リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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難産でした……まさか前の更新から一週間も空いてしまうなんて。
では、本編どうぞ!


第百四十八話 苦戦と油断

「お前も、闇の欠片ってやつか?」

「僕をあんな奴らと一緒にしないでほしいね。僕は砕けぬ王を目指す力のマテリアル、雷刃の襲撃者(マテリアル‐L)だ!」

 

マテリアル。

新たに出てきた単語を記憶に留めつつ、雄一は今の言葉を読み解いていく。

 

(今の言い様からして、こいつは欠片達より、上位の存在みたいだな・・・・・・こいつが今回の騒動の原因、か?)

――おそらく、そうだろうな――

『<私も同じ意見じゃな。あやつの気配は、欠片達よりも遥かに強い>』

『<彼女を解析したところ、彼女は複数の欠片が集まって発生した存在、いわゆる凝縮存在だと思う>』

 

雄一の思考に割り込む様にして同意する<クフ・リーン>とカナメ、そして解析結果を伝えるエルミナ。

その解析に、疑問が深まるのを感じ、エルミナに問うた。

 

「<その凝縮存在って?>」

『<言葉通りだよ。先ほどから戦ってきた欠片を複数、何かを核にして集めて生まれ出た者だだろう>』

「――――だから、って!? 聞いてるの!?」

 

念話に集中しすぎていて、念話の間も雄一に話していたらしいマテリアルが怒る。

それに謝りながら、原因であろう相手を発見したことに、雄一は事態が進んだことに、僅かに笑みを浮かべた。

だが、分かったのは、良いことだけでない。

「力の」というからには、他の種類もいる、と解釈できる。

幸い、言葉が通じるのならより詳しいことを聞き出そうと、雄一は問いを重ねる。

 

「それで、その力のマテリアルは何のためにこの騒動を起こしたんだ?」

「騒動?」

 

だが、雷刃の襲撃者は胡乱気に首を傾げる。

その様子はまるで、

 

「自分でも分かっていないっていうのか?」

「分からない・・・・・・あの暖かな闇から引き離されて・・・・・・僕達は何故ここにいるんだろう?」

 

雷刃の襲撃者の言葉は雄一の予想通りだった。

もっとも、暖かな闇、が何を指しているのかは理解できなかったが。

彼女達にも何らかの事情があるのか、と雄一は会話が通じる余地が見えたことに僅かにだが警戒を緩めた。

だが、次第に雷刃の襲撃者の言葉が熱を帯びていく。

 

「そうだ、僕は帰るんだ・・・・・・あの闇の中へ、砕け得ぬ闇の力を得て!」

「くっ!」

 

危険を感じた雄一は考えるより先に、カナメを横にして頭上を守るように構えた。

瞬間、雷刃の襲撃者が振り下ろした、フェイトと同じ雷の刃がカナメとぶつかり火花を散らした。

 

「ぐ、あ!」

「だから、その邪魔となるだろう、君を殺して僕は先へ行く! 我が名は雷光、閃の太刀にて君を倒す者だ! この名を抱いて、消えろ!」

 

受け止めた一撃の重さに呻く雄一に、雷刃の襲撃者は叫ぶ。

 

(やり難い!?)

 

その叫びを受けながら、雄一は内心舌打つ。

雷刃の襲撃者の一撃は、冷静であれば対処はできる範囲にある。

では、雄一が何故あっさり接近を許したのか。

それは、雷刃の襲撃者の姿にあった。

もちろん、直前まで警戒を落としていたこともある。

だが、雷刃の襲撃者は、髪の色が異なるなど、微妙な差異を除けば、バリアジャケットやデバイスまでフェイトの姿にそっくりだ。

そのため、フェイトを相手取る要領で備えていたのだが、実際の雷刃の襲撃者の一撃はフェイトほど早くないが重いもの。

そのため、タイミングを外されてしまったことが災いした。

だが、雄一も負けず、刃に沿って力を流す。

 

「うぁっ?」

「こ、んの!」

 

力を流されてたたらを踏む雷刃の襲撃者めがけて、雄一は蹴りを放つ。

 

「うわ!?」

 

蹴りを雷刃の襲撃者はデバイスの柄で受け止めるが、蹴りの威力に吹き飛ばされる。

その隙を逃さず、雄一は追撃を加える。

 

「撃ち抜け、<ルー・グー>!」

 

眼下ビルの外壁にあった看板を強引に引き剥がし、雷刃の襲撃者へと撃ち出す。

<ルー・グー>で撃ち出された看板が一直線に雷刃の襲撃者へと向かう。

だが、当たれば無事では済まない攻撃に、雷刃の襲撃者は獰猛な笑みを浮かべて、デバイスを振り上げた。

 

「そんなもの、僕には効かない! 唸れ、超刀バルニフィカス!」

 

バルニフィカスというらしい、バルディッシュとそっくりのデバイスからカートリッジをロードさせると、バルニフィカスは大剣へと姿を変えた。

 

「いっくよ! 光翼斬!」

 

姿を変えたバルニフィカスを、雷刃の襲撃者は迫る看板めがけて勢いよく降り下ろした。

降り下ろされたバルニフィカスの光刃は看板に食い込むと僅かな抵抗もなく両断して見せた。

 

「どうだ、僕の力は!」

 

得意気に、雷刃の襲撃者は雄一の方を振り返り、

 

「もう一丁!」

 

瞳を灰色に変えた雄一が雷刃の襲撃者を睨みかえす。

雄一の視界に映る物が次々に灰に変わっていく。

 

「げっ!? これは不味い!」

 

脅威を悟ったのだろう、雷刃の襲撃者は雄一の視界から外れようと縦横に飛び回る。

だが、間合いが開いていることも災いし、雄一は僅かな動きでマテリアルを視界に収め続ける。

 

「~~! だったら!」

 

雄一の視界から逃れられないと判断した雷刃の襲撃者はすぐに方針を切り替え、魔力を全開にして雄一めがけて突っ込んでいく。

 

「ちぃ!?」

 

近づく雷刃の襲撃者の姿に、雄一は再度舌打った。

<バーラ・ルー>は魔力量によってはレジストされることは雄一も察しがついていた。

それでも、フェイトクラスの防御力ならば、と思っていたのだが。

 

(これは、宛てが外れたな!)

「隙あり! 電刃衝!」

 

不発に苦い表情を隠しきれず顔を歪める雄一に、雷刃の襲撃者はスフィアを生み出す。

スフィアは鋭く形を変え、雄一めがけて奔った。

それは、フェイトのフォトンランサーと似通っている。

迫る電刃衝を、しかし雄一は障壁を張って受け止める。

だが、込められていた魔力の強さに、雄一は顔をしかめた。

 

(フェイトよりも重い! フェイトと同じスピードファイターだと思ったけど、やっぱりこいつはパワーファイターか? )

 

雄一は、一撃の重さに雷刃の襲撃者をフェイトとは違う魔導師と判断した。

ならば、と方針を遠距離から近距離へと切り替える。

<バーラ・ルー>から<デル・ドーレ>に切り替えると、拳を握り締め一気に距離を詰める。

近づく雄一に雷刃の襲撃者は、きょとんとするが、すぐに笑みを浮かべると剣状のバルニフィカスを引き提げ同じく間合いを詰める。

両者が距離を詰めたことで一気に間合いは狭まり、

 

「はぁあああ!!」

 

先に一撃を放ったのは得物の違いで雷刃の襲撃者。

飛ぶ勢いをそのまま使うように、バルニフィカスで斬り上げる。

 

「おおおお!」

 

だが、雄一は迫る刃に僅かに視線を向けて、頓着することなく拳を振るう。

刃は雄一の身体に突き刺さり電気を放つが、代わりに雄一の拳も雷刃の襲撃者を捉えた。

 

「つぅ!?」

「いっ、たーーい!? な、なんでそんな状態なのに、動けるんだよ!?」

 

体の中で弾けた電流に顔をしかめる雄一に対し、雷刃の襲撃者は拳に打たれた肩を押えつつ、信じられないものを見るように刃の刺さった場所を睨んだ。

だが、その目は驚きに染まった。

 

「な、なんだよ、それ!?」

 

雷刃の襲撃者が驚く目の前で、雄一の傷が癒える。

その驚きが解けぬ内に、雄一は間合いを詰めると雷刃の襲撃者に連撃を叩き込む。

ジャブ、フック、ブロー、アッパー。

乱打が次々と雷刃の襲撃者に向かう。

雷刃の襲撃者も辛うじてバルニフィカスと障壁で受け止めるがその表情は険しい。

 

「ああもう、鬱陶しいな!」

「ふんっ!」

 

苛立たしげに振るわれたバルニフィカスを柄の部分を殴りつけ、止める雄一。

だが、その瞬間雷刃の襲撃者の口が弧を描いた。

その表情に、雄一の背筋が粟立つと同時に、カナメ達が鋭く叫んだ。

 

「っ!?」

『下がれ!』

『マスター!?』

 

だが、その警告より先に、バルニフィカスが姿を変えた。

刃が消失し、刃の芯になっていた本体が変形し鎌に変わる。

そして、魔力でできた刃が噴き出し、雄一の頭部めがけて刃を伸ばした。

 

「とった!」

 

勝利を確信した雷刃の襲撃者は言う。

突然刃が消失した雄一は、身体が前に出てしまっている。

せめて僅かでも首を動かして致命傷だけでも避けようとした瞬間、

 

鋭い音を立てて、割り込んだ金色の刃が鎌を受け止めた。

 

「っ!?」

 

何が起きたのか、理解するより早く、距離を取る。

窮地を脱した、と判断した雄一は助けてくれた相手を振り返った。

そこには、

 

「雄一、大丈夫だった!?」

 

駆けつけてくれたのだろう、バリアジャケットを大きく削るソニックフォームの姿のフェイトがいた。

 

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