リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第百五十二話 撤退と決意

「混ざり者ね・・・・・・さっきも言われたけど、何だそれ? 俺は合成獣でも改造人間でもないんだが?」

「知れたこと。貴様の内におる者共のことよ」

 

鼻を鳴らすマテリアルの言葉に、雄一は僅かに眉を動かした。

今のマテリアルの言葉通りなら、

 

(こいつ、精霊を知っている?)

 

たしかに雄一は、本来一柱だけであるはずの契約を複数の精霊と結んだ状態だ。

ならば、雄一を指して混ざり者というのも頷ける。

だが、カナメがあっさりと冷水をかけた。

 

「<落ち着かんか。あやつらは、お主のリンカーコアから記憶を読み取っておるだろうが>」

「<ああ・・・・・・それもそうか>」

 

渋い顔になりつつ頷く雄一。

そんな雄一に、はやては傍に飛ぶと礼を言った。

 

「おおきにな、雄君! せやけど、雄君は怪我してへんか?」

「ああ、大丈夫だ」

「ホンマなん? こことか、こことか」

 

言いながら、はやては雄一の体に手を伸ばすと、まさぐり始めた。

その動きに、雄一は首を激しく振りながら、大きく飛び下がった。

 

「だ、大丈夫! 大丈夫だから!」

「ホントかいな? 嘘やったら、もっと激しくすんで?」

「やめい!」

 

ワキワキと手を動かすはやてに、ツッコミつつ雄一はため息をついた。

だが、雄一の言うとおり、雄一に怪我はない。

その理由をはやてに説明しようとした雄一を遮るように、銀色の砲撃が走った。

意識外の攻撃に体を固くした雄一達だったが、砲撃の狙いは雄一達ではなかった。

砲撃が狙ったのは、先ほど雄一が盾に使った瓦礫。

砲撃は瓦礫にぶち当たると、抵抗なく消し飛ばした。

その結果に、マテリアルは眉を寄せた。

 

「妙だな・・・・・・我が込めた魔力は先ほどと変わらぬ。なのに、先ほどあの石くれは我が一撃を止めて見せた。貴様、何をした?」

「答えると思うか?」

 

マテリアルの問いを、雄一は鼻で笑い飛ばす。

ただ、雄一がしたことは単純だ。

<デル・ドーレ>で抉りとった瓦礫を、<ルー・グー>で両者の間に割り込ませ、<クフ・リーン>で括って盾としただけだ。

<クフ・リーン>で括ったものは破壊できない盾となる。

それは魔法を相手にしても変わらない。

しかし、その反応に、マテリアルは怒気を滲ませた。

 

「王の問いを拒むか・・・・・・ならば、よい。この闇統べる王の一撃をもって、速やかに消えよ塵芥!」

 

殺意を篭めて振るわれた杖に合わせ、展開された魔法陣が多数のスフィアを形成し雄一めがけて魔力弾を連射しだした。

だが、雄一は表情を変えることなく掌を突き出した。

マテリアル――闇統べる王の攻撃は、雄一が知る限り最多の魔力弾を連射して見せた、フェイトのファランクスシフトには到底及ぶものじゃない。

なら、対応できないものじゃない。

 

「飛べ、<キー・アーン>!」

 

掌から、炎でできた鳥を多数生みだし、魔力弾を迎撃する。

鳥は魔力弾にぶつかる寸前膨張し、破裂する。

さて、例えば、相手めがけて魔力が続く限り魔力弾を撃ち続けるスフィアを用いたならば、相手が動かずに迎撃に徹するならば、弾道はどうなるだろうか。

答えは、変わらない軌道で飛んでくる。

次々と飛び込む魔力弾を、<キー・アーン>の爆風が呑み込んでいった。

だが、その爆風も闇統べる王の元へ届く頃には勢いを失ってしまうだろう。

それでも、雄一は肌に感じる風に、上手くいったと笑みを浮かべた。

途端、風によって黒煙が両者を遮り、闇統べる王は手で顔を庇いつつ顔をしかめた。

 

「くっ、おのれ!?」

 

煙に紛れて奇襲を仕掛けられることを警戒し、闇統べる王は障壁を展開すると、煙を注意深く睨んだ。

僅かでも動きがあれば、すぐに攻撃を叩き込むつもりだった。

だが、いつまで経っても煙に動きはない。

 

「・・・・・・? ・・・・・・!? ま、まさか!?」

 

 

訝しげに煙を見ていた闇統べる王は表情を変えると、魔法で風を起こし煙を吹き飛ばした。

煙はたちどころに晴れた。

だが、その向こうにあるはずの雄一達の姿は忽然となくなっていた。

 

「~~~~っ! お、おのれ塵芥どもがっ!」

 

 

 

 

「・・・・・・ふぅ、とりあえず撒いたな」

 

雄一は追撃がないことに胸を撫で下ろすと、背にしたビルに身体を預けた。

爆煙を目晦ましにした雄一達は、逃げ手は距離を稼ぐという思考の裏をかくように、手近なビルの影に飛び込んだ。

さらに、念入りに結界を組んだため、そうそう見つかる心配はないだろう。

 

「せやけど、雄君、私ら逃げてしまってよかったん? あの子は倒さなあかんのとちゃうん?」

「あー・・・・・・まぁ、そうなんだけどな」

 

はやての問いに、雄一は頭を掻いて言葉を濁した。

正直に言えば、闇統べる王を倒すだけならば、雄一が<クフ・リーン>で捻ればいい。

<ルー・グー>で魔弾を撃ち込んでもいいだろう。

だが、今回はそういうわけにもいかない。

なにしろ、今回の事件についてや闇の欠片の出現理由などをマテリアルに問いたださなくてはならないのだ。

そういう意味では、はやてやリインフォースに任せなければならないのだが、

 

「さっきのを見ていた限り、厳しいだろうな」

「しかし榊雄一。あれは主と同じ魔法が使えると思っていいだろう。隠れていられるのは短い時間のはずだ」

「ん? ああ、だから急いで作戦をまとめる必要がある」

 

リインフォースの懸念に我に返った雄一は、真剣な表情を作ると頷いた。

 

「マテリアル、あれは闇統べる王っていうらしいけどあいつらは、オリジナルが使える魔法は使えるらしい。しかも、こっちは情報を得るために生け捕りにしなきゃいけない」

「それなら、雄君の能力でいけるやろ?」

 

契約の異能の汎用さを知るはやての意見に、しかし雄一は苦い顔で首を横に振った。

 

「そうでもないんだ。例えば、<クフ・リーン>で影を括って拘束したとする」

「うん」

「けど、拘束された状況でも魔法は使える。こっちが的になりかねないんだ」

「あかんやん! せやったらバインドならオッケーやな! それなら私らに任せて」

「待った。はやては下がっていてくれ」

 

勢い込むはやてを遮る雄一。

何を言われたのか分からず、きょとんとするはやてに、もう一度雄一は言った。

 

「はやては下がっていてくれ。奴は俺が押さえるから、リインフォースが捕まえてくれ」

「ちょ、なんでや!? 私かて戦える!」

「そうかもしれないけど、あれは、まだはやてにやらせるには不安がある。今回は大人しく待ってて」

「嫌や!」

 

雄一の提案を、聞く耳持たぬ、とばかりに遮るはやて。

その様子に、言葉を失う雄一。

二人の様子にリインフォースがはやてを窘めようとした。

 

「主はやて。ここは榊雄一の言うとおりにした方がよろしいかと。貴女はまだ成長を始めたばかりなのですよ」

「絶対聞かへん! リインフォースを馬鹿にされたんや! 家族として引くわけにはいかんねん!」

「・・・・・・っ」

「あ、主?」

 

はやての気迫に、目を丸くする二人。

二人の様子に、落ち着きを取り戻したはやても語調を和らげた。

 

「リインフォースも雄君も、私の事を心配してくれているのも判る。せやけど、ここで下がったら夜天の主として胸を張れへん。家族を馬鹿にされて引き下がるような人間に私はなりたくないんよ」

「我が主・・・・・・」

 

はやての決意に、目を潤ませるリインフォース。

リインフォースの様子に、彼女の許しは得られた、と思ったはやては残る雄一を見つめた。

雄一もはやてを見つめていたため、視線がぶつかり合った。

雄一はしばらくはやてを見つめていたが、はやてが視線を逸らさずにいることに、はやての決意が硬いことを悟ると、にっと笑みを浮かべた。

雄一が笑みを浮かべたことに、はやては喜色を浮かべ、

 

駄目だ(・・・)

 

雄一は、首を横に振った。

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