リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第百四十九話 激突と失念

「フェイト!? すまん、助かった!」

「ううん。大丈」

「えいっ!」

 

雄一の礼にフェイトが応えようとしたとき、鍔迫っていた雷刃の襲撃者はバルニフィカスを強く押し込んだ。

バルディッシュにかかった力で抵抗を察したフェイトも負けじとバルディッシュを握る手に力を込めて押し返す。

だが、

 

「っ、あれ?」

 

瞬間、バルディッシュに掛かっていた負荷が消え、フェイトは虚を衝かれた。

フェイトが押し返した瞬間、雷刃の襲撃者はバルニフィカスを引き、フェイトが押した力に逆らわず後方へと大きく飛び下がったのだ。

距離をとり、中空でふわりと降りた雷刃の襲撃者は、割り入ったフェイトに目を向けると、おや、と目を瞬かせた。

 

「なんだ? 誰かと思ったら、オリジナルじゃないか?」

「え・・・・・・あれ? 私、じゃない?」

 

目を瞬かせる雷刃の襲撃者に、ようやく相手の姿の仔細を見て差異に気がつき眉を寄せるフェイト。

フェイトの様子に、雄一は説明をしようかと考えたが、それよりも気になった疑問の解消を図った。

 

「オリジナル?」

「そうだよ。僕“達”の姿や魔法は君“達”のリンカーコアを基にして、創り出したものだからね」

「リンカーコア、だと?」

 

リンカーコア。

その言葉に思い出されるのは、闇の書事件。

確かに、その最中フェイトも蒐集を受けている。

だとしたら、

 

「・・・・・・さっき、『君“達”』って言ったよな? それって」

「駄目だよ」

 

思い当たった仮説を、雄一は雷刃の襲撃者に叩きつけ問い質そうとする。

だが、それを遮り雷刃の襲撃者は静かに首を横に振った。

 

「僕が答えてあげるのはここまで、というかむしろ喋りすぎちゃったくらいなんだよ? ここから先は」

 

雷刃の襲撃者そう言いニヤリと笑うと、バルニフィカスを上段に構えた。

 

「知りたければ、この僕を倒してからにしろ!」

「・・・・・・フェイトを基にしている割には、戦闘狂だな、おい」

「そ、そうかな?」

 

啖呵を切る雷刃の襲撃者に、呆れたような雄一の呟きに、フェイトはスイと目を逸らした。

 

(そういえば、クロノがフェイトに模擬戦を申し込まれる、ってぼやいてたっけ)

 

ふと、クロノのぼやきを思い出す雄一。

なんでも、度々申し込まれているらしく、どんどん成長するフェイトに危ないところまで追い込まれることが増えて来ているらしい。

 

(てことは・・・・・・あながち似ていないって事もないのか?)

「何してるんだよ! 早く、かかってこーい!」

 

思わず、雄一がフェイトを半目で見つめていると、痺れを切らした雷刃の襲撃者が地団太を踏む。

 

「それで、雄一はどうするの?」

「どうするって?」

「私はあの子と戦うよ。けど、雄一はどうするの? 何か気がついたことがあったり、気がかりがあるなら、私に任せてくれても」

「いや、俺はフェイトと戦うよ」

 

フェイトの言葉を遮る雄一。

もちろん気がかりはある。

もし、マテリアルが雄一の予想通りの存在なら、マテリアルの脅威は跳ね上がる。

だが、それならなのはやはやてを信じて、フェイトと二人がかりで雷刃の襲撃者を排除してから向かった方が背後を気にせず戦える。

その考えをフェイトに伝えると、フェイトも納得したのか雄一の横に並び、バルディッシュを構えた。

 

「ふぅん? 二人がかりで来るかい? それなら」

 

本気でいくよ。

 

その言葉と同時に、雷刃の襲撃者の姿がかき消えた。

 

「な!?」

 

姿を捉えきれず、姿を見失ってしまった雄一めがけて一息で背後にまわった雷刃の襲撃者がバルニフィカスを振り下ろし、

 

「だから、やらせない!」

 

同じく、高速で移動したフェイトが受け止めた。

受け止めると同時に、

 

「ランサー!」

<Photon Lancer>

 

バルディッシュを鎌から杖に変えて零距離でフォトンランサーを放つ。

だが、雷刃の襲撃者は素早く身を翻し、フォトンランサーの斜線から逃れた。

 

「っとっとっと!? 今のは危なかったよ!」

「厄介だね」

 

笑みを浮かべる雷刃の襲撃者に対して、フェイトは僅かに顔をしかめる。

雷刃の襲撃者の挙動は、ソニックフォームになっているフェイトのものに比べて遅いため、フェイトは捉えることができる。

それに、攻撃が大振りで無駄があるためかわすことはたやすい。

だが、空気を切り裂く音は、フェイトより重く速い。

それはすなわち、フェイトよりも膂力が強いということ。

 

(一撃入れられたら、落とされるかも・・・・・・)

 

バリアジャケットに視線を落とすと、フェイトは警戒を強める。

ソニックフォームは通常のバリアジャケットに比べて防御力が低い。

バリアジャケットを展開する魔力を削り推進に使っているため、軽量化も相まって通常以上の速さを手にすることができるのだが、防御を捨てているため、パワーとスピードの両方を持つ相手は相性が悪いといえる。

雷刃の襲撃者はそういう相手だ。

だから、フェイトの勝機は、

 

(あの子の目が、ソニックフォームの速さになれるまで)

 

短期決戦で決めなければならない。

決意とともに、バルディッシュを握る力を強め、一気に距離を詰めていく。

そのままフェイトはバルディッシュを雷刃の襲撃者めがけて振り抜く。

その速度に、表情を改めて紙一重で避ける雷刃の襲撃者。

だが、フェイトも負けずと素早く二の太刀を放つがそれも避けられる。

このままでは時間がかかりすぎる、そうフェイトが危惧したそのとき、

 

『<フェイト、聞こえるか?>』

「<雄一!?>」

 

突然、雄一が念話を繋いだ。

突然の念話に僅かに生まれた隙をついて、雷刃の襲撃者に一気に間合いを開けられるが、フェイトは追わず雄一の念話に注意を傾ける。

 

「<どうしたの、雄一?>」

『<作戦がある。あいつの足を止められれば勝てるか?>』

 

思わぬ言葉に、雄一の姿を探すフェイト。

だが、彼の姿は見つからなかった。

雄一の念話は続く。

 

『<できる前提で進めるが、この後奴の足を止める。だから、>』

 

言葉が一瞬途切れ、フェイトはさらに注意を傾けて聞き逃さないように、そちらへと注意を傾けてしまった。

その姿を隙と見て、雷刃の襲撃者がフェイトに飛びかかりバルニフィカスで薙ぎ払う。

 

「貰った!」

「しまっ!?」

 

反射的に避けようとするフェイト。

だが、

 

「<動くんじゃないぞ>」

 

雄一の念話に、辛うじて身体を押さえ込んだ。

それと同時に、雷刃の襲撃者の体が縫い付けられたように空中で止まった。

 

「「なっ!?」」

 

 

 

 

 

時は少し戻り。

フェイト達の戦いに、介入する方法を雄一は必死に探していた。

 

(どうする!? あの速さで動かれたら、下手な攻撃を撃ったらフェイトに当たるかもしれない! ああいう速さ中心の相手なら、囲い込むような攻撃が定石だが、うってつけの鋼糸は引っ掛けるものがないから広げられない。<ダー・ナーン>で作った植物で囲むか? いや、この高さまで伸ばせるか確証がない!)

――おい・・・・・・――

(<キー・アーン>の広域爆撃・・・・・・いや、これもフェイトを巻き込む危険が高い!? <ルー・グー>も相手を視認しなければならないし・・・・・・)

――おい――

(ああ、くそ! どうすればいいんだよ! 何かいい手は)

――おい、聞こえてんのか! 相棒!――

「っ、<クフ・リーン>?」

 

いつの間にか没入していた雄一は頭に響いた<クフ・リーン>の声に我に返った。

苛立たしげな<クフ・リーン>の声が続く。

 

――お前、俺のこと本気で忘れてないか!?――

「・・・・・・あ」

 

<クフ・リーン>に言われ、思わず雄一はポカンと口を開けてしまった。

たしかに、<クフ・リーン>なら拘束にはもってこいだ。

さらに、既に日は沈み制約も緩んでいる。

考えれば考えるほど<クフ・リーン>がこの状況を打開するのに丁度良く思えてきた。

ただ、雄一としても言い分はある。

このところ、<クフ・リーン>を使う機会がなかなか無かったのだ。

プレシア事件以後は、ペインとして活動しておりそちらの精霊を中心とした戦法を取っていたのだ。

威力のありすぎる<クフ・リーン>を使うことも無く、すっかり有用性を忘れていたのだ。

だが、

 

(けど、おかげで作戦も立てられた)

――・・・・・・なるほどな。けど、使わなくていいのか(・・・・・・・・・)?――

(今はいい。ここはフェイトに任せよう)

 

<クフ・リーン>の問いに首を横に振って見せる雄一。

そして、雄一はフェイトに念話を繋いだ。

 

「<フェイト、聞こえるか?>」

『雄一!?』

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