リリカル世界を逝く影執事   作:ラッテンフェンガー

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第十五話 温泉と思わぬ出会い

フェイトの食事の世話を始めてしばらく。

 

「旅行?」

「そそ。この連休になのはの家とすずかの家とうちで二泊三日で温泉旅行に行くの。あんたも来なさい」

 

学校でアリサに突然言われた提案という名前の命令に、痛む頭を押さえつつ応える。

 

「とりあえず、いきなり命令で入るのはどうかと思うんだが」

「何言ってんのよ。そうでもしないとのらりくらりと逃げようとするじゃない」

「そんなことも、ない」

 

よな? ないはず? なかったような?

だんだん自信がなくなってきたな。

 

「それとも、何か用事でもあるの?」

「用事・・・・・・用事?」

 

そう言われると、フェイトの食事くらいしか用事といえるものがないことに気が付いた。

 

「まあ、こういう付き合いも大切か。分かった、参加させてもらうよ」

 

そう言うと、アリサは笑顔で胸をなで下ろし、

 

「あー、よかった。あんたが来てくれないと一人分無駄になるところだったわ」

「・・・・・・うん?」

 

なんか不穏な言葉が聞こえたような?

 

「アリサさん? 今の言い方だとまるで最初から俺も人数に入っていたように聞こえるのですが?」

「そうよ? あんたも行くって伝えておいたから感謝しておきなさい!」

「事後承諾じゃねえか!?」

 

 

その後フェイトにその事を伝えると残念そうにしながら、了承してくれた(アルフは不機嫌だったが)。

代わりになるかは分からないが、前日には夕食とは別に、翌日の食事にとカレーとサンドイッチを用意しておいたが。

 

そして、連休になって旅行当日。

なのはの姉美由紀さんや母親の桃子さんに挨拶し(お姉さんと間違えたら周りは苦笑していた。若くて驚いたものだ)、高町家、月村家、アリサ、俺で二台の車に分乗して着いた温泉宿『旅館山の宿』(そのまんま過ぎるだろ)は以外と大きなものだった。

聞けば、海鳴は温泉地としても有名らしい。

部屋割りは、

・士郎さん、桃子さん

・恭也さん、忍さん

・ノエルさん、ファリンさん、美由紀さん

・なのは、アリサ、すずか・・・・・・俺

いや、確かに士郎さん達の夫婦水入らずを邪魔するつもりも、恭也さんたちの邪魔をして馬に蹴られるつもりもないですけど、娘達の部屋に放り込むのはどうかと。

 

「貴様! なのはに手を出したら」

 

木刀片手に飛び出そうとした恭也さんが速やかに桃子さん達(士郎さん達ではなく)に撃退されるのを横目に苦言を思っていると、

 

「何? 私達の考えに不満でもあるの?」

 

アリサが不機嫌そうに振り返った。

見れば、なのは達もこちらを注視している。

これ、アリサたちの提案か。

それより何故不機嫌に?

考えてみれば、こちらを拒否しても残っているのはノエルさん達の部屋。

 

(ああ、そういうことか)

 

そうして理由に思い至ると、部屋割りの意図もあっさり納得できた。

 

「大丈夫だって。みんなといるほうが気が楽でいいから」

「そ、そう。最初からそう言っておけばいいのよ」

 

僅かに頬を赤くしながら、そっぽを向くアリサの姿に首を傾げる。

ノエルさん達の慰労も兼ねてるから邪魔するなってことだろ、わかってるって。

 

 

 

荷物をおいて一同温泉へと向かうことに。

だが、思わぬ罠が待ちかまえていた。

 

「・・・・・・駄目だ、俺は入れない」

「え、どうして?」

 

丁度暖簾をくぐろうとしていたなのは達が、男湯に入らずに注意書きを呼んでいた俺を振り返った。

なのは達に無言で注意書きを示す。

 

「どうしたっていうの・・・・・・げっ」

「どうかしたの?アリサちゃ・・・・・・あ」

 

アリサ達もそれを見て声を上げた。

すなわち、

 

『入れ墨のある方の御入浴をご遠慮いただきます』

 

という一文を。

心当たりのあるなのは達の物言いたげな視線が背中に向けられる。

入れずにここでしゃべっていて、刺青のことが騒ぎになっても面倒なだけか。

ため息一つ、浴場に背を向けた。

 

「俺は旅館の中をふらふらしているから、みんなは入って来な?」

「でも、雄一君はどうするの?」

「後で人がいない頃を見計らうか、最悪部屋風呂があったらそっちに入るよ」

 

すずかに応えつつ、風呂場に背を向けて歩きだそうとして、ふと何かを忘れていることに気がついた。

 

(・・・・・・何か忘れているような気がする。それも結構重要なことだった気が)

「それじゃ、二人とも行くわよ! ほら、ユーノも!」

「あ!」

 

アリサの言葉で思い出せた。

 

「なのは! ユーノを風呂場に入れるのは」

 

急いで振り返って呼びかけようとするが、みんなの姿はすでに閉じられた戸の向こうに。

 

「不味い、気が・・・・・・」

 

遅かったか。

いや、考えてみれば、何が不味いかはっきりしていないのだ。

何事もないことを祈っておこう。

さて散策散策。

 

「あれ? もしかして雄一?」

「ん?」

 

改めて歩きだそうとした時、聞き覚えのある声に呼びかけられた。

振り返ると、

 

「真一か? 何でここに?」

 

(唯一の)男子の級友こと白塚真一が、父親だろう男性とともに歩いてきていた。

男性に頭を下げて、話しかけると真一は

 

「僕は父さんと一緒に、母さんの墓参りだよ。けど、『何で』は雄一の方だと思うよ? 一人で何してるの?」

 

苦笑しながら言われた。

 

「俺は、高町家&月村家&アリサの家族旅行に一緒しただけだ」

「・・・・・・雄一、君はホント綱渡りのようなことをするね」

「どういうことだ?」

「高町さん達と一緒に泊まりで旅行ってことをうちの男子が知ったらどうすると思う?」

 

真一に言われて、考えてみる。

・・・・・・おそらく、

 

「確実に血祭りに上げようと徒党を組んで襲いかかってくるだろうな」

「うん、そこまで考えるとは思わなかったけど、僕も大体同じ意見かな」

「・・・・・・言うなよ、二重の意味で」

「言わないし、言えないよ。言ったら、僕が何で知っているのか、ってことになるし」

 

それもそうだ。

 

「真一も風呂に行くんだろ? その後はどうするんだ?」

「墓参りは明日だから、今日は風景のスケッチでもするよ。何か掴めるかもしれないし」

「そうか・・・・・・」

 

残念だが、仕方ないか。

 

「分かった。それじゃあ、また」

「うん。また学校で」

 

パァン、と手を打ち合って別れる。

別れて数歩進んだところで、待機状態にあったカナメがポツリと呟いた。

 

『学校で、ということはあやつ、この旅行中に主殿に会うつもりはないのか?』

 

うん。カナメ、そこを掘り下げなくていいから。

 

 

 

散策することしばし。

さて、戻るかと部屋を目指して廊下を歩いていくと、

 

「君かねー! うちの子をあれしてくれちゃってるのは」

「ん?」

 

妙な台詞が聞き覚えのある声で聞こえてきた。

見ると、オレンジ色の髪の女性が誰かに絡んでいるらしい後ろ姿。

って、あれアルフじゃん。

近づいて声をかける。

 

「何をしているんだ、アルフ?」

「ん? あれ、雄一じゃないか! そっちこそ、なにしてるんだい?」

 

振り返ったアルフがこちらに気がついて相好を崩す。

アルフが振り返ったことで、アルフに絡まれていた人の姿が見えた。

なのは達、か。

アリサがなのはを庇うように前に出ているってことは、おそらくなのはに様子見か牽制を入れに来たアルフが絡んだってところか?

 

「言っただろ? 旅行に行ってくるって。そっちこそ、ここに来ているってことはあの娘も来てるんだろ?アルフが離れるとも思えないし」

「お? さっすが、鋭いねえ。当然さ。あたしがフェイトを放りだすわけがないだろ?」

「食事はどうするんだ?」

「心配しなくても、カレーは食べたし、夜はサンドイッチを食べるから大丈夫さ。今夜の内にカタはつくだろうし」

「今夜?」

「え? おっと!?」

 

気になった部分を問うと、喋り過ぎだったのかアルフは口を噤むと、あらぬ方を向いて口笛を吹き、

 

「さ、さーて、どうやら人違いだったみたいだね! 知っている子に似ていたようだよ!」

 

強引に話を終わらせにかかった。

 

「そ、それじゃーね、おチビちゃん達!!(今のところは挨拶だけにしておくよ。子供は大人しくしてお家で遊んでなさい。お痛が過ぎると、ガブッていくわよ!)さ、さぁて、もうひとっぷろ行ってこよーっと!?」

 

念話で捨て台詞を残して去っていったアルフを呆れた目で見送った。

アルフの姿が見えなくなったところで、三人に声をかける。

 

「あー、大丈夫だったか、三人とも?」

「ゆ、雄一! あれ、あんたの知り合いなの!?」

「ああ。妹ラブの過保護お姉さんことアルフっていってな。縁があって時々話す人だよ」

「いや、どんな説明よ!!」

 

があー!! と起こるアリサをなだめつつ、

 

(あながち間違っているとも思わないんだが)

 

と苦笑する。

すると、

 

「ねえ、雄一君。私はそれよりも、あの人の言ってた娘の事の方が気になるかな?」

 

笑ったのが不味かったのか、今度はすずかが聞いてき・・・・・・た?

あの、すずかさん?

なんでそんなに笑顔なのに怖いんですか?

 

「あら、奇遇ねすずか。私も気になっているのよ?」

 

アリサさんもどうしてそんなに覇気溢れる顔をしているのですか?

 

「うん。ねえ、雄一君。ちょっとOHANASHIしようか?」

 

なのはさん!? 何かおかしくないですか!?

胸元からレイジングハートは抜いちゃ駄目だから!?

一般人も傍にいるから自重してー!!

 

 

sideアルフ

 

『もしもし、フェイト? こちらアルフ』

『ん』

『ちょっと見てきたよ、例の白い娘』

『そう、どうだった?』

 

集中していたようだが、ちゃんとこっちの念話にも反応してくれている。

報告は最小限でいいよね?

 

『あたしとフェイトの敵じゃないよ。それより、雄一がいたね』

『雄一が? なんで?』

『どうやら、あの白い娘と知り合いだったようだね。旅行ってのもそういうことだったみたいだよ』

『・・・・・・そう』

 

なんでもない振りをしているけど、沈んだような声を隠せてないよ。

 

『それより、こっちも少し進展。次のジュエルシードの位置はだいぶ特定できてきた。予定どうり、今夜には捕獲できると思う』

『さっすが、あたしのご主人様!』

 

フェイトを誉めながら、あたしは考えた。

ジュエルシードが発動すれば、あの白いのはもちろん雄一も現れることだろう。

そのとき、どういう立場で現れるのか。

事と次第によっては・・・・・・。

 

(どういうつもりか聞かせてもらうからね。覚悟しときなよ、雄一!)

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