リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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最近のものと、A`s頃を見比べると、随分作風が迷走してきたなぁ、と思い、練り直してみました。
では、本編どうぞ。


第百六十三話 乱入と怒り

時間は少し遡る。

 

「はあっ!」

 

気合と共に一閃したバルディッシュが、なのはの姿をとった闇の欠片を切り裂いた。

 

「ぁ、フェイトちゃ・・・・・・」

「大丈夫・・・・・・目が覚めたら、いつもの世界が待っているから」

 

消え行くなのはの手を取ると、なのはは安心したように笑み、姿を消した。

 

「・・・・・・ふぅ」

<Master?>

「ううん・・・・・・私は大丈夫だよ」

 

案じるバルディッシュにフェイトは笑みを浮かべて返すが、その笑顔は硬いものだった。

だが無理もない。

偽者と判っていても、親友の姿をしたものを切ったのだ。

いくら修羅場を潜ってきたフェイトでも、その精神にダメージを蓄積されていた。

今度はバルディッシュに気づかれない程度にため息をこぼす。

すると、

 

pipipi

 

「通信? フェイトです」

『<無事かしら、フェイト?>』

「母さん!?」

 

エイミィかと思っていたフェイトには、プレシアからの通信は不意打ちだった。

最近は、フェイトとアリシアの存在で、若干? 暴走がちな母。

だが、プレシアは大魔導師。

何か、この件で気がついたことを伝えようとしているのかもしれない、と考え、フェイトは驚きを取り繕い、プレシアを促す。

 

「ん、ん・・・・・・母さん、どうしたの?」

『・・・・・・色々気にはなるけど、まあいいわ。いくつか伝えることがあるわ。まず、貴女が遭遇した闇の書の構築体、呼称マテリアルだけど、はやてちゃんとなのはちゃんのものが確認され、撃破されたわ>』

「本当!?」

 

フェイトの確認に、頷くプレシア。

フェイトは喜ぶが、すぐに表情に不安の色を混ぜた。

 

「それで、なのはやはやては無事なの?」

『<はやてちゃんは無事よ。守護騎士達にも大きな怪我はないわ>』

「え、それって・・・・・・」

 

プレシアの言葉に、フェイトの脳裏に嫌な予感が広がっていく。

はやては(・・・・)? それではまるで、

 

(まるで、なのはに何かあったみたいな・・・・・・っ!)

 

浮かんだ予感を振り払う。

なのはは何があっても落ちない強い子だ、だから大丈夫と、自分に言い聞かせ、フェイトはプレシアを問い質した。

 

「か、母さん・・・・・・なのはに何かあった、の?」

『フェイト、落ち着いて聞きなさい・・・・・・なのはちゃんがアースラに収容されたわ>』

「っ!?」

 

言い聞かせた矢先の凶報に、遠のく意識を必死で押し留めるフェイト。

 

「ま、まさか、そんな酷い怪我を!?」

『<違う、とも言い切れないわね。マテリアル戦で相当無茶したみたい。それで、これ以上の戦闘は危険、と判断しての措置だそうよ>』

「・・・・・・あぁ、そういうこと」

 

プレシアの説明に、フェイトは胸を撫で下ろして納得する一方、なのはの無茶に痛む頭を押さえた。

フェイトの知る限りでも、なのはは無茶を押し通すところがあり、彼女のデバイスのレイジングハートもよほどでない限りなのは同様無茶をするところがある。

おそらく、今回の措置も、なのはによるものではないだろう。

なのはが、従ったところから考えると、はやてか雄一によるものだろう。

 

『<ただ、こっちは終わっている話。本題はこっちよ。新しいマテリアルが現れたわ。場所は聖祥大付属小学校グラウンド>』

「え!?」

 

プレシアの告げた場所に、目を丸くするフェイト。

それは、今ではフェイト達の日常となった大切な、暖かな場所。

そこが戦場と知り、フェイトは眦を吊り上げた。

 

「すぐに向かいます!」

『<待ちなさい、フェイト! 貴女、戦闘のダメージがまだ抜けていないでしょう!>』

「だ、だけど!」

 

フェイトはすぐに飛び出そうとしたが、プレシアに制止され踏み止まった。

確かに、連戦はフェイトに疲労やダメージを残している。

だがそれでも、とフェイトは再度飛び出そうとし、

 

『<だから待ちなさい。行くなとは言わないわよ>』

「それなら」

『<その代わり、無事に戻ってくること。それが条件よ。さもないと>』

「さもないと?」

『<暴れるわよ、問答無用で>』

「・・・・・・」

 

冗談だよね、と期待してプレシアを見るが、プレシアには冗談のつもりはないらしい。

モノスゴク真剣な目を向けられ、フェイトは若干表情を引き攣らせながらも、通信を切ると、学校を目指して飛んでいった。

 

 

 

 

「これは? ・・・・・・あ!」

 

聖祥に近づいたところで結界に入ったフェイトは、そのままグラウンドへ飛んでいくと、見慣れてきていたグラウンドに見慣れぬ柱や壁が立ち、その中に平然と座る人影があることに気がついた。

 

「(雄一?)雄」

 

雄一かと思い、近づくと、人影が雄一ではないことに気がつき、フェイトはバルディッシュの切っ先を向けた。

背丈は雄一ほどだが、格好は燕尾服ではなく、所々に紐飾りのついた民族衣装のようなもの。

フェイトに気がついていないのか、顔を俯けている。

このまま不意を打とうか、とも考えたが、フェイトは頭を振ってその考えを消すと、念のためにと呼びかけた。

 

「そこの人、貴方は誰ですか!」

「っ、うぁ!? 吃驚した!?」

 

フェイトがかけた誰何に、人影――盟約の守護者はびくりと肩を跳ねさせると、フェイトを振り仰いだ。

フェイトはその反応に、首を傾げるが、一旦その疑問を棚上げする。

 

「時空管理局嘱託魔導師の者です。貴方はマテリアルですね?」

「参ったな・・・・・・あいつが来ることしか想定していなかったからなぁ」

 

油断せず問い詰めるフェイト。

だが、盟約の守護者はその問いが聞こえていなかったかのように、ブツブツと何事かを呟いている。

 

「何を?」

「ん、この声は確か(・・・・・・)、暴走体戦にいた黒い少女か? だったら標的になるよな」

「っ!?」

 

多くは聞き取れなかったが、標的、という言葉に危機感を覚えたフェイトは素早く身を翻した。

瞬間、フェイトの真下の地面から柱が伸び、フェイトを掠めていった。

 

「くっ!? バルディッシュ!」

<Photon Lancer>

 

フェイトの意志を酌んだバルディッシュが素早く魔法を組み上げる。

撃ち出された雷の矢は、しかし盟約の守護者を庇うように現れた土壁に遮られ消滅した。

 

「ん、手応えは無し。仕留めてないな」

 

崩れた壁の向こうから現れた盟約の守護者はフェイトの方を向き呟くと、再度地面を撫でた。

途端、今度はフェイトを囲むように、柱が乱立していく。

柱は互いに交差するようにして、フェイトの逃げ場を塞いでいく。

 

「こんなもの!」

 

フェイトは、素早く周囲を確認すると、一気にギアを跳ね上げた。

一連の行動から、盟約の守護者は地面に関係する能力を持っていると、フェイトは読んでいた。

そこで、飛行魔法を駆使し、地に触れぬように低空飛行を交えた回避を行う。

雷光のように鋭角のターンを繰り返し、柱同士の間に残った隙間をかいくぐる。

すると、一気に開けた視界の先、今だ地面に手をついた体勢の盟約の守護者がいた。

 

「バルディッシュ!」

<Yes,Sir! Form Change,Haken Form>

 

フェイトは、バルディッシュをアサルトフォームからハーケンフォームに変形させると、魔力刃を作り、盟約の守護者めがけて振り下ろした。

盟約の守護者は、表情を変え、手を地面から浮かせるが、身体を起こしきるよりも、フェイトの一撃の方が早い。

 

(これで、終わり!)

<――ッ、Master!>

「――――え?」

 

勝利を確信した瞬間、バルディッシュが警告を発すると同時に、盟約の守護者の姿が消えた。

突然の姿の消失。

それは、フェイトでなくても、動揺させるには十分だったが、フェイトが速さを得意とした戦い方をしている分、彼女にはより深刻な動揺を与えていた。

あまりの動揺に、フェイトの飛行魔法が解けてしまい、地に足が触れてしまった。

そして、その動揺は盟約の守護者からすれば止まっているに等しい隙だった。

 

そこか(・・・)、<タウロス>!」

「っ、しまっ!?」

 

フェイトが自失から覚めるよりも早く、盟約の守護者が異能を振るった。

フェイトは何が来るかを予想するより先に、足下を警戒して飛行魔法を再度組み上げると宙へと飛び上がった。

確かに、フェイトの判断は咄嗟のものとしては上々だった。

盟約の守護者は、フェイトには地面からしか柱や土壁を生み出してみせていないのだから。

だが、

 

<Alert! Master!>

「がっ!?」

 

バルディッシュの警告がフェイトに届く寸前、突然の衝撃がフェイトを打ち据えた。

霞む視界で振り返ったフェイトが見たのは、背後に立っていた柱から、枝の様に伸びた柱だった。

 

先ほどの話は、戦場であるグラウンドを見渡せば変わる。

雄一を捕らえていた、土壁でできた箱状のものを見れば、作り出したものに再干渉できることは明らかだった。

 

(しまった・・・・・・)

 

フェイトが暗転する意識の中最後に見たのは、周囲の柱から同様に伸びてくる柱の群れだった。

瞬間、轟音と共に衝撃が地面を揺らした。

 

 

 

 

「仕留めた、か?」

 

盟約の守護者は、確かな手応えを感じつつ、柱に引っかかったフェイトが動かないことから、そう判断した。

まずは一人、と肩から力を抜き、呼吸を整える。

 

瞬間、呼吸とは異なる音を感じて、背後を振り返り、

 

「<クーア・ルンゲ>ェエエエ!!」

「っ、防げ、<タウロス>!」

 

屋上から飛び降ると同時に、校舎の壁を蹴って落下速度を増しながら、鋼糸を振るう雄一。

彼を止めようと、盟約の守護者は土壁を五重に展開する。

鋼糸と土壁がぶつかり、

 

鋼糸が土壁を細切れにしながら、盟約の守護者へと迫った。

 

「ちぃっ!?」

 

土壁が破壊される衝撃に、素早く射線から身体を逃がす盟約の守護者だったが、逃がしきれなかった腕を鋼糸が捉えたことで、血が舞った。

 

「くっ、こいつ・・・・・・さっきとは大違いだな! 何が起きた?」

「別に。大したことじゃない」

 

傷口を押さえつつ、体勢を整えた盟約の守護者は、地に降り立った雄一を睨んだ。

だが、雄一もその剣幕に押されるどころか、押し返すほどの怒気を放ち、睨み返した。

 

「お前はフェイトを傷つけた。俺が戦う理由は、それで十分だ」

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