リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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執筆に使っていたポメラが死にました。
修理に出したいけど、保証書がない……orz


第百五十九話 譲歩と幕引き?

「・・・・・・どうなったんでしょう?」

 

重い目をこじ開けると、映った星空に星光の殲滅者は眉をひそめた。

どうやら、気を失っていたようで、背中に当たる冷たくて硬い感触からコンクリートに横たわっていることが判る。

動くと痛む身体だが、何とかして身を起こすと、彼女は気を失う直前のことを思い出した。

 

「負け・・・・・・たんですね」

 

迫る桃色の光を思い出す。

その衝撃に、オリジナルである彼女(高町なのは)が、自分より上の位置にいることを知って、悔しさを覚えると同時に、自分もそこへ至れるだろうことが判り、心が滾るのを感じて頬を緩める。

 

「ですが、そうも言っていられませんね」

 

顔を引き締めると、手早く自分の状況を確かめる。

どうやら、限界を迎えようとしているようで、身体からどんどん力が抜けていくのを感じている。

おそらく長くはもたないだろう。

さて、消えるまではどうしようか、と思っていると、空からの声が彼女の耳を震わせた。

 

「ここにいたか」

「来たようですね」

 

いつの間に現れたのか、気がつけば星空を背景に執事服の少年が高町なのはの手を引きながら浮いていた。

どうやら、星光の殲滅者を探していたようだ。

とりあえず、(榊雄一)は置いておいて、高町なのはに話しかける。

 

「どうやら、私は負けたようですね」

「そんなことないよ! 私だって、こんな状態だもん」

「・・・・・・こんな状態?」

 

なのはの言葉に、星光の殲滅者は彼女の様子に目を向けた。

バリアジャケットではなく私服だろう格好に、明らかに男物だろうコートを纏っている。

 

「私も、すっかり魔力切れになっちゃったんだ。レイジングハートにも無茶をさせちゃったし・・・・・・だから、どっちの勝ち・・・・・・というか、引き分けだと思うの」

「・・・・・・なるほど。ですが私も短い間とはいえ、気を失っていたようですから。やはり、私の負けでしょう」

「でも、」

「いえ、ですが、」

「ちょっと待ってくれ」

 

堂々巡りを始めようとした二人に、雄一が割って入る。

 

「決着がついたのなら、質問に答えてくれないか? もう時間もないだろうし」

「・・・・・・貴方の言葉に頷くのも釈然とはしませんが、その通りです」

「え? 時間がないって、どういうこと?」

 

雄一の確認に渋々ながら頷く星光の殲滅者。

二人の遣り取りの意味が分からず問うなのはだったが、星光の殲滅者は僅かに視線を向けただけで、話を進めた。

 

「ですが、私は彼女に敗れたのであって、貴方に敗れたわけではありません。貴方の質問に答える必要はないでしょう?」

「なら、どうする? その身体で、戦う(やる)か?」

「それがお望みなら」

 

星光の殲滅者の挑発に、雄一は冷たい目で彼女を見下ろした。

雄一の言葉に、星光の殲滅者は立ち上がりルシフェリオンを構えようとする。

だが、既に身体が限界なのか、立ち上がるのもやっとの様子だった。

 

――・・・・・・なあ相棒、見てて居た堪れないんだが――

『<奇遇じゃな。私もじゃ>』

『<・・・・・・>』

「<いや、しないから。というか、この状態の相手に、躊躇いなく攻撃できたら、それは間違いなく鬼だろ>」

 

味方から総スカンを受け、雄一は否定すると、緊張を解いた。

突然、鬼気を抑えた雄一に、怪訝そうな顔を見せる星光の殲滅者。

雄一は、頭を掻くと、ため息をついて譲歩案を出した。

 

「とりあえず落ち着け。こっちもこれ以上攻撃する気はない。譲歩として、二つだけ答えてくれ」

「・・・・・・いいでしょう。こちらも無用な問答で時間を無駄にしたくはありませんので」

 

星光の殲滅者は、しばらく雄一を睨んでいたが、ため息をつくと肩の力を抜いた。

彼女が一応、応える姿勢を見せたことに、雄一は質問を口にしようとし、

 

「ねえ! 時間がないってどういう事なの!」

 

すっかり蚊帳の外に置かれていたなのはが割り入った。

見れば、放っておかれていたことで、すっかり臍を曲げていたのか、退くものかという気迫が滲んでいる。

仕方なく、雄一はまずなのはの問いに応えることにする。

 

「時間がないっていうのは、言葉通りだ。なのはもここまで来るのに、闇の欠片と戦っているよな?」

「う、うん。それが?」

「そいつらはどうなった?」

「どうなったって・・・・・・消えて・・・・・・あ!?」

 

雄一が言わんとすることに気がついたのか、息を呑むなのは。

なのはの予想に、雄一は頷くと、説明を続けた。

 

「マテリアルは、器が特殊だけど、そこに注がれている燃料は闇の欠片だ。だからか、末路も同じということらしい」

「そんな・・・・・・」

「・・・・・・説明は助かりましたが、少々身も蓋もないのでは?」

「事実だろ?」

「・・・・・・。それで、質問は何です? 正直あまり時間は残っていませんよ?」

 

星光の殲滅者は、顔をしかめると、露骨な話題の変換を図った。

雄一は反射的に口を開きかけたが、時間がないことを思い出し、本題へと移る。

 

「まず一つ目。お前達の目的の、『砕きえぬ闇』っていうのは何だ?」

「・・・・・・しくじりました」

 

星光の殲滅者は、初っ端から苦虫を噛み潰したような顔をした。

いきなりその様な表情を浮かべられた雄一の方が却って戸惑う間に、星光の殲滅者の独白は続いた。

 

「・・・・・・そうです、よね。それを聞いてこないはずはありませんでした。むしろ、それが核心じゃないですか。それなのに、わざわざ質問を許すとか、どういうつもりだったんですか、私は?」

「あー・・・・・・それで、応えてくれるよな?」

「くっ・・・・・・判りました」

 

続く独白をぶった切り促すと、星光の殲滅者は気を取り直すようにして居住まいを正した。

 

「まず先に言っておきますが・・・・・・これから話すことに嘘偽りはありません」

「?」

「『砕きえぬ闇』についてですが、私にも判りません」

「・・・・・・何?」

 

星光の殲滅者の回答に、雄一は眉を寄せた。

その雄一の不審を判っているのか、星光の殲滅者は言葉を続けた。

 

「私達にとって重要なものであることは判っているんです。ですが、それが何なのか、それを何故求めるのか、それを使って何をするのか、それら一切の記憶が無いんです」

「それは・・・・・・」

 

雄一は思わず、言葉に詰まった。

目的も判らず、ただ戦う。

それは一体どれほど苦痛だろうか。

そして、だから星光の殲滅者が戦う前に、戦う理由を求めたのか、と思い至った。

 

「それなら、この話は置いておく。それで、次だが・・・・・・もう一人のマテリアルについて教えてくれ」

「? もう一人?」

 

雄一の問いに、しかし星光の殲滅者は怪訝そうな表情を浮かべた。

その表情に、雄一も疑問が浮かぶ。

 

「? いるだろ、もう一人?」

「いえ、いませんよ?」

「・・・・・・何?」

 

今度こそ、雄一は動揺した。

星光の殲滅者は、雄一の動揺に首を傾げるが、気にせず言った。

 

「私達マテリアルは、三機での運用を設計理念にしています。『王』である闇統べる王の左右に侍る二本の槍、『力』の雷刃の襲撃者と『理』の私こと星光の殲滅者。それ以外はいません」

「・・・・・・どういう、ことだ?」

 

雄一は、星光の殲滅者の言葉に嘘を感じられなかった。

<ハヌ・マーン>で覗く事も考えたが、おそらく結果は変わらないだろう。

だが、そうすると雄一の予想が間違っていたのだろうか。

雄一の予想は、ヴィータ達が雄一達以外から蒐集を行っていない、という信頼を基としている。

それが間違いだとは思えない。

だとしたら、どういうことだろうか?

 

(いや、枠が三人分しかなくて、俺のリンカーコアを使う必要が無かったってことだろう。むしろ、四人目がいない、っていうなら、事件はこれで解決ということだ。喜ばしいこと、でいいんだよな)

「どうかしましたか?」

「っ!? い、いや、なんでもない」

 

納得のいく答えを見つけ、動揺を抑えこんだ雄一は、掛けられた声に慌てて我に返った。

動揺を見せる雄一に、その動揺の正体が判らず首を傾げる星光の殲滅者だったが、ふと顔をしかめると、ポツリと呟いた。

 

「どうやら、時間のようですね」

「ん?」

 

唐突な言葉に、雄一が目を向けるとその言葉の意味はすぐに知れた。

見れば、彼女の身体が徐々に散っている。

 

「消えるのか」

「ええ。そのようです。貴方とも戦ってみたかったのですが、残念です」

 

雄一の確認に、星光の殲滅者は短く返すと、静かに下がっていたなのはを振り向いた。

 

「なのは、でしたね。良い魔導でした。戦うことができて、嬉しかったですよ」

「うん・・・・・・元気で、って言うのは変かもしれないけど、やっぱり元気で」

「ええ、貴女も健勝で。また次があるのでしたら、今度は打ち勝って見せます」

「どうかな? 次も私が勝つよ。だから、」

「それでこそ、私のオリジナルです。でしたら、」

 

星光の殲滅者の挑戦に、しかし笑顔を浮かべるなのはも譲らない。

なのはの笑顔に、星光の殲滅者も頬を緩めると、

 

「また会おうね」

「また会いましょう」

 

同時に言い放ち、片方の影が消えていった。

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