手記が、もう一冊?」

 

隣に置かれているものと寸分違わぬ、まさしくダールグリュンの手記そのものだった。

念のために手にとってパラパラと捲ってみるが、文字列も同じものに思える。

 

「どういうこと? この本が二冊あったってことなの?」

「ううん、それはないと思うよなのは。手記、ってことは複数の巻に渡っているならともかく、同じものが二冊あるのはおかしいと思う」

 

なのはの疑問を否定するフェイト。

ユーノもフェイトの答えに頷いた。

 

「フェイトの言うとおりで、少なくとも前の調査でこの本を探したときは一冊だけだったはずなんだ。それと、データバンクを確認してもこの本の在庫は一冊だけだった」

「それなら、もう一冊は何処から来たんだ?」

「その疑問に答える前に、これを見て」

 

そういうと、ユーノは一冊を手にとると、ページを素早く捲っていく。

やがて目的のページを見つけたのか、そのページを開いてテーブルに置くともう一冊も同じほどのページを捲り、開いて置いた。

文字が読めない雄一達はせめて差異を探そうと目を凝らし、

 

「ん? これって記述が違う?」

 

文字列が異なっているのだ。

念のため一枚ページを戻してみるが、そこには同じ文字列が並んでいることから日付がずれているわけでもないらしい。

どうやら、このページを境にして、内容が変わっているようだ。

 

「実はさっき無限書庫に向かう途中で、手記をポーチの中に入れっ放しにしていたことに気がついたんだ。けど、無限書庫のデータベースには手記は書庫内にあることになっていた。だから探してみたら」

「もう一冊あった、と。けど、なんでそんなことが」

 

起こったのか、と言おうとして、雄一はふとその原因に思い至った。

まさか、と思いつつユーノに確認を取る。

 

「ユーノ、まさかこのページの内容って?」

「思ったとおりだよ。これは、シルヴィアンがシグムントに刺客を差し向けられた時のものだよ」

「それじゃあ内容が変わっているのは」

 

雄一とユーノは原因であろうなのはに目を向けた。

 

「え? 何?」

「おそらく、なのはがシルヴィアンを守ろうとして撃ったあの砲撃の影響が出たようだな」

「僕もそう思うよ」

 

視線を向けられうろたえていたなのはに構わず予想を確認しあう二人。

そこに、はやてがおずおずと手を挙げて割り入った。

 

「せやけど、ウチらには何も変わったところは無いみたいやけど?」

「そうだな。我々としても記憶に違和感は無い」

「ああ。半年前にはやての許で起動して雄一に会ったときのことも覚えてる」

「そうね。それに今までの主のもとでどんな扱いだったかも」

 

はやての疑問にシグナム・ヴィータ・シャマルが追従する。

その疑問に、ユーノは然もありなんと頷いた。

 

「これは僕の推測になるけど、歴史に大きな変化が無かったからじゃないかな」

「どういうこと?」

「今回だと、前に資料を探して読んだ限り、シルヴィアンはあの襲撃で重傷を負うんだ。それで、魔導師でいられなくなり、一般人として生きたらしい。その一方で、夜天の書を奪ったシグムントは屋敷に乗り込んできたリンドブルムによって殺害されている。けれど、夜天の書はシグムントによって機能を改悪されていたらしくて、彼の死と共に何処かへと消えてしまった。そして、時は流れてはやてに行き着いたんだと思うんだ」

「それが元の歴史ってことは、どう変わったんだ?」

 

クロノの問いにユーノは少し考え込み、

 

「大筋は一緒だけど、シルヴィアンの怪我が本来ほど重いものじゃなくて魔導師として回復したってこと。シルヴィアンは魔導師でなくなっても、ダールグリュンを纏めていたんだけど、今回はシグムントがいなくなって魔力もあるんだから、家督を継ぐ障害は無かったはずだ。その結果、リンドブルムはデータをシルヴィアンのところにも遺していたんだと思う。魔導師として戦う力が無いと、データを奪われそうになったときに抵抗できない。そうなったら、今となっては確かめられないけど、データはリンドブルムと一緒に散逸しててダールグリュンには遺されていなかったかもしれないんだ」

「えっと、つまりどういうことなの?」

 

話についていけていなかったらしいなのは。

彼女にユーノの言った事を分かりやすく教えようとして、ふと雄一は、

 

「あの時のなのはの砲撃が良い未来を掴み取る鍵だったってことだ」

 

そう総括すると、なのはの頭に手を伸ばし数度その髪を撫でた。

なのはは雄一の端的な言い様にポカンとして他の面々を振り返ると、フェイトやはやて達も笑顔で頷いた。

その笑顔に、なのはも安心したように微笑むのだった。

 

 

 

 

その後、ユーノの解析したデータを元に、プレシアをはじめとしてアースラの技術スタッフが夜天の書の破損箇所を修復していった。

施術中、防衛プログラムの活動の危険があったが、小規模の内にはやてが管理者権限で抑えることに成功した。

だが、再発の可能性も否定しきれず、雄一達と共に武装隊士によって包囲される状態を余儀なくされた。

幸運にも、その後の施術は無事に終わり、施術後リインフォースは出迎えたはやて達を目にすると、涙を滲ませながらも笑顔を浮かべるのだった。




これにてA's編は完結です。
何話か間話を挟みまして、B,o,A編に移るつもりです。
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