リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第十四話 話し合いの続きと料理

「それじゃ、二つ目だ。今度はこっちから。『どうやって、フェイトの名前を知ったか』。これは契約者の異能の一つを使った」

「異能・・・・・・ですか?」

「そ。精霊<ハヌ・マーン>。異能は『相手の心を読むこと』」

「!? なるほど、それで、ですか」

「ただし、たぶんそっちが考えているほど物騒なものじゃない」

 

眼を鋭くする二人をまあまあと宥める。

 

「<ハヌ・マーン>の能力は正しくは思考を読むんだ。つまり、全てが見えるわけじゃないというかそのときの思考しか読めん」

「そう、なんですか?」

 

安堵したらしいフェイトに、手で次はそっちの番、と促す。

 

「えっと・・・・・・この街に害を及ぼすか、ですけど、積極的に起こす気はありません」

「・・・・・・わかった。その回答で十分だ。ただし、街中で騒動が起きるようなら結界を張ってくれ。そうすれば街は無事なんだろ?」

「わかりました。そうします」

 

コクリ、と頷くフェイト。

さて、お互い最後の質問だが、先にこっちから切らせてもらう。

 

「で、最後の質問だが。俺がジュエルシードを集めるのは、とっととこの世界から無くすため」

「え? 集めて何かをしようとかはないのかい?」

「あれがマトモな形で願いをかなえる代物じゃないことは、調べてみて分かったからな。俺は海鳴を守る契約をした身として、騒動の種は潰しておきたいんだ」

「契約・・・・・・ですか?」

「そうだ。契約者にもルールは存在する。それは契約を違えない事。だから、俺はこの街を守ることに全力を尽くす」

「その契約というのは誰が依頼したかは聞いても?」

「守秘義務があるからな。答えられない」

「そうですか」

 

分かっていたのだろうが僅かに肩を落とすフェイトに、俺は一歩踏み込む。

 

「今度はそっちだ。『君の母親は何故フェイトを使ってジュエルシードを集めている』?」

「・・・・・・それは」

「あたし達も知らないんだ」

「アルフ!?」

 

口ごもり目を逸らすフェイトに代わって、アルフが答えた。

フェイトが慌てて振り返るが、アルフは首を振って続ける。

 

「あの鬼婆は前からフェイトに辛く当たっていたんだ。子育てはもちろん教育までほとんどリニスっていう自分の使い魔に任せっきりで何かを研究しているみたいだった。けれどちょっと前かな。そいつに『ジュエルシードを持って来い』っていきなり言われたんだ。何に使うのかなんてこっちが聞きたいくらいだよ!?」

「アルフ! 母さんのこと、悪く言わないで!」

「だけど、フェイト!」

「私の事は大丈夫だから・・・・・・」

 

二人のやり取りから関係を推察すると、フェイトは母親に振り向いてもらうためにジュエルシードを集めていて、アルフはその母親に隔意を持つ何かがあった、ってところか?

肝心の目的は明らかにならなかったが、まあパイプを繋げただけ良しとしておくべきか?

などと考えているとき、ふと鉄臭い匂いが鼻についた。

<デル・ドーレ>で出所を辿ると、フェイトから漂ってくる。

 

「(これは・・・・・・)なあ、フェイト」

「はい? なんですか?」

「その・・・・・・!? いや、食事はどうしているんだ?」

「え? えっと、これとか、出来合いのものです」

 

突然の質問に困惑しながら、そう言って差し出されたものはカロリーメイトの箱。

確かに栄養は摂れるだろうが、少なくとも子供が主食にするものじゃない。

 

「フェイト、ちょっと台所借りるぞ」

断りを入れて、冷蔵庫とゴミ箱を確かめる。

冷蔵庫の中身は冷凍庫に冷凍食品があるばかりでほぼカラ。

ゴミ箱には出来合いの惣菜の空き容器やゴミが捨てられていた。

ため息一つ、手軽に作れるメニューの材料を書いてフェイトに財布と一緒に渡す。

 

「え、あの? これは?」

「いまから買って来てくれ。話し合いの場を設けてくれた礼に腕を振るってやる」

「え? ですけど、そこまでしてもらうのは」

「いいから、早く行く!」

「・・・・・・わかりました」

 

不承不承ながらも、財布とメモを受け取って出て行くフェイト。

足音が十分離れたのを<デル・ドーレ>で確認して、こちらを警戒しているアルフに声をかけた。

 

「なぁ、アルフ」

「なんだい!? あたしはあんたをまだ信用したわけじゃ」

「率直に聞く。フェイトの怪我は母親によるものか?」

 

警戒を取り戻したのか。ガァッ! と牙を剥こうとしたアルフだったが、俺の問いに勢いを無くした。

目を丸くしながら、問い返してくる。

 

「・・・・・・気がついてたのかい?」

「鼻は利く方だからな。たぶん見えない腹か背中。匂いが薄いが、治りかけのものじゃない、鋭く痛みが強いタイプの傷だな?」

「そこまで分かるのかい!? ああ、そうだよ。あの鬼婆、よりにもよってフェイトに・・・・・・」

 

ギリ、と牙を鳴らすアルフの姿からよっぽどの仕打ちがなされていることがうかがえた。

 

(だが、フェイトを傷つけることはジュエルシード集めにはマイナスのはずなんだが?)

「なあ。あんたのその契約の力でフェイトを治すことはできないのかい?」

 

考え込んでいると、アルフが逆に聞いてきた。

それに俺は、

 

「いや、無いな」

 

首を横に振ることで答えた。

 

 

その後、肩を落としてキッチンを後にしたアルフを見送り、<クフ・リーン>に声をかけた。

 

「なあ、なんであの時<デル・ドーレ>でフェイトを治すことを止めたんだ?」

 

食事の話題の前。

フェイトの傷を<デル・ドーレ>で癒すことを提案しようとしたとき、この犬はそれを止めたのだ。

<デル・ドーレ>の血液が治療にも使えることは<クフ・リーン>の見せた映像にもあった。

だから、咄嗟に食事の話題に繋げたのだ。

 

―――『空白の契約書』について言っとかなきゃならないことがある。契約書は、お前の血と血を混ぜることで署名したことになっちまう―――

「なんだと? ということは、もし俺がフェイトの傷に血を垂らしていたら?」

―――おそらく契約書が発動する―――

「もし、発動したら?」

 

質問を重ねるたびに顔色が悪くなっていくのが分かる。

 

―――分からねえ。ただ、『空白の契約書』も厄介な代物だ。だから、迂闊に契約するようなことはするんじゃねえぞ―――

 

言われるまでもない。

フェイトはもちろんなのは達も巻き込むわけにはいかない問題が増えてしまった。

その後、フェイトが戻ってくるまで俺は頭を悩ますことになった。

 

 

買ってきた材料を元に何品か料理を作り、テーブルに並べていくとフェイト達の目は輝きながら料理に向けられた。

料理自体も彼女達には好評で、食べている最中に食事の意図を説明した。

 

「傷の治癒、ですか?」

「ああ。背中に傷があることはアルフに確認を取ってある」

「アルフ?」

「ウウ、ごめんよフェイト」

 

フェイトがアルフを見ると、アルフは尻尾を丸めた犬のようにしょぼくれた。

その様子に苦笑して許すフェイト。

その様子を身ながら説明に戻る。

 

「それで、何かできないか、と思ってな。それで、聞いてみたらまともな食事を取っていないようだから。まともな食事を取らないと、傷を治すエネルギーが足りなくて治るのが遅れる。特に子供のうちはしっかりした食事をオススメするよ」

「それは・・・・・・分かるんですが」

「あと敬語でなくていい」

「え、はい、じゃなくて・・・・・・うん」

「結構。それにしても、何かあったのか?」

「その・・・・・・こっちにきたときに最初は料理しようとしたんだけど」

「うん・・・・・・ちょっと失敗しちゃって」

 

ばつが悪そうに呟く二人の様子に、(何か失敗して離れた、か)と予想した俺はため息一つ、考えていた提案をする。

 

「よければ俺が作りに来るが?」

「「へ?」」

「ただし、朝はさすがにそっちで何とかしてもらう必要はあるけど」

「そ、そこまでしてもらうわけには」

「いや、大歓迎だよ!」

「アルフ?」

 

フェイトの言葉を遮って、アルフが食いついた。

 

「食事がフェイトのために繋がるんなら、あたしは全面的に賛成するよ!」

「アルフ・・・・・・分かった。雄一、頼んでも、その、いいかな?」

 

アルフに押し切られた形だが、フェイトにも頼まれた俺は頷く。

ただ、気になるのはアルフの眼に何か別の思惑があるような気がしたんだが・・・・・・気のせいか?

 

 

sideアルフ

 

「アルフ、どうしてあんなことを言ったの?」

「フェイトだって、あいつの作った、ご飯気に入ってただろ?」

「それは・・・・・・そうだけど」

 

唇を尖らせるフェイトにあたしは鼻を摺り寄せる。

榊雄一。あいつはフェイトに手を差し伸べてくれた。

そんな存在を此処で手放すわけにはいかない。

 

(それに、あいつはまだ何か隠している気がする。正直、敵には回したくないし、なんとかこっちに引き込みたいけど、あたしは頭悪いし、けど、フェイトにはまだ相談できないだろうし)

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