リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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閑話 その六 携帯電話と一騒動

「うーん・・・・・・」

 

雄一は、色とりどりの機械を前にして、難しい顔で呻いた。

彼が目の前にしているのは携帯電話。

元の体に戻り、事件に区切りがついたこともあって、以前先送りにした携帯の購入を決意したのだが、カタログを見ても善し悪しは分からなかったのだ。

そこで誰かに相談しようと思い、なのは達に相談しようとしたら、ならば一緒にいこうという事になり、

 

「雄一君、雄一君! こっちの携帯はどうかな? 機能も一杯付いているよ!」

「でも、機能もいいけど雄一達の危険を考えたら、柔なものじゃだめだと思うわ。むしろ、こっちのごついのはどう?」

「けど、大きくて使い難くないかな? こっちの折り畳めるのはどう?」

「でも、それだと戦うときに不安だね。雄一、こっちはどうかな? カメラがすごく綺麗なんだって」

「それより、バッテリーの時間を気にせなあかんのちゃうか? これとか、連続稼動六十時間やって」

 

口々に別々のものを指すため、一向に意見が纏まらなかった。

次々と示される見本に、雄一は次第に着いていけなくなってきており、むしろ携帯を買わなくてもいいんじゃないか、とさえ思い始めていた。

 

「けど、雄一。大丈夫?」

「? 何がだ、フェイト?」

「雄一、携帯電話を買うには保護者がいるんだよ。でも、雄一は、その、ご両親は」

 

ふとフェイトが思い浮かべた問題が、雄一を我に返した。

言い難そうに口淀むフェイトに、雄一はけれど何ともない様子で頷いた。

 

「大丈夫だ。(都合のいい)保護者役は見つけてあるし」

「保護者役?」

「そ、どっかの足長おじさんにね」

 

ニヤ、とする雄一だったが、元の話を知らないフェイトには伝わらず、首を傾げる彼女に、雄一は表情を引きつらせると肩を落とした。

 

「え、雄一? どうしたの? 具合悪いの?」

「・・・・・・なんでもない。ともかく、保護者には宛が在るってことで。それに、いざとなったら<フィン・ターン>を使えばいいし」

「あ、そうか」

 

今度は、雄一の案に納得がいったように手を打つフェイト。

彼女の様子に、雄一は再び携帯に目を戻すと、機種を一つ一つ見ては悩みだした。

その様子に、アリサが苦笑しながら声をかけた。

 

「決まらないみたいね」

「アリサか。正直、種類が多すぎて何が何やら、ってところだ」

「気持ちは分からなくはないけど、基本は変わらないわよ?」

「というと?」

「その前に聞くけど、携帯の頑丈さとかはいるの?」

「あるに越したことはない、くらいだな」

「それなら、基本的に電話機能は付いているんだし、後はメールをするか、カメラはいるか、ネットに繋ぐのか、それらを考えた上で今度はそれぞれの性能差で考えればいいのよ」

「なるほど」

 

アリサに言われたことを意識して、スペックを見比べて候補を絞っていく。

その中、雄一は一つの携帯に目を留めた。

 

「これは・・・・・・」

「ぁっ!?」

「ん?」

 

耳に届いた小さな声に雄一が振り返ると、驚きながらも喜びを隠しきれていない表情のフェイトの姿が在った。

雄一はその様子に、首を傾げるがとりあえず脇においておき見本を手にとり、スペック表を注視した。

スペックには不満はない。

しかし、比較的新しいモデルらしく、雄一は少々躊躇った。

 

「ゆ、雄一・・・・・・」

「ん、フェイト? どうかしたのか?」

 

その時、フェイトがおずおずと雄一の袖を引っ張った。

雄一は見本を棚に戻すと、フェイトを振り返った。

フェイトは、顔を赤らめながら、やがて意を決したように言った。

 

「あ、あのね! その携帯、私のと同じモデルなんだ!」

「そ、そうなのか?」

 

勢い込むフェイトの様子に若干身を引きながら雄一が問うと、フェイトは頷き取り出して見せた。

その手には、確かに先ほど見ていたものと同じ携帯があった。

 

「そ、そうなの! そ、それで、あの、その携帯なら、もし良かったら、操作とか、私が教えてあげられるかな、って・・・・・・」

「ん、そういうことか」

 

フェイトの言いたい事を遅れながら理解した雄一は、その提案を秤に掛ける。

多少値が張ることに眼を瞑るには十分な利点といえる、と考えた雄一はフェイトに頷いて見せた。

 

「そういうことなら、よろしくお願いしていいか?」

「っ、う、うん! もちろんだよ!」

 

途端、表情を輝かせるフェイト。

フェイトが何故喜んでいるのか分からず、雄一は首を傾げていたが。

 

「あ!? 雄一君、携帯決まった?」

 

その様子に気がついたらしく、なのは達が戻ってきた。

 

「ああ。これに決めたところだ」

「へぇ、見せて見せて!」

「あ、私も見せてもらおうかしら。ほら、すずかも!」

「わ、私は・・・・・・」

「まあええやん、すずかちゃん! ウチも興味在るしな!」

 

興味津々と目を輝かせるなのは達に、雄一は先ほどの見本を示した。

なのは達だけでなく、すずかもそちらへ目を向け、

 

「「「「って、あぁあああ!!??」」」」

「っ!? な、なんだ!? どうしたんだ!?」

 

四人が突然叫び声を上げた。

突然の叫びに、雄一だけでなく周囲の人達の視線が集まる。

 

「こ、これって!? フェイトちゃんのと、同じだよね!?」

「ああ」

「何でこれなのよ!?」

「いや、同じ機種だから、操作法を教われるんじゃないかって」

「く!? 流石やな、フェイトちゃん!」

「何が流石なんだ、はやて?」

 

詰め寄るなのはとアリサとはやてに、淡々と答えていく雄一。

その様子に、却って雄一の考えが分からず三人はフェイトを振り返った。

 

「フェイトちゃん、どういうことなの!?」

「どういうことよ(や)!?」

「ど、どういうことって言われても・・・・・・正直、私にも分からない、かな」

 

三人の勢いに怯えつつ、フェイトも眉を寄せた。

その煮えきらぬ様子に、なのは達も勢いを抑える。

 

「どういうことなの、フェイトちゃん?」

「いや、あそこまでいつもどおりだと、私もちょっと自信が揺らいでて」

「「「・・・・・・あー」」」

 

フェイトの言葉に大なり小なり思い当たる節のあった三人は思わず声を上げていた。

三人も雄一の鈍さには悩んでいるのだから、他人事とは思えないのだった。

 

「って、すずかはどうしたのよ?」

「あれ? さっきまでいたよね」

「そういえば、すずかちゃんさっきから喋ってないような・・・・・・」

 

ふと、一人足りないことに気がついたなのは達。

すずかの姿を探して周囲に目を飛ばす。

すると、

 

「雄一君、その・・・・・・私も一緒の機種にしてもいいかな?」

「ん? 俺に伺いを立てなくても、変えていいんじゃないのか? そういえば、すずかも携帯を持っていたんじゃなかったか?」

「うん・・・・・・前にフェイトちゃんの携帯を買いに来たときに、そろそろ機種を変えようかな、って思ってたから、丁度いいかなって」

「「すずか(ちゃん)!?」」

 

雄一と、俯きがちながら喋るすずかの姿に、なのは達は駆け寄った。

 

「すずかちゃん! ズルいよ!」

「そ、そんなこと、ない、よ?」

「ものすごく挙動不審になっているじゃない!」

「ソンナコトナイヨ?」

「「嘘!」」

「あ、ウチも変えてこよかな♪」

「「させるかぁ!」」

 

 

「仲、いいな。あいつら」

「え? あれって仲がいいの? 雄一にはあれが仲良く見えているの!?」

 

ずれた事を言う雄一の肩を揺さぶるフェイトと共に、一同に周囲の人達は奇異の目を向けるのだった。

 

 

 

「わ、私も同じ機種にしようかしら」

「あれ? でもアリサちゃんは二ヶ月前に変えたばかりだよね?」

「くっ!? よく覚えていたわね、すずか」

 

 

「なのはも一緒にどう? なのはも同じなら、私もその、嬉しいよ?」

「わ、私も・・・・・・あぅ、許してもらえないだろうなぁ・・・・・・ごめんね、フェイトちゃん」

「ううん、そんなことないよ!」

 

 

「うー、ウチも変えたいけど、シグナム達(みんな)と一緒に買ってしもたし」

「まぁ、それはしょうがないって」

「分かっとるって。あんまり、グレアムさんに迷惑もかけられへんしな」

「そこは掛けても罰は当たらないと思うぞ?」

 

 

「それじゃ、手続きしてくるから、少し待っていてくれないか?」

「早くしてきなさいよ!」

 

アリサに送り出され、雄一はカウンターへ向かわず、一度店から離れた。

そのまま、人気のないところまで歩いて行くと、

 

「この辺でいいか。カナメ、グレアムさんに連絡を入れてくれないか?」

『承知した』

 

雄一は、カナメにグレアムへ通話を繋がせた。

契約の際の保護者役を頼むためだった。

運良く、手が空いていたらしく、グレアムは直ぐ捕まえることができた。

事情をかいつまんで説明すると、

 

「それではお願いします。では、一度切りますね」

 

雄一は通話を切り、

 

「カナメ。結界を準備してくれ」

『承知した。封時結界、展開』

 

雄一の指示に、カナメが結界を展開する。

途端、結界の内部の時間が止まっていく。

その中、ふと新たな人影が現れた。

人影は結像すると、ゆっくり立ち上がった。

その人影へと、雄一は歩み寄り会釈した。

 

「ご足労をお掛けしてすみません、グレアムさん」

「なんの。この程度、迷惑と思うことはないとも」

 

そう言い、微笑むグレアムに雄一は再度頭を下げ、結界を解いて携帯ショップまで案内をするのだった。

 

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