リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第百四十七話 参戦と毒

「『闇の欠片』?」

『「闇の欠片』は砕け散った闇の書の闇の断片だ。かつてこの街で戦った魔導師、守護騎士達の記憶や願いを再生している』

「ど、どういうこと?」

「つまり、さっき戦ったヴィータは過去の映像みたいなもの、ってことだ」

「本当!?」

 

雄一の説明に顔を輝かせるなのは。

さらに、リンディからヴィータと連絡が取れたことを伝えてもらい、なのはは胸を撫で下ろした。

しかし、雄一は険しい顔でリインフォースに問うた。

 

「リインフォース、二つ聞かせてくれ。まず、その欠片達は何を狙って動いているんだ?」

『奴らは闇の書の闇の断片だ。集まり元の形を取り戻すのが目的だろう』

 

元の形。

そう言われて思い出すのは、闇の書の暴走体の姿。

その不安を察したように、リインフォースは首を横に振った。

 

『いや、あれはお前達のおかげで、形を得る足場を失っているはずだ。おそらく、集まったとしても、形を成さない可能性もある』

「だけど、それは逆を言えば暴走体の復活もあるってことだ。それどころか、もっと厄介なものが現れるんじゃないか?」

『――っ、それは・・・・・・』

「それに、その考え。はやてにはどういうつもりだ?」

『・・・・・・っ」

 

雄一の指摘にリインフォースは一瞬顔を強張らせる。

彼女も同じく、その可能性は考えていたらしい。

そして、自分だけで何とかしようとしたのだろう。

だが、ふと雄一は疑問に思った。

彼女が黙っていこうとするのを、はやてが見過ごすだろうか?

いや、彼女のことだからむしろ、

 

「リインフォース・・・・・・はやては今どうしている?」

『あ、主殿は、その・・・・・・』

「じっとしている、はずもないだろうな」

『・・・・・・』

 

すっと目を逸らすリインフォース。

おそらく、話を聞いてリインフォースに負担をかけまいと飛び出して行った、か。

雄一は、痛む頭を押さえた。

 

(飛行魔法を優先して教えたのは間違いだったかもしれないな)

 

闇の書の影響から解かれたとはいえ、まだ足の麻痺は残るはやてを慮り、飛行魔法を教えたのだが、それが返ってこういう自体での移動法を与えてしまった気がする。

雄一は、リインフォースの様子に溜息をつくと諭すように言った。

 

「あのな。いいか、お前もはやても、解放されたばかりなんだぞ。それなのに、いきなりそんな大立ち回りをするつもりだったのか?」

『だ、だがこれは闇の書が遺した問題だ。私が解決しなくては』

「それこそ何をいまさら言っている。散々関わった末に今があるんだろうが。そもそも、今のお前にそんな無茶はできないだろうが」

『うぅ・・・・・・』

 

そう、雄一の言うように、今のリインフォースは弱体化をしている。

彼女は融合機だが、処置の影響かはやてとの繋がりが切れており、融合相手を失っている状態だった。

闇の書が蒐集した技能の行使は可能だが、融合によるブーストはできない。

守護騎士達と戦闘力は変わらないのだ。

それほど力が落ちた状態に一朝一夕で慣れるはずはない。

 

「強引な処置の影響が出ないとも知れないんだ。処置した本人としては、二人とも大人しくしていろ、というところだぞ」

『・・・・・・言いたいことは分かるが、それはできない。さっきも言ったようにこれは闇の書の問題だ』

「ゆ、雄一君。こんなに言っているんだから聞いてあげても――」

 

雄一の静止に、決意の篭った様子で答えるリインフォース。

その様子に、横で話を聞いていたなのはが助け舟を出そうとし、

 

だろうな(・・・・)。それに、もう飛び出した後なんだろ。それなら、協力してすぐに解決した方がマシだ」

「いいんじゃ、って、雄一君! 本気なの!?」

「ああ」

 

驚くなのはに、頷く雄一。

先ほど戦うことに反対していたにしてはあっさりと掌を返した雄一だったが、もちろん訳はある。

 

「正直、個体の戦闘能力なら、シグナム達みたいにリインフォースは高いからな。そこには期待できるし」

「それは・・・・・・そうだけど」

 

彼女自身でないとはいえ闇の書の意思と戦ったなのはは渋々納得した。

一応納得を受けたことを見て取った雄一は、もう一つの件を問う。

 

「それより、こっちの方が問題だ。『闇の欠片』は海鳴で戦った魔導師や守護騎士の記憶や願いを再生するんだよな? だったら、契約者はどうなるんだ?」

「『!?』」

 

雄一の問いに、あ、と固まるなのは達。

もし、雄一の欠片に契約者の能力が備わっていたら?

もちろんなのは達が負けるとは思わない。

だが、非殺生設定のない契約相手に戦えるのか?

 

「結界に踏み込まなきゃ、相手が分からない。だが、踏み込んだら出られない。その点をどうする?」

「それは・・・・・・」

『む・・・・・・』

 

雄一の疑問に答えを返せず、口ごもる二人。

とはいえ、雄一とて、この問題に明確な対応があるわけではない。

より確実さを求めるなら、複数で結界に踏み込み、『欠片』を相手にすればいい。

だが、

 

『<三人とも! 話し合うのはいいけど、あまり悠長にしている時間はないよ! 結界が次々と発生しているんだから!>』

 

エイミィの通信に、その思惑は潰えた。

複数で動けば、それだけ効率は落ちる。

やはり手分けする必要がありそうだ。

 

「雄一君、急ごう!」

「あ、なのは!?」

 

なのはは、エイミィの通信に血相を変えて飛び出していく。

その背に手を伸ばすが、届かず雄一は手を下ろした。

 

『・・・・・・それでどうするのだ?』

「とりあえず、リインフォースははやてと合流してくれ」

 

分かった、と言ってリインフォースは通信を切った。

切れた通信に、雄一は新たな厄介事に眉間を押さえながら、なのはとは別の方へと飛んだ。

 

 

 

 

 

 

(やっぱり厄介事だな)

 

雄一は破れた結界から除く夜空を見上げて、苛立ちを紛らわせるために溜め息をついた。

現れる『闇の欠片』は必ずしも、善性の存在ではない。

かつてのシグナム達のように積極的に襲ってくる個体もいる。

顔見知りと戦うというのはなかなかに堪えている。

だが、いま雄一が苛立っているのは、それだけではない。

先ほど雄一が対峙した『欠片』が問題だった。

雄一が対峙したのははやての『欠片』、それもリーゼ姉妹によってシグナム達を蒐集されたときの、絶望に満ちたはやてだったのだ。

彼女が戦う前に零した言葉が耳について離れない。

 

『なんで雄一君はシグナム達を守ってくれへんだん? 約束したやん・・・・・・せやのに・・・・・・信じとったのに・・・・・・』

(厄介な・・・・・・もっとも、思ったよりもダメージを受けている自分にも驚きだが)

『聞こえるかしら?』

 

辟易していた雄一に通信が入った。

思わぬ相手に、雄一は驚いた。

 

「プレシアさん!? 通信なんてどうしたんですか?」

『貴方達が今追っている件、それについて分かったことがあるの』

「分かったこと、ですか?」

 

雄一の確認に、頷くプレシア。

手元に資料を用意しているのか、紙を捲る音をさせながら、プレシアが説明する。

 

『どうやら、各地の結界の中に、特に強いものがあるようなの』

「強い? 結界が強力って事ですか?」

『いいえ。「欠片」が特に大きいって事でしょうね。おそらくそれが、今回の事件の原因よ』

 

原因と聞いて、雄一の目が細まる。

 

「場所は分かりますか?」

『特に大きいのは四つあるみたいね。ただ、結界が移動しているから何ともいえないけど』

「移動、ですか?」

『この大きい「欠片」は他の「欠片」が集まってできたものじゃないかしら?』

 

プレシアの報告に、雄一は考え込んだ。

『欠片』の集合体。

リインフォースが推測した『欠片』の目的を考えれば、強力なものであることは推測できる。

なら、早々にそいつらを討ち取ったほうがいいだろう。

 

「プレシアさん、そいつらの居場所って分かりますか?」

『・・・・・・ごめんなさい。実はさっき反応をロストしちゃったの。もう一度調べなおす必要があるから、もうしばらく』

 

待ってて、と言おうとしたのだろうプレシアの言葉が唐突に途切れた。

何事かと思う間に、周囲の光景が変わっていく。

星の浮かぶ夜空が、雪の舞う空へと変わった。

そして、雄一は結界の内に誰かがいることに気がついた。

見覚えのあるバリアジャケットに斧槍型のデバイス。

フェイトかと思ったが、その髪が金ではなく水色であることに気がつき、雄一は顔を険しくした。

向こうも、雄一に気がつき、顔をしかめながら呟いた。

 

「君は・・・・・・何だ? その混じりあったような在り方・・・・・・ひどく、不快だ」

「酷い言われ様だな、色違い」

 

両者、第一声は酷く毒の篭ったものだった。

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