リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第百四十六話 鉄騎との戦いと欠片

「喰らいやがれ!」

<Schwalhe Fliegen>

「圧搾しろ、<ダー・グッザ>!」

 

ヴィータの撃った鉄球に、雄一はエルミナを銃へと変え素早く引き金を引き、鉄球を撃ち落とす。

銃弾は鉄球にぶつかった瞬間、弾頭に封入されていた血を媒介して黒い華を咲かせて鉄球を吞み込んだ。

その隙に、なのはがレイジングハートを突き出す。

 

「レイジングハート、アクセルシューター!」

「っこの!?」

 

回避ではなく、撃ち落とされたことに一拍挙動が遅れたヴィータになのはのシューターが突き進む。

 

「アイゼン!」

<Panzer Hinderis>

 

だが、ヴィータは素早く障壁を張ってシューターを受け止めて見せた。

それを、雄一達は深追いせず静観していた。

雄一達はいまいち攻め込めずにいる。

それはヴィータの真贋が決めきれずにいるためだ。

先ほどの電話やなのはの証言で、十中八九偽物なのだが、逆にその一割二割を埋めきれない。

まして、なのはの魔法ならばともかく、雄一の攻撃ではともすればヴィータを殺しかねない。

 

(せめて、あと一つ何か切っ掛けがあれば)

「っ雄一君!?」

 

考え込んでいた雄一がなのはの叫びに我に返った瞬間、

 

「おっりゃあああ!!」

「っちぃ!?」

 

一気に距離を詰めていたヴィータのアイゼンを辛うじてカナメで受け止めた。

見れば、アイゼンの形状がラケーテンフォルムに変化している。

 

「っく、相変わらず受け止めにくい形状だよな、これ!」

「意味の分からねえこと、言ってんじゃねえ!」

「ああそうかい!」

 

アイゼンをさらに押し込もうとするヴィータの叫びを受け流しつつ、雄一は鍔迫り合いになったヴィータを至近距離で観察していく。

 

(格好ははやてが作った赤い騎士装束、だよな? 使う魔法もいつも使うものだし・・・・・・今回起動してからの記憶だけがない状態? そんな都合の良い事があるのか?)

「考え、事とは、余裕、だな!」

「おっと! させねえよ!」

 

アイゼンはラケーテンフォルムに変わっていることで打面がピック状に変化している。

それを雄一はカナメの刃で受け止めているため、僅かでも支点がずれればアイゼンは雄一に叩きつけられるだろう。

だからヴィータもアイゼンに力を込めつつ、打面の向きを変えていく。

だが、雄一はそれに的確に合わせることで、アイゼンを防いでいく。

当然、ただ出来る芸当ではない。

その正体は、<ブーリ・クリウ>による予見によるものだった。

短い間の予見なら、<ブーリ・クリウ>の精度はほぼ百パーセントといって過言ではない。

後は、その映像と同じ位置に刃を置くだけだ。

といってももちろん言葉ほど簡単ではないが。

 

「ディバイン、バスター!」

「ちっ!?」

「おわっ!?」

 

雄一達は、なのはの撃った魔砲を仰け反ることで避ける。

砲撃は、両者の間を抜けていき、雄一達は距離を取った。

 

「雄一君、大丈夫だった!?」

「撃った奴の台詞じゃないよな!? というか、撃つ前に聞こうな!」

 

一歩間違えれば直撃だった恐怖を今頃になって味わっていた雄一はなのはに怒鳴る。

気炎を吐く雄一に、身をすくませるなのは。

その姿に、我に返った雄一は気まずい思いで頭を掻き毟った。

 

「あ・・・・・・いや、すまない」

「・・・・・・ううん、私もごめんなの」

「それより、何か気がついたことないか?」

「んー・・・・・・気のせいかもしれないけど、ヴィータちゃんの服の色がちょっと違うような」

「服? 騎士装束か?」

 

なのはに言われ、雄一はヴィータの騎士装束に注視する。

確かに、よく見れば雄一の知るものよりも橙が強いような。

 

「確かに・・・・・・ならなのは、――――ってできるか?」

「え? うん、やってみる!」

「だから・・・・・・戦っているときに暢気に喋ってるんじゃねえ!!」

 

作戦を話し合う雄一達にヴィータが激昂する。

アイゼンにカートリッジをロードさせ、大きく振り上げる。

 

「ぶっ潰せ、アイゼン!」

<Explosion! Gigant Form!>

 

振り上げらえたアイゼンが巨大化し、雄一達めがけて振り下ろされる。

迫るハンマーヘッドに、雄一はしかしニヤリと笑った。

 

「早速いただき! 弾け、<ルー・グー>!」

 

途端、雄一達に迫っていたハンマーヘッドがあらぬ方向へと逸れた。

<ルー・グー>の斥力によるものだったが、

 

(上手くいってよかった)

 

対象の大きさゆえに成功するかは五分だったが、賭けは雄一の勝ちだったようだ。

 

「なぁっ!?」

 

突然力の向きを逸らされ、ヴィータがたたらを踏む。

もちろん、ヴィータならばすぐにでもを立ち直ってくるだろう。

だが、いま戦っているのは雄一だけでなく、一瞬でも隙があれば十分だった。

 

「ごめんね、ヴィータちゃん。これで眠ってて!」

 

桃色の魔力をレイジングハートの先端に充填させたなのはがヴィータめがけて構えていた。

 

「く、あぁぁああああ!!」

「ディバイン、バスター!!」

 

なのはの姿に目を見開き叫ぶヴィータめがけて、なのはは砲撃を放つ。

砲撃は突き進んでいき、ヴィータを吞み込んだ。

その様子に、なのはは油断なく見据えながら雄一に問うた。

 

「やった、かな?」

「どうだろうな?」

 

同じく、煙の中を睨む雄一。

だが、その煙が中からの動きで乱れたのを捉えると、

 

「あそこか、カナメ! <クフ・リーン>!」

 

なのはが動くより早く、カナメに足場を用意させて<クフ・リーン>で拘束する。

やがて煙が晴れると、身動きできずにこちらを睨むヴィータの姿があった。

 

「これで、終わりか?」

「そう、みたいだね?」

 

ヴィータを確保し、肩の力を抜く雄一達。

そんな二人に、ヴィータは吼える。

 

「てめえら、戦うなら、きっちり殺しやがれ!」

「ところが、こっちに殺す気は毛頭ないんだよ。そもそも、負けといて要求しようとするな。騎士が廃る」

「ぐっ、うぅ・・・・・・」

 

流石にそう言われてなお言うことはできず大人しくなるヴィータ。

 

「それでヴィータ。お前は一体」

 

ひとまず、区切りがついたと考え、雄一はヴィータに問おうとした。

その瞬間、

 

「あ、あぁああああ!?」

 

突然ヴィータが悲鳴を上げた。

見れば、ヴィータの姿にノイズが走り、末端から崩れていく。

 

「ヴィータちゃん!?」

「くっ!?」

 

驚くなのはに構わず、雄一は制約で拘束が解けることにも構わずヴィータに駆け寄る。

だが、その手が届くより先に、ヴィータは完全に消えてしまった。

 

「そ、そんな・・・・・・」

 

呆然と呟くなのは。

その胸中には、はやてとどう向き合えばいいのか、という不安が埋め尽くしていた。

だが、雄一はヴィータのいた虚空を見据えていた。

 

(妙だな。なんで、ヴィータは消えた? 少なくとも致命傷になるようなものはなかったし、シグナム達が蒐集されて消えたときも服は残っていたはず・・・・・・いや、あれは騎士装束じゃなかったからか? だけど、消えるにしても状況がおかしい・・・・・・まだ何かあると思っておいた方がいいだろうな)

 

それぞれ、異なる理由ながら言葉を発せずにいた二人。

すると、結界を張っていたヴィータがいなくなったからか、結界が消滅し、世界が元通りになる。

 

その途端、

 

『<よかった、やっと繋がった!>』

「っエイミィさん!?」

 

エイミィからの通信が入った。

どうやら、結界にジャミングされていたらしく先ほどから通信できずにいたらしい。

だが、このタイミングできた、ということは、

 

「今何がおきているか、の説明ですか?」

『<その声は雄一君だね! 雄一君も一緒とは、お姉さん驚いちゃうなぁ♪>』

「馬鹿なこと言っていないで、早く説明お願いします」

『<はいはい。それで、いま何が起きているかだけど、今海鳴の各地で小規模の結界が次々に発生しているんだ>』

 

低い声で言う雄一に、空気を呼んでそれ以上ふざけることなく本題に入るエイミィ。

 

「こっちもさっき遭遇しました。それで、あれは一体なんなんです?」

『<うーん・・・・・・私達より、事情に詳しい人がいるから彼女に聞いてくれるかな?>』

「事情に詳しい人? それに、彼女、ですか?」

 

エミニィの言葉に、なのはと顔を見合わせて首を傾げる雄一。

だが、エイミィに代わって通信に出た相手に、むしろ納得するのだった。

 

『<聞こえるか、雄一に高町なのは>』

「その声・・・・・・リインフォースか?」

 

彼女が出るということは、今回の事件は闇の書関係ということ。

だが、それは、

 

「あの事件はまだ終わってなかった、ってことか?」

『<残念だが、そうなる。今、海鳴の各地にある結界は、闇の書の闇の断片、言うなれば「闇の欠片」によるものだ>』

「『闇の欠片』?」

 

リインフォースが口にした名称に、雄一は眉をひそめるのだった。

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